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第二章、〘飛び交う依頼〙

ギア10、宿命は力、目覚める絆。

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「…良いですね。やはり、コーヒーはゲームをしながらに限ります。最近出番が無くて悲しかったのですが、これで出番を待つだけ...ん?え?写って…ます?え?あ、(咳払い)!…えー前回、ギアヒーローエヴォ兼元宮モトミヤ 成也ナルヤに壊されたはずのジャアクギアを持ち、ナナミを連れ去ってしまったジャアクヒゲジロハサミムシことフジハラ セナ。彼女は市長の娘さんであり、訳ありで思い出の病院を残したのだとマイナス達にカミングアウトする。その一方で、ブラックは憎しみに溢れた思いで奥の手を発動。PIG QUEENを追い詰めたと思いきや、時間制限を越えてしまい窮地に陥る。さぁ、このあとどのような展開になるのか。楽しみですね。...さっきの愚痴?はて、なんの話でしょう?…貴方は何も見ていない。良いですね?…さて、もう少し砂糖を入れますか……フゥ……」

「終わりね。死になさい。」
ダヌアは首を掴まれても、リミッターを解除した反動で身体が限界を迎え、少したりとも動けずにいた。PIG QUEENの奴隷達は「殺せ!殺せ!」と騒いでいた。
「…死ねない!俺は……!」
「ブラック!!」
[ディンゴブーツ!][オオセンザンコウシールド!]
そこを間一髪でクイップが駆けつけ、シールドでダヌアをタックル、ブーツでPIG QUEENのみぞおちをふっ飛ばす。
「いッー⁉ゴホッゴホッ...⁉あ、あんた達.....ウッ....⁉」
「ブラック!全く...無理をしないでください...」
「…ふん、無理してまでじゃないとあいつを殺せないだろ…?」
二人は目を合わせ、微笑する。
「…ふん、いいわ…お前ら、撤退よ。…あー苦し。」
みぞおちを蹴り飛ばされ、これ以上無様な姿は見せまいと思ったのか、PIG QUEENはブラックを恨むような目で睨みつつ
、黒い渦に飲まれ何処かへ消えてしまう。
「…エヌ…うッ……あいつらはどうした……?」
「…やはり父さんには、素質・・があったようです。」
それを聞いたダヌアは、「なるほど」と頷く。
「めっちゃ和解してましたよ♪」
「前言撤回。どういう状況だ。」
一瞬場が和む。ダヌアはおぼつかない足で立ち上がり、クイップの後ろを見つめる。
「…まだ仕事は残っているな……その話は、後で詳しく聞こう。」
二人の目の前には、PIG QUEENがついで感覚で置いていったのであろうジャアクロイドがいた。
「…そうですね。行きましょう!」

廃病院206号室
「ここが、お前らの出会った場所…」
「うん。私がここで看病させている間、セナちゃんはいつも会いに来てくれたの。」
ナルヤはナナミに質問をかける。
「お前、何かあったのか?」
「……皆にいじめられたの。それも…」
「ナナミちゃんは…あいつらの憂さ晴らしにされたの……!殴られて蹴られて……」
セナは涙目で言う。ナルヤは、自分がひっそり考察していたことがほぼ合っていたことに気が付く。ナナミとセナは仲が良かった。しかしそれ故に、メグミという者を筆頭としたいじめっ子集団に目を付けられていた。セナは市長の娘。メグミは特に、そのような大物の親友であったナナミに嫉妬したのだろう。まるで、小学生の悪ガキが考えそうな浅はかな理由であるが、それこそ事実であり真実なのだろう。
「…お前は、あいつらから護ってたんだな。親友であるナナミを。」
「…うん。そして、私たちは約束してたの。」
セナはそのまま歩き始め、部屋に入っていく。その時、セナの足場が崩れてしまう。
「あ…!」
「セナちゃ…!」

パシッ…

手を差し伸べたナナミ。しかし、それだと二人もろとも落ちてしまう。
「言っただろ?」
だから、彼も手を差し伸べた。セナの手を掴み、ナナミと一緒にセナを持ち上げる。
「…俺は関係無くないってさ。」
「マイナスくん……」
「…こんときはナルヤで良いよ。」
二人の間に絆を感じる。そして三人は、笑顔を見せつけ合う。
「…んで、その約束ってなんぞや。」
「うん、ナナミちゃん。」
「…うん。」
二人は一緒に、不自然に空いている壁の穴に手を入れる。取り出したのは、折り紙のお花二つだった。
「…懐かしいね。私が動けなかったときに、一緒に折り紙をしてたよね。」
「…うん、ほら、まだ後ろに名前がある。」
二人は、二つのお花の折り紙を見て思い出に浸る。そしてセナは、マイナスの方へ涙目で振り向く。その涙は、悲しみとは逆の感情で溢れた、希望の涙であった。
「ナルヤくん…ううん、マイナスくん……あなたに会えてよかった。」
「…おう、ありがとな。つーか、結局マイナスて。ナルヤでいいっつーの。」
「だって、まだやることあるもんね。マイナスって呼ばせてもらうよ?」
希望が笑顔で微笑み、英雄はため息をついて笑い返す。
「…そーだな。確かにな!」
するとその瞬間、マイナスとセナの手に光が溢れる。
「な、何⁉」
「これは…うっし!原理分かんねぇけど…行かなきゃな。…お前らはここにいろ!また足場が崩れても知らんぞマジで!」
「え⁉ナルヤさん!何処に…」
「良いの、ナナミちゃん。……私たちは、これからも親友だよ。」
セナは手元から溢れる淡い光の源を見せる。
「あ…これって…うん、これからも親友だよ。セナちゃん。」

廃病院庭
「一体どうす……れば斬っても斬ってもキリがない…」
「いわゆるごり押しをされているって訳だ…小癪な…」
ジャアクロイドの数は、見える数だけでも30以上。さらには、PIG QUEENの奴隷も加えて50以上。先程の戦いで飛ばし疲弊したダヌアと、一人ではどうすることもできない数で押されているクイップ。彼等は不利な状況に置かれていた。
「…仕方ない。もう一度魔改造を……!」
「それじゃ結局、返ってピンチになりますよ…」
二人はどうすることもできない状況だった。そこにジャアクロイドは、禍々しい短刀でエヌの後ろを突こうとする。
「ジャグッ⁉」
その時、ジャアクロイドは後ろから何かに切り裂かれる。
「え…?」
「…まさか……」
目の前に映ったのは、大きなハサミ。その先を目で辿ると、そこに居たのはかのジャアクカルマではなく、花の折り紙のような飾りを肩に付けた、ギアヒーローエヴォがいた。
「…やはり、あいつには…」
「えぇ、カルマギアの力を解放できる…!」
ベルトにセットされた黄金のギアは、希望の笑顔と描かれていた。それを見た彼等は、その戦いを見届けることにする。
「…何かよく分かんねぇけど、普通のギアより力が溢れ出る……」
敵を捕捉したジャアクロイド達は、マイナスに目掛けて襲撃を仕掛ける。
「…あらよっと。」
…が、エヴォのハサミが勢いよく敵を凪ぎ払い、圧倒する。
「よっし、やるか。」

「「さぁ!最高の負けイベントを始めちゃおう!」」

「ん?何か口調がおかしく…というか今、セナの声が…んー、まいっか!」
マイナスの溢れる力、その力はここにいる誰よりも強い。誰でも分かる程、例えそれが敵であっても。
「ひ、ひい!」
「ジャグ…ジャグジャグ!」
「逃げんか?逃げんだったら……」

「「結構マジでやっちゃうよ!!」」

音速の速さでハサミは敵を切り裂く。弱気で逃げる者は切り裂かれ、強気に突っ込んでくる者は回し蹴りとストレートパンチで吹き飛ばされる。
「あと100体…」
切り裂く。
「あと63…」
殴る。
「あと…40!これなら必殺で消し飛ばせる数!」
[必殺!]
[カルマ!]
「行くぜ!セナ!ナナミ!」
エヴォはハサミで敵を捉える。そして高く飛び上がり、蹴りを放つ。
「「はぁぁぁぁぁ!!!」」
[セナ!エヴォストライクフィニッシュ!]

「「ジャクァァァ!!!???」」


辺り一面が静かになる。エヴォは変身を解き、マイナスとしての姿を見せる。
「…さて、エヌ!」「…はい?」「セナ達を家に帰らせてちょ。こいつこのギアについて色々話したいんだけど、まずはブラックの看病…って何でそんなボロボロなん……?いくらなんでも…ん?なんか黒い霧が…」
「…それも、後で説明してやる。くッ…すまないが、ネストに電話してくれ。」
そう言ってダヌアは、黒い不思議なスマホをエヴォに手渡す。
「あ、おう…ナニコレ。」

夕方
「ッあぁー!やっぱコーラのメロン割はうめぇ!」
あのあと三人は、それぞれ欲しいジュース(ナルヤの自腹)を買った。両手でごくごくコップのオレンジを飲むナオタ、缶ジュースのコンポタを飲むナグラ、コップでコーラとメロン7:3割で飲むマイナスの姿があった。
「そんな酒のように…あ、そういえばそのギアの話なんですけど……」
「おん、これって何なの?」
すると、ブラックとエヌは少し暗い顔で俯く。
「…えっと、話せば長くなるんですけど……大雑把な説明と長い説明なら、どっち取ります?」
「んあ?そやなぁ、長い方かな。全然これについて知らんし。」
「そうか…俺はもう知らんぞ。寝させてもらう。」
ブラックはコンポタを綺麗に飲みきり、ポケットに手を入れて部屋を去ろうとする。
「缶は頼んだぞ。」
「…あ、じゃあ僕も…そろそろ来ますから・・・・・……」
ナオタも部屋を去り、そそくさと消えてしまう。
「は?来るって…」
二人が消えた矢先、バンッ!!っと大きな音をたててドアが開く。
「君ぃ!!」
「ぬぇ⁉お前は…インゲン博士!!」
「イチゲンだッ⁉」
白衣を着た天パの男、イチゲン・カガク。彼を覚えている人はいるのだろうか。そう、ナルヤにカプサイシン(辛味成分そのもの)の粉末をぶっかけられた者である。
「え?イチゲン…?あ、そうだそうだ!バ化学者の!!」
「ちがぁぁう!!!」
「うっさ。」
「ふぇぇ?」
イチゲンは急な手のひら返しに首を傾げてしまう。
「あ、そうじゃなくて…君ぃ君ぃ!聴いたぞ?ギアを知りたいとなぁ!それも、じっくりコトコトと…」
「コンポタか。」
「ビキニパンツ一丁の盗賊。」
「それはカンダタ。」
「ポリゴン奥義!」
「それはランパダ。つーか知ってる人いるのかよ。」
「ふむ気に入った。」
「…はぁ?」

研究室 (元空き部屋) 
元空き部屋だったものは、怪しい薬や液体の入ったフラスコに囲まれていた。紫、黄色、ピンク…日常において普通見ることのない色が部屋を照らしていた。
「おぉ、すげぇ…俺の家なのに。」
「そういえば親族の方達はどうしてるのかい?」
「あぁ、別居中よ。ここは俺の元じいちゃんの家。」
さっきまでのガタガタな会話から、身内の話ができるほどの仲になったナルヤとイチゲン。そこでナルヤは、単刀直入に質問を投げかける。
「あのさぁ、このギアの生物って何なの?んでもって、この謎のギアは?」
「そうだのぅ…」
「さっきから思ってんだけどキャラ定まってなくね?」
「うるさい。」
そうしてイチゲンは咳払いをし、話を始める。ナルヤは、限られた小さな壁に寄りかかり、軽くイチゲンに顔を向ける。
「まずは、ギアについて話そうか。お主らが使っているこの生物のギア、実はカルマギアのいわゆる試作品。真のカルマギアの能力はそう、それだ。」
イチゲンはセナのギアに指を指す。
「これ?」
「カルマギアというのは言わば、絆の証明。及び、戦う宿命を共に背負った仲間。その仲間の力を存分に扱えるようになるというのがこれだ。因みに、このプロトカルマギアの生物は、私が直々にデータを取り作った代物。」
「へぇ、なるほど。んじゃ、ありが」
「おぉっとまだ帰さん。まだ話すことはある。…このカルマギアはその仲間の力を扱える。これに関しては、あのハサミムシのジャアクギアを扱っていた。そして、壊れず彼女の力となった。それが具現化したのがこのギア。」
「は、はぁ…?」
知りたいことはもう知ったナルヤだったが、腕をがっちり掴まれ部屋に連れ戻される。
「君のトランスギアは」
「お主じゃなくて?」
「だまれ。」
「なんだと。」
「まぁ良いだろう、お主のトランスギアは新しいタイプだが、彼らのトランスギアは比較的古い。クイップの能力はカルマギア内のデータの武器化。ダヌアの能力はカルマギア内のデータでの遺伝子改造。そして君は…バランスタイプだ。」
まさかのセナのギアと話が関係ない、トランスギアの話に変わり、ナルヤは思わず⁉と思ってしまう。
「……は?いやそこは仲間の力を誰よりも解放できるとかじゃなくて⁉やっぱり何か最初の話と脱線してない⁉」
「エヴォはバランスタイプ、それは、捉えようでは万能と言う。お主はそれに選ばれた。」
「いやだから脱線して」
「ノーワードを倒すことこそ彼らの望みであるのだ。」
「いやだからさ」
「君はそれに選ばれたのだ!!!世界を救えるのはお主だけ!!!!」
「あの」
「このままでは世界は闇に葬られる!!!!!!」
「あー…もうだから」
「も一度言う!!!!世界を救えるのはお主であり君である!!!!!!!!!」
「おい」
「私たちと一緒に……世界を救おう!!!!!!!!!!!!!!」
「てめ」
「ところでわしの事はご存じかなこれ名刺。イチゲン・カガクであり天才の天災と恐れられたさいっこうの化学者ぁ!陰ながら君たちをサポートする…天ッ才だぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「うるッッッッッッッせえぇぇぇぇぇぇぇぇぇああああああああああああああああああああああああああ」
「「うるッさいッ!!!!」」
数秒程の間が空く。
「「…ごめんなさい…….」」
パジャマに着替えていたナオタに怒られた二人だった。
この後ナルヤは、度重なる疲れですぐ寝てしまったそうな。

次回ギア11、臨時休業、やること決まってるってよ。

おまけ
謎の場所
「…残りの友情ギアは3つか…フェハハハ……この我輩を楽しませろ……ギアヒーローエヴォ……フェ、フェフェフェ……フェハハハハハハ!!!アヒャァァアヒャッヒャッヒャ!!!!」
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