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第5話 晩御飯の準備はみんなで
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「大規模農家じゃないしな。それにうちは米がメインみたいなもんだから、バランスよく栽培しているんだよ」
と、よく信明は言っているが、どういう仕組みで何が大規模ではないのか、素人の悠人にはさっぱりだ。しかもそんなに色々と作れるものなのだろうか。普通はトマト農家とかスイカ農家とか、一つの作物に集中するものだと思うのだが、違うのだろうか。疑問は尽きないが、あまり深く訊ねたことはない。教えてくれないことはないだろうが、信明は詳しく語ることがない。
「今年はほら、そこで沙希がサツマイモも作ってるし、しし唐もあるぞ」
そんな感じで、庭先から徐々に進んで行きながら、ちょっとずつ収穫していく。しかし、それでもすぐに持って来た籠に一杯の野菜が収穫された。
「凄いですね。これだけの種類が畑で手にはいちゃうなんて」
「そうでもないよ。最近は趣味も入ってるから、あまり収入を気にしてない時があってな。肥料代だって馬鹿にならないんだからしっかりしてって、沙希に叱られる」
がははっと、信明は大笑いしている。いやはやこの性格、凄く見習いたい。なんでも笑い飛ばせたらいいな、そう思うことは悠人にだってある。でも、実際にそれはとても難しいことだ。職業柄なのだろうか、信明は底抜けに明るい。
そんなことをしていると、沙希の運転する薄ピンク色の軽自動車が戻ってきた。助手席から志津が手を振っている。その様子から、確かに老人ホームとは無縁そうだなと思った。とても元気そうだ。
「さあ、晩飯の支度をしようか」
「はい」
こうして四人で晩御飯の支度が始まった。悠人と信明は野菜を切ったり、買って来てあった海老やキスの下ごしらえ。志津がそれらに衣をつけて、順々に揚げていく。その手際の良さはとても七十七歳とは思えない。沙希はそのサポートをしつつ、サラダを作ったりご飯を炊いたりと他の用事を済ませていった。
こういう食事の支度をみんなですることなんて、家ではほとんどないし、たまにあってもキャンプの時くらいだから楽しい。それに悠人も普段は学校や予備校で忙しいから、普段の生活では料理なんてしないから新鮮だ。
「そうか。予備校に行ってるんだ」
「ええ。でも、苦手な物理とか英語とかポイントを絞って行ってるから、毎日あるわけじゃないんですよね。夏期講習もそんなんだから、七月に一週間、八月の後半に一週間くらいだし」
「へえ。受験も和臣の時とは変わってるんでしょうね。たしかセンター試験も変わるんだったわよね。あれ、記述式は見送られるんだたったかしら。英語のリスニングはもうあるんだっけ。色々と大変よね、受験生は。といっても、あの子は放っておいても勉強する子だから、予備校もあまり行ってなかったわね。一体どうやって乗り切ったのかしら。手の掛からない子で有り難いけど、たまにびっくりさせられるのよね」
調理しながら沙希とそんな話になったが、いやはや和臣の秀才ぶりが解るエピソードだ。和臣は国立の最難関大学であるT大学に一発合格している。それを塾や予備校にほとんど通わず、自力で成し遂げたというのだから、どれだけ頭がいいのやら。しかも両親に心配かけることなくだ。羨ましい限りである。
「悠人ちゃん、大根おろしを作ってくれるかい」
もやっとしていたら、志津が天ぷらを揚げながら次の指示を出してきた。悠人ははいはいと、これは昨日お隣から貰ったのだという大根を手に取った。そして手早く大根おろしにしていく。
「やっぱり男の子にやってもらうと早くていいねえ」
「このくらい、お安い御用ですよ」
志津がおだててくれたおかげか、大根おろしは思いのほか早く出来上がった。こうしてみんなで分担したおかげか、あっという間に大量の天ぷらとみそ汁、それにサラダが出来上がった。ほかほかのご飯も同時に炊き上がる。
夕方の六時に晩御飯なんて普段ではあり得ない早さだが、その美味しそうな匂いにお腹はぐうぐう鳴っていた。電車の中で駅弁やお菓子を食べたというのに、現金な胃袋だ。茶の間のテーブルに目一杯載ったご飯を前に、悠人はワクワクしてしまう。
「たくさん食べてね。でも、無理は駄目よ。食べ物を粗末にしちゃ駄目だけど、体調が第一だからね。それに、残ったら和臣に食べさせるから」
という沙希の気遣いを受けつつ、悠人はパクパクと天ぷらを頬張った。野菜は大根おろしたっぷりの汁に付けて食べ、海老やキスといった海鮮には塩を付けて食べる。
「いい食べっぷりだねえ。やっぱり若い子がいると、食事に張り合いが出るわ」
そんな悠人を見て、志津がにこにことしている。そういう志津も野菜を中心にたくさん食べていたが、それでも、誰かががつがつと食べているのは見るのは嬉しいそうだ。とはいえ、この家では信明もがつがつとご飯を食べているから、単純に喜んでいるだけだろうか。
「そう言えばおばあちゃん、老人ホームに行ってたんですよね。何をしていたんですか」
お腹が一段落したところで、悠人は志津に何をしていたのか訊ねた。元気なのに老人ホームに行く。それも喋りに行くというのが、いまいち解らなかった。
と、よく信明は言っているが、どういう仕組みで何が大規模ではないのか、素人の悠人にはさっぱりだ。しかもそんなに色々と作れるものなのだろうか。普通はトマト農家とかスイカ農家とか、一つの作物に集中するものだと思うのだが、違うのだろうか。疑問は尽きないが、あまり深く訊ねたことはない。教えてくれないことはないだろうが、信明は詳しく語ることがない。
「今年はほら、そこで沙希がサツマイモも作ってるし、しし唐もあるぞ」
そんな感じで、庭先から徐々に進んで行きながら、ちょっとずつ収穫していく。しかし、それでもすぐに持って来た籠に一杯の野菜が収穫された。
「凄いですね。これだけの種類が畑で手にはいちゃうなんて」
「そうでもないよ。最近は趣味も入ってるから、あまり収入を気にしてない時があってな。肥料代だって馬鹿にならないんだからしっかりしてって、沙希に叱られる」
がははっと、信明は大笑いしている。いやはやこの性格、凄く見習いたい。なんでも笑い飛ばせたらいいな、そう思うことは悠人にだってある。でも、実際にそれはとても難しいことだ。職業柄なのだろうか、信明は底抜けに明るい。
そんなことをしていると、沙希の運転する薄ピンク色の軽自動車が戻ってきた。助手席から志津が手を振っている。その様子から、確かに老人ホームとは無縁そうだなと思った。とても元気そうだ。
「さあ、晩飯の支度をしようか」
「はい」
こうして四人で晩御飯の支度が始まった。悠人と信明は野菜を切ったり、買って来てあった海老やキスの下ごしらえ。志津がそれらに衣をつけて、順々に揚げていく。その手際の良さはとても七十七歳とは思えない。沙希はそのサポートをしつつ、サラダを作ったりご飯を炊いたりと他の用事を済ませていった。
こういう食事の支度をみんなですることなんて、家ではほとんどないし、たまにあってもキャンプの時くらいだから楽しい。それに悠人も普段は学校や予備校で忙しいから、普段の生活では料理なんてしないから新鮮だ。
「そうか。予備校に行ってるんだ」
「ええ。でも、苦手な物理とか英語とかポイントを絞って行ってるから、毎日あるわけじゃないんですよね。夏期講習もそんなんだから、七月に一週間、八月の後半に一週間くらいだし」
「へえ。受験も和臣の時とは変わってるんでしょうね。たしかセンター試験も変わるんだったわよね。あれ、記述式は見送られるんだたったかしら。英語のリスニングはもうあるんだっけ。色々と大変よね、受験生は。といっても、あの子は放っておいても勉強する子だから、予備校もあまり行ってなかったわね。一体どうやって乗り切ったのかしら。手の掛からない子で有り難いけど、たまにびっくりさせられるのよね」
調理しながら沙希とそんな話になったが、いやはや和臣の秀才ぶりが解るエピソードだ。和臣は国立の最難関大学であるT大学に一発合格している。それを塾や予備校にほとんど通わず、自力で成し遂げたというのだから、どれだけ頭がいいのやら。しかも両親に心配かけることなくだ。羨ましい限りである。
「悠人ちゃん、大根おろしを作ってくれるかい」
もやっとしていたら、志津が天ぷらを揚げながら次の指示を出してきた。悠人ははいはいと、これは昨日お隣から貰ったのだという大根を手に取った。そして手早く大根おろしにしていく。
「やっぱり男の子にやってもらうと早くていいねえ」
「このくらい、お安い御用ですよ」
志津がおだててくれたおかげか、大根おろしは思いのほか早く出来上がった。こうしてみんなで分担したおかげか、あっという間に大量の天ぷらとみそ汁、それにサラダが出来上がった。ほかほかのご飯も同時に炊き上がる。
夕方の六時に晩御飯なんて普段ではあり得ない早さだが、その美味しそうな匂いにお腹はぐうぐう鳴っていた。電車の中で駅弁やお菓子を食べたというのに、現金な胃袋だ。茶の間のテーブルに目一杯載ったご飯を前に、悠人はワクワクしてしまう。
「たくさん食べてね。でも、無理は駄目よ。食べ物を粗末にしちゃ駄目だけど、体調が第一だからね。それに、残ったら和臣に食べさせるから」
という沙希の気遣いを受けつつ、悠人はパクパクと天ぷらを頬張った。野菜は大根おろしたっぷりの汁に付けて食べ、海老やキスといった海鮮には塩を付けて食べる。
「いい食べっぷりだねえ。やっぱり若い子がいると、食事に張り合いが出るわ」
そんな悠人を見て、志津がにこにことしている。そういう志津も野菜を中心にたくさん食べていたが、それでも、誰かががつがつと食べているのは見るのは嬉しいそうだ。とはいえ、この家では信明もがつがつとご飯を食べているから、単純に喜んでいるだけだろうか。
「そう言えばおばあちゃん、老人ホームに行ってたんですよね。何をしていたんですか」
お腹が一段落したところで、悠人は志津に何をしていたのか訊ねた。元気なのに老人ホームに行く。それも喋りに行くというのが、いまいち解らなかった。
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