3 / 26
第三話
しおりを挟む
「もう猫獣人に手を出すな」
グレイはそれだけ言うと冒険者ギルドを出ていった。少年はグレイに簡単な治癒魔術で頬の怪我を治してもらい、ルールーに手を引かれて行った。
「ファイアってたいしたことないんじゃね?」
「たしかに」
「ざまあねぇな」
周囲を見渡せば見下しながら、クスクスと僕を笑う冒険者達がいた。
これはまずい、かな。バカにされるのも、笑われるのもいい。でも、舐められるのはまずい。
でも、今日はこうするしかなかった。自分をそう納得させ、立ち上がる。
自分の先の心配なんかする前に、今は怪我をしているホンドンさんを心配するべきだ。
7歳の子供があんなに必死になって助けを求めてきたんだ。助けてあげないと。
ギルドを出て急ぎ、歩く。
少年は連れていかれてしまった為、自力で探さないといけない。
グレイ達もホンドンさんを助けに向かおうとするはずだけど、少年の焦り具合からするとホンドンさんの怪我は大きいものであるはず。それ程の怪我を治せる魔術の力量はグレイも持っていないはずだ。
と、なると人を雇わなければならないが、それだと時間がかかる。
やっぱり、僕が向かった方が早いし確実だろう。
「ファイア様!……ファイア様! ……ファイア様!」
「なに?」
ラックは僕の行き先を阻むような位置に仁王立ちをした。
「なに? じゃありません! また無茶をして」
「こんなの君たち猫獣人を守る為なら無茶に入らないって」
「入ります。そもそもあのグレイという貴族はいつもあの時刻には決まって顔を出すのですから、あの少年のことも放っておけば良かったんですよ」
「それはダメ」
「なんでですか! そもそもあの少年が冒険者ギルドにくるのがいけないんです! 少しくらい殴られるのは自業自得ですよ!」
「ラック、そういうことじゃないんだ」
ここじゃまずいな。ヒートアップしてる。
それに、人を待つならここじゃない方がいい。
僕とラックは大通りからそれほど離れていないが、人通りがほとんどなさそうな路地に入る。
「あの時放っておいても少年は助かっただろうね。でも、冒険者の方は?」
「えっと……殴られるんじゃないでしょうか? えっ、、、はっ? ということは、冒険者の方を庇われたんですか? なんであんなクソ野郎の為に!」
「違うって。確かに結果的には庇うようになっちゃったけど、そうじゃない。あの少年に手を出そうとしていた奴らのことだ。グレイにボコボコにされたらきっと逆恨みをする。でも、グレイは強い。じゃあ、その恨みの矛先は?」
「あの少年……?」
「もしくは猫獣人全体に向いてもおかしくない。ラックだってその恨みの対象に入ってもおかしくないんだよ。だから、僕が率先してボコられたってわけ」
「でも、それじゃあ……」
「いや~、たいしたことなかったよ? 全然痛くないし!」
「ファイア……様……ひっぐ」
ラックは泣き出してしまった。
「も~、泣かないでよ~。泣かれるとどうしたらいいか分からないから困る」
「ひっ……ぐっ、はっ……やく、その傷……治してください。……僕に……魔法の才能がッ、あればッ、お手を煩わせないのに……」
ああ、言われて思い出した。僕、自分の怪我治してないや。
まあ、その前に。
ポンポンッ
「心配してくれてありがとう」
「うっ……ううっ……ファイア様のバカァ……」
「馬鹿はラックでしょ。奴隷の首輪を自分の意思で着けてる奴なんて君たちくらい」
ラックが着けている首輪に触れる。
「ひっく……これは私の意思じゃありません。こんなものなくても自分の身の安全は自分で守れるのに……ファイア様が気遣って……ううっ」
この国で猫獣人が普通に生きるのは難しい。というか、危ない。いつ暴漢にあっても、攫われて奴隷になってもおかしくないし、猫獣人はそれに反発できない。
だが奴隷の場合は、所有物を盗んだ。破損した。といった扱いになる為、いざこざに発展しやすい。
だから、人の奴隷に手を出す奴は滅多に居ない。
クソみたいな世の中のルールだが、それで安全が買えるなら使うしかない。
僕はラックともう一人、ナリヤにこの首輪を着けることを条件に自分に着いてくることを許したのだ。
猫獣人がひっそりと暮らしている村があるのだが、そっちにいる方が安全で彼らのためになるはずなのに、嫌がるだろうと思って出したこの条件も呑んでしまうのだからどうしようもないバカだ。
グレイみたいに僕が権力を持っていればこんな首輪着けずともラック達の身を守れるのに。
ルールーの首にはもちろん首輪なんて着いていなかった。
クソッ……やっぱり僕なんかじゃ……
「ファイアさん!」
ラックの頭を撫でていると、後ろから声をかけられた。女性の声だ。
よかった。これでホンドンさんの居場所が分かる。
グレイはそれだけ言うと冒険者ギルドを出ていった。少年はグレイに簡単な治癒魔術で頬の怪我を治してもらい、ルールーに手を引かれて行った。
「ファイアってたいしたことないんじゃね?」
「たしかに」
「ざまあねぇな」
周囲を見渡せば見下しながら、クスクスと僕を笑う冒険者達がいた。
これはまずい、かな。バカにされるのも、笑われるのもいい。でも、舐められるのはまずい。
でも、今日はこうするしかなかった。自分をそう納得させ、立ち上がる。
自分の先の心配なんかする前に、今は怪我をしているホンドンさんを心配するべきだ。
7歳の子供があんなに必死になって助けを求めてきたんだ。助けてあげないと。
ギルドを出て急ぎ、歩く。
少年は連れていかれてしまった為、自力で探さないといけない。
グレイ達もホンドンさんを助けに向かおうとするはずだけど、少年の焦り具合からするとホンドンさんの怪我は大きいものであるはず。それ程の怪我を治せる魔術の力量はグレイも持っていないはずだ。
と、なると人を雇わなければならないが、それだと時間がかかる。
やっぱり、僕が向かった方が早いし確実だろう。
「ファイア様!……ファイア様! ……ファイア様!」
「なに?」
ラックは僕の行き先を阻むような位置に仁王立ちをした。
「なに? じゃありません! また無茶をして」
「こんなの君たち猫獣人を守る為なら無茶に入らないって」
「入ります。そもそもあのグレイという貴族はいつもあの時刻には決まって顔を出すのですから、あの少年のことも放っておけば良かったんですよ」
「それはダメ」
「なんでですか! そもそもあの少年が冒険者ギルドにくるのがいけないんです! 少しくらい殴られるのは自業自得ですよ!」
「ラック、そういうことじゃないんだ」
ここじゃまずいな。ヒートアップしてる。
それに、人を待つならここじゃない方がいい。
僕とラックは大通りからそれほど離れていないが、人通りがほとんどなさそうな路地に入る。
「あの時放っておいても少年は助かっただろうね。でも、冒険者の方は?」
「えっと……殴られるんじゃないでしょうか? えっ、、、はっ? ということは、冒険者の方を庇われたんですか? なんであんなクソ野郎の為に!」
「違うって。確かに結果的には庇うようになっちゃったけど、そうじゃない。あの少年に手を出そうとしていた奴らのことだ。グレイにボコボコにされたらきっと逆恨みをする。でも、グレイは強い。じゃあ、その恨みの矛先は?」
「あの少年……?」
「もしくは猫獣人全体に向いてもおかしくない。ラックだってその恨みの対象に入ってもおかしくないんだよ。だから、僕が率先してボコられたってわけ」
「でも、それじゃあ……」
「いや~、たいしたことなかったよ? 全然痛くないし!」
「ファイア……様……ひっぐ」
ラックは泣き出してしまった。
「も~、泣かないでよ~。泣かれるとどうしたらいいか分からないから困る」
「ひっ……ぐっ、はっ……やく、その傷……治してください。……僕に……魔法の才能がッ、あればッ、お手を煩わせないのに……」
ああ、言われて思い出した。僕、自分の怪我治してないや。
まあ、その前に。
ポンポンッ
「心配してくれてありがとう」
「うっ……ううっ……ファイア様のバカァ……」
「馬鹿はラックでしょ。奴隷の首輪を自分の意思で着けてる奴なんて君たちくらい」
ラックが着けている首輪に触れる。
「ひっく……これは私の意思じゃありません。こんなものなくても自分の身の安全は自分で守れるのに……ファイア様が気遣って……ううっ」
この国で猫獣人が普通に生きるのは難しい。というか、危ない。いつ暴漢にあっても、攫われて奴隷になってもおかしくないし、猫獣人はそれに反発できない。
だが奴隷の場合は、所有物を盗んだ。破損した。といった扱いになる為、いざこざに発展しやすい。
だから、人の奴隷に手を出す奴は滅多に居ない。
クソみたいな世の中のルールだが、それで安全が買えるなら使うしかない。
僕はラックともう一人、ナリヤにこの首輪を着けることを条件に自分に着いてくることを許したのだ。
猫獣人がひっそりと暮らしている村があるのだが、そっちにいる方が安全で彼らのためになるはずなのに、嫌がるだろうと思って出したこの条件も呑んでしまうのだからどうしようもないバカだ。
グレイみたいに僕が権力を持っていればこんな首輪着けずともラック達の身を守れるのに。
ルールーの首にはもちろん首輪なんて着いていなかった。
クソッ……やっぱり僕なんかじゃ……
「ファイアさん!」
ラックの頭を撫でていると、後ろから声をかけられた。女性の声だ。
よかった。これでホンドンさんの居場所が分かる。
37
あなたにおすすめの小説
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます
クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。
『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。
何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。
BLでヤンデレものです。
第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします!
週一 更新予定
ときどきプラスで更新します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる