異世界召喚されていきなり妃候補とか言われたけど、他の妃候補がチートすぎてもう辞めたいです+妖精(おまけ)付き

蘇芳

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第二章 聖メディアーノ学園編

24 ロディス建国史

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 朝の教室の様子は、マナの知っている学校とは全く違っていた。前の世界の学校では、授業が始まる直前まで生徒たちが騒いでいたが、今いる教室では、みんな席に座って授業が始まるのを静かに待っていた。静けさの中に貴族たちの気品が浸透しているようで、マナはとても落ち着かなかった。

 授業の前に、マナは仕方なく、メラメラに静かにするように命令した。メラメラは、マナの膝の上で、人形のように動かず大人しくなる。メラメラに命令して言うことを聞かせるのは嫌いだが、自由にさせて飛び回りでもしたら、それこそ騒ぎになってしまう。授業中まで一緒にいるには、大人しくさせるしかない。


 マナは勉強はそれほど得意ではない。元の世界の学校では、成績は中の上程度だった。ましてや、異世界の言葉で異世界の学問を習うのだ。これは想像以上に大変な事であった。それでも、楽しいと思う科目もあった。

 マナが特に興味を引かれたのが三コマ目の歴史だ。

 壇上の教師は語る。
「ロディスという国の起こりには、他国には見られない非常に珍しい経緯がありまして」


 国の起こりには、戦争が付いて回る。戦って戦って、強い勢力が弱い勢力を併合し、巨大化して国が出来上がっていく。戦争無くして建国はあり得ないと言ってもよかろう。少なくとも、マナの元いた世界ではそうだったし、フェアスティアに星の数ほどある国々も例外ではない。その中で、ロディス王国と周辺の二ヶ国だけは、建国の途上に戦がなかった。

 今から千年ほど前のロディスは国の呈を成していない時期で、国土の殆どが森に覆われていた。

 その時期、疫病が人々を脅かす。病は短期間に広がり、現在のロディス王国、その隣国メルビウス、ミストリアの三ヶ国にまで範囲が及んだ。その頃は民間療法程度の薬学しかなく、人々は成す術もなく病に倒れていった。その数までは記録されていないが、どの村にも放置された死体が転がり、疫病で全滅した村は幾十にも及ぶ。そのような惨状を記す文字は残っている。

 絶望的な状況の中で、一人の女性が現れる。名はフローナ・ロディス。彼女は引きこもって薬草の研究ばかりしていた。怪しげな実験をしていると、周囲の人々はフローナを忌避していたが、彼女は持てる知識を尽くして、差別的だった同村の人々から治療を始めた。

 フローナは、試行錯誤の末に、ついに疫病に対抗できる薬を作り上げ、故郷の村から病を駆逐した。そして、ここからフローナの戦いが始まる。

 フローナは旅に出て、病に苦しんでいる人々に薬を与えていった。旅の途中で薬鉱や薬草に明るい人間を見つけては、パーティーに引き入れ、やがて彼女らは、疫病という強大な魔王と戦う勇者一行となって遍歴した。剣の代わりにすり棒や薬研やげんの車を持ち、盾や防具の代わりにすり鉢や様々な器具を使う。魔法はないが、薬草や薬鉱がある。薬師の一行は旅を続けながら薬に改良を加え、疫病に立ち向かっていった。

 フローナ一行は一年にも及ぶ旅の末、ロディスから疫病を追い出す事に成功する。その功績は人々に称えられ、フローナを初代女王としてロディス王国が建国された。それから数百年後にロディス王国は三つに分割されて、現在のロディス、メルビウス、ミストリアの三国連盟に繋がっている。

 建国者が女性だった事もあり、同盟三国は諸外国と比べると女性の活躍が目立つ。一千年近いの歴史の中でも、様々な分野で女性が名を残している。


 ロディス建国の歴史は、マナにとっては、まるでファンタジー小説の創作でも読んでいるように楽しかった。

♢♢♢

 午前中の授業が終わり、昼休みになると、マナの前にシャルが現れる。

「ねえ、一緒にレストラン行かない?」
「学校の中にレストランがあるの?」

「生徒だけじゃなくって、外からもお客さんが来るんだ。なかなか美味しいって評判だよ」
「うわぁ、行ってみたいなぁ。でも、ユリカにお昼は必ず部屋に戻るようにって言われてるの」
「ふ~ん、そうなんだ。じゃあ、ユリカに聞いてみたら?」

 マナはそうする事にした。学校の中のレストランには興味があるし、シャルと一緒なら食事も楽しい。

 席を立ったマナの頭にメラメラが乗ってくる。それからシャルと二人で廊下を歩いていくと、

「ご飯! ご飯! おなかす~いた~」

 メラメラが、マナの頭の上で変な歌を口ずさんで、すれ違う生徒たちに笑われてしまった。

「もう、恥ずかしいよ」
「ご飯! ご飯!」

 メラメラは、マナの声など聴いていないようで、歌い続けていた。シャルは、恥ずかし気なマナと、元気いっぱいなメラメラの姿の対比がおかしくて吹き出した。

「アハハ、我関せずかい。メラメラは可愛いね!」


 マナが部屋に戻ってユリカに聞いてみると、
「いけません、食事は自室でお取り下さい」

 マナは今まで一度もユリカに拒否された事が無かったので面食らった。でも、諦めずに食い下がってみた。

「どうしてもだめなの?」
「学園のレストランは、下級貴族や平民が利用するものです」

「で、でも、わたしも平民だし……」
「身分は平民でも、マナ様は妃候補なのです。食事は他の妃候補と同様に、自室で取って頂きます」
「はい、わかりました……」

 ユリカなら絶対に許してくれると思っていたので、余計に落胆が大きかった。
 マナは廊下で待っていたシャルに、しょんぼりしながら伝えた。

「そっか、駄目か。平民のユリカがそんな固い事を言うなんて変だなぁ。二つ返事で許してくれると思ったんだけど」

「わたしもそう思ってた……」
「はうぅ」

 マナがしょんぼりすると、メラメラも、それ合わせて萎びた野菜のようになっていた。

「しょうがない、わたし一人で行ってくるよ」
「うん……あれ? 妃候補はみんな寮の部屋でお昼食べるみたいだけど」

「わたしには口うるさい侍女なんていないもん、自由にやるさ」
「いいなぁ、わたしもレストラン行きたかった」
「食事はだめでも、ティータイムがあるよ。昼食後はカフェテラスに集合ね!」

 それを聞いて、マナはときめいた。食後に友達と一緒に優雅なティータイムを過ごす。如何にも上流階級という趣があって、色々と妄想が膨らむのであった。
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