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第3章
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宮殿最上階のホールには夜明け前にも関わらず、既に信者で埋め尽くされており、彼等は皆、中央のステージで佇む仮面の少女・・・・・・、破壊者に祈りを捧げていた。
「これより、我等が破壊者がその名を騙った愚かな少年に裁きの鉄槌を下される! 諸君らは破壊者の強さを、勇姿を、正しさを刮目するのです! 」
大ホールを見渡すことができる専用の席から、アントンが信者達に呼びかけた。彼の隣にはリュゼもいるが、彼女は相変わらず眠ったままだ。
「それでは少年を舞台の上へ! 」
アントンの指示で信者達に運ばれ、俺はステージの上に出された。破壊者はその様を仮面の下からじっと見ている。
俺は奴を見て思わず、拳を握りしめた。
奴があの日、俺から全てを奪い、俺がこの2年間、泥水を啜る思いをする羽目になった元凶。
奴を殺せば、これまでの怨嗟を断ち切り、この最悪な2年間に終止符を打てる・・・・・・。
奴等にしてみれば余興の一つに過ぎないかもしれないが、俺からすれば復讐を成就させる願っても無いチャンスだ!
「準備は整いました! それでは始めてください! 」
アントンがそう言うと、ステージ横の信者が決闘開始のゴングである銅鑼を鳴らした。同時に、信者達の歓声がホール一杯に響き渡る。
決闘が始まっても、破壊者は何もして来なかった。お前から来いってことなのだろうか?
「舐めやがって! 」
俺は右手に一気に電気を溜め始める。しかし、溜めている最中も奴は何もして来ない。それを不気味に感じながらも、全身に沸る怨嗟の念で不安を全て押し潰した。
程なくして、右手の電気は限界までチャージされる。
「いくぞ・・・・・・! 雷電最高出力! 」
俺はかつて無い出力の電撃を破壊者に向けて飛ばした。
この2年間の集大成とも言える電撃だ。人間が食らえばひとたまりも無い。
「行けえええええ! 」
しかし、電撃は破壊者に当たる瞬間に何故か消えてしまった。当然、奴は無傷である。
「なっ!? 」
何だ・・・・・・?何が起こった?
「もう1度! 雷電! 」
俺はもう1度、破壊者に向けて電撃を飛ばす。しかし、これも何故か奴に当たらない。
「クソっ! 雷電! 雷電! 雷電! 」
今度は連続で放ってみるも、やはり全て当たらずに消えてしまう。
破壊者に関してはまだ一歩も動いていない。
「何で・・・・・・? 何で当たらねえんだ!? うおっ・・・・・・!? 」
気がつくと、俺は空中に瞬間移動していた。
「なっ!? 何ぃ~!? 」
「奇跡の能力、神の遊戯・・・! 俗に言う、テレポートですよ。貴方は破壊者に触れることも叶わないまま、無様に殺されるのです! 」
テレポート!? 能力バトル系の漫画では王道かつ強力なやつじゃないか!
俺はどうすることもできぬまま、地面にそのまま落下し地面に身体を叩きつけられる。
「痛ええ! 」
「さあ! 破壊者! その少年をどんどん痛めつけてやってください! 」
アントンの指示に破壊者は小さく頷くと、俺を再び空中にテレポートさせ、落下のダメージを与えていく。
「グワアアッ! 」
痛がる間も無く、破壊者は続け様に俺を何度も地面に叩きつけ、それが2、3回と繰り返させる頃には最早、叫ぶ余裕すら失っていた。やがて、俺が無言になったタイミングで漸く奴の攻撃は止んだ。
「痛え・・・・・・。何だよそれ・・・・・・。そんなのありかよ・・・・・・! ふざけやがって! クソ! 」
俺は力を振り絞り、奴に向けてもう1度電撃を飛ばす。しかし、やはりそれもあっさりとテレポートで防がれてしまう。
「何をやっても無駄ですよ! その子には軍人100人が束になったって勝てやしません! 貴方の死はもう確定しているのですよ! ハハハハハハッ! 」
アントンは高笑いしながら俺を煽った。
「あのクソ坊主め・・・・・・! そうだ! こうなったら・・・・・・! 」
妙案を思いついた。アントンの席までだったら俺の電撃は余裕で届く筈。つまり、俺の電撃は奴の隣に居るリュゼにも届く。
「一か八か! 」
俺は立ち上がり、再び右手に電力を溜め始めた。
「フハハハッ! 無駄な足掻きを! 破壊者!その少年の悪足掻きを軽くいなしてさしあげなさい。しっかり絶望を与えてから殺すのです! 」
クソッタレめ、良い性格してやがる。
俺はアントンの席に狙いを定めていることを悟られない為に、破壊者の方を睨みつける。
程なくして、電気は再び右手に最大までチャージされる。これが決まらなければ詰みだ。
「よし、行くぞぉ! 雷電! 」
そう言って、俺は破壊者に撃つと見せかけて、リュゼめがけて電撃を飛ばした。
「ぎゃあああ! 」
電撃は見事にリュゼに直撃し、アントンと周辺の信者までも巻き込んで感電させた。
頼む! これで目を覚ましてくれ! お前さえ起きてくれれば、ワンチャン助かる!
「貴様ぁ! 真面目にやれぇ! 今際の際だぞ! 」
電撃を食らったアントン激昂し、怒号を上げる。
リュゼはというと・・・・・・、相変わらず眠ったままだ。
「クソ・・・・・・」
「何だ・・・・・・? まさか、彼女を電撃で起こすのが目的だったのですか? 馬鹿め! 彼女は像をも眠らす強力な薬で眠らせています! その程度では絶対に目覚めませんよ!」
リュゼが起きないとなると、いよいよ本当に詰みだ。あんな馬鹿みたいな能力、どうやって対処すれば良い?
「フハハハハッ! ザマァないですねぇ! その程度の能力では最早、どうすることも出来ませんよ! さぁ、破壊者! そのガキにトドメを刺してあげなさい! 」
アントンの命令を受けて、破壊者は俺をホールの天井付近までテレポートで打ち上げた。この高さから落ちたら流石に助からない。
「うおおおお!? クソっ! 」
悪あがきとして、電撃を飛ばしまくるも、破壊者はそれを易々と対処してしまう。
最早、この状況を自力で打開する術など無い。
「このクソカス共があぁ! 」
万策尽きた俺は叫びながら、真っ逆様に地面に向かって落ちていく。
せめて足から! せめて足から落ちれば命は助かる筈! 嫌だ! 死にたくない!
「2分間の沈黙」
そんな声が聞こえたと思ったら、次の瞬間には俺は地面に寝かされていた。そして、隣を見ると世界最強でお馴染みのあの男が立っていた。
「よぉ、何でまた全裸になってんだ? 」
「ん!? ケイ! 生きてたのか! 」
「俺があの程度で死ぬかよ。リンリーも無事だ」
「そうか・・・・・・。いやぁ、助かった・・・・・・」
今回ばかりは本当にダメだと思った。彼が助けに来てくれたのが奇跡だ。
「あれは、ケイ・ペンドルトン!? 」
「お前がアントンだな? もうお前は終わりだ」
「何を・・・・・・!? 」
次の瞬間、激しい爆撃の音と共に、ホールの天井が崩れ落ちた。
崩れ落ちた天井に空いた穴からは、夜明けの空を幾つもの戦闘機が飛んでいるのが見える。
「あれは・・・・・・! 国防軍か!? そんな・・・・・・、国防軍は我々が掌握した筈じゃ!? 」
「よく見ろ。あれは隣国の空軍だ。昔からの腐れ縁が居てな。ちょっと、協力して貰ってんだ。奴等としても、大陸にも進出していたお前らが目障りだったらしい」
「馬鹿なっ・・・・・・! クッ・・・・・・! ホールに居る者は戦闘配置につけ! 破壊者! 早くその男を殺すのです! 」
アントンが号令をかけると、信者達は一斉にホールの外へと移動し始めた。そして、破壊者はケイをロックオンする。
「信者達が居なくなったお陰で、のびのびと戦えるな」
「気をつけろ! あの仮面の奴はテレポートの能力を使う! あのクソ坊主は支配の能力だ! 」
「ああ、成る程な・・・・・・。まぁ、発動条件も範囲も大体察しがつく。問題無いだろうよ」
「問題無いって・・・・・・。時間停止もあと2分は使えないんだろ? 」
「誰も俺を2分で殺せやしない。まぁ、見てろ小僧。世界最強の戦闘を・・・・・・! 」
そう言って、ケイは両手に炎を宿した。
「これより、我等が破壊者がその名を騙った愚かな少年に裁きの鉄槌を下される! 諸君らは破壊者の強さを、勇姿を、正しさを刮目するのです! 」
大ホールを見渡すことができる専用の席から、アントンが信者達に呼びかけた。彼の隣にはリュゼもいるが、彼女は相変わらず眠ったままだ。
「それでは少年を舞台の上へ! 」
アントンの指示で信者達に運ばれ、俺はステージの上に出された。破壊者はその様を仮面の下からじっと見ている。
俺は奴を見て思わず、拳を握りしめた。
奴があの日、俺から全てを奪い、俺がこの2年間、泥水を啜る思いをする羽目になった元凶。
奴を殺せば、これまでの怨嗟を断ち切り、この最悪な2年間に終止符を打てる・・・・・・。
奴等にしてみれば余興の一つに過ぎないかもしれないが、俺からすれば復讐を成就させる願っても無いチャンスだ!
「準備は整いました! それでは始めてください! 」
アントンがそう言うと、ステージ横の信者が決闘開始のゴングである銅鑼を鳴らした。同時に、信者達の歓声がホール一杯に響き渡る。
決闘が始まっても、破壊者は何もして来なかった。お前から来いってことなのだろうか?
「舐めやがって! 」
俺は右手に一気に電気を溜め始める。しかし、溜めている最中も奴は何もして来ない。それを不気味に感じながらも、全身に沸る怨嗟の念で不安を全て押し潰した。
程なくして、右手の電気は限界までチャージされる。
「いくぞ・・・・・・! 雷電最高出力! 」
俺はかつて無い出力の電撃を破壊者に向けて飛ばした。
この2年間の集大成とも言える電撃だ。人間が食らえばひとたまりも無い。
「行けえええええ! 」
しかし、電撃は破壊者に当たる瞬間に何故か消えてしまった。当然、奴は無傷である。
「なっ!? 」
何だ・・・・・・?何が起こった?
「もう1度! 雷電! 」
俺はもう1度、破壊者に向けて電撃を飛ばす。しかし、これも何故か奴に当たらない。
「クソっ! 雷電! 雷電! 雷電! 」
今度は連続で放ってみるも、やはり全て当たらずに消えてしまう。
破壊者に関してはまだ一歩も動いていない。
「何で・・・・・・? 何で当たらねえんだ!? うおっ・・・・・・!? 」
気がつくと、俺は空中に瞬間移動していた。
「なっ!? 何ぃ~!? 」
「奇跡の能力、神の遊戯・・・! 俗に言う、テレポートですよ。貴方は破壊者に触れることも叶わないまま、無様に殺されるのです! 」
テレポート!? 能力バトル系の漫画では王道かつ強力なやつじゃないか!
俺はどうすることもできぬまま、地面にそのまま落下し地面に身体を叩きつけられる。
「痛ええ! 」
「さあ! 破壊者! その少年をどんどん痛めつけてやってください! 」
アントンの指示に破壊者は小さく頷くと、俺を再び空中にテレポートさせ、落下のダメージを与えていく。
「グワアアッ! 」
痛がる間も無く、破壊者は続け様に俺を何度も地面に叩きつけ、それが2、3回と繰り返させる頃には最早、叫ぶ余裕すら失っていた。やがて、俺が無言になったタイミングで漸く奴の攻撃は止んだ。
「痛え・・・・・・。何だよそれ・・・・・・。そんなのありかよ・・・・・・! ふざけやがって! クソ! 」
俺は力を振り絞り、奴に向けてもう1度電撃を飛ばす。しかし、やはりそれもあっさりとテレポートで防がれてしまう。
「何をやっても無駄ですよ! その子には軍人100人が束になったって勝てやしません! 貴方の死はもう確定しているのですよ! ハハハハハハッ! 」
アントンは高笑いしながら俺を煽った。
「あのクソ坊主め・・・・・・! そうだ! こうなったら・・・・・・! 」
妙案を思いついた。アントンの席までだったら俺の電撃は余裕で届く筈。つまり、俺の電撃は奴の隣に居るリュゼにも届く。
「一か八か! 」
俺は立ち上がり、再び右手に電力を溜め始めた。
「フハハハッ! 無駄な足掻きを! 破壊者!その少年の悪足掻きを軽くいなしてさしあげなさい。しっかり絶望を与えてから殺すのです! 」
クソッタレめ、良い性格してやがる。
俺はアントンの席に狙いを定めていることを悟られない為に、破壊者の方を睨みつける。
程なくして、電気は再び右手に最大までチャージされる。これが決まらなければ詰みだ。
「よし、行くぞぉ! 雷電! 」
そう言って、俺は破壊者に撃つと見せかけて、リュゼめがけて電撃を飛ばした。
「ぎゃあああ! 」
電撃は見事にリュゼに直撃し、アントンと周辺の信者までも巻き込んで感電させた。
頼む! これで目を覚ましてくれ! お前さえ起きてくれれば、ワンチャン助かる!
「貴様ぁ! 真面目にやれぇ! 今際の際だぞ! 」
電撃を食らったアントン激昂し、怒号を上げる。
リュゼはというと・・・・・・、相変わらず眠ったままだ。
「クソ・・・・・・」
「何だ・・・・・・? まさか、彼女を電撃で起こすのが目的だったのですか? 馬鹿め! 彼女は像をも眠らす強力な薬で眠らせています! その程度では絶対に目覚めませんよ!」
リュゼが起きないとなると、いよいよ本当に詰みだ。あんな馬鹿みたいな能力、どうやって対処すれば良い?
「フハハハハッ! ザマァないですねぇ! その程度の能力では最早、どうすることも出来ませんよ! さぁ、破壊者! そのガキにトドメを刺してあげなさい! 」
アントンの命令を受けて、破壊者は俺をホールの天井付近までテレポートで打ち上げた。この高さから落ちたら流石に助からない。
「うおおおお!? クソっ! 」
悪あがきとして、電撃を飛ばしまくるも、破壊者はそれを易々と対処してしまう。
最早、この状況を自力で打開する術など無い。
「このクソカス共があぁ! 」
万策尽きた俺は叫びながら、真っ逆様に地面に向かって落ちていく。
せめて足から! せめて足から落ちれば命は助かる筈! 嫌だ! 死にたくない!
「2分間の沈黙」
そんな声が聞こえたと思ったら、次の瞬間には俺は地面に寝かされていた。そして、隣を見ると世界最強でお馴染みのあの男が立っていた。
「よぉ、何でまた全裸になってんだ? 」
「ん!? ケイ! 生きてたのか! 」
「俺があの程度で死ぬかよ。リンリーも無事だ」
「そうか・・・・・・。いやぁ、助かった・・・・・・」
今回ばかりは本当にダメだと思った。彼が助けに来てくれたのが奇跡だ。
「あれは、ケイ・ペンドルトン!? 」
「お前がアントンだな? もうお前は終わりだ」
「何を・・・・・・!? 」
次の瞬間、激しい爆撃の音と共に、ホールの天井が崩れ落ちた。
崩れ落ちた天井に空いた穴からは、夜明けの空を幾つもの戦闘機が飛んでいるのが見える。
「あれは・・・・・・! 国防軍か!? そんな・・・・・・、国防軍は我々が掌握した筈じゃ!? 」
「よく見ろ。あれは隣国の空軍だ。昔からの腐れ縁が居てな。ちょっと、協力して貰ってんだ。奴等としても、大陸にも進出していたお前らが目障りだったらしい」
「馬鹿なっ・・・・・・! クッ・・・・・・! ホールに居る者は戦闘配置につけ! 破壊者! 早くその男を殺すのです! 」
アントンが号令をかけると、信者達は一斉にホールの外へと移動し始めた。そして、破壊者はケイをロックオンする。
「信者達が居なくなったお陰で、のびのびと戦えるな」
「気をつけろ! あの仮面の奴はテレポートの能力を使う! あのクソ坊主は支配の能力だ! 」
「ああ、成る程な・・・・・・。まぁ、発動条件も範囲も大体察しがつく。問題無いだろうよ」
「問題無いって・・・・・・。時間停止もあと2分は使えないんだろ? 」
「誰も俺を2分で殺せやしない。まぁ、見てろ小僧。世界最強の戦闘を・・・・・・! 」
そう言って、ケイは両手に炎を宿した。
応援ありがとうございます!
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