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第45話 法明たちは一体何者?
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足元がぐらぐらするような、暗闇に落ちていきそうな、そんな感覚が身体を支配する。自分が信じているものを根こそぎ否定されているような、総てが非現実であるような、そんな危うさを感じ取っていた。
「へえ。本当に何もかも気づいていないというわけですか。あなたの能力はなかなかのものだというのに、傍にいて全く気づいていなかったんですね」
そんな桂花に、紫門は同情するような目をしてくる。そして、今から信じている現実を壊すのが楽しくて仕方がないというように、口元はにいっと吊り上げている。その顔で、桂花は不安が当たっているのだと知り、ますます恐怖を感じてしまう。
「まあ、あの男も気配で察知されるようなへまはしませんか。しかし、そもそもですが、陽明と薬師寺っていう安直な名前で気づきませんかね。もはや答えを言っているようなものなのに。あれではほぼ堂々と名乗っているようなものですよ」
「えっ」
「そう考えると、俺は大分、凝った名前ってことになりますねえ。元の名前を知ることは不可能ですから」
紫門はそこでくくっと笑う。そこで桂花ははっと気づく。
「ってことは、あんたも嘘の名前なの」
「もちろん。当り前じゃないですか。本来はこの世に存在するはずのない者なんですから、本名のままでは不都合だらけです。まあ、俺の場合はあちらを本名と呼んでいいのか、それは謎ですけどね」
「――」
何が何だか訳が分からない。でも、これは陽明が現れたあたりからずっと付き纏っていた感覚だ。法明がもしただの薬剤師ならばあり得ないこと。その要素として付き纏うのが陽明であり、この目の前の紫門だ。
どうしてあの薬局に陰陽師が出入りしているのか。そして、助力を乞うのか。漢方薬や東洋医学の考え方に陰陽五行説が用いられているから。これだけでは説明しきれない何かがある。
「新人さんですか。新しく、それも普通の人間を雇うなんてどういう風の吹き回しですか」
初めて会った時、陽明はこんな不可解なことを言っていた。普通の人間を雇う。それってつまり、法明たちは普通の人間ではないと言っているようなものではないか。
「確かに普段の依頼は現世利益を追求する薬師寺には合わないかもしれないけどなあ。それでも、現代に生きる人々が困っているんだから手を差し伸べてくれてもいいだろ」
そして次に会った時、そう路代の件で力を借りたいという話になった時、陽明は法明に向けてこんな指摘をしていた。これは、一体どういう意味だったのか。現世利益を追求する。それって普通の薬剤師に向けて言う言葉じゃない。
「あの人たちは」
人間じゃないの?
桂花は認めたくないものの、その違和感が指し示す正体に気づいてしまった。
「ふふっ。違和感はあるようですね。気づくにはもう一押しというところでしょうか。では、少しは考える時間を差し上げましょう。なあに、彼らがここを導き出せるはずがない。ここは此岸と彼岸の間なんですから。それにこの状態では結論を出すまでまだまだ時間が掛かるでしょうし、ゆっくりしていてください」
考え込む桂花を残し、現れた時と同様に唐突にいなくなる紫門だ。その様子に、桂花はもう頭を抱え込むしかない。
「一体何がどうなっているのよ。でも、ちゃんと考えなきゃ。今まで無視していたけど、あの遠藤っていう人に勝つためにも考えなきゃいけないんだわ。ええっと、名前が違う。でも、その名前がヒント。って、ああもう」
桂花は頭を抱えてしまう。どうしてこうなったのか。
私はただ、あの時に助けてくれた彼に憧れて薬剤師になっただけなのに。たまたま似ていた法明に惹かれて、あそこに就職しただけなのに。
「本当に、別人じゃないの。あの時のあの人と薬師寺さんは同じ人なの」
ずっと違和感はあった。あまりにそっくりな二人。いくらか記憶が美化されているとはいえ、彼の風貌はあまりに法明に合致してしまう。でも、それならば年齢が全く合わない。法明は全く年を取っていないことになってしまう。それってやっぱり人間じゃないからなのか。もう、あの人と法明は同一人物なのか。それとも別人なのか。それさえ解らなくなってくる。
「また、迷子になった気分だわ」
あの時に食べた飴は何だったのだろう。桂花は確かな現実を求めるように、そんなことを考えていた。
「へえ。本当に何もかも気づいていないというわけですか。あなたの能力はなかなかのものだというのに、傍にいて全く気づいていなかったんですね」
そんな桂花に、紫門は同情するような目をしてくる。そして、今から信じている現実を壊すのが楽しくて仕方がないというように、口元はにいっと吊り上げている。その顔で、桂花は不安が当たっているのだと知り、ますます恐怖を感じてしまう。
「まあ、あの男も気配で察知されるようなへまはしませんか。しかし、そもそもですが、陽明と薬師寺っていう安直な名前で気づきませんかね。もはや答えを言っているようなものなのに。あれではほぼ堂々と名乗っているようなものですよ」
「えっ」
「そう考えると、俺は大分、凝った名前ってことになりますねえ。元の名前を知ることは不可能ですから」
紫門はそこでくくっと笑う。そこで桂花ははっと気づく。
「ってことは、あんたも嘘の名前なの」
「もちろん。当り前じゃないですか。本来はこの世に存在するはずのない者なんですから、本名のままでは不都合だらけです。まあ、俺の場合はあちらを本名と呼んでいいのか、それは謎ですけどね」
「――」
何が何だか訳が分からない。でも、これは陽明が現れたあたりからずっと付き纏っていた感覚だ。法明がもしただの薬剤師ならばあり得ないこと。その要素として付き纏うのが陽明であり、この目の前の紫門だ。
どうしてあの薬局に陰陽師が出入りしているのか。そして、助力を乞うのか。漢方薬や東洋医学の考え方に陰陽五行説が用いられているから。これだけでは説明しきれない何かがある。
「新人さんですか。新しく、それも普通の人間を雇うなんてどういう風の吹き回しですか」
初めて会った時、陽明はこんな不可解なことを言っていた。普通の人間を雇う。それってつまり、法明たちは普通の人間ではないと言っているようなものではないか。
「確かに普段の依頼は現世利益を追求する薬師寺には合わないかもしれないけどなあ。それでも、現代に生きる人々が困っているんだから手を差し伸べてくれてもいいだろ」
そして次に会った時、そう路代の件で力を借りたいという話になった時、陽明は法明に向けてこんな指摘をしていた。これは、一体どういう意味だったのか。現世利益を追求する。それって普通の薬剤師に向けて言う言葉じゃない。
「あの人たちは」
人間じゃないの?
桂花は認めたくないものの、その違和感が指し示す正体に気づいてしまった。
「ふふっ。違和感はあるようですね。気づくにはもう一押しというところでしょうか。では、少しは考える時間を差し上げましょう。なあに、彼らがここを導き出せるはずがない。ここは此岸と彼岸の間なんですから。それにこの状態では結論を出すまでまだまだ時間が掛かるでしょうし、ゆっくりしていてください」
考え込む桂花を残し、現れた時と同様に唐突にいなくなる紫門だ。その様子に、桂花はもう頭を抱え込むしかない。
「一体何がどうなっているのよ。でも、ちゃんと考えなきゃ。今まで無視していたけど、あの遠藤っていう人に勝つためにも考えなきゃいけないんだわ。ええっと、名前が違う。でも、その名前がヒント。って、ああもう」
桂花は頭を抱えてしまう。どうしてこうなったのか。
私はただ、あの時に助けてくれた彼に憧れて薬剤師になっただけなのに。たまたま似ていた法明に惹かれて、あそこに就職しただけなのに。
「本当に、別人じゃないの。あの時のあの人と薬師寺さんは同じ人なの」
ずっと違和感はあった。あまりにそっくりな二人。いくらか記憶が美化されているとはいえ、彼の風貌はあまりに法明に合致してしまう。でも、それならば年齢が全く合わない。法明は全く年を取っていないことになってしまう。それってやっぱり人間じゃないからなのか。もう、あの人と法明は同一人物なのか。それとも別人なのか。それさえ解らなくなってくる。
「また、迷子になった気分だわ」
あの時に食べた飴は何だったのだろう。桂花は確かな現実を求めるように、そんなことを考えていた。
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