20 / 44
第20話 人生の一大事じゃないのか?
しおりを挟む
しばらく気まずい空気が流れた。しかし、その間も路人ががつがつとスイーツを食べ進めたため、唯花も悠馬もまた気持ちが緩んだようだ。そして二人揃ってプリンを食べ始める。
「路人。あんまり食うと太るぞ」
が、それでもまだまだ大量のスイーツが載っている状態だ。暁良はそれほど好きでもないがと、マカロンを食べつつ注意する。
「それは大丈夫。どうやら痩せの大食いと言われる種類に入るらしく、昔から食べ過ぎても太らないね」
「――いや、たぶん消費カロリーがでかいんだろ」
どうだろうと悩んだ末、暁良はそう言っていた。一度考え出すと複数のことを同時に考え、そして同時にやっているのだ。これは脳みそが大量の砂糖を消費していると考えるほうが妥当だ。
「ああ、そうかもね。ふむ。新しい発見だ」
路人は暁良の説に納得と笑顔だ。そしてならばもっと食べないとと、今度はジャンボパフェに手を伸ばす。
「しかし何事も適量ってもんがあるだろ? 将来糖尿病になっても知らないぞ」
「それまでに薬が開発されているはずだ!!」
どんな希望的観測? と、暁良は呆れるしかない。
が、路人が力一杯言い切ったのが面白かったようで、二人がようやく笑った。
「ほら。二人だってそう上手くいかないって思ってるぞ」
「ええっ。これだけテクノロジーが発展したっていうのに? 医学も同じように発展してるでしょ?」
路人は違うのかと、本気で驚いている。これに悠馬はまたイメージと違うと悩んでいるような顔だ。一方、唯花はそんな路人に好意的な目を向けている。
「まだまだ治らない病気はいっぱいあるんだよ。ったく」
お前のその抜けた所もなと、暁良はぼそっと言ってしまった。それに路人はしっかり聞こえない振りをしてくれる。くそっ、こういう時だけ都合のいい大人だ。
「変な人」
そしてそこに、こっそり呟かれる唯花の言葉。そう、路人は変人だ。
暁良はだろっと、ウインクしておく。
そうやって、しばらく距離を縮める努力が続くのだった。
その頃。家庭とは何かという謎の問いに陥っていた会議室では、これからどうするかについて話し合われていた。
「で。問題はすでに路人が知ってしまったということだ。ということは、一応は見合いの席を設けるしかないだろ?」
違うのかと、穂波は紀章を見た。最も避けたかった事態だと、紀章は渋い顔だが頷くしかない。
「ええ。相手方の顔もあります。それに、ええ」
色々と言いたいことはあるが、ここは飲み込むしかない。そんな紀章の葛藤が、今の返事に現れていた。佑弥は少し溜飲が下がる思いだった。
そもそも、佑弥があの科学者狩りをして路人と礼詞を困らせようと考えたのは、この紀章に端を発している。
紀章は基準が何かとあの二人なのだ。それは最初に教えた二人であり、今の飛び級制度の象徴のような二人だ。比較されることは仕方ない。
しかし、こちらも難関を突破し研究者になったという自負がある。それを無視されるのは我慢できない。そういう感情からだ。
「そこでだ。まあ、見合いはしましょう。しかしこちらが無理と言うのに、相手のお嬢様が納得するかという問題がある。どんなボケでもいい。結婚すると言いかねないというのは、先ほどの議論でも解ったところだ。相手が要求することは、自らの地位と権力に見合う頭脳。これだけだ。そこで」
穂波はにやりと笑い、今度は礼詞を見た。礼詞はもちろん、嫌な予感と顔を引き攣らせる。
「どうだ? 別居前提。家庭は築かないことが前提。書類上だけ結婚するとなった時、お前は判を押すか?」
「――」
賢明にも、礼詞はすぐに答えを述べなかった。穂波の言っていることは無茶苦茶である。
「つまり体裁だけ?」
仕方ないなと、瑛真が代わりに質問した。ともかく、沈黙していても気まずくなるだけである。
「そうだ。まあ、相手は政治家だから、付き合いに参加させられることはあるだろう。しかし、忙しい科学者だということは解っているから、無理に参加させられることもないはずだ。だから、結婚しているという事実だけでいいはずだ」
ううむ。それでいいのか。その場にいた誰もが思った。
だってそうだろ? 結婚って、人生の一大事じゃないのか? それを書類上の手続きと割り切れるのか?
「それは、一色博士では駄目なのですか?」
またまた仕方ないと、瑛真が次の質問に移る。その場合、路人でも問題ないように思えるが。
「ああ。それは駄目だ。あいつは一般家庭ってものに憧れがあるからな。書類上でなんて納得できないはずだ」
さすが、そこは母親。息子の思考は解っているわけだ。
というか、憧れているのを知っているならば、少しは叶えてやれよと佑弥は思う。何だか同情してしまうことの連続だ。
「しかし、路人も自らそれが出来るとは思っていない。よって結婚なんて考えたくないと思っているんだ。あいつに書類上と言っても無理だな」
そしてさらなる駄目押し。
おい、止めてやれ。息子が可哀想だよと、佑弥はどんよりしてしまう。
「――ま、まあ。見合いの日取りを決めますか?」
あまりの言い分に、紀章も話を次に移そうと思ったようだ。思わずそう訊く。
「ああ。そうだな。私も同行しよう。それと赤松。今のことをよく考え、その日までに返事をするように。他の男を探すのも大変だからな。残りは、城田か宮迫になるが。宮迫だと若すぎるし」
「――」
「――」
呼ばれた二人は、俺たちも巻き込まれるのかよと固まった。拙い。これは何としても礼詞に頷いてもらわないといけなくなった。二人はじいっと礼詞を見てしまう。
そして肝心の礼詞は
「……」
ただいまフリーズ中。何も考えられない状態に陥っていた。
「路人。あんまり食うと太るぞ」
が、それでもまだまだ大量のスイーツが載っている状態だ。暁良はそれほど好きでもないがと、マカロンを食べつつ注意する。
「それは大丈夫。どうやら痩せの大食いと言われる種類に入るらしく、昔から食べ過ぎても太らないね」
「――いや、たぶん消費カロリーがでかいんだろ」
どうだろうと悩んだ末、暁良はそう言っていた。一度考え出すと複数のことを同時に考え、そして同時にやっているのだ。これは脳みそが大量の砂糖を消費していると考えるほうが妥当だ。
「ああ、そうかもね。ふむ。新しい発見だ」
路人は暁良の説に納得と笑顔だ。そしてならばもっと食べないとと、今度はジャンボパフェに手を伸ばす。
「しかし何事も適量ってもんがあるだろ? 将来糖尿病になっても知らないぞ」
「それまでに薬が開発されているはずだ!!」
どんな希望的観測? と、暁良は呆れるしかない。
が、路人が力一杯言い切ったのが面白かったようで、二人がようやく笑った。
「ほら。二人だってそう上手くいかないって思ってるぞ」
「ええっ。これだけテクノロジーが発展したっていうのに? 医学も同じように発展してるでしょ?」
路人は違うのかと、本気で驚いている。これに悠馬はまたイメージと違うと悩んでいるような顔だ。一方、唯花はそんな路人に好意的な目を向けている。
「まだまだ治らない病気はいっぱいあるんだよ。ったく」
お前のその抜けた所もなと、暁良はぼそっと言ってしまった。それに路人はしっかり聞こえない振りをしてくれる。くそっ、こういう時だけ都合のいい大人だ。
「変な人」
そしてそこに、こっそり呟かれる唯花の言葉。そう、路人は変人だ。
暁良はだろっと、ウインクしておく。
そうやって、しばらく距離を縮める努力が続くのだった。
その頃。家庭とは何かという謎の問いに陥っていた会議室では、これからどうするかについて話し合われていた。
「で。問題はすでに路人が知ってしまったということだ。ということは、一応は見合いの席を設けるしかないだろ?」
違うのかと、穂波は紀章を見た。最も避けたかった事態だと、紀章は渋い顔だが頷くしかない。
「ええ。相手方の顔もあります。それに、ええ」
色々と言いたいことはあるが、ここは飲み込むしかない。そんな紀章の葛藤が、今の返事に現れていた。佑弥は少し溜飲が下がる思いだった。
そもそも、佑弥があの科学者狩りをして路人と礼詞を困らせようと考えたのは、この紀章に端を発している。
紀章は基準が何かとあの二人なのだ。それは最初に教えた二人であり、今の飛び級制度の象徴のような二人だ。比較されることは仕方ない。
しかし、こちらも難関を突破し研究者になったという自負がある。それを無視されるのは我慢できない。そういう感情からだ。
「そこでだ。まあ、見合いはしましょう。しかしこちらが無理と言うのに、相手のお嬢様が納得するかという問題がある。どんなボケでもいい。結婚すると言いかねないというのは、先ほどの議論でも解ったところだ。相手が要求することは、自らの地位と権力に見合う頭脳。これだけだ。そこで」
穂波はにやりと笑い、今度は礼詞を見た。礼詞はもちろん、嫌な予感と顔を引き攣らせる。
「どうだ? 別居前提。家庭は築かないことが前提。書類上だけ結婚するとなった時、お前は判を押すか?」
「――」
賢明にも、礼詞はすぐに答えを述べなかった。穂波の言っていることは無茶苦茶である。
「つまり体裁だけ?」
仕方ないなと、瑛真が代わりに質問した。ともかく、沈黙していても気まずくなるだけである。
「そうだ。まあ、相手は政治家だから、付き合いに参加させられることはあるだろう。しかし、忙しい科学者だということは解っているから、無理に参加させられることもないはずだ。だから、結婚しているという事実だけでいいはずだ」
ううむ。それでいいのか。その場にいた誰もが思った。
だってそうだろ? 結婚って、人生の一大事じゃないのか? それを書類上の手続きと割り切れるのか?
「それは、一色博士では駄目なのですか?」
またまた仕方ないと、瑛真が次の質問に移る。その場合、路人でも問題ないように思えるが。
「ああ。それは駄目だ。あいつは一般家庭ってものに憧れがあるからな。書類上でなんて納得できないはずだ」
さすが、そこは母親。息子の思考は解っているわけだ。
というか、憧れているのを知っているならば、少しは叶えてやれよと佑弥は思う。何だか同情してしまうことの連続だ。
「しかし、路人も自らそれが出来るとは思っていない。よって結婚なんて考えたくないと思っているんだ。あいつに書類上と言っても無理だな」
そしてさらなる駄目押し。
おい、止めてやれ。息子が可哀想だよと、佑弥はどんよりしてしまう。
「――ま、まあ。見合いの日取りを決めますか?」
あまりの言い分に、紀章も話を次に移そうと思ったようだ。思わずそう訊く。
「ああ。そうだな。私も同行しよう。それと赤松。今のことをよく考え、その日までに返事をするように。他の男を探すのも大変だからな。残りは、城田か宮迫になるが。宮迫だと若すぎるし」
「――」
「――」
呼ばれた二人は、俺たちも巻き込まれるのかよと固まった。拙い。これは何としても礼詞に頷いてもらわないといけなくなった。二人はじいっと礼詞を見てしまう。
そして肝心の礼詞は
「……」
ただいまフリーズ中。何も考えられない状態に陥っていた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
祖母が遺した古民家は、あやかし専門の甘味処でした ~訳あり美形な妖狐・白夜様と、不思議な常連さんたちに囲まれてます~
藤森瑠璃香
ライト文芸
時庭 美桜(ときわ みお)、25歳。都会のデザイン会社で働く、普通のOL。唯一の肉親だった祖母を亡くし、天涯孤独の身となる。祖母とは疎遠だったが、遺産として古い日本家屋を相続することに。訪れた古民家は、どこか懐かしくも不思議な空気が漂っていた。家の中には、祖母が営んでいたらしい「甘味処 時庭(ときわ)」と看板のかかった、今は使われていない店舗スペースがあった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる