クリノクロアの箱庭

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第百五十九話 獣人族

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呪われた種族。
それが、獣人族だと言う。
魔物混じりとも呼ばれて、人族からは同じ下層民からも下に見られていた。

でも、何となく今の僕から見ると、後ろに何かを企んだ神の顔が見え隠れしている。
いや、どの神がやってるのか、そもそも本当に神の仕業なのかは分からないから、見え隠れしている神の顔もぼやっとしてるんだけどね。

でも、種族全体が呪われるとか、人族に酷い扱いをされるとか、エルツの時に見てきたし、実際それは神の実験が元になっていたわけだし、獣人族もきっとそうなんだろうな、って考えてしまう。

「私ら獣人族は元の先祖は人族だったのだ。先祖と言ってもせいぜい百年程度しか獣人族は歴史が無いのだがね」
「ああ、魔女族とかエールブ族がエルツ族から分岐したみたいな感じですね?」
「よく知っているな。今ではその事を知る者はほとんど居ないだろうに。もしかして、他国では当たり前に教えられているのか?」
「あ、いえ。知り合いに生き残りがいるもんで」
「そうなのか。絶滅したものとばかり思っていたが」

本人達はフォルクヴァルツで元気にしてる筈だ。

「話が逸れたな。ではエルツ族が神と人族から生まれた、ハーフというのは知っているな?」
「ハーフって……。ええ、知ってます」
「それを知った神の1柱が、同じような種族を自分の眷属として欲しがったのだ」

なるほど。
それが、獣人族というわけか。
あれ?似たような話をフォルクヴァルツで聞いた、と言うより、リアルタイムで見ているよね。

神って、すぐ自分の部下とか眷属とか欲しがるものなのか?
そして、それ程までにエルツ族という存在が羨ましかったんだな。

なんて言う神なのかは知らないけど、昔エルツ族が誕生した事を知ったその神が、いいなあそれって思い、自分でも作ってみようとして、獣人族が生まれた。
そして、つい最近にも、ベニトアイトが人形族を精霊化させたりして、新しい眷属を作ろうとしていた。

スファレライトは勇者を作ろうとしていたから、違う目的だろうか。
アリアたんとか言ってたし、あれは、もっと俗っぽい願望のような気がする。

「あれ?でも、なんで獣人族が呪われただの、人族からは下に見られるだのしてるんですか?」
「私らは数少ない成功例だったからだよ」
「えっと、つまり、他の神から嫉妬された?」
「そうだ。エルツ族と同じ運命を辿っているのだ。エルツ族は国を作れる程人数を増やせたからいいが、私らは全部合わせても数百人程度しかいない。これではなかなか市民権は得られないだろうな」

そうか。エルツはその数を力にして、あそこまで世界へと発言できるようになったし、3国間で条約を結べる程に、認められるようになった。
獣人族は数が少ない上に、エルツと違って最初から嫉妬の餌食になっていたのだろう。

「今まで大変だったでしょうね。でも、もうこれからは大丈夫ですね。では、治療が必要な方を治したら、出発しましょう」
「ちょっと待つのだ。今の話を聞いていなかったのか?私らは人族に忌み嫌われる呪われた存在なのだぞ。そんな者を受け入れたら、確実に問題になる。あなた方に迷惑を掛けるわけにはいかない」
「別に呪いなんて存在しないですし、種族の違いで下に見るとかあり得ないので問題ないです。だいたいその原因になったエルツ族の子達もそこには居ますから」
「なんと。エルツ族が一緒に暮らしているのか?奴隷としてではなく?」
「あ、いやあ、立場上仕方なくお一人様限定で奴隷さんは居るのですが………。きっと見ていただければ分かります。本人に奴隷から解放すると言ったら、泣いて止めますから」
「泣いて、止めるのか?喜ぶのではなく」
「え、ええ、まあ、土下座して止めに来ると思います」
「そ、そうか。変わったエルツ族もいるものなのだな」

しまった。呆れさせちゃったよ。



とにかく一度僕達の居住区に来て、実際に見て欲しいと説得して、遂に付いてきてくれる事を了承して貰えた。
それにはまず病気のこの子を治してからだ。

「この子は病気……なんですよね?」
「ああ、おそらくだが。原因は分からないのだ。ノルド軍が行った実験でここに居る大半はおかしな薬を飲まされたり、何か不気味な魔法を掛けられたりしている。この子の親も実験で亡くなり、あの町にいても一人きりだったから、連れてきたのだ」

ステータスを見てみるか。ただの病気じゃないかもしれない。



名前 イトカ・ラシュカ
性別 女
年齢 12
レベル 1
職業 なし
種族 獣人族(ロジウム種)
階級 なし
称号 なし
所属 なし
加護 ベニトアイトの呪い

生命力 12/85
CP 2%
SP 32.0T/32.0T
状態 正常/呪い/酸化(低速)

スキル
アクアレギアの酸






ありゃりゃ、ベニトアイトが嫉妬している張本人だったか。
あ、でも、この病気はそこじゃないな。
多分獣人族にはこの呪いは全員付いて回ってるのだろう。

それよりもスキルがこの病気の原因だ。
状態が酸化となっているのは、よく分からないけど、スキルのせいでこの状態が悪くなっているのだと思う。
これがノルドで飲まされていた薬なのだろう。

これをステータスから消してしまえば、状態も良くなるだろう。
スキルからアクアレギアの酸というのを消して、保存する。

『変更を保存できません。他のプロセスが使用中です』

あれ?変更できなかった?
消したはずのスキルがまた元に戻っていた。

何だよ他のプロセスって。
結局は何度試してみても、このアクアレギアの酸と言うのは消せなかった。
どうしようかな。

そもそもこのアクアレギアの酸ってなんだろう。
久しぶりに真実の書で調べてみるかな。



アクアレギアの酸
大魔王アクアレギアのかく汗を集めた液体。
様々な金属種の獣人族や魔物族、エルツ族などを酸化する。
ただし、金属種の中でもタンタル種の獣人族、イリジウム種のエルツ族は酸化できない。
中和するためには、大量の氷水で希釈した後、ラウゲンの水溶液を服用する。



大魔王が出てきちゃったよ。
魔王ってクリスだけじゃないんだな。
しかも魔王の汗なんだ。
しょっぱそう。
それ飲まされるの別の意味で嫌だな。

中和する方法があるからやってみるか。
まずは氷水か。

「シリカ。何かバケツみたいなのとコップ出せるかな」
「うん?何するの?」
「この子を治すんだ」
「わ、分かった。はい、これでいい?」
「ありがとう、あ、ボクは魔法ダメだった。リーカ。これに氷水を作ってくれないかな」

バケツの中に氷と水の魔法を組み合わせて、氷水を作ってもらう。

「これでいいですか?」
「うん。じゃあ、これをこの子に飲ませよう」
「ちょっと、リン。ふざけてるの?そんなので病気が治るわけないじゃない。魔法で治せないの?」
「病気とは少し違うみたいなんだ。これだけだと治らないんだけど、まずは体の中の原因を薄める必要があるし、どうやら次の工程で熱が出るらしいんだ」

コップで冷たくなった水を飲ませて、布を濡らして体中を冷やしておく。

次はラウゲンを水で溶いたものだな……これって、パンを焼くときに使うものだけど、そのまま飲むのは劇薬だよな。
そんなの飲ませて平気なんだろうか。


ラウゲン
神コースティック・ソーダの唾液を人族が模したもの。
固まるとは白い粒状をしている。
魔族や魔王などが掛けた酸化の呪いを解くことが出来る。


こっちは唾液かよ。
神の唾液を人が真似て作ったのがラウゲンか。
それでパンを作るって……。
なんかあのラウゲンプレッツェルが食べづらくなっちゃったよ。

よく分からないけど、これを直接ステータスに入れてみるか。


スキル
アクアレギアの酸
コースティック・ソーダの唾液



今度は保存できたぞ。
しばらくすると、状態が変わってきた。


状態 正常/呪い/中和中/発熱中


「熱が出てくるから冷やしてあげて」

この子、イトカの顔や手についている金属の部分が熱くなってくるようだ。
布を氷水で冷やして金属部分に当てるとジュッと音がして湯気が出てくる。

「大丈夫なのか?物凄く熱が出ているように見えるんだが」
「も、問題無い、です。あ、ほら熱が下がってきましたよ」


状態 正常/呪い


酸化の呪いが消えたようだ。
スキルを見るとアクアレギアの酸とコースティック・ソーダの唾液はどちらも消えて無くなっていた。
お互いが反応しあって消滅してしまうようだ。

「もう大丈夫ですよ。あ、生命力は回復しておいた方がいいですね。リーカお願い」
「はい。レーベンの泉!」

今までピクリともしなかったイトカが、目を開けて辺りを見回している。

「イトカ!治ったのか?気分はどうだ?」
「………問題無い」

あれ?元気が無い?
生命力はちゃんと回復したし、酸化も無くなっているのは確認した。
もしかして呪いのせいとか?
あれも消しておくか?

「ああ、イトカは普段からこんな感じだったので、これでいつも通りだから」
「あ、そうでしたか。それなら良かった」

ん?イトカがボクの事をじっと見つめている。
えっと、今はアリアだし、まだ何も会話もしてないし、問題無いよな。
どうも女の子相手だと、また懐かれてしまわないか、気になってしまう。
あ、でも、ミーシャの例があるからな。
こっちが女子でも、ありえなくは無い。

「えっと。大丈夫かな?」
「…………平気………」

返事はしてくれるんだな。
照れている訳ではないみたいだし、あまり話したがらない性格なだけか。

「………………ありがとう」
「ん?ああ、どういたしまして」

ま、まあ、いいか。

これで、獣人族も一緒について来てくれる。
ここにも8人の獣人族が居たので、同じようにインベントリに入って貰った。
ただ、もしかしたら中で人族と争い事になるのでは無いかと思ったので、獣人族は別の枠にしておいた。

居住区に帰ってから、その辺りは確認しよう。

結局、1組分はこちらから、もう1組分はあちらから断ったので、5グループ合計37人の難民を受け入れることになった。
思ったより多くなってしまった。
病人と怪我人を検索して7人だったから、それくらいかな、とか思っていたけど、そうだよ、そういう人の周りには何人も同じように逃げて来た人が一緒にいるのは当たり前だったんだよ。

それでも、結構ギリギリの病状の人も居たし、間に合って良かった。




シルヴルにまた迎えに来てもらい、家まで送ってもらう。

「シルヴルさんは普段何をしてるんですか?」
「うえっ?!そ、そそその、人族の文化を観察するとか、かな」
「へぇ~、すごいですね」
「そ、そんなんでもないよ」

アリアでシルヴルに話し掛けてみた。
やっぱり女子に話しかけられてテンパってるみたいだな。
中身はボクなんたけどね。

「ワシさんが喋ったのです!ワシさん、こんにちはです!」
「ここここ、こんにちは」

こここって、鳥かよ!あ、鳥だった。

「ワシさんはマスターのお友達なのです?」
「マ、マスター?」
「アズの創造主なのです。確かリーンハルトとか言うハンドル名なのです」
「ああ、リーンハルトくんの………え?創造主って、キミはリーンハルトくんに作られたの?」
「はいなのです。こっちのシリカちゃんもマスター作なのです」
「こっちの可愛い子も?!」
「私はパパの人格を貰った訳じゃないから、半分だけね」
「パパ……くっ!こんな可愛い子を2人も作って、しかもそのうちの1人にはパパと呼ばせてるなんて!リーンハルトくんは友達だと思ったのに!」

これくらいで友達じゃなくなるのかよ。
呼び方だって、シリカが自分からそう呼んだんだからね。

「はい!はいはーい!それなら、私はリーンハルトくんの奴隷です!ふふん」

なんでそこでリーカが張り合うんだよ。
奴隷なんて自慢できる立場じゃないよ?

「奴隷だと?!くっそお!アイツあんな虫も殺せないような顔しておいて、こんな美少女を奴隷にしてるだと!」
「え?美少女って!えへへ。リーンハルトくんも美少女だからって、奴隷にしたんですかね?」

違うよ。嬉しそうにこっち見ないでよ。スファレライトの命令から解放するために仕方なく主従契約を結んだだけだよ。

「わ、わたしは、リンのこ、婚約者だ!ど、どうだ!」
「な、何ぃ!?婚約者までいるのか?!」

レリアまで参加しないでよ。
しまったな。ちょっとシルヴルをからかうだけのつもりが、何の自慢大会だよ。

「それで、こっちがアリアママ。パパの嫁」

ちょい待ち。シリカを見ると悪い笑顔をしている。
調子に乗ってやがる。

「こ、こんな超絶美少女がリーンハルトくんの嫁………。なんて羨ましい」
「違う。嫁とかじゃなくて、ボクはその違うんだよ」
「しかもボクっ娘ツンデレとかっ!!」

今更、中身はリンだよとか言えないよ。
もうアリアでシルヴルには会わないようにしないと。
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