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第23話 狙っているのか?
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どうしてこんなことに。俺は広がる景色を見つめて呆然としてしまう。それまでは友好な関係を築いていたはずだ。こんな、暴力的な破壊に走る連中ではなかったはずだ。
「あいつらがついに本性を現しただけだろ」
横にいた友人、キミトが憎々しそうに言う。本性を現しただと。彼らは高度な文明を発達させた、人間と変わらない存在だ。こんな野蛮な方法を好む連中ではない。だから俺は全力で否定していた。
「違う。何か理由があるはずだ」
「そうか。お前はあいつらの何を知っている」
「それは」
思いのほか強く問われ、俺は言葉に窮した。何を知っている。たしかに俺は表面的なことしか知らないのだろう。でも――
「はあ」
「どうした、何度も何度も溜め息なんて吐いて」
大学の昼休み。この時間だけを小説の執筆時間にすることにした昴だが、全く集中できずにいた。そしてついに深々と溜め息を吐き出してしまう。せっかく誰もいない講義室を見つけて作業を開始したというのに、全然駄目だった。
その溜め息を、横で同じようにノートパソコンを広げていた由基は、気になるなと訊いてくる。先ほどからずっと定期的に溜め息を吐いているのだ。これは気にならない方がおかしい。
「いや、何だか展開が平凡に感じてしまってさ。あるだろ。ここ最近、あれだけ妙な事件が続いたんだから」
「ああ、なるほどね。たしかにあのインパクトは凄いからな。それに、犯人の一人は知り合いだったわけだし」
由基もそれを引きずっていたら仕方ないと苦笑する。しかし言い方は非常に淡白だった。彼の中ではもう終わった事件であり、航平は関係のない人物となってしまったらしい。
「事実は小説より奇なりという言葉がある。まさにあの事件はそれだな」
「だよな」
と同意したところで、由基の声ではないことに気づいた。それに由基はあんな喋り方をしない。
「げっ」
「つ、月岡先生。こんにちは」
驚く昴と、驚きつつもちゃんと挨拶する由基。その二人を見て翼は何を思うのか。ただこんにちはと挨拶し返しただけだった。
「そ、それでどうしてここに」
相変わらず予測不能なうえに、どうして毎回毎回小説を書いているタイミングで現れるのか。狙ってやっているのかと疑ってしまうところだ。
「たまたま通り掛かったら話し声がしたからな。何をやっているのかと覗いたらお前たちだったというわけだ」
別に何の意味もないと翼が言うが、本当だろうか。昴はこのタイミングの良さを疑ってしまう。
「その手に持っているのは」
ひょっとしてまた用事を忘れているだけか。そう思い、昴は翼が手に持つ書類を指差した。それはくるくると丸められ、もう見る気がないような状態だ。
「ああ、これか。最近この辺りで小火事件が続いているから、火の元に注意しろという注意喚起だ。それと、連続放火の可能性もあるから、燃えやすいものを建物の外に放置するなという注意だな」
見るかと、翼はあっさりとそれを見せてくれた。大学の庶務課が作ったらしい、お願いと注意という素っ気ないものだった。それによると、ここ数日ですでに二件の放火が疑われる小火があったという。
「連続して起こっているんですか」
「ああ。それも大学周辺らしくてな。中には学生の家もあったという。夏休み前とあって、気持ちが不安定になりやすい時期だ。誰かがやったのではないかという疑問が浮上しても仕方ないところだな」
由基の質問にもいつもの調子で返す翼だ。これは本当にたまたま通り掛かっただけらしい。まったく、こういうことがあるから余計に同じ大学であるというのは不便だ。しかもそれだけで言ってさっさと出て行ってしまう。
「あいつらがついに本性を現しただけだろ」
横にいた友人、キミトが憎々しそうに言う。本性を現しただと。彼らは高度な文明を発達させた、人間と変わらない存在だ。こんな野蛮な方法を好む連中ではない。だから俺は全力で否定していた。
「違う。何か理由があるはずだ」
「そうか。お前はあいつらの何を知っている」
「それは」
思いのほか強く問われ、俺は言葉に窮した。何を知っている。たしかに俺は表面的なことしか知らないのだろう。でも――
「はあ」
「どうした、何度も何度も溜め息なんて吐いて」
大学の昼休み。この時間だけを小説の執筆時間にすることにした昴だが、全く集中できずにいた。そしてついに深々と溜め息を吐き出してしまう。せっかく誰もいない講義室を見つけて作業を開始したというのに、全然駄目だった。
その溜め息を、横で同じようにノートパソコンを広げていた由基は、気になるなと訊いてくる。先ほどからずっと定期的に溜め息を吐いているのだ。これは気にならない方がおかしい。
「いや、何だか展開が平凡に感じてしまってさ。あるだろ。ここ最近、あれだけ妙な事件が続いたんだから」
「ああ、なるほどね。たしかにあのインパクトは凄いからな。それに、犯人の一人は知り合いだったわけだし」
由基もそれを引きずっていたら仕方ないと苦笑する。しかし言い方は非常に淡白だった。彼の中ではもう終わった事件であり、航平は関係のない人物となってしまったらしい。
「事実は小説より奇なりという言葉がある。まさにあの事件はそれだな」
「だよな」
と同意したところで、由基の声ではないことに気づいた。それに由基はあんな喋り方をしない。
「げっ」
「つ、月岡先生。こんにちは」
驚く昴と、驚きつつもちゃんと挨拶する由基。その二人を見て翼は何を思うのか。ただこんにちはと挨拶し返しただけだった。
「そ、それでどうしてここに」
相変わらず予測不能なうえに、どうして毎回毎回小説を書いているタイミングで現れるのか。狙ってやっているのかと疑ってしまうところだ。
「たまたま通り掛かったら話し声がしたからな。何をやっているのかと覗いたらお前たちだったというわけだ」
別に何の意味もないと翼が言うが、本当だろうか。昴はこのタイミングの良さを疑ってしまう。
「その手に持っているのは」
ひょっとしてまた用事を忘れているだけか。そう思い、昴は翼が手に持つ書類を指差した。それはくるくると丸められ、もう見る気がないような状態だ。
「ああ、これか。最近この辺りで小火事件が続いているから、火の元に注意しろという注意喚起だ。それと、連続放火の可能性もあるから、燃えやすいものを建物の外に放置するなという注意だな」
見るかと、翼はあっさりとそれを見せてくれた。大学の庶務課が作ったらしい、お願いと注意という素っ気ないものだった。それによると、ここ数日ですでに二件の放火が疑われる小火があったという。
「連続して起こっているんですか」
「ああ。それも大学周辺らしくてな。中には学生の家もあったという。夏休み前とあって、気持ちが不安定になりやすい時期だ。誰かがやったのではないかという疑問が浮上しても仕方ないところだな」
由基の質問にもいつもの調子で返す翼だ。これは本当にたまたま通り掛かっただけらしい。まったく、こういうことがあるから余計に同じ大学であるというのは不便だ。しかもそれだけで言ってさっさと出て行ってしまう。
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