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第二章、〘飛び交う依頼〙
ギア9、正義の代償は失う事
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…ここは?
…俺は、一体どうしたんだ?
「マイナスくん...あなたに会えてよかった。」
「共に行こうぞ…マイナス殿!我らが目指し泰平の世の為…いざ参らん!!」
「マイナスとなら、かっけぇ雄叫びを上げられそうだ…!俺の獅子が……疼くぜ…!」
「マイナス先輩…もしも何かあったら、絶ッ対に私を頼ってね♪約束だよ♪破ったらぶん殴る♪」
「僕は……英雄様の盾となる!!もしマイナス様にかすり傷を負わせたいものがいるのなら...まずは僕を殺してみよ!!!」
...この夢は?というか、この人たちは?
「なんだその形態は⁉私のデータにそんなものは...」
「父...さん....?」
「...」
...というかこれ、夢なのか?
……あれは…俺なのか?
「...もう、ほっといてくれ。今までの事なんか全部無駄なんだよ。」
...え……何...言って.....
「これがお前たちの結末だ。そして、我が望んだ結末だ。」
...こいつ…は…?結...末.....?
「...ケハハハ....アヒャヒャ....もう、終わりだぁ!!みーんな滅べぇ!!!」
...こい...つ....は.....
「お前はもう....」
友 じ ゃ な い 。
...
「...さん....父さん!」
深い眠りについていたナルヤは、誰かに呼ばれた瞬間に目が覚める。
「...ここは...つっ?!...いてて....」
痛みに目覚めたここは、自分の部屋だった。その部屋には、今にも泣きそうな面でたたずんでいるナナミ、ジャアクギアを見つめているセナ、ボロボロの体で静かに手元においたトランスギアを手入れするナグラの姿があった。
「...目覚めたか。」
「あ、うぃっす…あれ、なんでハサミ野郎が...」
「...フジハラ セナです。」
セナは口を開き、自らの名を名乗る。
「...ナルヤ君、ごめんなさい。私は....」
「おい貴様、ごめんなさいで許せるとでも思うか?」
急に割り込んできたナグラは、きつい口調で責めの言葉を吐く。全員は彼の言葉に少し驚きの表情を見せる。
「大体、お前は考えが浅はかだ。何が作品が悲しんでいるだ?悪いが、貴様は先程言った通り、そのいじめてきたとかいうやつと一緒だ。ナオタのような優しい奴ならお前のことを、半壊した学校内の生徒を守ってくれたり、ナルヤを間一髪で助けてくれたっていう理由があるだけで、もういいよ。もうしないでねと、甘ったれた事を言うかもしれないが、俺は思わない。もし作品が本当に生きてるなら、貴様は大量殺人犯だ。負傷者がいなくても、お前の理論なら死人は大勢だぞ?お前には、そういう考えが無いのか⁉」
「ナグラ!もうやめてください!!」
ナオタはナグラとセナの距離を離し、彼の圧迫した説教を遮る。しかしセナは涙目になりつつも首を振り、腕の変身バックルを抑える。
「...ううん、良いのナオタくん。その通りだから。だから、お願い。私のギアを壊して。」
セナはジャアクギアを取り出す。
「なら、外に行こう。ここで変身されては困る。」
「え?別に今壊せば良いんじゃ?」
「...ジャアクギアは、使用されてない間は破壊不可能の代物だ。使用している間なら、エネルギー供給の関係で無防備になる。」
ナルヤはその言葉を聞いて「…分かった」と頷き、セナの方に視線を向ける。
「....うっし、それなら、さっさと済ませよう。」
庭
「...じゃあ、その場から動くなよー。」
「...はい。」
全員はナルヤの家の庭に集まり、エヴォとなったマイナスはセットされたジャアクヒゲジロハサミムシのギアを破壊する準備を整える。
「...よっと!」
早速エヴォはジャアクギアを手刀で叩き、その瞬間ジャアクギアは砂のように粉々になり破壊される。
「...ナナミちゃん、これから私、どうしたらいいかな....?」
「....もう、何もしなくていいよ....」
変身が解けたセナは涙を拭い、二人は抱き合い、涙を流し合う。
「....ナグラ...?」
「...俺は....また人を傷付けたのか....」
「...」
部屋
「...お前らはさ、あの半壊した学校見てどう思ったよ。」
「...トラウマを見ている様でした。」
「お前は?」
「...ノーワードを許さないと思ったな。」
それぞれの意見を聞き、ナルヤはある結論を出す。
「...俺、さっきのあいつらと、お前らを見て思ったよ。正義って、何かを失う事を覚悟しなきゃいけないってさ。」
「...」
全員は黙ってしまう。ナグラは重い空気を耐え、口を開く。
「...ナルヤ、先に言っておく。...俺は、奴らのせいで失える物を全て失った。だから俺は戦うんだ。失う事が怖いから下がるのではなく、失う事が嫌だから戦うのだ。」
「...あぁ。勉強になるよ。」
その時三人は、慌ただしい足音がこちらに向かってくることに気が付く。
「…皆様、大変です!!セナ様が...暴走したとの情報が!!」
「セナが⁉」
「まさか...まだあいつらは遠いところへはいないはずだ!ネスト!それは何処だ!」
ネストは急いでパソコンの画面を三人に見せる。そこに映っていたのは、セナと思われるジャアクヒゲジロハサミムシと、無理矢理担がれて連れていかれているナナミの姿だった。その画面の右上には、あるポイントが付けられたマップがあった。
「これは...病院?」
「あ、ここだ!ここだよ!さっきナナミがセナに連れ去られた場所!」
そう、このマップのポイントが示していたのは、あの廃病院だった。
「...ならば、話は速いな!マイナス!案内しろ!」
「おうっす!とっとと行こう!」
移動中
三人はギアヒーローに変身し、現場へ急行していた。そして誰しもが思うだろう。何故セナはジャアクカルマになっているのだろうかと。ナルヤはたずねる。
「というか、なんであいつが暴走してんだよ!?俺がしっかーりと責任をもってしっかーりと破壊したはずなんですけど!?」
「それはノーワードの仕業です!ノーワードの能力はまだしっかり判明していませんが、おそらく対象の力を暴走させる力です!」
「そして、ここまで大胆かつその能力を少し使えるのは...あのPIG QUEENだけだ!」
エヴォはPIG QUEENという名前を聞いてもピンと来なかった。何となく、豚の姫様感漂うドレス姿の人を思い浮かべる。
「えっと…!多分父さんの想像は合ってませんよ!と・に・か・くッ!!父さんはセナさんを止めてください!僕はナナミさんを救出します!ブラックはPIG QUEENの相手を!」
「あいあいさー!」
「…任せろ。」
三人はそれぞれ狙い目を定め、現場へとたどり着く。
桐崎廃病院
「あそこに....あそこに行かなきゃ....!」
「セナちゃん離して!なんで敵なんかと協力するの⁉」
ジャアクヒゲジロハサミムシと化していたセナは、ナナミの言葉を完全無視し、廃病院内へ進んでいく。ナナミはセナに担がれ、手足をジタバタさせセナを止めようと言葉を発する。
「叫んでも無駄よ。この子には絶対的な意思がある。止めるなら、力で解決してみなさい?まぁ無理でしょうね?貴女には、肝心な力が無「うるッさい!このクソババアッー!!」
ナナミはドでかい声で、PIG QUEENにババアと全力で叫ぶ。
「ババッ....⁉」
「何その格好⁉可愛いと思ってるの⁉バニーガール⁉てめーみたいなミニマムチッカス脳を巡回する血液の成分が尿素90%のようなババアに似合うわけないでしょ⁉このババアの面汚しの面汚しの汚物の面汚しが!!!!!」
ナナミはセナが利用されていたという事実の怒りに身を任せ、清楚だったあのイメージを全て消し飛ばすほどの豹変っぷりを見せつける。PIG QUEENは頭に血を昇らせ、拳でぶん殴ろうとする。
「この....クソガキィィィ!!!!」
[GEAR HERO DANUA... THE HENSHIN.]
「はぁぁぁぁ!!!」
そこに突如現れたダヌアは、PIG QUEENの背後を蹴り飛ばし、ナナミに攻撃が当たるのを防ぐ。
「痛ぁい⁉」
PIG QUEENを吹っ飛ばしたダヌアは、怒りのオーラを完全発揮する。溢れ出る復讐心を燃やし、PIG QUEENを殺さんとばかりに殺気をぶつける。
「PIG QUEENッ!!あの時を忘れたとは言わせない...貴様に聞きたいことが山ほどある!!…我が戦友の為の!!生け贄となれーッ!!!」
[其ノ壱][其ノ弐][其ノ参]
[ダーク・ネクサス・アビリティ。[ヒガシゴリラ][キョクトウサソリ][サーベルタイガー]遺伝子、魔改造。]
「....あっそ。まぁあたしは忘れたけどね!!あたしの生け贄となるのは…あんたの方よッ!!」
その隙にセナはナナミを連れ去り、廃病院へと構わず進む。
廃病院内部
「なんで私を連れ去るの⁉セナちゃんは何がしたいの⁉」
「うぅ...私は....私たちは...に行かなきゃ....!」
「行かなきゃいけない場所って....もしかしてセナちゃん....覚えて...⁉」
その瞬間セナは何かに気づき、ナナミを離し、ハサミを後方へと突き出す。
「ハァァァ!」
[GOOD!WEAPON UP!][ダイオウイカロープ!][オオセンザンコウシールド!]
「ウゥッ⁉」
クイップはハサミをシールドで防ぎ、火花を散らして下へすり抜けつつ、ロープでナナミを巻き付けこちらに引き寄せる。
「ナナミさん!こっちへ!」
「え⁉あ、うん!」
クイップはそのまま、ナナミを誘導してその場から離れる。
「待って...!ナナミちゃん...!」
「いや、待つのはお前だ。セナ。」
エヴォはセナを呼び止める。セナは一瞬足を止めたが、構わずナナミたちを追いかけようとする。
「もしかして…暴走してんのか?明らかに目がおかしい…---セナ!!お前らはこの病院で何があったんだよ...?それを教えてくれないと色々困る...」
「貴方には関係無い!」
「くっせぇ台詞吐いて行こうとすんじゃねぇよ!!!」
エヴォは大声で叫ぶ。流石のセナも完全に足を止めてしまい、震える。
「...関係無くねぇんだよなぁこれが。まぁそれでも言いたくねぇなら、無理矢理話してもらう。さぁ、最高の負けイベントを始めようか!!」
廃病院庭
「グッ...!」
「弱いわねぇ?そんなんで、私に勝てると思ったの?」
立派な牙と大きな腕、禍々しい尻尾を生やしたダヌアは、PIG QUEENに苦戦を強いられていた。
「さっさと降参しなさい?面倒臭いのよ本当。」
「降参...?誰がするか....貴様のような裏切り者の言うことなんぞ.....誰も相手にするか!!!」
「へぇ?あの頃は私の言うことよーく聞いてくれたのに、随分と偉そうに成長したわね?盲目のあたしの為に、色々してくれたのにねぇ⁉」
「黙れ!!!あの頃のように...自分を殺すのはごめんだ!!!」
この二人の因縁は、謎ではあるが確実に深かった。常にポケットに突っ込んでいるようなブラックの手が、怒りに満ち溢れ動きを止めない。
「俺は...貴様を殺す!!!」
[必殺ノ刻。]
ダヌアは両サイドの持ち手を押し込み、左サイドのスイッチを押す。
[[ヒガシゴリラ][キョクトウサソリ][サーベルタイガー]遺伝子、大暴走!]
ベルトの画面から突如溢れた、謎の赤黒いオーラがダヌアを染める。
「貴様が殺した我が戦友達ッ!!!無念を背負った者達へのせめてもの情けをッ!!!貴様で払わさせてもらうッ!!!」
「だから...忘れたって言ってるじゃない!!!この雑魚がーッ!!!!」
廃病院内部
「お前!あぶねっ!てかお前!なんでジャアクギア持ってんだよ!おっとと!そんでなんで使った!」
「うるさい!貴方には関係無いって…!!」
エヴォは壁を利用し、アクロバティックな動きでハサミを避ける。
「だからッ!!...関係無くねぇよ....!お前....なんでこの廃病院に執着してんだ....!」
「...ここは...私とナナミちゃんが出会った場所なの!!でも、院長が失踪して...ここを誰も引き継げなくて...」
セナは避け続けるエヴォに攻撃が当たらず、疲れ果てて攻撃を止めてしまう。エヴォは警戒を怠らず、セナの言葉を整理する。だとしたら、何故この病院は撤去されないのか。そして、ここまで荒れているのは何故か。
「...待てよ。もしかして、ここを撤去されないようにしたのは....」
「...私。」
セナは狂っていた目が元に戻り、俯いてしまう。
「...この病院は私のパパ、フジハラ マコトの土地なの。私が無理矢理頼んで、残してもらった...」
「セナ...」
「...」
「...お前市長の娘さんなの⁉」
「そこぉ⁉」
セナは思わず突っ込んでしまう。
「というかナルヤくん知らなかったの⁉」
「知らんよ興味無いし!というかこの姿してるときは本名じゃなくてマイナスって呼んで?またはエヴォな?」
「え?あぁ、うん....」
辺り一面静かになる。聴こえるのは外からの雄叫びだけだった。そこに、クイップとナナミがスッと話しかける。
「...あのー、父さん?これはどういう...?」
「え?」
「えっと、さっきまで二人とも、戦ってたよね....?」
セナとエヴォはゆっくり顔を合わせ、しばらく見つめ合う。
「...え?」
「.....えぇ?」
廃病院庭
「ダァァ!!!」
「くぅ⁉もう!いい加減に...!」
「俺に加減はない.....貴様を殺すことに加減なんぞ...あ⁉がぁぁぁぁ⁉」
「...あら?」
ダヌアは突如、まるで体が切り裂かれるような感覚に蝕まれる。そして、それぞれの強化された生物のパーツが消滅する。
「...クソ....!もう...体の限界が.....!」
「...なぁるほど?さっきの技は時間制限付きってことね♪フフフ♪…手こずらせやがって。」
PIG QUEENはダヌアの首を鷲掴みにする。
「グッ...俺は....まだ....」
「…無駄な足掻きもここまで。終わりね。」
…死になさい。
次回ギア10、宿命は力、目覚める絆。
おまけ
「俺が今日使った技、[遺伝子大暴走]についての話をしよう。この技はその名の通り、俺に組み込まれた遺伝子を暴走させ、一時的に自己強化するといった物だ。ただし、この技は大体一分程度しか維持できない。そして、暴走の限界を迎えた遺伝子は消滅し、その遺伝子で作られた生物のパーツが消えてしまうのが欠点だ。さて...次回俺はどうなるのか....そして、この後の展開はどうなるのか。見物だな。」
…俺は、一体どうしたんだ?
「マイナスくん...あなたに会えてよかった。」
「共に行こうぞ…マイナス殿!我らが目指し泰平の世の為…いざ参らん!!」
「マイナスとなら、かっけぇ雄叫びを上げられそうだ…!俺の獅子が……疼くぜ…!」
「マイナス先輩…もしも何かあったら、絶ッ対に私を頼ってね♪約束だよ♪破ったらぶん殴る♪」
「僕は……英雄様の盾となる!!もしマイナス様にかすり傷を負わせたいものがいるのなら...まずは僕を殺してみよ!!!」
...この夢は?というか、この人たちは?
「なんだその形態は⁉私のデータにそんなものは...」
「父...さん....?」
「...」
...というかこれ、夢なのか?
……あれは…俺なのか?
「...もう、ほっといてくれ。今までの事なんか全部無駄なんだよ。」
...え……何...言って.....
「これがお前たちの結末だ。そして、我が望んだ結末だ。」
...こいつ…は…?結...末.....?
「...ケハハハ....アヒャヒャ....もう、終わりだぁ!!みーんな滅べぇ!!!」
...こい...つ....は.....
「お前はもう....」
友 じ ゃ な い 。
...
「...さん....父さん!」
深い眠りについていたナルヤは、誰かに呼ばれた瞬間に目が覚める。
「...ここは...つっ?!...いてて....」
痛みに目覚めたここは、自分の部屋だった。その部屋には、今にも泣きそうな面でたたずんでいるナナミ、ジャアクギアを見つめているセナ、ボロボロの体で静かに手元においたトランスギアを手入れするナグラの姿があった。
「...目覚めたか。」
「あ、うぃっす…あれ、なんでハサミ野郎が...」
「...フジハラ セナです。」
セナは口を開き、自らの名を名乗る。
「...ナルヤ君、ごめんなさい。私は....」
「おい貴様、ごめんなさいで許せるとでも思うか?」
急に割り込んできたナグラは、きつい口調で責めの言葉を吐く。全員は彼の言葉に少し驚きの表情を見せる。
「大体、お前は考えが浅はかだ。何が作品が悲しんでいるだ?悪いが、貴様は先程言った通り、そのいじめてきたとかいうやつと一緒だ。ナオタのような優しい奴ならお前のことを、半壊した学校内の生徒を守ってくれたり、ナルヤを間一髪で助けてくれたっていう理由があるだけで、もういいよ。もうしないでねと、甘ったれた事を言うかもしれないが、俺は思わない。もし作品が本当に生きてるなら、貴様は大量殺人犯だ。負傷者がいなくても、お前の理論なら死人は大勢だぞ?お前には、そういう考えが無いのか⁉」
「ナグラ!もうやめてください!!」
ナオタはナグラとセナの距離を離し、彼の圧迫した説教を遮る。しかしセナは涙目になりつつも首を振り、腕の変身バックルを抑える。
「...ううん、良いのナオタくん。その通りだから。だから、お願い。私のギアを壊して。」
セナはジャアクギアを取り出す。
「なら、外に行こう。ここで変身されては困る。」
「え?別に今壊せば良いんじゃ?」
「...ジャアクギアは、使用されてない間は破壊不可能の代物だ。使用している間なら、エネルギー供給の関係で無防備になる。」
ナルヤはその言葉を聞いて「…分かった」と頷き、セナの方に視線を向ける。
「....うっし、それなら、さっさと済ませよう。」
庭
「...じゃあ、その場から動くなよー。」
「...はい。」
全員はナルヤの家の庭に集まり、エヴォとなったマイナスはセットされたジャアクヒゲジロハサミムシのギアを破壊する準備を整える。
「...よっと!」
早速エヴォはジャアクギアを手刀で叩き、その瞬間ジャアクギアは砂のように粉々になり破壊される。
「...ナナミちゃん、これから私、どうしたらいいかな....?」
「....もう、何もしなくていいよ....」
変身が解けたセナは涙を拭い、二人は抱き合い、涙を流し合う。
「....ナグラ...?」
「...俺は....また人を傷付けたのか....」
「...」
部屋
「...お前らはさ、あの半壊した学校見てどう思ったよ。」
「...トラウマを見ている様でした。」
「お前は?」
「...ノーワードを許さないと思ったな。」
それぞれの意見を聞き、ナルヤはある結論を出す。
「...俺、さっきのあいつらと、お前らを見て思ったよ。正義って、何かを失う事を覚悟しなきゃいけないってさ。」
「...」
全員は黙ってしまう。ナグラは重い空気を耐え、口を開く。
「...ナルヤ、先に言っておく。...俺は、奴らのせいで失える物を全て失った。だから俺は戦うんだ。失う事が怖いから下がるのではなく、失う事が嫌だから戦うのだ。」
「...あぁ。勉強になるよ。」
その時三人は、慌ただしい足音がこちらに向かってくることに気が付く。
「…皆様、大変です!!セナ様が...暴走したとの情報が!!」
「セナが⁉」
「まさか...まだあいつらは遠いところへはいないはずだ!ネスト!それは何処だ!」
ネストは急いでパソコンの画面を三人に見せる。そこに映っていたのは、セナと思われるジャアクヒゲジロハサミムシと、無理矢理担がれて連れていかれているナナミの姿だった。その画面の右上には、あるポイントが付けられたマップがあった。
「これは...病院?」
「あ、ここだ!ここだよ!さっきナナミがセナに連れ去られた場所!」
そう、このマップのポイントが示していたのは、あの廃病院だった。
「...ならば、話は速いな!マイナス!案内しろ!」
「おうっす!とっとと行こう!」
移動中
三人はギアヒーローに変身し、現場へ急行していた。そして誰しもが思うだろう。何故セナはジャアクカルマになっているのだろうかと。ナルヤはたずねる。
「というか、なんであいつが暴走してんだよ!?俺がしっかーりと責任をもってしっかーりと破壊したはずなんですけど!?」
「それはノーワードの仕業です!ノーワードの能力はまだしっかり判明していませんが、おそらく対象の力を暴走させる力です!」
「そして、ここまで大胆かつその能力を少し使えるのは...あのPIG QUEENだけだ!」
エヴォはPIG QUEENという名前を聞いてもピンと来なかった。何となく、豚の姫様感漂うドレス姿の人を思い浮かべる。
「えっと…!多分父さんの想像は合ってませんよ!と・に・か・くッ!!父さんはセナさんを止めてください!僕はナナミさんを救出します!ブラックはPIG QUEENの相手を!」
「あいあいさー!」
「…任せろ。」
三人はそれぞれ狙い目を定め、現場へとたどり着く。
桐崎廃病院
「あそこに....あそこに行かなきゃ....!」
「セナちゃん離して!なんで敵なんかと協力するの⁉」
ジャアクヒゲジロハサミムシと化していたセナは、ナナミの言葉を完全無視し、廃病院内へ進んでいく。ナナミはセナに担がれ、手足をジタバタさせセナを止めようと言葉を発する。
「叫んでも無駄よ。この子には絶対的な意思がある。止めるなら、力で解決してみなさい?まぁ無理でしょうね?貴女には、肝心な力が無「うるッさい!このクソババアッー!!」
ナナミはドでかい声で、PIG QUEENにババアと全力で叫ぶ。
「ババッ....⁉」
「何その格好⁉可愛いと思ってるの⁉バニーガール⁉てめーみたいなミニマムチッカス脳を巡回する血液の成分が尿素90%のようなババアに似合うわけないでしょ⁉このババアの面汚しの面汚しの汚物の面汚しが!!!!!」
ナナミはセナが利用されていたという事実の怒りに身を任せ、清楚だったあのイメージを全て消し飛ばすほどの豹変っぷりを見せつける。PIG QUEENは頭に血を昇らせ、拳でぶん殴ろうとする。
「この....クソガキィィィ!!!!」
[GEAR HERO DANUA... THE HENSHIN.]
「はぁぁぁぁ!!!」
そこに突如現れたダヌアは、PIG QUEENの背後を蹴り飛ばし、ナナミに攻撃が当たるのを防ぐ。
「痛ぁい⁉」
PIG QUEENを吹っ飛ばしたダヌアは、怒りのオーラを完全発揮する。溢れ出る復讐心を燃やし、PIG QUEENを殺さんとばかりに殺気をぶつける。
「PIG QUEENッ!!あの時を忘れたとは言わせない...貴様に聞きたいことが山ほどある!!…我が戦友の為の!!生け贄となれーッ!!!」
[其ノ壱][其ノ弐][其ノ参]
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「....あっそ。まぁあたしは忘れたけどね!!あたしの生け贄となるのは…あんたの方よッ!!」
その隙にセナはナナミを連れ去り、廃病院へと構わず進む。
廃病院内部
「なんで私を連れ去るの⁉セナちゃんは何がしたいの⁉」
「うぅ...私は....私たちは...に行かなきゃ....!」
「行かなきゃいけない場所って....もしかしてセナちゃん....覚えて...⁉」
その瞬間セナは何かに気づき、ナナミを離し、ハサミを後方へと突き出す。
「ハァァァ!」
[GOOD!WEAPON UP!][ダイオウイカロープ!][オオセンザンコウシールド!]
「ウゥッ⁉」
クイップはハサミをシールドで防ぎ、火花を散らして下へすり抜けつつ、ロープでナナミを巻き付けこちらに引き寄せる。
「ナナミさん!こっちへ!」
「え⁉あ、うん!」
クイップはそのまま、ナナミを誘導してその場から離れる。
「待って...!ナナミちゃん...!」
「いや、待つのはお前だ。セナ。」
エヴォはセナを呼び止める。セナは一瞬足を止めたが、構わずナナミたちを追いかけようとする。
「もしかして…暴走してんのか?明らかに目がおかしい…---セナ!!お前らはこの病院で何があったんだよ...?それを教えてくれないと色々困る...」
「貴方には関係無い!」
「くっせぇ台詞吐いて行こうとすんじゃねぇよ!!!」
エヴォは大声で叫ぶ。流石のセナも完全に足を止めてしまい、震える。
「...関係無くねぇんだよなぁこれが。まぁそれでも言いたくねぇなら、無理矢理話してもらう。さぁ、最高の負けイベントを始めようか!!」
廃病院庭
「グッ...!」
「弱いわねぇ?そんなんで、私に勝てると思ったの?」
立派な牙と大きな腕、禍々しい尻尾を生やしたダヌアは、PIG QUEENに苦戦を強いられていた。
「さっさと降参しなさい?面倒臭いのよ本当。」
「降参...?誰がするか....貴様のような裏切り者の言うことなんぞ.....誰も相手にするか!!!」
「へぇ?あの頃は私の言うことよーく聞いてくれたのに、随分と偉そうに成長したわね?盲目のあたしの為に、色々してくれたのにねぇ⁉」
「黙れ!!!あの頃のように...自分を殺すのはごめんだ!!!」
この二人の因縁は、謎ではあるが確実に深かった。常にポケットに突っ込んでいるようなブラックの手が、怒りに満ち溢れ動きを止めない。
「俺は...貴様を殺す!!!」
[必殺ノ刻。]
ダヌアは両サイドの持ち手を押し込み、左サイドのスイッチを押す。
[[ヒガシゴリラ][キョクトウサソリ][サーベルタイガー]遺伝子、大暴走!]
ベルトの画面から突如溢れた、謎の赤黒いオーラがダヌアを染める。
「貴様が殺した我が戦友達ッ!!!無念を背負った者達へのせめてもの情けをッ!!!貴様で払わさせてもらうッ!!!」
「だから...忘れたって言ってるじゃない!!!この雑魚がーッ!!!!」
廃病院内部
「お前!あぶねっ!てかお前!なんでジャアクギア持ってんだよ!おっとと!そんでなんで使った!」
「うるさい!貴方には関係無いって…!!」
エヴォは壁を利用し、アクロバティックな動きでハサミを避ける。
「だからッ!!...関係無くねぇよ....!お前....なんでこの廃病院に執着してんだ....!」
「...ここは...私とナナミちゃんが出会った場所なの!!でも、院長が失踪して...ここを誰も引き継げなくて...」
セナは避け続けるエヴォに攻撃が当たらず、疲れ果てて攻撃を止めてしまう。エヴォは警戒を怠らず、セナの言葉を整理する。だとしたら、何故この病院は撤去されないのか。そして、ここまで荒れているのは何故か。
「...待てよ。もしかして、ここを撤去されないようにしたのは....」
「...私。」
セナは狂っていた目が元に戻り、俯いてしまう。
「...この病院は私のパパ、フジハラ マコトの土地なの。私が無理矢理頼んで、残してもらった...」
「セナ...」
「...」
「...お前市長の娘さんなの⁉」
「そこぉ⁉」
セナは思わず突っ込んでしまう。
「というかナルヤくん知らなかったの⁉」
「知らんよ興味無いし!というかこの姿してるときは本名じゃなくてマイナスって呼んで?またはエヴォな?」
「え?あぁ、うん....」
辺り一面静かになる。聴こえるのは外からの雄叫びだけだった。そこに、クイップとナナミがスッと話しかける。
「...あのー、父さん?これはどういう...?」
「え?」
「えっと、さっきまで二人とも、戦ってたよね....?」
セナとエヴォはゆっくり顔を合わせ、しばらく見つめ合う。
「...え?」
「.....えぇ?」
廃病院庭
「ダァァ!!!」
「くぅ⁉もう!いい加減に...!」
「俺に加減はない.....貴様を殺すことに加減なんぞ...あ⁉がぁぁぁぁ⁉」
「...あら?」
ダヌアは突如、まるで体が切り裂かれるような感覚に蝕まれる。そして、それぞれの強化された生物のパーツが消滅する。
「...クソ....!もう...体の限界が.....!」
「...なぁるほど?さっきの技は時間制限付きってことね♪フフフ♪…手こずらせやがって。」
PIG QUEENはダヌアの首を鷲掴みにする。
「グッ...俺は....まだ....」
「…無駄な足掻きもここまで。終わりね。」
…死になさい。
次回ギア10、宿命は力、目覚める絆。
おまけ
「俺が今日使った技、[遺伝子大暴走]についての話をしよう。この技はその名の通り、俺に組み込まれた遺伝子を暴走させ、一時的に自己強化するといった物だ。ただし、この技は大体一分程度しか維持できない。そして、暴走の限界を迎えた遺伝子は消滅し、その遺伝子で作られた生物のパーツが消えてしまうのが欠点だ。さて...次回俺はどうなるのか....そして、この後の展開はどうなるのか。見物だな。」
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あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
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