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メルツェスの過去
しおりを挟む唐突に死んだことを理解して唐突に生きてることを理解した。
私、メルツェス・ヘルツィヒカは1歳の時、唐突にそんな経験をした。勿論、受け入れられなかった。とりあえず現状を理解するのに時間がかかった。
いつも双子のグナーデと遊んでいたのが1人でボーっとしている時間が増え、たまにブツブツと日本語を喋り出す私はさぞ不気味であっただろう。
そして理解して、やっぱり受け入れられなかった。私も前世では異世界転生する話とか読んでそれなりに楽しんでた人だけど、実際にそんなことになって即受け入れて転生先の人生謳歌しよう頑張ろうなんて思える人なんているの?
なんであんなまあいっかなんて思えるの?そんなにメンタル強いなら前世でもさぞ人生を楽しんでいたでしょうね。
私を沢山の楽しい旅につれて行ってくれた小説の主人公が急に自分とはかけ離れた存在に思えたのだった。
独身の独り身ではあったが、少ないながらも友達もいるし、実家には両親だって健在だ。しかも、住み慣れ親しんだ日本を離れて世界だって違うどうやっても親しい人の元へは帰れないかもしれない所に来てしまったなんて新たな生を与えられない方が幸せだったかもしれない。
ホームシックも相まって日本語を話すことを辞められなかった私はその当時周りを世話してくれていた人や、両親、兄達に気味悪がられ避けられるようになった。母上の身の上も相まって忌み子と影で呼ばれ続けることになってしまったのだ。
母の身の上、とは当然父上の妾だったがその立場に収まるまでにも色々なことがあった…らしい。私はその時まだ産まれていなかったから人伝に話を聞いただけなんだけど。
王妃であるプラハ様の出身国では当時、一人の女を権力者の男たちが取り合っていた。女は絶世の美女で男達はこぞって虜になったからだ。男尊女卑の考え方が強いその国ではいくら王族の血を引いてようが直系でない女では権力者の誘いは断れなかった。全ての誘いを断れない女は全ての誘いに乗ってしまい、それを気に入らなかった男達はこぞって女を責めた。女にはどうしようもないと言うのに……女は傾国の美女と謳われたが国が傾くよりも先に女の精神はいっぱいいっぱいになっていた。
そろそろ自殺も視野に入れ始めた頃従姉妹であり、隣国の王妃となっていたプラハ様から私の国に逃げないか?という誘いがあった。元々文通をしており、女は自分の近況や弱音など色々ことを相談していたのだ。もう心が限界だった女は結局その誘いに乗ってしまう。
ヘルツィヒカ王国にやってきた女は王の妾という立場を与えられた。これは、ヘルツィヒカ王国で二の舞にならないようにということだった。
これで事は片付くかと思ったが更に大きくなる。女のいた国は女を取り返そうと躍起になり戦争まで仕掛けてきた。正確に言えば暴走した権力者達が勝手にしたことであり、国の意思ではなかったのだが。王妃は可愛がっている女を手放す訳もなくそんな彼女が好きな王も戦争を開始してしまった。
散々女を取り合い、自国の諍いで損耗していた女の故国に快勝は出来たものの少しながらも犠牲者はおり、不要だった戦を起こしたその女は傾国の美女から厄災の美女と呼ばれるようになったのだった。
そう、そしてその女というのが私とグナーデの母だ。
私とグナーデが産まれたのは母上の妾という立場を磐石にする為のものでそういう意味でも私という存在は居てもいなくても、いや居ない方が寧ろ都合が良かっただろう。
だって私は忌み子だから。
私だって産まれてきたくなかった。
いや、今はそうは思っていない、グナーデがいるから。グナーデがいる限り私には生きる理由がある。
子供の頃、言語をいち早く理解して思考する能力を持った私はホームシックや母上の身の上のことで言われる中傷で頭のおかしかった私を受け入れてくれたのはグナーデだった。私が日本語を話す中、日本語を習得して話せるようになってくれたのだ。
私は嬉しかった、日常会話程度でも日本語で会話できるのが。私を避けずに受け入れてくれたことだ。子供ゆえの無邪気さとただの無知だということは分かっていたが、それでも他でもない自分の片割れが自分を認めてくれるのだ。これ以上心強いことは無かった。
グナーデのおかげで産まれてこなきゃ良かったのにと考える日が減った。
グナーデのおかげで自分はまだ生きてようと思えた。
グナーデは言葉を理解するくらいに成長すると私を謂れのない中傷から守ってくれ時間が経つごとに忌み子と言われることがなくなっていった。
きっと私はこの世界で心を完全に許せるのはグナーデだけなんだろう。今の私の心の中には彼に対して恋愛感情に似た粘着質な執着がある。腐女子全員がそうというわけではないが、腐女子特有の自分を乙女ゲームの主人公として見れないというような面倒くささを発揮し、恋愛感情にはなり得ていない。また、それを覆い隠すように腐女子を全面に押し出し、グナーデを好き勝手にしてしまっている。
グナーデの恋は応援している。グナーデには幸せになって欲しいと心から思っている。
でも、一方で振られてボロボロになった所をデロデロに甘やかして慰めてもう、立ち上がれなくなったとしても私がもう全部やってあげる。
私のモノになってよ。
そんな危うい感情もある。
確かにグナーデの恋が叶ってしまえば私の大好物のBLが完成するわけで萌えるのだが、自分の感情の置き場が分からない。
まあ、もう一生グナーデから離れる気は無いから精々お邪魔虫になろうと思っているんだけど。
グナーデとは一緒に居られるし、BLは見られるし、最高かもしれない。1回だけでいいから生でしてるとこ見させてもらえないかな……。
こんな女に執着されてしまってグナーデは本当に可哀想ね。可哀想で可哀想でとても可愛い。
二人で一対、それが双子だモノね。セットでいるべきよね。
あなたが怪我をしたら駆けつけるから、致命傷を負ったって助けるから……だから、一緒にいさせて。
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