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第19話 打ち解けるにはどうすればいい?
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「さあ、好きなだけ食べていいよ」
「――完全にお前の趣味だろ」
目の前に並んだ甘いスイーツの数々に、暁良は速攻で他のも頼めよと突っ込んでいた。路人に任せた自分が悪いとは解っているが、他に考えがないものか。
「あの」
「えっと」
そして見事に、二人の子供を固めてしまっている。この教授大丈夫かという目を向けられていることに、路人は気づいているはずなのだがと、暁良はこれにも頭が痛い。
その悠馬と唯花は、固まってはいるものの、路人から逃げるつもりはないらしい。さすが、教授を敬えと教えられているだけのことはある。礼詞の徹底した教育もたまには役に立つということか。
「まあ、ここは一色先生のおごりだからさ。好きなのを食べなよ」
仕方ないなと、このまま話を進めるしかない暁良は、二人にどれを食べてもいいよと言った。
「でも」
「残す方が勿体ないし、それにほら」
まだ躊躇う唯花に、見てみろよと暁良は横の路人を指差した。すでにショートケーキに食らいついている。
「行儀が悪い」
「うぐっ」
手づかみで食う路人に、暁良はちょっとは目の前の子どもを見習えと肩を殴っていた。すると見事に喉に詰めてくれる。まったく、世話の焼ける。
とまあ、状況はこんな愉快なものとなっていた。
学食に二人を誘い出した路人は、悠馬と唯花と打ち解けるべく、学食にあるスイーツ全種類を注文するという暴挙に出た。おかげでテーブルの上はスイーツだらけだ。
「この先生、クマのぬいぐるみとお菓子が大好きなんだよ。君たちより子どもだろ?」
がつがつ食べる路人は、完全に話を暁良に任せている。だからどうして俺なんだよと悲しくなりつつも、暁良はそう路人を紹介して二人との距離を縮めようと試みた。
「あれ?」
「そう。研究室には他にも山のようにぬいぐるみがあるんだ」
さすがは女の子。こういうのの食いつきはいいなと、唯花が興味を示したので暁良は少しほっとする。が、問題は男の子の方だ。どうする? 完全に怪しい人を見る目で路人を見ている。
「長門君は、こういうお菓子食べる?」
「ええ。まあ。少しは」
固い返事だけが返ってきた。そしてスイーツに手を伸ばそうとはしない。あまり好きではないのだろうか。それとも警戒されているのか。
「貸してあげるよ」
その間に、路人と唯花の距離が縮まっていた。クマさんぬいぐるみ、いつもは邪魔で仕方がないか、今日は大活躍だ。
「ありがとう」
受け取った唯花からは、ようやく子どもらしい笑顔が零れた。よしよし。一人目は何とかクリアか。
「それと同じデザインのロボットを今、作ってるんだ」
そして路人はパフェを食べながらそんな自慢をする。
「外側だけだろ」
「そうだよ。中身はイメージしか出来ないからね。後は翔摩あたりに任せれば完璧だ」
暁良のツッコミに負けない路人はえっへんと偉そうだ。
「たしか、一色先生はプログラミングを数式で表されるんですよね」
「――う、うん」
そこに的確な指摘をしたのは、あの悠馬だ。なるほどねえと、暁良はようやく今の説明で腑に落ちた気分だ。路人本人の説明は要領を得なかったのだ。
「その点に関して、赤松先生は他の人には絶対に出来ないと褒めていました。まさか実物がこういう方だったとは」
「――う、うん。なんか、ごめん」
十二歳の子どもに気圧されてどうすると、暁良は思うもこれは凄い。たしかに天才児だなと納得だ。
「あっ、悪口ではないんです。その、赤松先生と同じ感じだと、勝手に想像していたので」
まあそうだよねと、暁良は思わず悠馬に同情してしまう。みんなあの堅物みたいだと想像していたわけだ。
「まあ、サンプルがあいつしかいないからね」
路人はそう言って誤魔化すように笑う。が、実際には路人が少数派なだけで、他は大体真面目である。
「その、俺、本当は一色先生に習いたかったなです。でも、先生はご自身の研究で手一杯だと」
だからどうして、こんな変なのだろうと、悠馬はただいま困惑の真っただ中というわけだ。暁良はより同情してしまう。
「俺の場合、教えるのに向かないからな。それは自覚している。こう、総てが感覚なんだよ。その数式をどう導き出したのか。聞かれても困るし、おそらくそれは赤松の方がよく理解している。抜けている部分はあいつが作り上げているからな」
だから礼詞に習うのも無駄ではないと、珍しく教授らしい意見だ。暁良は成長したなと安心する。
「そう、ですね」
しかし、何か納得いっていないようだ。それは唯花も同じようで、路人のクマさんぬいぐるみを抱きしめたまま固まっている。
「ひょっとして、困っていることがあるのかな?」
今だと、暁良が今回の呼び出しの核心に触れた。が、二人はないと首を横に振る。
「いきなり聞いても駄目に決まっているだろ」
「うっ」
横から小声で路人が突っ込んでくる。くそ、こいつに揚げ足を取られる日が来るなんて。
「じゃあ、何とかしろよ」
「だから今、対策を考えているんだろ」
せっかく和んでいたのに、また振り出しに戻った空気に、暁良と路人もついつい言い合いをしてしまうのだった。
「――完全にお前の趣味だろ」
目の前に並んだ甘いスイーツの数々に、暁良は速攻で他のも頼めよと突っ込んでいた。路人に任せた自分が悪いとは解っているが、他に考えがないものか。
「あの」
「えっと」
そして見事に、二人の子供を固めてしまっている。この教授大丈夫かという目を向けられていることに、路人は気づいているはずなのだがと、暁良はこれにも頭が痛い。
その悠馬と唯花は、固まってはいるものの、路人から逃げるつもりはないらしい。さすが、教授を敬えと教えられているだけのことはある。礼詞の徹底した教育もたまには役に立つということか。
「まあ、ここは一色先生のおごりだからさ。好きなのを食べなよ」
仕方ないなと、このまま話を進めるしかない暁良は、二人にどれを食べてもいいよと言った。
「でも」
「残す方が勿体ないし、それにほら」
まだ躊躇う唯花に、見てみろよと暁良は横の路人を指差した。すでにショートケーキに食らいついている。
「行儀が悪い」
「うぐっ」
手づかみで食う路人に、暁良はちょっとは目の前の子どもを見習えと肩を殴っていた。すると見事に喉に詰めてくれる。まったく、世話の焼ける。
とまあ、状況はこんな愉快なものとなっていた。
学食に二人を誘い出した路人は、悠馬と唯花と打ち解けるべく、学食にあるスイーツ全種類を注文するという暴挙に出た。おかげでテーブルの上はスイーツだらけだ。
「この先生、クマのぬいぐるみとお菓子が大好きなんだよ。君たちより子どもだろ?」
がつがつ食べる路人は、完全に話を暁良に任せている。だからどうして俺なんだよと悲しくなりつつも、暁良はそう路人を紹介して二人との距離を縮めようと試みた。
「あれ?」
「そう。研究室には他にも山のようにぬいぐるみがあるんだ」
さすがは女の子。こういうのの食いつきはいいなと、唯花が興味を示したので暁良は少しほっとする。が、問題は男の子の方だ。どうする? 完全に怪しい人を見る目で路人を見ている。
「長門君は、こういうお菓子食べる?」
「ええ。まあ。少しは」
固い返事だけが返ってきた。そしてスイーツに手を伸ばそうとはしない。あまり好きではないのだろうか。それとも警戒されているのか。
「貸してあげるよ」
その間に、路人と唯花の距離が縮まっていた。クマさんぬいぐるみ、いつもは邪魔で仕方がないか、今日は大活躍だ。
「ありがとう」
受け取った唯花からは、ようやく子どもらしい笑顔が零れた。よしよし。一人目は何とかクリアか。
「それと同じデザインのロボットを今、作ってるんだ」
そして路人はパフェを食べながらそんな自慢をする。
「外側だけだろ」
「そうだよ。中身はイメージしか出来ないからね。後は翔摩あたりに任せれば完璧だ」
暁良のツッコミに負けない路人はえっへんと偉そうだ。
「たしか、一色先生はプログラミングを数式で表されるんですよね」
「――う、うん」
そこに的確な指摘をしたのは、あの悠馬だ。なるほどねえと、暁良はようやく今の説明で腑に落ちた気分だ。路人本人の説明は要領を得なかったのだ。
「その点に関して、赤松先生は他の人には絶対に出来ないと褒めていました。まさか実物がこういう方だったとは」
「――う、うん。なんか、ごめん」
十二歳の子どもに気圧されてどうすると、暁良は思うもこれは凄い。たしかに天才児だなと納得だ。
「あっ、悪口ではないんです。その、赤松先生と同じ感じだと、勝手に想像していたので」
まあそうだよねと、暁良は思わず悠馬に同情してしまう。みんなあの堅物みたいだと想像していたわけだ。
「まあ、サンプルがあいつしかいないからね」
路人はそう言って誤魔化すように笑う。が、実際には路人が少数派なだけで、他は大体真面目である。
「その、俺、本当は一色先生に習いたかったなです。でも、先生はご自身の研究で手一杯だと」
だからどうして、こんな変なのだろうと、悠馬はただいま困惑の真っただ中というわけだ。暁良はより同情してしまう。
「俺の場合、教えるのに向かないからな。それは自覚している。こう、総てが感覚なんだよ。その数式をどう導き出したのか。聞かれても困るし、おそらくそれは赤松の方がよく理解している。抜けている部分はあいつが作り上げているからな」
だから礼詞に習うのも無駄ではないと、珍しく教授らしい意見だ。暁良は成長したなと安心する。
「そう、ですね」
しかし、何か納得いっていないようだ。それは唯花も同じようで、路人のクマさんぬいぐるみを抱きしめたまま固まっている。
「ひょっとして、困っていることがあるのかな?」
今だと、暁良が今回の呼び出しの核心に触れた。が、二人はないと首を横に振る。
「いきなり聞いても駄目に決まっているだろ」
「うっ」
横から小声で路人が突っ込んでくる。くそ、こいつに揚げ足を取られる日が来るなんて。
「じゃあ、何とかしろよ」
「だから今、対策を考えているんだろ」
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