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第一章 異世界召喚編
2 黒い妖精
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真那が黒い翼をはやした小人を抱き上げると、それは小さな女の子だった。少し癖のある黒髪が肩に触るくらいの長さで、薄目を開けてこちらを見つめる瞳は緑、パフスリーブのある半袖のワンピースドレスも黒、黒ばかりで妖精というより小悪魔的な容姿だった。小さな手やスカートから出ている素足が愛らしく、真那は誰が何と言おうと、この黒い翼の幼女を妖精だと思うことにした。彼女は幼少期から妖精という存在に強い執着を持っていたのであった。
「どうしたの妖精さん、元気ないね?」
真那は異世界に飛ばされた自分よりも、妖精の方を心配した。
(ぐぅーーー)
黒い翼の妖精のお腹が声を出した。
「お腹すいて飛べなくなっちゃったのかな」
真那はふと思い出して、スカートのポケットに手を突っ込み、チョコレートバーを引き出した。コンビニで買ったものをたまたまそこに入れていたのだった。
「これ食べる?」
真那が包み紙から半身のぞかせるチョコレートバーを妖精の鼻先に近づけた。すると、小さな少女はぱっと目を開けて、チョコにかぶりついた。そして妖精は、周りも見ずに夢中で食べ続けた。あまりの食欲に真那は驚いてしまった。チョコレートバーにはシリアルとキャラメルソースがぎっしり詰まっていて、真那でも一気に全部食べると結構お腹に来る。それを赤子サイズの幼女が見る間に半分たいらげた。そして、残り半分を両手で持ってさらに食べ進む。真那の身体と対比するならば、この妖精にとってのチョコレートバー一本は、真那にとっての十本程度には相当するだろう。
「もう食べちゃった……」
妖精は手のひらに付いたチョコを小さな舌でちろっと舐めていた。それから真那の事を見上げて、愛らしい顔に満面の笑顔を作った。
「おいしかった~」
「か、可愛い! 可愛すぎるっ!」
真那は身悶えするような心持になり妖精を抱きしめていた。
「お人形さんみたい」
小さな体から体温が伝わってくる。それは人形ではなく確実に生物だった。その時、妖精のものとは別の温もりを胸の辺りに感じて、真那は視線でその元を辿った。そして、服の内側で何かが輝いているのを見つける。真那は首から下げているプラチナのチェーンを引いて光の元を引き出した。亡くなった母が形見として残したキャッツアイのペンダントが現れる。
「お母さんの宝石が光ってる……」
白銀の枠に嵌っているカボションのアップルグリーンキャッツアイの大きさは三カラット以上の大粒で、それが淡い光を放っていた。真那はそんな現象を始めて目の当たりにした。それも当然で、自ら発行する宝石など存在しない。キャッツアイ特有の猫の目を連想させる光の線、シャトヤンシーがが淡い発光の中で強い存在感を示している。妖精が黒い翼で羽ばたいて、キャッツアイを目線に見られる位置まで浮遊する。そしてペンダントの宝石をじっと見つめていた。
その時、真那は、あっと声をあげた。妖精のグリーンの瞳にも猫目のような縦線が入っていたのだ。それは猫のように瞳孔が細いのではなく、グリーンの瞳の表面に白い光の線が浮かんでいる。
「シャトヤンシーが瞳に……きれい」
真那はほとんど無意識に呟いていた。幼き妖精の瞳は、母の形見の宝石と見紛う程に美しく輝いていた。その時、妖精が小さな手を伸ばしてくる。可愛らしい妖精の動作に誘われるように真那が手を出すと、二人の手と手が重なった。瞬間、キャッツアイから苛烈な緑光が放たれて、宝石から焔のように吹き出す光が真那の視界を襲った。唐突な現象に驚いた彼女は悲鳴をあげて片手で視力を遮る。
「な、何!!? 何なの!!?」
キャッツアイからの光の噴出がしばらく続き、閉じた瞼を通しても強烈な光の存在を感じる。同時に、真那は不思議な感覚に包まれた。頭の中に言葉が流れ込み、そして自分の命と小さな命が繋がるのを感じた。理屈ではなく、自分と別の何かが繋がったと本能の部分で理解する。
「あう~」
妖精の声を聞いて、真那はゆっくりと目を開けた。形見のキャッツアイからの発光は失せ、木漏れ日が照りのある宝石に当たってシャトヤンシーを浮かび上がらせていた。
「メラメラ」
真那は頭の中に流れ込んできた言葉を口にした。すると、真那と手を繋いでいる妖精が、愛嬌のある笑顔を見せて、背中の翼を何度も動かして喜びを表した。
「それが、あなたの名前なのね」
「マ、ナ」
メラメラは、幼児が覚えたての言葉を口にするように、たどたどしく彼女の名前を呼んだ。真那は再び身悶えしたい気持ちになり、目の前の妖精を抱きしめる。
「ああっ! どうしよう! 可愛すぎるっ!!」
真那は先ほどあった不思議な体験や、メラメラの名前が入り込んできたことなど、諸々の超常現象を頭の隅に追いやって、メラメラの頭をなでなでする。ただ可愛いというだけではなく、胸中に言いようのない愛おしさが生まれて、もし自分に子供が生まれたら、こんな持ちになるんじゃないかと素直に思った。
「あなたはどこから来たの?」
「あっち」
メラメラは大雑把に東の方を指さす。それから真那の抱擁から抜け出して飛び上がり、羽をぱたつかせつつ真那の頭の上に腹ばいに乗っかって脱力した。
「はふ~」
「こ、これはっ!? タレ妖精!?」
真那は衝撃的に感動した。頭の上に乗ったメラメラは、自分が好きだったゲームの激レア頭装備にそっくりだったのだ。
「メラメラと一緒なら、何でもできそうな気がするよ」
テンション爆上がりの真那の中に、根拠のない自信が湧いてくる。そして、町に戻ってみようと思い立った時、その方角から複数の馬蹄の響きが聞こえてきた。それらは一気に接近して耳朶から衝撃となって真那の身体に伝わった。
「どうしたの妖精さん、元気ないね?」
真那は異世界に飛ばされた自分よりも、妖精の方を心配した。
(ぐぅーーー)
黒い翼の妖精のお腹が声を出した。
「お腹すいて飛べなくなっちゃったのかな」
真那はふと思い出して、スカートのポケットに手を突っ込み、チョコレートバーを引き出した。コンビニで買ったものをたまたまそこに入れていたのだった。
「これ食べる?」
真那が包み紙から半身のぞかせるチョコレートバーを妖精の鼻先に近づけた。すると、小さな少女はぱっと目を開けて、チョコにかぶりついた。そして妖精は、周りも見ずに夢中で食べ続けた。あまりの食欲に真那は驚いてしまった。チョコレートバーにはシリアルとキャラメルソースがぎっしり詰まっていて、真那でも一気に全部食べると結構お腹に来る。それを赤子サイズの幼女が見る間に半分たいらげた。そして、残り半分を両手で持ってさらに食べ進む。真那の身体と対比するならば、この妖精にとってのチョコレートバー一本は、真那にとっての十本程度には相当するだろう。
「もう食べちゃった……」
妖精は手のひらに付いたチョコを小さな舌でちろっと舐めていた。それから真那の事を見上げて、愛らしい顔に満面の笑顔を作った。
「おいしかった~」
「か、可愛い! 可愛すぎるっ!」
真那は身悶えするような心持になり妖精を抱きしめていた。
「お人形さんみたい」
小さな体から体温が伝わってくる。それは人形ではなく確実に生物だった。その時、妖精のものとは別の温もりを胸の辺りに感じて、真那は視線でその元を辿った。そして、服の内側で何かが輝いているのを見つける。真那は首から下げているプラチナのチェーンを引いて光の元を引き出した。亡くなった母が形見として残したキャッツアイのペンダントが現れる。
「お母さんの宝石が光ってる……」
白銀の枠に嵌っているカボションのアップルグリーンキャッツアイの大きさは三カラット以上の大粒で、それが淡い光を放っていた。真那はそんな現象を始めて目の当たりにした。それも当然で、自ら発行する宝石など存在しない。キャッツアイ特有の猫の目を連想させる光の線、シャトヤンシーがが淡い発光の中で強い存在感を示している。妖精が黒い翼で羽ばたいて、キャッツアイを目線に見られる位置まで浮遊する。そしてペンダントの宝石をじっと見つめていた。
その時、真那は、あっと声をあげた。妖精のグリーンの瞳にも猫目のような縦線が入っていたのだ。それは猫のように瞳孔が細いのではなく、グリーンの瞳の表面に白い光の線が浮かんでいる。
「シャトヤンシーが瞳に……きれい」
真那はほとんど無意識に呟いていた。幼き妖精の瞳は、母の形見の宝石と見紛う程に美しく輝いていた。その時、妖精が小さな手を伸ばしてくる。可愛らしい妖精の動作に誘われるように真那が手を出すと、二人の手と手が重なった。瞬間、キャッツアイから苛烈な緑光が放たれて、宝石から焔のように吹き出す光が真那の視界を襲った。唐突な現象に驚いた彼女は悲鳴をあげて片手で視力を遮る。
「な、何!!? 何なの!!?」
キャッツアイからの光の噴出がしばらく続き、閉じた瞼を通しても強烈な光の存在を感じる。同時に、真那は不思議な感覚に包まれた。頭の中に言葉が流れ込み、そして自分の命と小さな命が繋がるのを感じた。理屈ではなく、自分と別の何かが繋がったと本能の部分で理解する。
「あう~」
妖精の声を聞いて、真那はゆっくりと目を開けた。形見のキャッツアイからの発光は失せ、木漏れ日が照りのある宝石に当たってシャトヤンシーを浮かび上がらせていた。
「メラメラ」
真那は頭の中に流れ込んできた言葉を口にした。すると、真那と手を繋いでいる妖精が、愛嬌のある笑顔を見せて、背中の翼を何度も動かして喜びを表した。
「それが、あなたの名前なのね」
「マ、ナ」
メラメラは、幼児が覚えたての言葉を口にするように、たどたどしく彼女の名前を呼んだ。真那は再び身悶えしたい気持ちになり、目の前の妖精を抱きしめる。
「ああっ! どうしよう! 可愛すぎるっ!!」
真那は先ほどあった不思議な体験や、メラメラの名前が入り込んできたことなど、諸々の超常現象を頭の隅に追いやって、メラメラの頭をなでなでする。ただ可愛いというだけではなく、胸中に言いようのない愛おしさが生まれて、もし自分に子供が生まれたら、こんな持ちになるんじゃないかと素直に思った。
「あなたはどこから来たの?」
「あっち」
メラメラは大雑把に東の方を指さす。それから真那の抱擁から抜け出して飛び上がり、羽をぱたつかせつつ真那の頭の上に腹ばいに乗っかって脱力した。
「はふ~」
「こ、これはっ!? タレ妖精!?」
真那は衝撃的に感動した。頭の上に乗ったメラメラは、自分が好きだったゲームの激レア頭装備にそっくりだったのだ。
「メラメラと一緒なら、何でもできそうな気がするよ」
テンション爆上がりの真那の中に、根拠のない自信が湧いてくる。そして、町に戻ってみようと思い立った時、その方角から複数の馬蹄の響きが聞こえてきた。それらは一気に接近して耳朶から衝撃となって真那の身体に伝わった。
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