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序章
過去
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シルバの声でハッとする。見るとシルバが心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「大丈夫かよ。やっぱ疲れてんじゃ……」
「あ、ううん。違うの。ちょっと考え事してて」
「それなら、いいけど。何かあったら俺に言えよ。話くらいは聞いてやるから」
「うん……ありがとう」
私は笑顔でシルバに応える。シルバは私の顔を見て安心したのか再び森の中へと入って行く。
シルバはいつも優しい。そう、あの時だって。
あれは、私が今よりずっと幼かった頃。まだ私たち家族が町に住んでいた頃の話だ。
私たちはお城の近くの家に住んでいた。王様から勇者の功績を称えて贈られたものらしく、今の家よりもずっと大きくずっと綺麗で豪華な家だった。
父さんは『自分たちには必要ない』って断りたかったらしいけど、王様たっての願いだったため断り切れず、結局父さんと母さんはその家に住むことになった。
しばらくたって、私が生まれた。普段騒いだりしない父さんも流石にその時は舞い上がってしまったらしく、町の人全員を招待して私の誕生パーティーをやったらしい。
そのパーティーで当時赤ん坊だった私が、大の大人を持ち上げたり魔法を使ったりするものだから、二代目勇者として大層騒がれたらしい。
何年かの時が経ち、あれは私が一人で遊びに行けるようになった時だった。気を付けていくのよ、と言う母さんの声を聞きながら私は子供たちが大勢いる公園へと向かった。
公園に着くも偶然その日は誰もおらず、私は一人で遊んでいた。すると、一人の男の人が話しかけてきた。『君、勇者様の娘さん?』と。
父さんが勇者であることを何となく理解していた当時の私は『はい!』と元気よく答えた。
次の瞬間。その男は私の口を塞ぎ、引きずりながら公園の木の影へと連れ込み押し倒した。
私には何が起こったのか分からなかったが、得体のしれない恐怖が込みあがってきて必死に暴れた。男の手を振り払おうと手足を動かし、無我夢中で抵抗した。
公園にたまたまやって来た大人が私を見つけた時、私は男の返り血を浴びて真っ赤になりながら呆然と座っていた、らしい。
正直あの時の事はあまりよく覚えていない。とにかく怖くて、ただただ必死だった。
私は無意識に、勇者の力を使ってしまっていたようだった。
これはしばらくたってから聞いた話だが、あの頃町ではある噂が広まっていたらしい。それは『勇者の力は血筋によって受け継がれる。すなわち勇者の娘との間に子をなせばその子もまた勇者になるだろう』と言う内容だった。
事実、勇者の力は血によって父さんから私へと受け継がれている。私を襲った男は私が生まれた時のパーティーでそれを確信し、以来ずっとチャンスを伺っていたようだった。
風の便りで、私を襲った男は重傷だが死ななかったと聞いた。不幸中の幸い……ではないが、少しだけ安心したのを覚えている。
私が事件に巻き込まれてからはあっという間だった。
父さんは王様に事情を話し、あの家から引っ越すことを決めてくれた。母さんは親友のモネおばさんに頼んで森の奥に小屋を作ってもらい、そこで暮らせるよう色々手配をしてくれた。
王様の計らいで『勇者一家は勇者一人をこの町に残し違う町へと去った』と言う知らせがあったため、それ以来私たち家族は森の奥でひっそりと暮らしてきた。
森に来た当初、家族を含めて皆私の事を腫れ物にでも触れるかのような態度だった。
今考えると無理もないのだろうが、当時は自分だけ仲間外れにされたようでとても悲しかった。
でも、シルバは違った。シルバが初対面で言ったこと、今でも覚えている。
「お前、すっげー強いんだってな!」
顔を輝かせながら言うシルバをモネおばさんは引っぱたいていたけど、私は嬉しかった。
やがて森での生活にも慣れ、今現在、少し不自由だけど楽しい生活を送れているのが夢のようだ。
あとは父さんさえ、戻ってきてくれれば……。
「ティーレ! ここの頼む!」
「はーい!」
シルバの呼ぶ声に応えつつ、私は気持ちを切り替えるために深呼吸をしてからシルバの元へと向かった。
「大丈夫かよ。やっぱ疲れてんじゃ……」
「あ、ううん。違うの。ちょっと考え事してて」
「それなら、いいけど。何かあったら俺に言えよ。話くらいは聞いてやるから」
「うん……ありがとう」
私は笑顔でシルバに応える。シルバは私の顔を見て安心したのか再び森の中へと入って行く。
シルバはいつも優しい。そう、あの時だって。
あれは、私が今よりずっと幼かった頃。まだ私たち家族が町に住んでいた頃の話だ。
私たちはお城の近くの家に住んでいた。王様から勇者の功績を称えて贈られたものらしく、今の家よりもずっと大きくずっと綺麗で豪華な家だった。
父さんは『自分たちには必要ない』って断りたかったらしいけど、王様たっての願いだったため断り切れず、結局父さんと母さんはその家に住むことになった。
しばらくたって、私が生まれた。普段騒いだりしない父さんも流石にその時は舞い上がってしまったらしく、町の人全員を招待して私の誕生パーティーをやったらしい。
そのパーティーで当時赤ん坊だった私が、大の大人を持ち上げたり魔法を使ったりするものだから、二代目勇者として大層騒がれたらしい。
何年かの時が経ち、あれは私が一人で遊びに行けるようになった時だった。気を付けていくのよ、と言う母さんの声を聞きながら私は子供たちが大勢いる公園へと向かった。
公園に着くも偶然その日は誰もおらず、私は一人で遊んでいた。すると、一人の男の人が話しかけてきた。『君、勇者様の娘さん?』と。
父さんが勇者であることを何となく理解していた当時の私は『はい!』と元気よく答えた。
次の瞬間。その男は私の口を塞ぎ、引きずりながら公園の木の影へと連れ込み押し倒した。
私には何が起こったのか分からなかったが、得体のしれない恐怖が込みあがってきて必死に暴れた。男の手を振り払おうと手足を動かし、無我夢中で抵抗した。
公園にたまたまやって来た大人が私を見つけた時、私は男の返り血を浴びて真っ赤になりながら呆然と座っていた、らしい。
正直あの時の事はあまりよく覚えていない。とにかく怖くて、ただただ必死だった。
私は無意識に、勇者の力を使ってしまっていたようだった。
これはしばらくたってから聞いた話だが、あの頃町ではある噂が広まっていたらしい。それは『勇者の力は血筋によって受け継がれる。すなわち勇者の娘との間に子をなせばその子もまた勇者になるだろう』と言う内容だった。
事実、勇者の力は血によって父さんから私へと受け継がれている。私を襲った男は私が生まれた時のパーティーでそれを確信し、以来ずっとチャンスを伺っていたようだった。
風の便りで、私を襲った男は重傷だが死ななかったと聞いた。不幸中の幸い……ではないが、少しだけ安心したのを覚えている。
私が事件に巻き込まれてからはあっという間だった。
父さんは王様に事情を話し、あの家から引っ越すことを決めてくれた。母さんは親友のモネおばさんに頼んで森の奥に小屋を作ってもらい、そこで暮らせるよう色々手配をしてくれた。
王様の計らいで『勇者一家は勇者一人をこの町に残し違う町へと去った』と言う知らせがあったため、それ以来私たち家族は森の奥でひっそりと暮らしてきた。
森に来た当初、家族を含めて皆私の事を腫れ物にでも触れるかのような態度だった。
今考えると無理もないのだろうが、当時は自分だけ仲間外れにされたようでとても悲しかった。
でも、シルバは違った。シルバが初対面で言ったこと、今でも覚えている。
「お前、すっげー強いんだってな!」
顔を輝かせながら言うシルバをモネおばさんは引っぱたいていたけど、私は嬉しかった。
やがて森での生活にも慣れ、今現在、少し不自由だけど楽しい生活を送れているのが夢のようだ。
あとは父さんさえ、戻ってきてくれれば……。
「ティーレ! ここの頼む!」
「はーい!」
シルバの呼ぶ声に応えつつ、私は気持ちを切り替えるために深呼吸をしてからシルバの元へと向かった。
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