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第二章 聖メディアーノ学園編
20 王妃の心配事
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居間となっている部屋で、王妃シェルリが忙しなく歩き回っていた。両手は祈りでも捧げるように組んで、心配そうな面持ちである。彼女は悩んだ末にそこを出て、練習場に向かった。その時に無言で出ていくので、侍女たちが慌てて後を追うことになった。
練習場ではエリオが一人で大剣を振って修練を重ねていた。シェルリが現れると彼は剣を下ろした。
「お前がこんな所まで来るとは、何があったんだ?」
「どうしても相談したいことがあって、マナのことなんですけど」
シェルリは昨日の夜にあったことを話し始めた。
マナは謁見の間に呼ばれてシェルリと会っていた。
「聖メディアーノ学園に通うにあたって、あなたに伯爵以上の爵位を与えます。王家がしかりと後ろ盾になりますから、安心して学園に行ってください」
それを聞いたマナはもじもじしていて、言いたいことがありそうだった。
「気になる事があるなら、遠慮しないで聞いていいのよ」
「あの、わたし、爵位はいりません」
それを聞いたシェルリは、マナが爵位の意味を理解していないのではと疑った。
「妃候補なのですから、それなりの身分が必要なのですよ」
「わたしは、わたしのまま学校に行きたいんです。前の世界では、わたしは普通の人でした。だから、この世界で普通の人と同じ身分にして下さい」
「……それでは、平民として学園に行くことになるわ。それはあなたにとって、とても不利になるし、辛い目に合うかもしれないわ。わたしは反対です」
シェルリがはっきり言うと、マナは恐れを抱いて黙る。そして、やや沈黙があってから、彼女は勇気を出して反駁した。
「妃殿下様、ごめんなさい。これだけは、どうしても譲れません」
この世界に来て、マナがこれほどまでに強く出るのは初めての事だった。
「何か理由があるのね。良かったら、話してくれませんか?」
「お母さんの遺言なんです」
それを聞いたシェルリは、真摯にマナを見つめて次の言葉を待った。
「決して嘘を言わずに清純に生きなさいって。だからわたしは、嘘はつきません。わたしは普通の女の子で、高い身分をもらっていいような子じゃないんです。わたしは、ありのままの姿で学校に行きたいんです」
その強い決意の前に、シェルリはマナが平民として学園に行くことを許可したのだった。
「やはり、無理にでも爵位を与えるべきじゃないかと思うのです」
シェルリの話を聞いたアルカードは、大剣を地面に突き刺して腕を組んだ。
「決して嘘を言わずに清純に生きるか、理想の過ぎる言葉だ」
だが、とエリオは続けた。
「あの子に限っては必要な言葉に思える。あの子は変わっている。悪く言えば、普通の人間と比べて純朴すぎるところがある。マナの母上は、その事をよく理解していたのだろう。その上でこの言葉を与えたのだと思う」
エリオは王妃を安心させるように笑みを浮かべて言った。
「マナの母上の心と、マナの信念を尊重しよう。だが、何が起こっても対処できるように準備はしておけ」
「はい、わかりました。やっぱり、あなたに相談してよかったわ」
「あまり気負うなよ。お前が倒れでもしたら、国が回らなくなるんだからな」
「しっかり休みは取っていますから、安心して。でも、趣味の薬の研究ができないのが辛いわ……」
「それについては申し訳ないと思っている。お前の補佐をしてくれる者でもいればいいのだがな」
エリオが言うと、シェルリが表情を硬くする。
「補佐なんて必要ありません。わたし一人で何とかできます」
国主の補佐と言えば宰相だが、シェルリはその要職に対して拒絶反応を示す。エリオはその理由を誰よりも良く知っているので、それ以上は言及しなかった。
それからエリオは顎に手を置いて考え込むような仕草をする。彼は、基本的には、シェルリのすることに口出ししないようにしているが、この時は口を開いた。
「マナの事なのだが、あの子を学園に行かせても良かったのか?」
「それは、どういう意味でしょう?」
「召喚の件もあるしな。あの子には、もっと相応しい道があるんじゃないのか?」
「それは、そうかもしれません。けれど、他の妃候補と等しい権利を与えてあげるべきだと思います。それで王妃になれなければ、別の道を考えましょう」
「そうか、余計なことを言ったな」
「余計だなんて、ロディスはあなたの国なのですから、もっと意見を言って頂いてもよろしいのに」
「俺はお前の騎士としてこの国を守ると決めている」
エリオの地面の剣を引き抜くと、目の前にいる敵を想像して一振りした。大剣の起こした風圧で、彼の前方に砂埃が立った。
練習場ではエリオが一人で大剣を振って修練を重ねていた。シェルリが現れると彼は剣を下ろした。
「お前がこんな所まで来るとは、何があったんだ?」
「どうしても相談したいことがあって、マナのことなんですけど」
シェルリは昨日の夜にあったことを話し始めた。
マナは謁見の間に呼ばれてシェルリと会っていた。
「聖メディアーノ学園に通うにあたって、あなたに伯爵以上の爵位を与えます。王家がしかりと後ろ盾になりますから、安心して学園に行ってください」
それを聞いたマナはもじもじしていて、言いたいことがありそうだった。
「気になる事があるなら、遠慮しないで聞いていいのよ」
「あの、わたし、爵位はいりません」
それを聞いたシェルリは、マナが爵位の意味を理解していないのではと疑った。
「妃候補なのですから、それなりの身分が必要なのですよ」
「わたしは、わたしのまま学校に行きたいんです。前の世界では、わたしは普通の人でした。だから、この世界で普通の人と同じ身分にして下さい」
「……それでは、平民として学園に行くことになるわ。それはあなたにとって、とても不利になるし、辛い目に合うかもしれないわ。わたしは反対です」
シェルリがはっきり言うと、マナは恐れを抱いて黙る。そして、やや沈黙があってから、彼女は勇気を出して反駁した。
「妃殿下様、ごめんなさい。これだけは、どうしても譲れません」
この世界に来て、マナがこれほどまでに強く出るのは初めての事だった。
「何か理由があるのね。良かったら、話してくれませんか?」
「お母さんの遺言なんです」
それを聞いたシェルリは、真摯にマナを見つめて次の言葉を待った。
「決して嘘を言わずに清純に生きなさいって。だからわたしは、嘘はつきません。わたしは普通の女の子で、高い身分をもらっていいような子じゃないんです。わたしは、ありのままの姿で学校に行きたいんです」
その強い決意の前に、シェルリはマナが平民として学園に行くことを許可したのだった。
「やはり、無理にでも爵位を与えるべきじゃないかと思うのです」
シェルリの話を聞いたアルカードは、大剣を地面に突き刺して腕を組んだ。
「決して嘘を言わずに清純に生きるか、理想の過ぎる言葉だ」
だが、とエリオは続けた。
「あの子に限っては必要な言葉に思える。あの子は変わっている。悪く言えば、普通の人間と比べて純朴すぎるところがある。マナの母上は、その事をよく理解していたのだろう。その上でこの言葉を与えたのだと思う」
エリオは王妃を安心させるように笑みを浮かべて言った。
「マナの母上の心と、マナの信念を尊重しよう。だが、何が起こっても対処できるように準備はしておけ」
「はい、わかりました。やっぱり、あなたに相談してよかったわ」
「あまり気負うなよ。お前が倒れでもしたら、国が回らなくなるんだからな」
「しっかり休みは取っていますから、安心して。でも、趣味の薬の研究ができないのが辛いわ……」
「それについては申し訳ないと思っている。お前の補佐をしてくれる者でもいればいいのだがな」
エリオが言うと、シェルリが表情を硬くする。
「補佐なんて必要ありません。わたし一人で何とかできます」
国主の補佐と言えば宰相だが、シェルリはその要職に対して拒絶反応を示す。エリオはその理由を誰よりも良く知っているので、それ以上は言及しなかった。
それからエリオは顎に手を置いて考え込むような仕草をする。彼は、基本的には、シェルリのすることに口出ししないようにしているが、この時は口を開いた。
「マナの事なのだが、あの子を学園に行かせても良かったのか?」
「それは、どういう意味でしょう?」
「召喚の件もあるしな。あの子には、もっと相応しい道があるんじゃないのか?」
「それは、そうかもしれません。けれど、他の妃候補と等しい権利を与えてあげるべきだと思います。それで王妃になれなければ、別の道を考えましょう」
「そうか、余計なことを言ったな」
「余計だなんて、ロディスはあなたの国なのですから、もっと意見を言って頂いてもよろしいのに」
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