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第百六十話 居住地
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僕達の居住区に着いた。
一旦、インベントリから皆んなには出てきて貰った。
37人の人達が一度に集まるとなかなかの人数になる。
「ようこそ、皆さん。ここが、皆さんのこれから住む所です!」
不安な表情の人もいれば、ワクワクしている子供もいたり、思いは人それぞれのようだ。
なにしろ、家が一軒あるのみで、ただの更地があるだけだもんね。
やっぱり、少しでも作っておけば良かったかな。
大人の体力がある人達に手伝ってもらい、まずは救出したグループごとに5軒の家を建てることにした。
どのグループにも2~3人は力のありそうな人はいたので、全員集まって皆んなで造っていく。
材料は前にたくさん用意してあったものがまだ大量に残っている。
基礎作りは灰色の泥を捏ねたり、枠に流し込むような作業は体力さえあれば出来るから、少し大きめの子供にもやってもらった。
大人達は基礎の枠を組んだり、固まってきた基礎に柱を乗せたりと、魔法や僕達の高レベルの筋力が必要な場面以外はほとんど、本人達が作業をしていった。
それでも、接着とかのスキルもそうだし、梁や棟木のような大きな木材を上に上げるような、力が必要な時は僕を始めとして、僕の家族達が活躍した。
ちなみにリンとしては、まだ一回も難民の人達の前には出ていない。
冗談では無く、本当にリンでの接触は禁止だった。
そんなに信用がないとは。
我が家の中から、窓にはまった板を少しずらして、外の様子を見ている。
別にアリアでは表に出ているので、こんな事をする必要はないんだけど、今の心象を表現してみた。
「暇なのかしら。それなら外に人達に、食事でも作ったら?わたしがそれを持っていって、さも、わたしが作りましたって顔で皆んなに褒めてもらうわ」
「ズルすぎ。それなら、フィアも手伝ってよ。パンにハムを挟むくらいなら出来るでしょ?」
「失礼ね。ハムだけじゃなくてレタスを挟むのだって余裕よ。なんならパンにマスタードだって………多分塗れるわ」
「そこは自信持って言おうよ。多分なの?まあ、いいや。ほら、パンは切っておいたから、あとはハムとレタスとマスタードね」
パンは八枚切りにして、ハムも薄く切り、洗って水を切ったレタスとマスタードの瓶をフィアに渡す。
あとは、挟むだけのほぼ完成品だな。
「待ちなさい。マスタードは指で塗るのでいいのかしら。いえ、分かっているのよ?一応確認しておかないといけないから、聞いているだけだわ」
「えっと、出来れば今日はこのナイフで塗ってほしいかな。指でもいいけど、手にしみそうだしね」
「そ、そう、そうね!ナイフね!あ、でも、パンが切れてしまわないかしら」
ブフッ
「……何故笑ったのかしら。やっぱり、わたしの事をバカにしているのかしら」
「してないしてない!困りフィアが可愛いからつい和んじゃっただけだよ」
「困ってなんかいないわ。このナイフでパンを……パンをこうして」
「わあああ!ちょっと待った!それじゃあ手が切れちゃう!ゆ、指でいこう!フィアのやり方の方が正しかったかも!ごめん、僕間違えちゃった!」
「そ、そう?そうよね。まったく、リンは料理は上手なはずなのに、こういうところが抜けているのよね」
可愛いけど、危険なのはまずいよ。
その後もゆで卵の殻を剥いてもらったり、ミニトマトのヘタを取ってもらったり、安全な作業をして貰った。
「わたしだけ楽な作業になってしまっているわ。何か炒め物でも作ろうかしら」
「え?いや、今でもホント大変な作業をお願いしちゃってるから、大丈夫だよ?ホントホント」
「そう?ならいいのだけれど」
危ない危ない。
変に楽しくなってるみたいだから、休んでてとか言いづらいよなあ。
出来上がった食事はラナやマルモ達に持って行って貰った。
本当にフィアも作ったんだから、それこそ作りましたって顔でフィアも持って行って良かったんだけど、フィアは行かずにリビングで本を読んでいた。
まだ、やっぱり大勢の人の中に出るのは苦手らしい。
まあ、そこは徐々にだね。
僕はというと、やっぱり外出は禁止のようで、自宅待機を命じられていた。
いいよいいよ、どうせアリアで動き回れるからそっちに集中してやる。
リンの方はふて寝、と言うよりはアリアメインで動かす為に、ソファで横になってアリアを動かしやすくする。
アリアの方は大忙しだ。
パワーだけはあるから、大人の男性より物を運んだり、木材を持ち上げたりと、活躍できた。
「この村の女神様は力持ちですなあ!」
「わははっ!そうだな!こんなに働きもんの女神様は見たことないな!」
どっ、と笑いが起こる。
え?なんで?
ボクが動くとおかしいのかな?
まあ、皆んなが笑顔になるんなら何でもいいか。
しかし、もうここを村と言ってくれるのかあ。
まだ、何も無い、ただの広場でしかない、人が集まっただけのここを村と呼んで良いのだろうか。
「ここは村、でいいのでしょうか?」
「そりゃあそうだ。こんだけ人がいて、こんだけ一つの事を一緒になってやってるんだから、それはもう村と言えるだろうよ」
「そだな」
「ああ、魔物混じりが居たのは驚いたがな」
「そうだな、あいつらさえ居なければ良かったんだ」
魔物混じりって本当に言うのか。
この流れは良くない。
「あの。皆さん?あの方達は魔物混じりではなくて、獣人族です。あなた方と同じで、上でも下でもないですよ?」
「それはいくら女神様のお言葉でも、なあ」
「ああ……魔物混じりが居ると俺達も呪われるからな」
「はあ……。まったく!どの国でも一部の神がやっている事に振り回されているんですから!」
「神、様が?」
「そうです!獣人族に掛かっている呪いはベニトアイトと言うただの1柱の神が付けた逆加護でしかないんです。他の人に移ることもないし、ただそれだけで、人の上下が決まるわけではないです」
ここでも、こう言う問題が出てくるのか。
面倒だな。ベニトアイトのやつも自分で眷属を作れないからって、呪いとか掛けなくてもいいのに。
今ここに居る人達だけだと意味が無いかも知れないけど、やっぱり獣人族の呪いは解いておいた方が良さそうだ。
「皆さん!この村に居る人は全員獣人族の事を魔物混じりと呼ぶのは禁止です!それに、人族の下と見る事も禁止です!いいですね!」
「は、はあ」
「む、難しいな、なあ」
「時間は掛かるかもしれませんが、この村はそう言う階級とか種族の差は無くしていきます。私も女神様ではなく、ただのアリアと呼んでください」
実際、中身は女神じゃないしね。
ステータスだけのなんちゃって女神だよ。
「そ、そんなあ、女神様は女神様はだからなあ」
「それならアリア様だ」
「様もいりません!」
「呼び捨てなんてできないよなあ」
「とにかく!役職が付くことはあっても人の上下はありません。あ、ラナ!ちょうど良かった。皆さん、このラナっていう子は、私の家族なんですけど、実はエルツ族なんです」
「ちょっ、アリアちゃん、いきなりバラしちゃうわけ?」
ざわざわと騒ぎ出す。
まだ、早かったかな。
獣人族の事もあるし、ちょうどいいタイミングだと思ったんだけど。
「エルツ様がいらっしゃるとは、いやあ、この村に来て良かった!」
「しかも、女神様のご家族なんて!ああ、なんて素晴らしい事なんだ!」
「え?エルツ様?!それは一体どういう事なんですか?」
「噂だと他の国ではエルツ様の事を奴隷のように扱っているとか。だけど、ノルドでは神の子と呼んで幸せの象徴になっているんだよ」
え?ノルドではそうなの?
おかしいな。ノルドでもエルツ族は迫害の対象なのかと思っていたよ。
「でも、それなら尚の事、獣人族の事を下に見るのはおかしいですよ?エルツ族も獣人族もどちらも神の子です。同じ神に愛された種族なんですよ?」
元ノルドの人達は今までの常識を覆す話にしばらくの間、ざわざわと話込んでいた。
こういう事は焦らず、じっくりと、皆んなが自然と納得できるまで付き合っていこう。
エルツの事を敬っているのなら、案外早く解決するかもしれないしね。
家造りは思っていたより早く進んだ。
一度、僕達だけで作っていた事もあるし、難しいところは魔法やスキルでズルしてるから、今度は半日で一軒出来上がってしまった。
こんなんでいいんだろうか。
慣れてきたから、次は二手に分かれて2軒同時に作る事にした。
それでも、今日中に全部を建てられる訳ではないので、今日のところはインベントリ内で夜を過ごしてもらう事になるだろう。
中は快適みたいだし、ずっとそこでも良いと思う人もいそうだけど、自由に出入り出来ないのはやっぱり窮屈だよな。
扉があって、そこから簡単にインベントリに入れたりすると便利なんだけどな。
大人達とボクの家族が家を造っている間、実験場だった場所にはノルドの子供達が遊んでいた。
ここは今となっては資材置き場になっていて、大量の木材やギベオン板や灰色の泥の元だったりが置いてあり、子供が遊ぶには少し危ないかもしれない。
キャッキャと楽しげな声が響いている間はいいけど、事故にならない内に別の場所に遊べる所を作らないとだな。
アリアでこっそり、資材を家の裏に運び込む。
ここなら、家族以外は誰もこないから、リンが何かやっても問題ないだろう。
ギベオン板や木材から板を切り出して、接着で組み上げていく。
リンとアリアの一人二役で思いつくままの形を作っていく。
板で滑り台を作ったり、ギベオン板を棒状に丸めて、鉄棒やうんていを作る。
あとは何ができるだろう。
このギベオン棒は中が中空なのに頑丈だな。
棒でいくつもの四角を作りそれを何個も重ねて、ジャングルジムを作る。
板とギベオン棒を組み合わせてシーソーやブランコも作った。
「わあ。にいさん。これすごいですね。遊び道具、ですか?」
「うん。マルモも遊んでみる?小さな子でも危なくないようにしたつもりだけど」
「見たことが無いものばかりですけど、こういうのってフォルクヴァルツにありましたっけ」
「あ、いや、無いかな?そう言われれば僕も見たことないな」
「見たことが無いのに作れるんですか?ふふっ、にいさんっておかしい人ですね」
そ、そうかな。そうだよね。
真実の書にあった「子供の遊具」にあった情報を元にして作ったから、僕も知らない物ばかりなんだよ。
一通り遊具を作ったら、リンでは迎えに行けないから、アリアとマルモとで子供達を呼びに行った。
子供達と会ったら、ラナやリーカに怒られるので、リンはこっそり勝手口を少しだけ開けて覗くだけにしておく。
「皆んな!あっちに遊び場が出来たよ!おいで!」
わあああ、と子供達が走って家の裏へと突っ込んでいく。
若い子は元気だなあ。
まあ、ボクもほとんど同じような歳だけどさ。
遊び場は何の説明が無くても、ちゃんと遊べているようだ。
すごいな、自分で作っておいてなんだけど、ボクには使い方が分からない物とかあったのに、よく使いこなしているな。
「楽しそうで良かった良かった」
「にいさん、お年寄りっぽいですよ?」
「え?そうなの……。マルモも一緒に遊んで来なよ」
「いえ。私はにいさんと、あ、アリアねえさんと一緒でいいです」
「別にいい直さないでいいよ」
ふと見ると、端の方に一人、女の子がポツンと立っていた。
あの、獣人族の呪いを解いた子だ。
確か、名前はイトカだったな。
やっぱり、獣人族だと仲間に入れないのかな。
と思ったら、もう2人、獣人族の子供がいて、その子達は普通に人族の子に混ざって楽しそうに遊んでいた。
子供は種族とか気にしないのか。
そうすると、このイトカは性格的に混ざれていないのか。
「イトカちゃん?皆んなと遊ばないの?」
「………うん、いい」
「そっか。じゃあ、本でも読む?家の中にたくさんあるよ?」
「読む」
「うん、じゃあ行こっか」
無理に混ざる必要もない。
他にやりたい事があるなら、好きにやるのが一番だ。
子供なんだから。
「はい。どうぞ。いらっしゃいませ」
裏の勝手口からだけど、イトカを家の中に招き入れる。
あ、しまった、僕が居たんだ。
アリアを挟んで、リンとイトカの目が合ってしまう。
いつまでも覗いていないで、さっさと奥に引っ込んでいれば良かった。
「にいさん。何やってるんですか。出てきたらダメですよ」
「あ、ごめんごめん。部屋に行ってるね。イトカ、ごゆっくり」
「ああ、もう。話したらダメですって!」
「あ、そうか。失敗失敗」
自分が勝手口に居たのをすっかり忘れていたのは、本当にうっかりだったけど、話しかけたのはわざとだ。
僕だって新しく来た誰かと話したかったんだよ!
まあ、一言でも話せたからいいか。
大人しく自室待機しよう。
そう思って二階に行こうとしたら、袖を掴まれた。
「イトカ?」
「本、読んで」
えっと。
これは、土下座か懺悔か?
どちらかを覚悟しておいた方がいいんだろうか。
イトカの後ろから、はあああ、とマルモの長い溜息が聞こえてきて、そう思えてきた。
一旦、インベントリから皆んなには出てきて貰った。
37人の人達が一度に集まるとなかなかの人数になる。
「ようこそ、皆さん。ここが、皆さんのこれから住む所です!」
不安な表情の人もいれば、ワクワクしている子供もいたり、思いは人それぞれのようだ。
なにしろ、家が一軒あるのみで、ただの更地があるだけだもんね。
やっぱり、少しでも作っておけば良かったかな。
大人の体力がある人達に手伝ってもらい、まずは救出したグループごとに5軒の家を建てることにした。
どのグループにも2~3人は力のありそうな人はいたので、全員集まって皆んなで造っていく。
材料は前にたくさん用意してあったものがまだ大量に残っている。
基礎作りは灰色の泥を捏ねたり、枠に流し込むような作業は体力さえあれば出来るから、少し大きめの子供にもやってもらった。
大人達は基礎の枠を組んだり、固まってきた基礎に柱を乗せたりと、魔法や僕達の高レベルの筋力が必要な場面以外はほとんど、本人達が作業をしていった。
それでも、接着とかのスキルもそうだし、梁や棟木のような大きな木材を上に上げるような、力が必要な時は僕を始めとして、僕の家族達が活躍した。
ちなみにリンとしては、まだ一回も難民の人達の前には出ていない。
冗談では無く、本当にリンでの接触は禁止だった。
そんなに信用がないとは。
我が家の中から、窓にはまった板を少しずらして、外の様子を見ている。
別にアリアでは表に出ているので、こんな事をする必要はないんだけど、今の心象を表現してみた。
「暇なのかしら。それなら外に人達に、食事でも作ったら?わたしがそれを持っていって、さも、わたしが作りましたって顔で皆んなに褒めてもらうわ」
「ズルすぎ。それなら、フィアも手伝ってよ。パンにハムを挟むくらいなら出来るでしょ?」
「失礼ね。ハムだけじゃなくてレタスを挟むのだって余裕よ。なんならパンにマスタードだって………多分塗れるわ」
「そこは自信持って言おうよ。多分なの?まあ、いいや。ほら、パンは切っておいたから、あとはハムとレタスとマスタードね」
パンは八枚切りにして、ハムも薄く切り、洗って水を切ったレタスとマスタードの瓶をフィアに渡す。
あとは、挟むだけのほぼ完成品だな。
「待ちなさい。マスタードは指で塗るのでいいのかしら。いえ、分かっているのよ?一応確認しておかないといけないから、聞いているだけだわ」
「えっと、出来れば今日はこのナイフで塗ってほしいかな。指でもいいけど、手にしみそうだしね」
「そ、そう、そうね!ナイフね!あ、でも、パンが切れてしまわないかしら」
ブフッ
「……何故笑ったのかしら。やっぱり、わたしの事をバカにしているのかしら」
「してないしてない!困りフィアが可愛いからつい和んじゃっただけだよ」
「困ってなんかいないわ。このナイフでパンを……パンをこうして」
「わあああ!ちょっと待った!それじゃあ手が切れちゃう!ゆ、指でいこう!フィアのやり方の方が正しかったかも!ごめん、僕間違えちゃった!」
「そ、そう?そうよね。まったく、リンは料理は上手なはずなのに、こういうところが抜けているのよね」
可愛いけど、危険なのはまずいよ。
その後もゆで卵の殻を剥いてもらったり、ミニトマトのヘタを取ってもらったり、安全な作業をして貰った。
「わたしだけ楽な作業になってしまっているわ。何か炒め物でも作ろうかしら」
「え?いや、今でもホント大変な作業をお願いしちゃってるから、大丈夫だよ?ホントホント」
「そう?ならいいのだけれど」
危ない危ない。
変に楽しくなってるみたいだから、休んでてとか言いづらいよなあ。
出来上がった食事はラナやマルモ達に持って行って貰った。
本当にフィアも作ったんだから、それこそ作りましたって顔でフィアも持って行って良かったんだけど、フィアは行かずにリビングで本を読んでいた。
まだ、やっぱり大勢の人の中に出るのは苦手らしい。
まあ、そこは徐々にだね。
僕はというと、やっぱり外出は禁止のようで、自宅待機を命じられていた。
いいよいいよ、どうせアリアで動き回れるからそっちに集中してやる。
リンの方はふて寝、と言うよりはアリアメインで動かす為に、ソファで横になってアリアを動かしやすくする。
アリアの方は大忙しだ。
パワーだけはあるから、大人の男性より物を運んだり、木材を持ち上げたりと、活躍できた。
「この村の女神様は力持ちですなあ!」
「わははっ!そうだな!こんなに働きもんの女神様は見たことないな!」
どっ、と笑いが起こる。
え?なんで?
ボクが動くとおかしいのかな?
まあ、皆んなが笑顔になるんなら何でもいいか。
しかし、もうここを村と言ってくれるのかあ。
まだ、何も無い、ただの広場でしかない、人が集まっただけのここを村と呼んで良いのだろうか。
「ここは村、でいいのでしょうか?」
「そりゃあそうだ。こんだけ人がいて、こんだけ一つの事を一緒になってやってるんだから、それはもう村と言えるだろうよ」
「そだな」
「ああ、魔物混じりが居たのは驚いたがな」
「そうだな、あいつらさえ居なければ良かったんだ」
魔物混じりって本当に言うのか。
この流れは良くない。
「あの。皆さん?あの方達は魔物混じりではなくて、獣人族です。あなた方と同じで、上でも下でもないですよ?」
「それはいくら女神様のお言葉でも、なあ」
「ああ……魔物混じりが居ると俺達も呪われるからな」
「はあ……。まったく!どの国でも一部の神がやっている事に振り回されているんですから!」
「神、様が?」
「そうです!獣人族に掛かっている呪いはベニトアイトと言うただの1柱の神が付けた逆加護でしかないんです。他の人に移ることもないし、ただそれだけで、人の上下が決まるわけではないです」
ここでも、こう言う問題が出てくるのか。
面倒だな。ベニトアイトのやつも自分で眷属を作れないからって、呪いとか掛けなくてもいいのに。
今ここに居る人達だけだと意味が無いかも知れないけど、やっぱり獣人族の呪いは解いておいた方が良さそうだ。
「皆さん!この村に居る人は全員獣人族の事を魔物混じりと呼ぶのは禁止です!それに、人族の下と見る事も禁止です!いいですね!」
「は、はあ」
「む、難しいな、なあ」
「時間は掛かるかもしれませんが、この村はそう言う階級とか種族の差は無くしていきます。私も女神様ではなく、ただのアリアと呼んでください」
実際、中身は女神じゃないしね。
ステータスだけのなんちゃって女神だよ。
「そ、そんなあ、女神様は女神様はだからなあ」
「それならアリア様だ」
「様もいりません!」
「呼び捨てなんてできないよなあ」
「とにかく!役職が付くことはあっても人の上下はありません。あ、ラナ!ちょうど良かった。皆さん、このラナっていう子は、私の家族なんですけど、実はエルツ族なんです」
「ちょっ、アリアちゃん、いきなりバラしちゃうわけ?」
ざわざわと騒ぎ出す。
まだ、早かったかな。
獣人族の事もあるし、ちょうどいいタイミングだと思ったんだけど。
「エルツ様がいらっしゃるとは、いやあ、この村に来て良かった!」
「しかも、女神様のご家族なんて!ああ、なんて素晴らしい事なんだ!」
「え?エルツ様?!それは一体どういう事なんですか?」
「噂だと他の国ではエルツ様の事を奴隷のように扱っているとか。だけど、ノルドでは神の子と呼んで幸せの象徴になっているんだよ」
え?ノルドではそうなの?
おかしいな。ノルドでもエルツ族は迫害の対象なのかと思っていたよ。
「でも、それなら尚の事、獣人族の事を下に見るのはおかしいですよ?エルツ族も獣人族もどちらも神の子です。同じ神に愛された種族なんですよ?」
元ノルドの人達は今までの常識を覆す話にしばらくの間、ざわざわと話込んでいた。
こういう事は焦らず、じっくりと、皆んなが自然と納得できるまで付き合っていこう。
エルツの事を敬っているのなら、案外早く解決するかもしれないしね。
家造りは思っていたより早く進んだ。
一度、僕達だけで作っていた事もあるし、難しいところは魔法やスキルでズルしてるから、今度は半日で一軒出来上がってしまった。
こんなんでいいんだろうか。
慣れてきたから、次は二手に分かれて2軒同時に作る事にした。
それでも、今日中に全部を建てられる訳ではないので、今日のところはインベントリ内で夜を過ごしてもらう事になるだろう。
中は快適みたいだし、ずっとそこでも良いと思う人もいそうだけど、自由に出入り出来ないのはやっぱり窮屈だよな。
扉があって、そこから簡単にインベントリに入れたりすると便利なんだけどな。
大人達とボクの家族が家を造っている間、実験場だった場所にはノルドの子供達が遊んでいた。
ここは今となっては資材置き場になっていて、大量の木材やギベオン板や灰色の泥の元だったりが置いてあり、子供が遊ぶには少し危ないかもしれない。
キャッキャと楽しげな声が響いている間はいいけど、事故にならない内に別の場所に遊べる所を作らないとだな。
アリアでこっそり、資材を家の裏に運び込む。
ここなら、家族以外は誰もこないから、リンが何かやっても問題ないだろう。
ギベオン板や木材から板を切り出して、接着で組み上げていく。
リンとアリアの一人二役で思いつくままの形を作っていく。
板で滑り台を作ったり、ギベオン板を棒状に丸めて、鉄棒やうんていを作る。
あとは何ができるだろう。
このギベオン棒は中が中空なのに頑丈だな。
棒でいくつもの四角を作りそれを何個も重ねて、ジャングルジムを作る。
板とギベオン棒を組み合わせてシーソーやブランコも作った。
「わあ。にいさん。これすごいですね。遊び道具、ですか?」
「うん。マルモも遊んでみる?小さな子でも危なくないようにしたつもりだけど」
「見たことが無いものばかりですけど、こういうのってフォルクヴァルツにありましたっけ」
「あ、いや、無いかな?そう言われれば僕も見たことないな」
「見たことが無いのに作れるんですか?ふふっ、にいさんっておかしい人ですね」
そ、そうかな。そうだよね。
真実の書にあった「子供の遊具」にあった情報を元にして作ったから、僕も知らない物ばかりなんだよ。
一通り遊具を作ったら、リンでは迎えに行けないから、アリアとマルモとで子供達を呼びに行った。
子供達と会ったら、ラナやリーカに怒られるので、リンはこっそり勝手口を少しだけ開けて覗くだけにしておく。
「皆んな!あっちに遊び場が出来たよ!おいで!」
わあああ、と子供達が走って家の裏へと突っ込んでいく。
若い子は元気だなあ。
まあ、ボクもほとんど同じような歳だけどさ。
遊び場は何の説明が無くても、ちゃんと遊べているようだ。
すごいな、自分で作っておいてなんだけど、ボクには使い方が分からない物とかあったのに、よく使いこなしているな。
「楽しそうで良かった良かった」
「にいさん、お年寄りっぽいですよ?」
「え?そうなの……。マルモも一緒に遊んで来なよ」
「いえ。私はにいさんと、あ、アリアねえさんと一緒でいいです」
「別にいい直さないでいいよ」
ふと見ると、端の方に一人、女の子がポツンと立っていた。
あの、獣人族の呪いを解いた子だ。
確か、名前はイトカだったな。
やっぱり、獣人族だと仲間に入れないのかな。
と思ったら、もう2人、獣人族の子供がいて、その子達は普通に人族の子に混ざって楽しそうに遊んでいた。
子供は種族とか気にしないのか。
そうすると、このイトカは性格的に混ざれていないのか。
「イトカちゃん?皆んなと遊ばないの?」
「………うん、いい」
「そっか。じゃあ、本でも読む?家の中にたくさんあるよ?」
「読む」
「うん、じゃあ行こっか」
無理に混ざる必要もない。
他にやりたい事があるなら、好きにやるのが一番だ。
子供なんだから。
「はい。どうぞ。いらっしゃいませ」
裏の勝手口からだけど、イトカを家の中に招き入れる。
あ、しまった、僕が居たんだ。
アリアを挟んで、リンとイトカの目が合ってしまう。
いつまでも覗いていないで、さっさと奥に引っ込んでいれば良かった。
「にいさん。何やってるんですか。出てきたらダメですよ」
「あ、ごめんごめん。部屋に行ってるね。イトカ、ごゆっくり」
「ああ、もう。話したらダメですって!」
「あ、そうか。失敗失敗」
自分が勝手口に居たのをすっかり忘れていたのは、本当にうっかりだったけど、話しかけたのはわざとだ。
僕だって新しく来た誰かと話したかったんだよ!
まあ、一言でも話せたからいいか。
大人しく自室待機しよう。
そう思って二階に行こうとしたら、袖を掴まれた。
「イトカ?」
「本、読んで」
えっと。
これは、土下座か懺悔か?
どちらかを覚悟しておいた方がいいんだろうか。
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そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
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