異世界召喚されていきなり妃候補とか言われたけど、他の妃候補がチートすぎてもう辞めたいです+妖精(おまけ)付き

蘇芳

文字の大きさ
18 / 86
第一章 異世界召喚編

18 マナと女神の絵画

しおりを挟む
「え? あっ!? 何かすみません!? この子、機嫌が悪いみたいで……」
「いえ、いいのですよ。フェアリーの中には幼子のように振舞う個体もありますからね」

「ふーん!」とメラメラがそっぽを向いた。

 それにはマナの背筋に冷たいものが走り、神父の微笑が再び苦笑いに変わった。聖職者への無礼にユリカまで蒼白になったが、レクサスは笑いを堪えていた。

「ほんっとうに、ごめんなさいっ!」
 マナは深々と頭を下げるしかなかった。

「いえいえ、お気になさらずに」

 神父は何事もなかったかのように微笑に戻っていたが、もうこれ以上はマナの精神が持たない。

「神父様、ありがとうございました。今日は本当にお世話になりました」
「知りたいことがあれば、また何時でもお越しください」

 マナが椅子から立つと、正面の壁に絵画が見えた。

「あの絵、見てもいいですか?」
「ご自由にどうぞ」

 神父の了承を得て、マナは絵画に近づいた。先ほど見た女神像を落としこんだような絵画だった。女神エリアノと思しき女性の周りに、4人のフェアリーがいる。その中の一人は、メラメラと同じ漆黒の翼をもっていた。そして4人とも地上に立ってエリアノを見上げている。この時、マナは先ほど見た女神像に感じた違和感の正体が分かった。

 ――どうしてフェアリーたちは、翅や翼をもっているのに自由に飛んでいないの? わたしはもっと自由に飛んでいて楽しそうなフェアリーの姿が見たい。

 石像ならば、宙を飛ぶ姿が描けないのは分かる。しかし、絵画までそうする必要はないはずだ。画家だって、翅をもつ妖精を描くのならば、地上には立たせないだろう。女神エリアノを描いた絵画のフェアリーたちは、まるでフェアリーはそうでなくてはいけないというように地上に立たされていた。

「あっ」
 マナはもう一つ、絵の中に気になるものを見つけた。

「お気づきになりましたか」

 神父がマナの背後から絵を見つめて言った。側に控えていたレクサスとユリカも、必然的に絵を見ることになった。

「マナと同じ~」
 メラメラがエリアノの肖像画を指す。女神の瞳の色が、マナのそれと遜色なかったのだ。

「その宝石の如き瞳は、神に魅入られた者のみが得られると言われています。あなたの手にそのフェアリーがいる事には、何か意味があるに違いありません」

 マナの耳に神父の声が深く響いた。

 マナの瞳とエリアノの瞳の色の一致を見て、全員が言葉をなくしていた。二人の瞳がどこにでもあるような色なら気にもならないだろう。しかし、マナの瞳は世界に二つとないような色味を帯びていて、それが一致するというのは非常に奇妙だった。

♢♢♢

「いやあ、メラメラは面白いな」

 教会の外に出ると、レクサスがマナの抱いているメラメラの頭をなでた。

「えへへ~」
 嬉しさのあまり笑顔になるメラメラに、マナは溜息が出た。

「えへへ、じゃないよ。わたし恥ずかしかったんだから」
「メラメラは教会が好きではないようですね、絵本も放り投げていましたし」

 ユリカが冷静に思考すると、マナは気が重くなる。

「フェアリーと関係の深い教会が嫌いだなんて……」
「こりゃあ、メラメラは、俺、いや、わたしとは気が合いそうですね」

「あの、さっきから気になってるんですけど、どうしてわざわざ言い直すんですか?」
 マナに突っ込まれて、レクサスは頭を掻いた。

「これでも言葉使いには気を使ってるつもりなんですがね、ついつい自が出ちまう。わたしは平民出で、上品な言葉使いというのはどうも慣れなくて」

「いつものレクサスさんでいて下さい。わたしはその方が嬉しいです」
 そう言うマナをレクサスは慈しみを込めた目で見つめる。

「マナ様は、その辺の令嬢とはまるで違いますね。ではお言葉に甘えて、包み隠さず、いつものレクサス・アレスターでいきましょう」

「そうして下さい」

 そして二人は笑い合って、そこにメラメラも加わった。その後、ユリカから王妃へ進言があり、レクサスはマナ専属の騎士となるのであった。

♢♢♢

 そして三ヶ月が経った。マナは文字の勉強に貴族式の礼儀作法、空いた時間はメラメラに言葉を教えたり、シャルの教えの下で薬草について学んだりと忙しい日々を送った。その中で、マナとアルカードは、毎日、城の中庭で会って散策を楽しみ、食事も王妃を含めて家族のように一緒に取るようになった。

 引っ込み思案のマナも、アルカードと何度も会って話していくうちに少しずつ会話を紡ぐようになっていた。心優しい王太子が向こうから歩み寄ってくれたから打ち解けることができた。そして、聖メディアーノ学園に入学する日がやってくるのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!

966
ファンタジー
「錬金術士様だ!この村にも錬金術士様が来たぞ!」  最低ランク錬金術士エリセフィーナは錬金術士の学校、|王立錬金術学園《アカデミー》を卒業した次の日に最果ての村にある|工房《アトリエ》で一人生活することになる、Fランクという最低ランクで錬金術もまだまだ使えない、モンスター相手に戦闘もできないエリナは消えかけている前世の記憶を頼りに知り合いが一人もいない最果ての村で自分の夢『みんなを幸せにしたい』をかなえるために生活をはじめる。  この物語は、最果ての村『グリムホルン』に来てくれた若き錬金術士であるエリセフィーナを村人は一生懸命支えてサポートしていき、Fランクという最低ランクではあるものの、前世の記憶と|王立錬金術学園《アカデミー》で得た知識、離れて暮らす錬金術の師匠や村でできた新たな仲間たちと一緒に便利なアイテムを作ったり、モンスター盗伐の冒険などをしていく。 錬金術士エリセフィーナは日本からの転生者ではあるものの、記憶が消えかかっていることもあり錬金術や現代知識を使ってチート、無双するような物語ではなく、転生した世界で錬金術を使って1から成長し、仲間と冒険して成功したり、失敗したりしながらも楽しくスローライフをする話です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件

fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。 実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。 追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。 そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。 これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。

処理中です...