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第19話 ポイントはバケツ
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慶太郎を加えた五人で再び現場となった研究室に戻ることになった。今回もまた、現場を警備するのは洋平である。
「お疲れ様です」
二人がいることにもう違和感のない洋平は、そう言ってさっさと現場に全員を通してしまう。ううん、やはりこの地域の警察はヤバいのかもしれない。
現場はすでに死体が移動され、あった場所が白線で示されているだけだ。これでようやく冷静に研究室を見ることが出来ると、昴はほっとしていた。あの形相は今日の晩、夢に見そうだ。これは徹夜三日目になるかもしれない。
それにしても、入り口から入ってすぐに目に付くあの窓が割れているのは何故か。本棚が動いたことと関連があるとして、何だか奇妙な状況であることは間違いない。
「ほ、本当だ。本棚が動いている」
それは慶太郎も同じらしく、初めて本棚が移動している事実に気づいて驚いていた。そして興味津々に本棚を観察し始める。ようやくこちらも本調子に戻ったらしい。
「横に引っ張るには動力が必要だ。それが何かだな」
「ああ」
そして翼とそんな議論を始めるのだから凄い。心配して損した気分だ。やはり慶太郎もしっかりとずれている。しかし一人だけ議論に加われないのは悔しい。昴もすぐに本棚へと近づいた。
「引きずった跡がしっかりと残っていますね」
床をよく見ると、うっすら引きずった跡が研究室の入り口付近から、今本棚がある位置まで続いていた。本棚を無理やり動かした証拠だ。
「本当だ。ということは横にスライドさせたわけか」
慶太郎は昨日の苦労がと溜め息だ。それは昴も同じで、研究室の床を傷つけるなと庶務課から言われていたのを思い出す。まあ、殺人現場になってしまったのだから、その注意も意味のないものとなってしまった。
「しかし横にスライドさせることに何の意味があるんだ。それだろう。被害者は後頭部を殴打されている。この本棚とバケツがどう結びつくのか。それを忘れては駄目だ」
「え、ええ」
盛り上がる理系三人に、びしっと麻央の注意が入る。たしかにそのとおり。何故動かしたのか。それを考える必要があった。しかもすでに凶器と疑われるバケツが出てきているのだ。それとの関連が解らなければ意味がない。
「動かしたというより、動いたと捉えるのがいいのではないか。引きずった跡がしっかり残っているということは、予想外に動いたのかもしれない」
犯人はこれを支えに何かをしたのではないか。翼の指摘に、なるほどと他の三人は頷く。
「それならば動いた理由になりそうだな。しかし何をどうすれば。しかも、菊池君の」
そこで慶太郎の言葉が止まってしまった。やはりまだショックから抜け出せていないようだ。
「本棚を利用したと仮定すれば、何か重いものを頭部にぶつけることが可能だ。丁度良く、向かいの壁にも重そうな本棚があることだしな」
そう言いながら翼は部屋をぐるりと指差す。そこには何か見えない糸があるかのようだ。いや、この場合はロープか。バケツを括りつけたロープ。昴はそれを想像するものの、どうにもピンとこなかった。
「なるほどな。つまりこの部屋そのものを凶器にしたということか。それで、死体が仰向けになっていたのは」
「おそらくロープのようなものが被害者本人に巻き付いてしまったんだろう。この方法を考えた時、顔見知りでなければ無理だと思っていたんだ」
「お疲れ様です」
二人がいることにもう違和感のない洋平は、そう言ってさっさと現場に全員を通してしまう。ううん、やはりこの地域の警察はヤバいのかもしれない。
現場はすでに死体が移動され、あった場所が白線で示されているだけだ。これでようやく冷静に研究室を見ることが出来ると、昴はほっとしていた。あの形相は今日の晩、夢に見そうだ。これは徹夜三日目になるかもしれない。
それにしても、入り口から入ってすぐに目に付くあの窓が割れているのは何故か。本棚が動いたことと関連があるとして、何だか奇妙な状況であることは間違いない。
「ほ、本当だ。本棚が動いている」
それは慶太郎も同じらしく、初めて本棚が移動している事実に気づいて驚いていた。そして興味津々に本棚を観察し始める。ようやくこちらも本調子に戻ったらしい。
「横に引っ張るには動力が必要だ。それが何かだな」
「ああ」
そして翼とそんな議論を始めるのだから凄い。心配して損した気分だ。やはり慶太郎もしっかりとずれている。しかし一人だけ議論に加われないのは悔しい。昴もすぐに本棚へと近づいた。
「引きずった跡がしっかりと残っていますね」
床をよく見ると、うっすら引きずった跡が研究室の入り口付近から、今本棚がある位置まで続いていた。本棚を無理やり動かした証拠だ。
「本当だ。ということは横にスライドさせたわけか」
慶太郎は昨日の苦労がと溜め息だ。それは昴も同じで、研究室の床を傷つけるなと庶務課から言われていたのを思い出す。まあ、殺人現場になってしまったのだから、その注意も意味のないものとなってしまった。
「しかし横にスライドさせることに何の意味があるんだ。それだろう。被害者は後頭部を殴打されている。この本棚とバケツがどう結びつくのか。それを忘れては駄目だ」
「え、ええ」
盛り上がる理系三人に、びしっと麻央の注意が入る。たしかにそのとおり。何故動かしたのか。それを考える必要があった。しかもすでに凶器と疑われるバケツが出てきているのだ。それとの関連が解らなければ意味がない。
「動かしたというより、動いたと捉えるのがいいのではないか。引きずった跡がしっかり残っているということは、予想外に動いたのかもしれない」
犯人はこれを支えに何かをしたのではないか。翼の指摘に、なるほどと他の三人は頷く。
「それならば動いた理由になりそうだな。しかし何をどうすれば。しかも、菊池君の」
そこで慶太郎の言葉が止まってしまった。やはりまだショックから抜け出せていないようだ。
「本棚を利用したと仮定すれば、何か重いものを頭部にぶつけることが可能だ。丁度良く、向かいの壁にも重そうな本棚があることだしな」
そう言いながら翼は部屋をぐるりと指差す。そこには何か見えない糸があるかのようだ。いや、この場合はロープか。バケツを括りつけたロープ。昴はそれを想像するものの、どうにもピンとこなかった。
「なるほどな。つまりこの部屋そのものを凶器にしたということか。それで、死体が仰向けになっていたのは」
「おそらくロープのようなものが被害者本人に巻き付いてしまったんだろう。この方法を考えた時、顔見知りでなければ無理だと思っていたんだ」
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