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序章
決意
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「……え?」
おばさんの言葉に思わず抱えていた木々を落としそうになる。慌てて持ち直し、今度は木々をゆっくり下に置いてからもう一度おばさんに問う。
「も、もう一回言って……?」
「だからねティーレ。お前の父親である、勇者エンウェインの情報が見つかったんだよ!」
「と、父さんの……?」
私は目を丸くして驚く。空気に触れた瞳がチリチリと乾いていくのが分かる。
父さん、今まで行方不明だった父さんの情報が……?
「教えてください! 父さんは、父さんは今どこにいるんですか!」
「落ち着くんだよティーレ! 今シルヴィアーノがセレナにも教えに行ってるからね。一緒に聞くと良いよ」
「お兄ちゃんはさっき出て行ったばかりだから直ぐに追いつくと思うよ!」
「わ、わかった!」
二人の言葉を聞くや否や、その場を走り出していた。本当は二人にお礼も言いたかったんだけど、頭の中は父さんのことでいっぱいだった。
父さん、今どこにいるの。何故帰ってきてくれないの。私、真実を知るのが少し怖いよ。父さん、父さん……。
無我夢中で走って家へと辿り着くと、勢いよく家の扉を開ける。
「母さん! 父さんは今どこにいるの!?」
家の中にはベッドに入ったまま体を起こしている母さんと、その傍らに座るシルバの姿があった。
「落ち着きなさいティーレ。今シルバ君から聞いていたところよ」
母さんのその言葉で少しは冷静さを取り戻したのだろうか。大きく何度か深呼吸をして昂った心と体を落ち着かせると、リビングにあった椅子をシルバの隣に並べ、座る。
「ごめん。もう大丈夫。シルバ、話を聞かせて」
私の言葉にシルバはちらりと母さんを見る。
「もう一度最初から聞かせてあげて」
シルバはその言葉に頷き、私の方を向くとゆっくりと口を開いた。
「実は……俺たちはセレナさんに頼まれて、ずっとエンウェインさんの行方を探っていたんだ。と言っても、町に出た時に噂を聞いたり製材所の顧客にそれとなく尋ねてみたりしてただけなんだけど」
「そう、だったんだ……」
母さんはそんな事何も言ってくれなかった。ただ、いつか帰って来るから待ちましょうって……。もしかして、私が悲しむから……?それで気を使っていてくれたの……?でも、そんなの寂しいよ。私、また独りぼっちだよ……。
「……続けても、いいか?」
今にも泣きそうな顔の私を見て、シルバが心配そうに声をかける。
「……大丈夫。続けて?」
取りあえず、今は父さんの情報を聞くのが先だ。泣くのなんて、いつでもできるんだから。
「……で、今日俺たちが伐採場に出かけている時に店に来た客ってのが、城に勤めてる人だったらしいんだけどよ。その人が言ってたんだ。数年前に、城で勇者様を見たって」
「城、で?」
「あぁ。しかも詳しく聞いてみたら、その見た時期ってのが丁度エンウェインさんが失踪した時期と合うんだよ!」
「……つまり、父さんは城にいるってこと?」
まさか、お城に?でも父さんが失踪したあの時、お城の担当者の人に聞いてみたけど何も知らないって……あれは嘘だったの?
「いや、母さんもそう思ったらしく聞いてみたら、それ以来城では見た事ないって言うんだよ。だから、どこにいるかってのは分かんねぇんだけど……」
「そ、う……」
結局父さんがどこにいるのかは分からないままか……。でも確かに一つ分かったことがある。それは、父さんの失踪に城が、この王国が何らかの形で関わっていると言うことだ。
勿論その目撃者の見間違いかもしれない。でも、少しでもそこに希望があるのなら私は……。
「私、お城に行く」
「ティーレ!」
「お城に行って、父さんの手掛かりを見つけてくる」
「バカ! 何言ってんだよ!」
私の言葉にシルバが立ち上がり反論する。
「大体城の奴等には一度聞いて知らないって言われてんだろ!? そんな簡単に……」
「大丈夫。私、潜入するから」
「……はぁ?」
「使用人として、情報を集めてくるから!」
そう。普通に真正面から聞いたって答えてくれないことは分かっている。それならば敵の懐に潜り込んででも情報を集めてやるんだから!
「だからそういう問題じゃねぇって! バレたらどうすんだよ絶対無事じゃ済まねぇんだぞ!」
シルバが声を荒げて言う。その顔は真剣そのものだ。
この行動がどんな危険を秘めているか分かってる。分かっているけどでも……私は父さんの事を諦めたくなんかない!
「……何と言われても私、お城に行くよ」
「~~~~っ! もう勝手にしろ! お前なんか知らねぇ!!」
そう言ってシルバは乱暴に扉を開け家から出て行ってしまった。
ごめんねシルバ。シルバが心配してくれる気持ちも分かるんだけど、どうしてもこれだけは譲れないんだ……。
「……私が反対しても、行くんだろう?」
これまで黙って様子を見ていた母さんが口を開く。その口調は怒りも不安もない、とても優し気な声色だった。
「……うん。ごめんね、母さん」
「謝る必要なんてないよ。お前には、苦労かけるね」
「そんな事! そんな事なんて、全然……!」
「お二人さん。話はシルヴィアーノから聞いたよ」
その声に振り返ると、家の前にはモネおばさんが立っていた。
「城に行くんだって? 全く、あんたも大した度胸だねぇ」
おばさんが呆れたように言う。でもその顔は、どこか安心したようだった。
「正直、この話を聞いた時からティーレは城に乗り込むとか言い出すんじゃないかって思ってたんだよ。ま、使用人として潜入するってんだから、アタシの想像よりはましってとこかね」
そう言っておばさんは豪快に笑う。
……おばさんは、本当に私たちの事をよく見ていてくれているんだな。だから、そのおばさんにこれ以上甘えるようで申し訳ないんだけど……。
「あの、モネおばさんお願いが……」
「あぁ、セレナの事だろ? いいよいいよ。うちでちゃーんと面倒見るから。あんたはエンウェインさんのこと、しっかり探してくるんだよ!」
「……はい!」
こうして、私は沢山の人の協力を得て城へと向かうことになった。
母さんは、私たちの家からモネおばさんの家へ移って生活することになった。フランチェスカは少し寂しそうにしていたが、笑顔で見送ってくれた。シルバは……。
シルバは、見送りに来てくれなかった。きっと、私の事まだ怒っているに違いない。寂しいけど……絶対また会えるから!
その時は、ちゃんと仲直りしようね。
おばさんの言葉に思わず抱えていた木々を落としそうになる。慌てて持ち直し、今度は木々をゆっくり下に置いてからもう一度おばさんに問う。
「も、もう一回言って……?」
「だからねティーレ。お前の父親である、勇者エンウェインの情報が見つかったんだよ!」
「と、父さんの……?」
私は目を丸くして驚く。空気に触れた瞳がチリチリと乾いていくのが分かる。
父さん、今まで行方不明だった父さんの情報が……?
「教えてください! 父さんは、父さんは今どこにいるんですか!」
「落ち着くんだよティーレ! 今シルヴィアーノがセレナにも教えに行ってるからね。一緒に聞くと良いよ」
「お兄ちゃんはさっき出て行ったばかりだから直ぐに追いつくと思うよ!」
「わ、わかった!」
二人の言葉を聞くや否や、その場を走り出していた。本当は二人にお礼も言いたかったんだけど、頭の中は父さんのことでいっぱいだった。
父さん、今どこにいるの。何故帰ってきてくれないの。私、真実を知るのが少し怖いよ。父さん、父さん……。
無我夢中で走って家へと辿り着くと、勢いよく家の扉を開ける。
「母さん! 父さんは今どこにいるの!?」
家の中にはベッドに入ったまま体を起こしている母さんと、その傍らに座るシルバの姿があった。
「落ち着きなさいティーレ。今シルバ君から聞いていたところよ」
母さんのその言葉で少しは冷静さを取り戻したのだろうか。大きく何度か深呼吸をして昂った心と体を落ち着かせると、リビングにあった椅子をシルバの隣に並べ、座る。
「ごめん。もう大丈夫。シルバ、話を聞かせて」
私の言葉にシルバはちらりと母さんを見る。
「もう一度最初から聞かせてあげて」
シルバはその言葉に頷き、私の方を向くとゆっくりと口を開いた。
「実は……俺たちはセレナさんに頼まれて、ずっとエンウェインさんの行方を探っていたんだ。と言っても、町に出た時に噂を聞いたり製材所の顧客にそれとなく尋ねてみたりしてただけなんだけど」
「そう、だったんだ……」
母さんはそんな事何も言ってくれなかった。ただ、いつか帰って来るから待ちましょうって……。もしかして、私が悲しむから……?それで気を使っていてくれたの……?でも、そんなの寂しいよ。私、また独りぼっちだよ……。
「……続けても、いいか?」
今にも泣きそうな顔の私を見て、シルバが心配そうに声をかける。
「……大丈夫。続けて?」
取りあえず、今は父さんの情報を聞くのが先だ。泣くのなんて、いつでもできるんだから。
「……で、今日俺たちが伐採場に出かけている時に店に来た客ってのが、城に勤めてる人だったらしいんだけどよ。その人が言ってたんだ。数年前に、城で勇者様を見たって」
「城、で?」
「あぁ。しかも詳しく聞いてみたら、その見た時期ってのが丁度エンウェインさんが失踪した時期と合うんだよ!」
「……つまり、父さんは城にいるってこと?」
まさか、お城に?でも父さんが失踪したあの時、お城の担当者の人に聞いてみたけど何も知らないって……あれは嘘だったの?
「いや、母さんもそう思ったらしく聞いてみたら、それ以来城では見た事ないって言うんだよ。だから、どこにいるかってのは分かんねぇんだけど……」
「そ、う……」
結局父さんがどこにいるのかは分からないままか……。でも確かに一つ分かったことがある。それは、父さんの失踪に城が、この王国が何らかの形で関わっていると言うことだ。
勿論その目撃者の見間違いかもしれない。でも、少しでもそこに希望があるのなら私は……。
「私、お城に行く」
「ティーレ!」
「お城に行って、父さんの手掛かりを見つけてくる」
「バカ! 何言ってんだよ!」
私の言葉にシルバが立ち上がり反論する。
「大体城の奴等には一度聞いて知らないって言われてんだろ!? そんな簡単に……」
「大丈夫。私、潜入するから」
「……はぁ?」
「使用人として、情報を集めてくるから!」
そう。普通に真正面から聞いたって答えてくれないことは分かっている。それならば敵の懐に潜り込んででも情報を集めてやるんだから!
「だからそういう問題じゃねぇって! バレたらどうすんだよ絶対無事じゃ済まねぇんだぞ!」
シルバが声を荒げて言う。その顔は真剣そのものだ。
この行動がどんな危険を秘めているか分かってる。分かっているけどでも……私は父さんの事を諦めたくなんかない!
「……何と言われても私、お城に行くよ」
「~~~~っ! もう勝手にしろ! お前なんか知らねぇ!!」
そう言ってシルバは乱暴に扉を開け家から出て行ってしまった。
ごめんねシルバ。シルバが心配してくれる気持ちも分かるんだけど、どうしてもこれだけは譲れないんだ……。
「……私が反対しても、行くんだろう?」
これまで黙って様子を見ていた母さんが口を開く。その口調は怒りも不安もない、とても優し気な声色だった。
「……うん。ごめんね、母さん」
「謝る必要なんてないよ。お前には、苦労かけるね」
「そんな事! そんな事なんて、全然……!」
「お二人さん。話はシルヴィアーノから聞いたよ」
その声に振り返ると、家の前にはモネおばさんが立っていた。
「城に行くんだって? 全く、あんたも大した度胸だねぇ」
おばさんが呆れたように言う。でもその顔は、どこか安心したようだった。
「正直、この話を聞いた時からティーレは城に乗り込むとか言い出すんじゃないかって思ってたんだよ。ま、使用人として潜入するってんだから、アタシの想像よりはましってとこかね」
そう言っておばさんは豪快に笑う。
……おばさんは、本当に私たちの事をよく見ていてくれているんだな。だから、そのおばさんにこれ以上甘えるようで申し訳ないんだけど……。
「あの、モネおばさんお願いが……」
「あぁ、セレナの事だろ? いいよいいよ。うちでちゃーんと面倒見るから。あんたはエンウェインさんのこと、しっかり探してくるんだよ!」
「……はい!」
こうして、私は沢山の人の協力を得て城へと向かうことになった。
母さんは、私たちの家からモネおばさんの家へ移って生活することになった。フランチェスカは少し寂しそうにしていたが、笑顔で見送ってくれた。シルバは……。
シルバは、見送りに来てくれなかった。きっと、私の事まだ怒っているに違いない。寂しいけど……絶対また会えるから!
その時は、ちゃんと仲直りしようね。
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