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第3章

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 目覚めると、俺は素っ裸で牢屋に入れらていた。手には錠が嵌められており、自由が効かない。
 何故、こんな状況になっているのか分からず一瞬困惑したが、直ぐに先程の出来事を思い出し、今の状況を粗方理解し始めた。
 恐らく湖に沈められた後、俺は教団に回収され、こうして牢屋にぶち込まれているのだろう。

「お目覚めですかな? 」

 そんな声と共に薄暗い廊下の向こうから、懐中電灯を持った坊主頭の壮年男性が姿を現した。

「初めまして、私はアントン・カツマタ。ドデカ民達を束ねる破壊者ドデカフォニーの代弁者です」

 アントンと名乗る男はわざとらしい笑顔で、優しく言った。

 そうか、ケイとリンリーが言っていた、教団のリーダーってのはコイツか!

「テメェがアントンか・・・・・・。よくも俺をこんな目に・・・・・・。ケイとリンリーはどうした? 」

「国防軍の男も、女性警官もは頃、湖の底に沈んでいることでしょうな。フフ、世界最強の男も大したことありませんでしたねぇ」

「テメェ・・・・・・! 」

「いやぁ、それにしても酔狂な方ですねぇ~。関所で貴方のパートナーを捕らえた際に、貴方のことは見逃すことにしたのに、こうも教団に立ち向かってくるなんて・・・・・・」

「・・・・・・リュゼは無事なんだろうな!? 」

「ええ、無事ですよ。おい」

 アントンがパンパンと手を叩いて、信者を呼び出す。

 すると、信者が押す車椅子に縛り付けられたリュゼがこちらに運ばれてきた。

「リュゼ!  」

 彼女の姿を見るなり、俺は思わず彼女に呼びかけた。しかし、薬で眠らされているのか、全く反応がない。

「テメェ、何が目的だ!? 」

「目的ねぇ・・・・・・。私は神の仰せのままに動いているに過ぎませんよ」

「神? 破壊者ドデカフォニーのことか? 」

「いいえ、神は神です。あのお方が私の前に現れて以降、間違ったことは1度もありませんでした」

「何言ってんだお前・・・・・・」

 破壊者ドデカフォニーとは別に、神と呼ばれる信仰対象でもいるのだろうか? キリスト教で言うところの、イエス・キリストと唯一神ヤハウェみたいな感じか?

「あのお方は何でもこの私に教えてくださりました。教団の拡大の仕方も、資金の運用方法も全てね」

「ほー、そりゃ親切で・・・・・・。お前みてえなインチキ坊主に肩入れする神もいるなんてな」

「彼女を捕らえたのも神のお告げを受けてのことです。貴方のことはその場で殺しても良かったのですが生憎、神からは殺すなと言われておりました」

 俺が湖から救出され、牢屋に入れられているのも神の意向というなのだろうか? しかし、その神とやらの目的が今のところハッキリ分からない。一体、何がしたいのだろうか?

「この少女はとんでもない力を秘めている。故に、私の能力チートで彼女を操って教団の戦力に勘定してしまえと 神は仰っておられました」
 
能力チートで操るって・・・・・・。やっぱりお前、信者を・・・・・・」

「そう、貴方の思っている通りです。社会心理サイコソーシャル。私の能力チートはこの手で触れた人間を誰であろうと自在に支配することが出来ます。教団もこの能力チートを使って拡大してきました」

 何て能力チートだ。いよいよ、この世界を丸ごと手中に収めることも可能な能力チートが現れてしまった。そして、その能力チートをよりにもよってこんなヤバい宗教団体のリーダーが持っているなんて・・・・・・。

「貴方のことも当然、操っても良かったし、何なら殺しても良かった。私としてはね。しかし神はあの時、一度は貴方のことを見逃せと仰っておりました・・・・・・。ですが彼がもし、パートナーを奪われたことで、教団に逆らってきたのなら、捕らえて処刑してしまいなさいとも仰っておりましたよ」

「何!? 」

「もし、教団に楯突く様であれば、貴方は教団にとって将来的な脅威となりうる。ですから、捕らえて公開処刑してしまいなさいと・・・・・・、神はそう仰っておられました」

「公開処刑って!? 何で!? 何の為に!? 」

「教団の面子の為ですよ。我等が教団に楯突いた跳ねっ返りがどういう目に遭うか、全世界に思い知らせてやるのです。因みに、公開処刑は我等が破壊者ドデカフォニーの手で直々に行ってもらいます」

破壊者ドデカフォニーだって!? 此処に破壊者ドデカフォニーが居るのか!? 」

「もう湖で会ったでしょう? 仮面の少女と」

 アイツか! 俺らの車を湖に沈めたであろう、あの仮面の少女か!

「彼女こそが正真正銘本物の破壊者ドデカフォニー、2年前にサガミ事変を引き起こし、この国を恐怖のドン底に突き落とした張本人ですよ」

「本物の破壊者ドデカフォニー・・・・・・。そんな、まさか・・・・・・」

「それにしても、妙な偶然ですよねぇ。破壊者ドデカフォニーの名を騙る者は破壊者ドデカフォニーに殺されるなんて噂が有りますが・・・・・・。まさか、本当にその通りになるなんてねぇ」

「お前・・・・・・! 」

 アントンは俺が破壊者ドデカフォニーを名乗っていたことも知っている様だ。

「さて、公開処刑は本物の破壊者ドデカフォニーと偽物の決闘という形でやらせていただきます。全世界同時配信、熱狂と恐怖に満ちた珠玉のエンターテイメントとなるでしょう! 」

「テメェ! ふざけやがって! 雷電ライディーン!」

「ぎゃああああ! 」

 俺は苛立ちを抑えきれず、アントンに電撃をぶつけた。アントンは電撃をモロに食らい、その場に思わず倒れる。信者はそれを見て思わず彼に駆け寄る。

「アントン様!? 」

「グッ・・・・・・! 貴様ぁ! ふざけやがって! このクソガキ! 」

 アントンは激昂し、立ち上がって拳銃を俺に向けてきた。その顔は胡散臭い坊主の顔から、怒りに満ちた鬼の形相へと変わっている。
 しかし、この後の余興を思ってか、直ぐに冷静さを取り戻し、銃を下ろした。

「フンッ・・・・・・! まぁ良い! どうせ貴様はこの後、我等が破壊者ドデカフォニーに惨たらしく殺される運命なのだ! それ迄、牢屋の中で吠えているが良い! 」

「クソッ! ぜってーぶっ殺してやる! このチンカス坊主が! 」

「そんなフルチンでどうするってんです!? この間抜けぇ! 」

 アントンはそう吐き捨てると、信者とリュゼと共にその場を去って行った。

 牢屋に1人残された俺はその場に座り込んだ。

「本物か・・・・・・」

 俺は2年前、サガミ事変が起きたあの日のことを思い出した。
 あの日、俺は家族も友人も全て失った・・・・・・。奴に全て奪われたのだ。

 今でも忘れない。燃え盛る炎の中、自分に襲い掛かる軍人達を皆殺しにした奴はセーラー服を身に纏った少女であった。

 俺はこの2年間、ずっと奴を追っていた。復讐の為に馬鹿みたいな噂話にも縋りながら、ゴミ溜めの様な街を生き抜いてきた。

 今更ではあるが、俺は破壊者ドデカフォニーではない。俺は破壊者ドデカフォニーに会って復讐する為に、破壊者ドデカフォニーの名を騙っていたのだ。

「ハハッ、やっと会えるのか・・・・・・」

 かなり危機的状況にも関わらず、俺は武者震いしていた。2年間追い続けていた復讐相手に漸く一発かますことが出来るのかと・・・・・・。


 

 
 





 
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