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序章
勇者の力
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フランチェスカと別れ、私たちは森の奥の伐採場と歩いて行った。
その間シルバは一言も言葉を発さず、私も何となく気まずくて黙ったままでいた。
……さっき、忘れちゃってたことをまだ怒ってるのかな?
忘れてしまっていたのは私の責任なので、私にできることは謝るしかできなのだが……シルバが許してくれるかどうか……。
「んー……」
あぁもう。頭の中で考えていたってしょうがないんだから!
「あの、シルバ」
立ち止まりシルバの名前を呼ぶ。シルバも無言でその場に立ち止まる。
「さっきの事……忘れててごめんね。その……本当にごめん」
そう言うと私はシルバに向かって深々と頭を下げる。
シルバは黙ったままでいたが、しばらくしてため息が一つ聞こえてきた。
「いいよ、もう。俺もそんなに怒ってねえし」
「ほんと!?」
シルバの言葉に勢いよく顔を上げる。
「ティーレが忘れっぽいのはいつもの事だろ。ただ……」
シルバはここまで言うと何か言いにくそうに口をもごもごとさせる。
「ん、まぁ何と言うか……ちょっと寂しかったって言うか……」
「寂しい……」
予想外の言葉にしばし驚く。寂しい?シルバが、寂しい……?
「そ、そんな気がしただけだからな!? 大したことじゃ……」
「シルバ!」
私は、少し恥ずかしそうに後ずさるシルバの手をがっちりと掴む。
「っ!?」
「ごめんねシルバ! そんな思いさせていたなんて……私、友達失格だね」
「と、友達……」
普段寂しいなんてめったに使わないシルバが自分から寂しいと言ったのだ。余程ショックだったのだろう。
私の数少ない友達にこんな思いをさせてしまうなんて!
「ね! 今日仕事が終わったら一緒に遊びに行こう? 街には行けないかもだけど……他の所ならどこでもいいから!」
フランチェスカの言葉をふと思い出してシルバを遊びへと誘う。きっと、一緒に遊べばシルバだって元気になってくれるはずだ。
「い、いいのか……?」
「もちろんだよ! 友達じゃない!」
「そ…………そうだよな~! はは!」
そう言うとシルバは笑いながらスタスタと足早に歩いて行ってしまう。
遊びに行くのが楽しみで仕方ないのかな?よし!そうと決まれば早く仕事を終わらせちゃおう!
私は心の中でそう決心をすると、先を行くシルバを追いかける。
しばらく歩くと、森の中に少し開けたところが見えてくる。ここがシルバ達が使っている伐採場だ。
「んじゃ、見繕ってくるから準備しといてくれ」
シルバはそう言うと木々一つ一つをじっと見つめている。あぁやって良い木材になりそうな真っすぐで太い木を選別しているのだ。
私はその間に手袋をはめて準備運動をして待っている。ちゃんと身体を伸ばしておかないと、変なところ痛めちゃうかもしれないしね。
「ティーレ!」
シルバが私を呼ぶ。恐らく良い木が見つかったのだろう。さぁ、ここからが私の腕の見せ所だ。
シルバの元へ行くと、そこには立派でずっしりと重そうな木がそびえ立っていた。
「これ頼むよ」
「わかった」
私はシルバが指定した大木をまじまじと見つめた後、大木を抱きしめるかのように両手でつかむ。
「離れててね」
「おう」
私の言葉にシルバが少し遠くに行ったのを確認すると、私は両腕に力を入れる。
「えいっ!」
という掛け声とともに私が大木を横に軽く倒すと、ボギッという鈍い音と共に大木が根元付近を残して折れる。
折れる、と言うよりも取れる、と言う表現の方が近いくらいにあっさりと折れた大木を先程の開けた場所へと持っていき、ゆっくり周りに人や動物がいないかを確認しながら降ろす。
「ふー……」
「なんだ、疲れたか?」
私のため息を聞きつけてシルバがニヤニヤと笑いながら言う。
「まさか! そんな訳ないでしょ?」
「はは! そうだよな。ティーレには、これぐらい楽勝だもんな!」
シルバが自分の事の様に自慢げに笑う。
シルバの言う通り、私にとってこれぐらいの事なら簡単にできる。なぜなら私には勇者の、父の力が宿っているからだ。
そもそも勇者の力、と言うのは父が元々持っていたものではない。
あれはまだ私が生まれる前……城の一兵士だった父が、この世界の神様に選ばれて勇者となった時に授けられたものだ。
父が選ばれた理由については私もよく知らないのだが、以前父が『素質があったから』と話していたような気がする。でも実際のところは、神様にでも聞いてみないと分からないのだけれど。
父に授けられた勇者の力は、この世界で一番の筋力と絶大なる魔力。それから驚異的な回復力と類まれなる戦闘センスだと聞いている。
力を手に入れた父は魔王を倒し、世界は平和になった。
そして父は以前から交際していたセレナ……私の母と結婚し、私が生まれたという訳だ。
私は父とほぼ同様の力を持っていた。それこそ世界を救えるほどの力を。
私が生まれたことで、勇者の力は血筋で受け継がれることが判明したわけだけど……それがあんな事件を引き起こす羽目になるなんて……。
「……レ! ティーレ!!」
その間シルバは一言も言葉を発さず、私も何となく気まずくて黙ったままでいた。
……さっき、忘れちゃってたことをまだ怒ってるのかな?
忘れてしまっていたのは私の責任なので、私にできることは謝るしかできなのだが……シルバが許してくれるかどうか……。
「んー……」
あぁもう。頭の中で考えていたってしょうがないんだから!
「あの、シルバ」
立ち止まりシルバの名前を呼ぶ。シルバも無言でその場に立ち止まる。
「さっきの事……忘れててごめんね。その……本当にごめん」
そう言うと私はシルバに向かって深々と頭を下げる。
シルバは黙ったままでいたが、しばらくしてため息が一つ聞こえてきた。
「いいよ、もう。俺もそんなに怒ってねえし」
「ほんと!?」
シルバの言葉に勢いよく顔を上げる。
「ティーレが忘れっぽいのはいつもの事だろ。ただ……」
シルバはここまで言うと何か言いにくそうに口をもごもごとさせる。
「ん、まぁ何と言うか……ちょっと寂しかったって言うか……」
「寂しい……」
予想外の言葉にしばし驚く。寂しい?シルバが、寂しい……?
「そ、そんな気がしただけだからな!? 大したことじゃ……」
「シルバ!」
私は、少し恥ずかしそうに後ずさるシルバの手をがっちりと掴む。
「っ!?」
「ごめんねシルバ! そんな思いさせていたなんて……私、友達失格だね」
「と、友達……」
普段寂しいなんてめったに使わないシルバが自分から寂しいと言ったのだ。余程ショックだったのだろう。
私の数少ない友達にこんな思いをさせてしまうなんて!
「ね! 今日仕事が終わったら一緒に遊びに行こう? 街には行けないかもだけど……他の所ならどこでもいいから!」
フランチェスカの言葉をふと思い出してシルバを遊びへと誘う。きっと、一緒に遊べばシルバだって元気になってくれるはずだ。
「い、いいのか……?」
「もちろんだよ! 友達じゃない!」
「そ…………そうだよな~! はは!」
そう言うとシルバは笑いながらスタスタと足早に歩いて行ってしまう。
遊びに行くのが楽しみで仕方ないのかな?よし!そうと決まれば早く仕事を終わらせちゃおう!
私は心の中でそう決心をすると、先を行くシルバを追いかける。
しばらく歩くと、森の中に少し開けたところが見えてくる。ここがシルバ達が使っている伐採場だ。
「んじゃ、見繕ってくるから準備しといてくれ」
シルバはそう言うと木々一つ一つをじっと見つめている。あぁやって良い木材になりそうな真っすぐで太い木を選別しているのだ。
私はその間に手袋をはめて準備運動をして待っている。ちゃんと身体を伸ばしておかないと、変なところ痛めちゃうかもしれないしね。
「ティーレ!」
シルバが私を呼ぶ。恐らく良い木が見つかったのだろう。さぁ、ここからが私の腕の見せ所だ。
シルバの元へ行くと、そこには立派でずっしりと重そうな木がそびえ立っていた。
「これ頼むよ」
「わかった」
私はシルバが指定した大木をまじまじと見つめた後、大木を抱きしめるかのように両手でつかむ。
「離れててね」
「おう」
私の言葉にシルバが少し遠くに行ったのを確認すると、私は両腕に力を入れる。
「えいっ!」
という掛け声とともに私が大木を横に軽く倒すと、ボギッという鈍い音と共に大木が根元付近を残して折れる。
折れる、と言うよりも取れる、と言う表現の方が近いくらいにあっさりと折れた大木を先程の開けた場所へと持っていき、ゆっくり周りに人や動物がいないかを確認しながら降ろす。
「ふー……」
「なんだ、疲れたか?」
私のため息を聞きつけてシルバがニヤニヤと笑いながら言う。
「まさか! そんな訳ないでしょ?」
「はは! そうだよな。ティーレには、これぐらい楽勝だもんな!」
シルバが自分の事の様に自慢げに笑う。
シルバの言う通り、私にとってこれぐらいの事なら簡単にできる。なぜなら私には勇者の、父の力が宿っているからだ。
そもそも勇者の力、と言うのは父が元々持っていたものではない。
あれはまだ私が生まれる前……城の一兵士だった父が、この世界の神様に選ばれて勇者となった時に授けられたものだ。
父が選ばれた理由については私もよく知らないのだが、以前父が『素質があったから』と話していたような気がする。でも実際のところは、神様にでも聞いてみないと分からないのだけれど。
父に授けられた勇者の力は、この世界で一番の筋力と絶大なる魔力。それから驚異的な回復力と類まれなる戦闘センスだと聞いている。
力を手に入れた父は魔王を倒し、世界は平和になった。
そして父は以前から交際していたセレナ……私の母と結婚し、私が生まれたという訳だ。
私は父とほぼ同様の力を持っていた。それこそ世界を救えるほどの力を。
私が生まれたことで、勇者の力は血筋で受け継がれることが判明したわけだけど……それがあんな事件を引き起こす羽目になるなんて……。
「……レ! ティーレ!!」
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