蓮華薬師堂薬局の処方箋

渋川宙

文字の大きさ
6 / 56

第6話 陰陽師って何?

しおりを挟む
「さて、解らないについては食べながら話を聞こうかな。儂を頼って来たということは、しかもなんぞ解らんことがあるということは、一筋縄ではいかん話だろ」
「ううん、まあ、そうね」
 そう大仰に言われるとちょっと困るが、確かに一筋縄ではいかなそうだなと桂花は頷く。しかし、それよりも鼻を擽る美味しそうな匂いに負け、喋るよりも前に目の前にあった西京焼きに箸を伸ばしていた。
「ううん。美味しい」
「それは良かった。儂も一人だとここまで用意するのは面倒だからなあ。たまに桂花が来てくれると色々食べられて助かるよ」
「解ったわ。まだ仕事に慣れなくて余裕がないけど、もうちょっと慣れたら頻繁に押しかけることにする」
「それはそれで困るけどなあ。まあ、適度に来ておくれ」
「了解」
 そこで互いにくすくすと笑い合い、しばらくは料理を食べることに集中してしまう。そしてある程度お皿が空になりお腹が落ち着いたところで
「お祖父ちゃん。陰陽師って何だっけ?」
 唐突にそう質問していた。それに龍玄ははてと目を丸くし、ついでにこっと笑ってくる。
「陰陽師って言ったら、ほら、一条にある晴明神社、あそこのご祭神の安倍晴明が有名だろうねえ」
「あっ、そうか。それでどっかで聞いたことがあると思ったんだ。そうか、安倍晴明か」
 陰陽師という単語そのものは馴染みがないはずなのに、どこかで聞いたことがあると思っていた。それは安倍晴明の話からか。一条にある晴明神社には桂花も行ったことがあり、アニメや漫画やゲーム、さらには小説に映画とキャラクター化されることが多いからか、若い女の子で溢れ返っていたのを思い出す。
 その安倍晴明とは平安時代に実在した人物で、職業は当然ながら陰陽師。あれこれと不思議な力を使って活躍した人のはずだ。しかも一条戻り橋の下に式神という、手下の鬼を棲まわせていたなんて説話もある。まさにびっくり人間のような人だ。
 さらにライバルに道満という陰陽師がいて、その人と呪いバトルをしたこともあるという。政治と呪いが絡み合う平安時代って一体どんな時代だったのかと、桂花はその話を聞いて目を丸くしたのを覚えている。
 しかし、それとあの陽明という人はどういう関係があるのだろう。同じ職種というだけだろうか。いや、そもそも陰陽師とは何かという問いに答えてもらっていない。一体どんなことをする人なんだろうか。まさか陽明もびっくりするような術が使えるのか。あのスーツ姿からはイメージできない。というより、マジシャンみたいになってしまう。
「安倍晴明は知っているわ。でも、詳しくは知らないのよ。だから陰陽師って具体的に何をする人なかの教えて」
 結局、再び龍玄に訊ねる。すると、本当に解らないのかとびっくりされてしまった。
「おや、まったくイメージ出来ないのかい。あの薬局にいるんだから、東洋医学を扱う時にある程度は聞いていると思うぞ」
 ううむと悩む桂花に対し、にやりと笑って龍玄が付け足してきた。明らかに楽しんでいるように見える。
「東洋医学で、ってどうして」
「どうしてと来たか。じゃあ、陰陽五行説という言葉を聞いたことはないか」
「ああ、あの難しい」
 それは聞いたことがあると、桂花はぽんっと手を打った。そして大学の授業でよく理解できなかったんだよなあと苦笑してしまう。
 さて、その陰陽五行説とはこの世を構成するものを陰と陽、さらには木火土金水の五つに分けて考えるものだ。その五つの要素は互いに相生相克の関係にあり、例えば木は火を生じ、土を損なうというような関係を持っている。
 医学的な観点から見ると、その五つの要素の相克関係が体内における様々な働きに変わるというものである。五臓はこの五行に対応していて、肝は木、脾は土、肺は金、腎は水にあたり、六腑のうちの五腑、胆は木、小腸は火、胃は土、大腸は金、膀胱は水に対応していると考えるのだ。
桂花は薬学部で苦戦させられ、さらには四月から猛勉強している内容だった。しかし、苦手意識があるせいかなかなかに手強いもので、合っているっけと首を傾げること多数だった。
「その陰陽五行説を上手く利用していたのが陰陽師だな」
「へえ。じゃあ、今の時代に合わせるとお医者さんみたいなものかしら」
「いや、ちょっと違うなあ。医者のようなことも時にはやっていただろうけど、どちらかというと科学者みたいなものかなあ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...