異世界召喚されていきなり妃候補とか言われたけど、他の妃候補がチートすぎてもう辞めたいです+妖精(おまけ)付き

蘇芳

文字の大きさ
43 / 86
第二章 聖メディアーノ学園編

43 恐ろしい出来事

しおりを挟む
 あの昼食の騒動を境に、マナに対する嫌がらせが酷くなった。どこぞの令嬢がわざとぶつかってきたり、足を掛けてきたり、背中を押されたりなど、ユリカやマナの友人達から見えないところで姑息に行われた。それも不特定多数の令嬢から標的にされていたのだ。マナはあの性格なので嫌がらせされている事は誰にも打ち明けなかった。

 ――こんなの、どうってことない。

 その程度の苛めならばマナは平然としていられた。しかし、昼食の騒ぎから一週間後に恐ろしい出来事がマナに降りかかった。

 この日はゼノビアが学校に来ておらず、アルカードの姿も見えなかった。シャルだけがずっとマナに張り付いていた。
 昼休みに二人で勉強していると、マーリーとアイリンが近づいてきて放課後のお茶会に誘ってきた。シャルが快く承諾すると、二人はなぜか安心したような面相を見せて離れて行った。
 
 
 放課後になると、そそくさとマーリーがシャルの元にやってくる。
「今日はアイリンのお部屋でお茶会にしましょう、お部屋に案内します」

「ん、マナは?」
 シャルが教室を見渡してもマナの姿がない。

「マナさんはアイリンと一緒に行きましたよ」

 どうせなら、みんなで一緒に行けば良かったのに、とシャルは思った。シャルとマナは同じ教室にいるのに別々に誘う意味が分からなかった。

 アイリンと一緒に廊下を歩いていくと、急に生徒の姿が消えて何となく暗くて寂しい場所に出た。学園の館の中には特殊な用途で使う教室がある、そこはそんな教室が集まる場所だった。

「うん? こんな外れの方に寮の部屋があるんだね」
「こちらですわ、入って下さいませ」

 アイリンはシャルの方を先に部屋に入れた。そこは妙に薄暗い場所だった。

「何だここ? 何にもないぞ?」

 シャルが振り向いた時、扉が叩きつけるように閉められた。

「おい、何のつもりだ!」
 シャルが扉を開けようとすると、びくともしなかった。

「外側からカギがかけられてる!? 何だよこの部屋!?」
 ここは長い間使われていないお仕置き部屋だった。シャルはこの瞬間に全てを悟った。

「くそ、あいつらもグルだったんだ! マナが危ない!」

 扉の鍵は少女の力ではどうにもできない。だが、シャルには扉を開ける手立てはいくらでもあった。ただ、それには問題もある。

「お母さんには学校で魔法は絶対に使うなって言われてるけど」

 シャルは迷うことなく肌身離さず持っているタクトを振りかざした。

「やるか! 炎の精霊よ!」
 シャルは集中し、目の前の扉を爆砕する魔法を思い描いた。

♢♢♢

 マナはアイリンに人気のない校舎裏に連れ出されていた。

「どうしてシャルはこんな所で待ってるのかしら?」
 マナが辺りを見ても、あるのは植木だけで閑散としていた。

「シャルは来ませんよ」
「え?」

 アイリンは薄笑いを浮かべて、マナを異様な目で見つめていた。そして建物の陰から大勢の女生徒が出てきてアイリンの近くに集まった。中には侍女も数人混じっていた。

 中心には、いつもマナにちょっかいをかけてくる赤い制服の令嬢がいて、彼女が顎をしゃくった。すると、嫌な雰囲気の中で立ち尽くすマナの両腕を侍女たちが取り押さえた。

「何するんですか……」
「むう、なんだよぉ!」

 マナの頭の上にいたメラメラが威嚇すると、侍女の一人がそれを取り上げて抱きしめた。

「はなせーっ!」
「止めて下さい! メラメラに乱暴はしないで!」

 マナが必死に訴えると、赤き令嬢が嫌らしいにやけ顔を近づけてくる。
「安心しなさい。その小さいのに用はありません、押さえておくだけです」

 それを聞いたマナは、全てを諦めたような生気のない表情になっていた。その時、そう遠くないところから爆裂音がとどろいた。マナを取り囲んでいた少女たちが騒然とするが、赤い令嬢だけは憎悪の宿った目でマナを睨んで微動だにしなかった。

「そんな音程度で騒ぐのではありません」

 その一言で、少女たちの視線が再びマナに集中した。悪意が容赦なくマナに浴びせられる。

 ――ああ、結局、こうなるんだ……。

 マナの脳裡に前の世界で受けた仕打ちがまざまざと思い出される。

 ――大丈夫、痛いのは慣れてるから……。

 赤い令嬢がマナの顔の前に手をかざして言った。

「平民ごときが、殿下に近づくなど身の程知らずも甚だしい! あなたのような汚い身分の者を殿下が相手にするなんて、何か怪しい魔術でも使っているに違いありませんわ!」

 令嬢の手の平に突然、炎が現れて、マナは肩を震わせた

「わたくし魔法の素質がありますのよ」

 令嬢の手が近づいて、炎の赤がマナの頬を照らす。

「ほんとう、お人形みたいに可愛らしい顔だこと」
 瞬間に令嬢の顔が変わり、吊り上がった目と三日月のような笑みに憎悪を湛えた。
「汚らしい平民に相応しい顔にして差し上げますわ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!

966
ファンタジー
「錬金術士様だ!この村にも錬金術士様が来たぞ!」  最低ランク錬金術士エリセフィーナは錬金術士の学校、|王立錬金術学園《アカデミー》を卒業した次の日に最果ての村にある|工房《アトリエ》で一人生活することになる、Fランクという最低ランクで錬金術もまだまだ使えない、モンスター相手に戦闘もできないエリナは消えかけている前世の記憶を頼りに知り合いが一人もいない最果ての村で自分の夢『みんなを幸せにしたい』をかなえるために生活をはじめる。  この物語は、最果ての村『グリムホルン』に来てくれた若き錬金術士であるエリセフィーナを村人は一生懸命支えてサポートしていき、Fランクという最低ランクではあるものの、前世の記憶と|王立錬金術学園《アカデミー》で得た知識、離れて暮らす錬金術の師匠や村でできた新たな仲間たちと一緒に便利なアイテムを作ったり、モンスター盗伐の冒険などをしていく。 錬金術士エリセフィーナは日本からの転生者ではあるものの、記憶が消えかかっていることもあり錬金術や現代知識を使ってチート、無双するような物語ではなく、転生した世界で錬金術を使って1から成長し、仲間と冒険して成功したり、失敗したりしながらも楽しくスローライフをする話です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件

fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。 実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。 追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。 そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。 これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。

処理中です...