魔力無しグルコ25歳の備忘録

イイズナそまり

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第九話

グルコと子供馬のボリル

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 町の外れのナナフシ薬局/我が家には馬小屋が無い

「ひどい!ボリル家畜じゃないもん!」
〈ヒィーン ヒィーン ヒィーン〉
「家畜の仔馬じゃないもん!」
〈ヒィーン ヒィーン ヒィーン〉
馬小屋をどこに建てるか聞いたら鳴かれた 泣かれた?
「ごめんね。一緒にお家入ろうか」
〈ヒィーン ヒィーン〉テコテコテコテコ

副魔塔主からの餞別 天蓋付きキングサイズベッド
デカくて邪魔だから新たに購入したベッドの配達ついでに家具屋に売りつけようと思っていた代物
「これ気に入ったの。いい感じ。好き」
「良かったね」
俺は長椅子で寝る
問題はトイレと風呂 当たり前だけどサイズが合わない 俺から話しを切り出すより本人が困った時に対処する方向で

「おやすみボリル」
「グルコおやすみ」
部屋の灯りを落とすと人族の子供と話してるみたい

「おはようボリル」
「グルコおはよう」
うん 馬だ 仔馬がベッドに寝そべっている

「いただきます」
「グルコいただきます」
「⋯⋯⋯」
うん 馬だ 仔馬がテーブルでご飯食べてる
パン トマト キュウリ 丸ごとテーブルの上に直に置いた 椅子には座らない
「ボリルは家畜の仔馬に見えるけど、ボリルだから子供馬だね」
これは店長に聞かせてる 大事な情報だから覚えてね
「うん。ボリル子供馬」
「⋯⋯⋯」
俺・ボリル・店長 今朝は三人で食卓を囲む

 店長はナナフシ薬局が店休日でも我が家に出勤する
今朝もいつものように転移魔法で現れたがボリルを見ても何も言わない
何故だかずっと一言も喋らないでいる
この古代兵器西の森のシワシワ魔女の存在にボリルは気付いてる様子が無い
私は空気ですここには居ません魔法を使っているのか
俺はこの魔法に付き合う事にした

「ボリル、俺、町へ買い出しに行くよ。一緒に行く?それともお留守番する?」
言葉選びに気を使う 馬にお留守番を聞くのは変だけど人間の子供だったら選択肢に入る
「ボリルお留守番する」
「わかった。じゃあ4時間くらい俺は居ないからね」
店長は居るだろうけどね
「4時間覚えた」
時計が読める 時間の感覚もある 賢い子供馬だ
「行ってきますボリル」
「グルコいってらっしゃい」
「⋯⋯⋯」




 商業ギルドが珍しく空いている 午前中は行商人や商店街の人でごった返しているのに
「この時間に空いてるの珍しいですね、何かあったんですか?」
今日の窓口はアスリート系の女性 人当たりが良いので情報を集めるのが上手い 商売人情報はこの人から貰う
「グルコさん、いらっしゃい。ポーション配達員は楽しんでますか?」
俺の質問に答えない さり気なく質問を返してきた
「ご存知の通り、ポーションはドロイの上級しか扱ってないので、まだ楽しむ感じに出来ていません」
一応 近況を話す
「そうなんですね。これからが楽しみですね。がんばってください」
窓口では話せないんだ 何があったんだろう
「今日はご商談ですね?」
なるほど
「靴職人をご紹介頂きたいんですが、どなたかいらっしゃいませんか?」
「お急ぎですね?」
なるほど
「ハイ」
「商談室へどうぞ」
なるほど
「ハイ」
商談室に通されるとギルマス 商業さんが待機していた いつもの無表情だけどなんか怖い
「グルコさん、いらっしゃい。」
「お世話になっております」
「いつどこでお馬さんを買ったんですか?おいくらでしたか?」
食い気味
「買ってないです」
昨夜馬に乗って帰る姿を見られたんだな
「とある筋の方から預かったんですよ」
誰に預かったかは言えませんよアピール
「いつどこで預かったんですか?」
食い下がるなぁ
「話せません」
眉間にシワが入った
話しをそらすか
「ところで、乗馬靴を持っていなくて作りたいんですが、ご紹介頂けますか?」
「ご予算はいかほど?」
「この町の相場を知りません」
「わかりました。そちらでお待ちください。」
「ハイハイ」

 俺は促され商談テーブルに着く この町一番の柔らかい長椅子 じつは柔らか過ぎても腰には良くない 浅く座る
提供された馬装具カタログにサラッと目を通すとやたらお高い商品ばかり
これはわざとか?
俺が話しを切り出すのをジッと待ち構えてる
「何かあったんですか?」
「困っています。おそらく貴方に」
また食い気味だよ この人らしくない
「昨夜遅く〈黒いお馬さんの幽霊が出た〉と複数の町民から冒険者ギルドへ通報がありました。
情報を纏めると、黒いお馬さんは円舞台広場から西の森へ向かったようです。」
あちゃー これはめんどくさい流れだ
「黒髪の人間が跨っていたという情報もありました。」
「そうですか」
「黒髪は珍しいですよね」
ゲロッてサッサと楽になっちまいな 的な圧が来た
「それ俺です」
「グルコさんですね。わかりました。」
わかってても敢えて俺に名乗らせ証言を得る 言質取りの鉄則

「詳しく話せますか?」
「話せません」
「そうですか。」
山神さまからしゃべる仔馬を預かったなんて
完全に秘匿魔法を交わす案件だ
「わかりました。それでは閉じた質問です。」
絶対答えなきゃいけないやり方に切り替えた
「昨夜遅く〈山神さまの非常に強い魔力の発現を、円舞台広場の方角から一瞬だけ感じた〉と複数の町民から両ギルドと町役場へ報告がありました。関係していますか?」
「ハイ」
商業さんはスキル鵜の目鷹の目を持っている レベルが高いので嘘や誤魔化しは効かない
「わかりました。」
長考に入ってしまう

〈昨夜遅く、円舞台で山神さまの強い魔力が発現し、俺と馬がそこから西の森へ向かった〉
二つの案件が繋がった

「あの、町もギルドも人が少ないのは 幽霊が怖くて家に引き篭もってる とかですかね?」
「んなわけないでしょ」
「ですよね」
コホン
「皆さん南の森へ松茸狩りに向かいました。」
ああ もうそんな時期かぁ
「冒険者ギルドもスッカラカンだそうです。この町の住民体質ご存知ですよね?」
「貰えるもんは貰っとけ。ですかね」
「そうです。」
遠慮配慮クソ喰らえってのもありますよね
「早朝、森林組合から南の森の松茸に豊穣が発現したと報告がありました。」
「なるほど。採れるもんは採れるだけ採っておけと」
「そうですね。」
冒険者・商業の両ギルドと町役場は住民理念に基づき 町民が好き勝手しても諫める事をしない
「今夜は松茸祭りですか?」
「はい。準備を始めています。」
他領との商談を請け負う商業ギルドは 窓口業務の停滞 物流が遅延すると打撃をまともに食らう
「きっと盛り上がりますね」
「確実に。」
最もこの町のギルドに限っては 不測の事態に慣れっこで穴埋めのプロだからね 今回は松茸で挽回するだろう

「まず、幽霊の正体は実在するお馬さんと貴方だったと通報者に報告します。」
今頃は幽霊の事なんて忘れて松茸に取り憑かれちゃってますよ
「山神さまの強い魔力の発現の方は『豊穣の発現』の啓示だったと説明がつきます。」
ボリルを発現する魔力が強すぎて余った分が松茸に回ったのかもね
「発現に貴方とお馬さんが関わっている事は放任できませんので、冒険のギルマスに伝え秘匿魔法を交わします。」
秘匿魔法は契約魔法の高位にあたり 話す書くなどを完封する魔法だ だから冒険者ギルドのギルマスが飲んだくれてベラベラおしゃべりになっても大丈夫なんだよね
「ん。町長さんには報告されないんですか?」
「報告します。町長は地方公務員ですから独立行政法人の我々と秘匿・誓約魔法が交わせませんが、加護『町長』の縛りで守秘義務は完璧です。ご心配には及びません。」
加護は超人的なチカラを与えもするが縛りもする
「わかりました。情報操作はお任せします」
ちなみに最高位の誓約魔法の中には命をも奪う怖い魔法が存在する
「グルコさん、この案件は山神さまのなさった事です。仮に気付く町民がいても他言はしませんのでご安心ください。貴方は変わらずにお過ごしください。」
山神さまと町民は秘匿魔法を交わしてる?いや、信仰の縛り『掟』か
「触らぬ神に祟りなし。ですね」
「💢」
怖っ
「お顔がとても怖いです」
コホン
「失礼。それでは、乗馬靴はどちらになさいますか?」
「やっぱり結構です。お手数すみませんでした」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」
沈黙なげぇなあ 俺の悪口を無詠唱してるな

「あの、ご相談があります。お話ししても?」
「どうぞ。」
「預かった馬を配達に使いたいんですが、登録が必要ですかね?餌代とかを薬局の経費で落としたいんですけど」
「経費に落とすなら個体登録は必要ですね。登録するお馬さんの個体確認を行います。」
「経費の水増し計上の防止ですね」
「流石お詳しいですね。」
新規事業の登録は一朝一夕では認可されない
企業法と租税法の知識を習得している俺は ポーション配達員の登録を申請から最短日数でやり遂げた
知識のみ経験ゼロ 手続きの窓口 商業さんにおんぶに抱っこ状態で助けてもらった
「まだまだ勉強不足です」

「それとですね、馬に給料を支払ったら人件費計上できますか?」
「預かったのは馬獣人族ですか?」
「わかりません。まだ仔馬なんです」
「第一成長期前ですか。預けた方に確認なさっては?」
「無理です」
眉間に深い深いシワ
「そうですか。」
ボリルを預けたのが山神さまだと確信したな
商業さんは他の話題から何気なく情報を抜き取るのが上手いんだよな
「獣人族と確認出来るまで人件費計上はできません。」
「それでは、人件費ではない経費名を何か考えてみます」
「お待ちしております。」
「あと、馬名義の口座の開設もしたいんですが、どうですか?」
「口座はペット名義で開設した前列があるので大丈夫です」
国王が飼い犬名義で口座開設した 前代未聞のやらかし案件だね

「ご相談ありがとうございました」
「あ、あの、グルコさん、お馬さんの個体確認なんですが⋯⋯」
なんかソワソワしだしたぞ
「これは秘匿案件ですので私が直に担当します」
「商業さんが直にですか?かえって悪目立ちしませんか?」
フンスッフンスッ「大丈夫です!」
鼻息荒過ぎ
「グルコさんこの後のご予定はございますか?」
「家具屋に寄ってから、馬の餌とかを買って帰ります」
「わかりました。ご一緒しますね。帰りは商業ギルドの馬車でお送りします。」
なんか地の果てまで付いて来そう
「はあ」
「お馬さんのお名前は?」
「ボリルです」
「あらっ!シン・ボリル・リスエスですか?黒鹿毛なんですか?」
やっぱすげぇ馬大好きなんだな
「タテガミと尾が黒鹿毛です。体は黒毛です」
「靴下は?」
「白です」
「すばらしい!」
コホン
「登録はどちらの色でも構いません」
いやいや 体が黒いんだから黒でしょ 黒鹿毛が好きなのは分かるけどさ 私情を挟みすぎだよね
「皆さんの認識に合わせて黒毛にします」
幽霊の正体みたり黒毛仔馬と俺 字余り過ぎ
「かしこまりました。」
そんなしょんぼりしなくても



 ドナドナドナ・ドナ~ 荷馬車が走る~
ある晴れた昼下がり 大量の馬グッズや餌と一緒に荷台に積まれた俺
「ずっと欲しくて欲しくて欲しくて、ずっとお金貯めてたのに、あとちょっとで買えたのに!ナナフシのクセに生意気よ!」
御者席で受付のねーちゃんが喚いてる
もぉーこの人ほんと態度悪いよね 職員に教育的指導してよ
「いい加減にしなさい。ご本人の前で失礼ですよ。」
前には居ません後ろの荷台に居ます
馬用ワイドクッションでダラダラ横になってます 商業さんがポケットマネーで個体登録祝いにグッズや餌を沢山買ってくださいました 飼い主の出費ゼロでした
「ギルマスもお金貯めるの応援してくれてたじゃないですか!夜勤たくさん詰め込んでくれて!」
ハァ~「そうでしたね。」
「町の遺産をあんな黒毛のよそもんに掻っ攫われて悔しくないんですか!?あんな黒毛に!」
「こらっ!黒毛を馬鹿にするんじゃありません!黒毛は町おこしの特産品ですよ!」
黒毛和牛の話しかな
「町の経済活性化や移住促進に繋がる大切な資源なんです!」
黒毛和牛の話しだよね
「もおっ!悔しー!あんなよそもんが洞窟風古民家に住んでるなんて!」
フゥ「もう諦めなさい」
〈わあぁぁーーーーーーー〉
ピシャッ〈ヒヒーン〉
マジかよ 泣き出したよ
「ほらほら、今度、冒険者ギルドに頼んで洞窟風物件、探してもらいましょ?あそこには優秀なA級冒険者がいるんだから、きっと見つかるわよ。だからもう泣かないの。ね?」
冒険者ギルド受注するのか?優秀なA級冒険者ってドロイだろ?
なんだかなぁ
「ウン。ありがとギルマス」
「ほら元気出して。久しぶりに洞窟風古民家に行くんでしょ?楽しまなきゃね?」
「ウン。楽しむ。洞窟大好き」
俺も洞窟大好き
「あのねお願いがあるの。お金ほとんど使っちゃったから貸してくれる?」
とんでもねーな
「あらあら。何に使ったの?」
「ヤケクソでやたらお高い指輪を買っちゃったの」
「そうなのね。仕方ないわね。足りない分は立て替えるわ。利息5%、分割、給料引きで良いかしら?」
「ありがと!ギルマス大好き!」
とんでもねーな!ビックリだよ!



 町の外れのナナフシ薬局/我が家の庭先に荷馬車が停まる
黒い引き戸がスーっと開くと店長が現れた
「グルコが戻ったよ!」
いないいないばあしたんだね
中から子供馬が飛び出して来る 黒鹿毛をなびかせピョンピョンピョン
「はうわっ」
商業さんから変な声が出たけど気にしないでおこう
「ボリルただいまぁ」
(あーあーあーあー)
あれ?これは念話だな
(あーあー)
念話は思考と会話を二つに分離するのが難しい
「よしよしお利口さんにしてたかな?」
〈ヒヒーン〉(うん)
そうそう 人前では仔馬らしく頼むね
(あーあーつながらないのかなぁ)
つながってるけどちょっと待ってね
「店長、ただいま戻りました」
大きく頷いた 腕組みした手がサムズアップしてる フォローしてくれるのね
(あーあーグルコあーあー応答ねがいます)
(人語念話だね)
〈ヒーン〉(つながった!)
(店長に教えて貰ったんだね)
(うん!グルコ魔力無しだけどできるよって!)
(ボリルと俺は従魔契約してるから、きっと特別なんだね)
(そうそう!特別なの!)
(魔法のお勉強楽しかった?)
(うんっ楽しかった!)
これ多分周囲には 無邪気にピョンピョン跳ねる仔馬と戯れるナナフシの図に見えてるな
うふふ「美しい元気な個体を確認できました。」
「性別は、ボリルと書いて貰えますか?」
ダメ元
うふふ「かしこまりました。」
ダメじゃなかった ギルマス権限無敵だな
「ありがとうございます」

「西さん、こんにちは。ご無沙汰しております。」
「ああ」
「配達で使うお馬さんの登録申請と、個体確認に参りました。」
「ああ」
不機嫌っつうか無愛想
「その前に、あちらの餌を運び入れたいのですが?」
「消えた!」
風魔法で荷台から餌を出していたねーちゃんがビックリしてる 店長に掻っ攫われたんだね 
「収納魔法でお受けとりですね。」
「ああ」
「では、早速こちらの登録申請書類の確認をお願い致します。」
淡々と進めてる これが二人の通常会話なんだ
「この書類なっちゃいないね。作り直すから中に入りな」
「かしこまりました。」
「お邪魔します!」
さて俺は蚊帳の外だ
(お家入る?)
(俺はボリルとここにいるよ)
(わかった。あの馬は何してるの?)
(お仕事してるんだよ。荷物を載せた荷車を引っ張って運ぶんだ)
(ふーん)
(お話ししておいで)
(うん)テコテコテコテコ

(あーシンドー帰りてぇー 早く帰って土竜叩きゲームしてぇー 今日は土竜叩き放題なのにさぁー)
(土竜叩きゲームってなぁに?)
(お。お前、人語念話が出来るのか。仔馬なのに偉いなぁ)
(仔馬じゃないよボリルは子供馬)
(そーかいそーかい子供馬かい)
(覚えてね)
(子供馬、覚えたよ)
(ありがと。土竜叩き教えて)
(ああ、ゆーべから裏の畑に土竜がわんさか集まっててよぉー それを踏み潰す遊びなのさ)
(ふーん)
(この辺りは結界が深いから集まんねーなぁ)
(ふーん)
(興味なさそうだな)
(そうみたい。お兄ちゃんお仕事がんばってね)
(ありがとよ。元気に育つんだぞ)
(うん!)ピョンピョンピョン

俺は2頭のお馬さんが戯れる姿を微笑ましく見守ってはいなかった 2頭の人語念話が全部聞こえていたのだ
(お話し楽しかった?)
(うん。それなりだった)
(そっかぁ)
まだボリルの魔法は不安定なのかな 様子をみて店長に報告しよう


 ご機嫌な二人を乗せた荷馬車と入れ違いに家具屋の馬車が到着した
「黒鹿毛ちゃんだ!」
(ちがうよボリルだよ!)
「こんにちは~おいたんがベッドをもっと快適にしてあげるからね。楽しみに待っててね黒鹿毛ちゃん!」
(もぉーボリルだってば、グルコ通訳して!)
(あのね、ボリルのタテガミと尾の色を黒鹿毛って言うんだよ)
(そうなんだ~)
「お名前は?」
俺の名前じゃないのは明らかだ
「ボリルと言います」
「おっと。シン・ボリル・リスエスですな!」
「そうです」
この家具職人から先月購入したベッドは配達遅延でずっと待たされていた 天蓋付きキングサイズベッドの端っこで俺は寝ていた 独り淋しくね 
(ボリルはベッドで寝そべっててね)
(うんわかった)テコテコテコテコ
「もえっと、あ、グルコさん?」
馬のベッド調整を追加依頼したら当日やって来たわけね
「ハイ。お忙しい中こんな町の外れまで急ぎの配達ありがとうございます。まずは、中へどうぞ」
これは嫌味
「やぁー、大丈夫ですよ。あ、これ松茸狩りのお土産です。どうぞ」
想定内の不発 この人馬から先に挨拶したからね 常識あっての嫌味だからね 非常識には通じないのさ
「ありがとよ」
店長いつの間に さては松茸魔法にかかったな
「ばっちゃん、腹減ったぁ~」
ガチデカ冒険者ドロイ 魔獣のみならずご馳走の気配に敏感なスキルがあるようだ
「おう。ちょうど良かった。松茸焼きな」
「わあっ!デカイデカイ!」
「炭起こしもやっとくれ」
「うん!」
家主に一言の挨拶も無しにドカドカと まあ良いけど


「うひょー!こりゃたまげたよ!なんて立派なベッドだ!誰の作品ですか?」
うひょーって何?
「戴き物なので何も知りません。」
俺が寿退職すると魔塔主に騙された副魔塔主が餞別にくれた 返されても困るからと押し付けられた訳あり品
「お値段お高い感じですかね?」
「そりゃもう!なんたって組木造りですよ!今じゃキングサイズのオークなんて伐採禁止されてますからね!昔はそりゃあーーーー」
あ めんどくさい人かも
「こんな感じで寝ています。調整、お時間かかりますか?」
「ヒヒーン」(早くしてね)
人語念話にリアル鳴き声が被る被る 
「おっと、そうだよね。ボリルちゃんを待たせちゃいけないね」
「ヒヒーン」(そうそう)
「お返事くれたのかな?お利口さんだね」
いや もう脱線しないで早くしてよ
「調整、希望通りにできますか?」
「おっと、そうだよね。気になるよね。まあ、これなら大丈夫ですよ。元が良い造りだから、切るの勿体ないですがね」
「あまり高いと寝返りで落ちたらケガします。これから大きくなりますからね。天蓋も脚をぶつけたらケガするし邪魔なだけなので、バッサリ切ってください。」
「わかりやした。お任せください!」
「ボリル、お腹空いたでしょ」
「ヒヒーン」(うん。松茸食べる)テコテコテコテコ
「萌え~~~~」
わかるけどね その言葉は無詠唱で頼みますよ



「店長、ボリルが松茸食べるって」
「ハイヨ~」
へぇー こんな顔もできるんだ 松茸魔法すごいすごい~
「ドロイもっと弱火にするんだよ!アンタはほんと荒っぽくてダメだね!」
やらせなきゃいーのに
「うん」
ドロイってほんと真面目だよね 洞窟風物件クエストがんばってね 
「グルコ、アンタも喰うのかい?」
「俺は喰いません。松茸は苦手なんです」
「はあぁ~そりゃ残念だねぇ」
嬉しそうじゃん
「あっボリル近いよ、危ないよ、僕の魔法は荒いんだよ」
「ヒヒーンヒヒーン」(そうだね~下手っぴだね~)
「グルコ、何て言ってるの?」
「がんばれだってさ」
(ちがうよ?)
(ごめん。まちがっちゃったね)
「そっかぁ、ボリルは優しいなぁ。お兄ちゃんがんばって焼くから待っててね」
「ヒヒーン」(うん待ってる)

「あーその炭火じゃあ美味しく焼けないよ。ちょいとお兄ちゃん、代わるから横で見てな」

台所にスススーっと家具職人が入ってきた
「えっ!なんですかっ!?どうかしたんですか!?」
「おっと。そうだよね。調整終わりましたんで、新しいベッドも置いときましたよ。」
はあっ?もう終わったって?ええっほらあれ3分?たった3分だよ 何魔法?何魔法使ったの!
「この廃材はどうなさるんで?」
壁に収納魔法を発現し 木材の切り口を少し出して見せた
「え、あ、廃材」
この人 家具屋だけあってデカイ収納持ちなんだな
「あー、いらないのであげます。邪魔なんで持ってってください」
「うひょー」
そうかわかったぞ うひょーは感嘆詞だ
シンケー領には多くの種族が混在してる
見た目は王国民でも他国の言語が残ってるんだろうな
ボリルが真似しない事を祈ろう

「うひょーーーー」
 黒い炭が紅色に光り出す

「いいかいお兄ちゃん、このくらいの加減で、炭が気持ち良くなるようにね」
「すっ⋯すごい⋯炭が宝石のルビーみたいになった⋯」
「ヒヒーンヒヒーン」(ドロイ近いよ危ないよ)
ボリルにシャツの襟足をグイグイ引っ張られてもビクともしない
「うひょーさん牛乳飲みますか?」
「うひょー」
はい だね 多分
「店長、収納から牛乳缶2本出してください」
「ハイヨ~」
すっげぇ上機嫌 松茸魔法の魅力効果半端ないな
「ドロイ覚えときな!これだよこの炭火だよ!」
「うん!」
いよいよ松茸が網に乗せられる
《おおおおおお~》
「うち、誰も飲まないのに商業ギルドのギルマスが買ってよこして、これも持ってってください」
「うひょー」
うひょーは便利な感嘆詞なんだな
「もう一度収納魔法、壁に発現してください俺が入れます。許可ください」
「うひょーうひょー」
うひょーさんの収納魔法陣が俺の前 胸元に発現した
手のひらを当てると自分の物の様に違和感なく簡単に動かせた
良く整えられた扱いやすい魔法陣だ
「うひょー」
松茸からサラサラした煙が上がり出した

《キタキタキタキターーーー》
「うひょーーーーーーー」

松茸の香りが漂い始める
みんなもう夢中でかぶり付き 俺はこの匂いが苦手なんだよなぁ 口で息しよ
「他にもプレゼントしたいのでちょっと魔法陣お借りしますね」
「うひょー」
承諾と受け止めよう
もう誰も見向きもしない しめたとばかりに物置部屋に行く
引っ越し荷物に紛れてた壊れて使えない魔道具をポイポイ捨てる 間違い プレゼントする

「うっっひょーーーー」

台所から一際大きな感嘆詞 焼けたんだな

《松茸だぁーーーーーー》
《いただきまーーーす!》

部屋が片付いてスッキリした
魔道具は文具などの小物でも処分にお金がかかるから助かった

「収納魔法お返しします。今日はありがとうございました」
ハフハフ「ふほー」

追加依頼は見積もり無しで施工後払い 後日 町の家具屋に持って行く手筈 だから俺の出番はこれで終わり
よし 新しいベッドで仮眠をとっちゃおう

「皆さん、おやすみなさい」
「グルコおやすみ~松茸おいし~」
「うひょー!」
「美味い!美味すぎる!」
「南の森サイコー!」
「ドロイ!次アンタが焼いてみな!」
「うん!」
「ボリルも焼きたい!」
「ヨッシャ!皆んなで焼くよ!」

《松茸祭りだー》

ボリル堂々としゃべっちゃってる
ま 店長が何かしらの魔法を使ってどうにかしてるでしょ 多分



 その日の深夜 俺はうひょーうひょー叫ぶ巨大松茸に踏み潰されて目を覚ます
隣りのベッドでは ヒン ヒンと小さな寝息を立てて子供馬が眠る 遮る物が無くなり 黒い体が月明りに照らされた
美しい馬だ
「元気に育ってね。ボリル」

「ウヒョ」





~グルコと子供馬のボリル 完~
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異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

レクサス転生――ローン付きSUVで始める異世界物流革命

しばたろう
ファンタジー
「馬車では一日かかる。だが、この鉄の馬なら二時間だ」 ローン残高を抱えたまま異世界に転移した新卒社会人・タカセ。 唯一の武器は、レクサスSUVと物流設計の知識。 命を救い、 盗賊を退け、 馬車組合と交渉し、 サスペンションとコンテナ規格で街を変える。 レクサス一台から始まる、リアル成り上がり。 これはチート無双ではない。 仕組みで勝つ物語だ。

隠れ居酒屋・越境庵~異世界転移した頑固料理人の物語~

呑兵衛和尚
ファンタジー
調理師・宇堂優也。 彼は、交通事故に巻き込まれて異世界へと旅立った。 彼が異世界に向かった理由、それは『運命の女神の干渉外で起きた事故』に巻き込まれたから。 神々でも判らない事故に巻き込まれ、死亡したという事で、優也は『異世界で第二の人生』を送ることが許された。 そして、仕事にまつわるいくつかのチート能力を得た優也は、異世界でも天職である料理に身をやつすことになるのだが。 始めてみる食材、初めて味わう異世界の味。 そこは、優也にとっては、まさに天国ともいえる世界であった。 そして様々な食材や人々と出会い、この異世界でのライフスタイルを謳歌し始めるのであった。 ※【隠れ居酒屋・越境庵】は隔週更新です。

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