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第28話 一件落着
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「綺麗」
「お前のおかげで龍神の怒りもすんなりと治まったよ。水もほら、元の澄み切った綺麗なものになっている」
そう言って陽明は先ほどのペットボトルに汲んだ水を翳した。それは太陽の光を受けてきらきらと光り、一目で濁りのないいい水だと解った。そしてそれを陽明は躊躇うことなく口をつけて飲む。
「だ、大丈夫なんですか」
「大丈夫だよ。もうこの中に龍神の怒りによる瘴気は含まれていない。普通に美味しい、よく冷えた井戸水だ」
「へえ、凄いですね。劇的変化って感じです。でも、私は手を合わせてお祈りしただけなのに感謝されるなんて、こそばゆいです」
「祈るということに勝るものはない。それが何より肝心なのさ」
まるで眩しいものを見るように陽明は見つめてくる。その顔はちょっと素敵で、不覚にもドキッとしてしまった
ダメダメ絆されちゃ駄目。
それに私が好きなのは、あの不思議な青年だ。目移りなんてしている場合ではない。いやでも、あの人はもう結構いい歳だろうか。薬剤師としてあっても子ども扱いされたりして。ううむ、でも、駄目。
そんなことを考えていたら、陽明がぷっと吹き出した。それに桂花はしまったと顔を赤らめる。またからかってくるつもりか。
「なるほど、薬師寺が気に入るわけだ」
しかし、笑う陽明から漏れたのはそんな言葉で、桂花はきょとんとしてしまう。
「はっ、えっ、そう、ですか」
「ああ。あいつは素直なものが好きだからね」
「す、素直」
「そうさ。それより、そろそろ台所に戻らないと、お粥が大変なことになるぜ」
「ああっ。そうだった」
このままでは重湯どころか糊になってしまう。桂花は大慌てで台所に戻ったのだった。だから
「なるほどねえ。彼女があの」
という、陽明の意味深な言葉は耳に届くことはなかったのだった。
無事に重湯を作るという任務を終えて路代の元に戻ると、呪いが消えたおかげか、路代は先ほどよりも明らかに元気になっていた。
「そうよねえ。あそこのお饅頭は美味しいのよねえ。早く元気になって買いに行きたいわ」
「ですね。あそこは餡子の甘さがほどよくて、僕も大好きです」
「あら、趣味が合うわね。そう餡子がいいのよ」
しかも、法明相手に饅頭談義を展開していた。一体どういう会話の流れからそうなったのやら。そんな法明の後ろでは、弓弦が乳鉢と乳棒でごりごりと生薬を潰しながら呆れた顔をしていた。そして、戻って来た桂花に向けて遅いという顔をする。
「よう。だらだらとしやがって。篠原と遊んでいたのか」
「まさか」
ちょっと時間が掛かったからってどうしてそうなるのやら。桂花は呆れつつも、湯飲みに入れた重湯を法明に差し出した。
「ありがとうございます。本来、漢方薬は空腹時に飲むのがいいんですけど、路代さんは二日ほどご飯を食べていらっしゃらないようなので、重湯に混ぜますね」
法明は文句もなく笑顔で重湯を受け取ると、路代に向かって説明し、すでに一包分用意していた薬をそこに混ぜた。
「これは真武湯というもので、胃腸の調子を整え、浮腫みを改善します。今日から二週間分を処方しますので、これ以降は食間に飲んでくださいね。白湯に溶かして飲んでください」
法明はにこっと笑って説明する。その笑顔はやはり陽明のものとは違って人の心を穏やかにする笑みだった。
「身体を起こしますね」
そのままでは飲み難いだろうからと、桂花はすぐに介護ベッドのリモコンを操作して体勢を整えてあげた。少しベッドからずれていた身体を真っ直ぐにするのも忘れない。
「まあまあ、先生、あれこれとありがとうございます。桂花ちゃん、随分と立派になったねえ。おばあちゃん、嬉しいわあ」
法明と桂花にお礼を言う路代はすっかりいつも通りだった。しっかりと薬も飲んで、今日からはご飯が美味しく食べられそうと笑っていた。
「お前のおかげで龍神の怒りもすんなりと治まったよ。水もほら、元の澄み切った綺麗なものになっている」
そう言って陽明は先ほどのペットボトルに汲んだ水を翳した。それは太陽の光を受けてきらきらと光り、一目で濁りのないいい水だと解った。そしてそれを陽明は躊躇うことなく口をつけて飲む。
「だ、大丈夫なんですか」
「大丈夫だよ。もうこの中に龍神の怒りによる瘴気は含まれていない。普通に美味しい、よく冷えた井戸水だ」
「へえ、凄いですね。劇的変化って感じです。でも、私は手を合わせてお祈りしただけなのに感謝されるなんて、こそばゆいです」
「祈るということに勝るものはない。それが何より肝心なのさ」
まるで眩しいものを見るように陽明は見つめてくる。その顔はちょっと素敵で、不覚にもドキッとしてしまった
ダメダメ絆されちゃ駄目。
それに私が好きなのは、あの不思議な青年だ。目移りなんてしている場合ではない。いやでも、あの人はもう結構いい歳だろうか。薬剤師としてあっても子ども扱いされたりして。ううむ、でも、駄目。
そんなことを考えていたら、陽明がぷっと吹き出した。それに桂花はしまったと顔を赤らめる。またからかってくるつもりか。
「なるほど、薬師寺が気に入るわけだ」
しかし、笑う陽明から漏れたのはそんな言葉で、桂花はきょとんとしてしまう。
「はっ、えっ、そう、ですか」
「ああ。あいつは素直なものが好きだからね」
「す、素直」
「そうさ。それより、そろそろ台所に戻らないと、お粥が大変なことになるぜ」
「ああっ。そうだった」
このままでは重湯どころか糊になってしまう。桂花は大慌てで台所に戻ったのだった。だから
「なるほどねえ。彼女があの」
という、陽明の意味深な言葉は耳に届くことはなかったのだった。
無事に重湯を作るという任務を終えて路代の元に戻ると、呪いが消えたおかげか、路代は先ほどよりも明らかに元気になっていた。
「そうよねえ。あそこのお饅頭は美味しいのよねえ。早く元気になって買いに行きたいわ」
「ですね。あそこは餡子の甘さがほどよくて、僕も大好きです」
「あら、趣味が合うわね。そう餡子がいいのよ」
しかも、法明相手に饅頭談義を展開していた。一体どういう会話の流れからそうなったのやら。そんな法明の後ろでは、弓弦が乳鉢と乳棒でごりごりと生薬を潰しながら呆れた顔をしていた。そして、戻って来た桂花に向けて遅いという顔をする。
「よう。だらだらとしやがって。篠原と遊んでいたのか」
「まさか」
ちょっと時間が掛かったからってどうしてそうなるのやら。桂花は呆れつつも、湯飲みに入れた重湯を法明に差し出した。
「ありがとうございます。本来、漢方薬は空腹時に飲むのがいいんですけど、路代さんは二日ほどご飯を食べていらっしゃらないようなので、重湯に混ぜますね」
法明は文句もなく笑顔で重湯を受け取ると、路代に向かって説明し、すでに一包分用意していた薬をそこに混ぜた。
「これは真武湯というもので、胃腸の調子を整え、浮腫みを改善します。今日から二週間分を処方しますので、これ以降は食間に飲んでくださいね。白湯に溶かして飲んでください」
法明はにこっと笑って説明する。その笑顔はやはり陽明のものとは違って人の心を穏やかにする笑みだった。
「身体を起こしますね」
そのままでは飲み難いだろうからと、桂花はすぐに介護ベッドのリモコンを操作して体勢を整えてあげた。少しベッドからずれていた身体を真っ直ぐにするのも忘れない。
「まあまあ、先生、あれこれとありがとうございます。桂花ちゃん、随分と立派になったねえ。おばあちゃん、嬉しいわあ」
法明と桂花にお礼を言う路代はすっかりいつも通りだった。しっかりと薬も飲んで、今日からはご飯が美味しく食べられそうと笑っていた。
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