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第三章 森の薬師編
80 凄まじい悪意
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アクスウェルが見ている前で、フレイニィが動いてマナを見上げた。虚ろだったその瞳には、確かな意志の輝きが生まれていた。
「まさか、精神が崩壊したフェアリーの意思を引き戻しているのか……」
アクスウェルは、マナを睨むと、歯をむき出して猛獣が低く唸るような調子で言った。
「この、魔女め!」
神殿騎士団の者達は、目の前で繰り広げられた、この世のものとは思えぬ戦いに足が竦んでしまっていた。彼らは妖精使いというものをある程度知っている。マナほどの力があれば、軍隊を絶滅する事だって可能だろう。彼らは、過去にそういう事例がある事も知っている。だが、アクスウェルは笑っていた。
「転生者の妖精使いとしての能力は折り紙付きだが、対処は難しくない」
転生者を何人も殺してきたアクスウェルには、圧倒的な経験があった。彼の合図で数人の村人が捕らえられ首元に刃が当てられる。マナは戦慄して叫んだ。
「何をするの!?」
「見ての通りだ。お前が素直に言う事を聞かねば、村人を一人ずつ殺していく」
異様な沈黙があった。村の家々は更に燃え上がり、熱と悲鳴が風に乗ってマナに届く。
「転生者は他人の為にその命を尽くす。今までに例外はない」
「……どうすれば、村の人を助けてくれますか?」
アクスウェルは歯をむき出し、嫌らしい笑みを浮かべた。
「それだけの力があれば、どんな事でも思いのままだろう。それをこんな薄汚れた村人の為に捨てるとは、愚かな娘だ。まあ、分かってはいたがなぁ」
神殿騎士団側の人間ですら、アクスウェルのやり方には嫌悪感を抱いていた。ましてや、何も知らない村人達には、その男が悪魔にしか見えなかった。
「まず、フレイニィを離せ!」
マナが離れ難い気持ちでフレイニィを下ろすと、アクスウェルの杖の宝石に反応が戻る。
「戻れ、フレイニィ」
フレイニィは命令された通りに飛んでアクスウェルの近くに戻る。
「貴様にフェアリーの力を使うのは危険だ。こうして離していても、フレイニィに影響を及ぼす可能性がある」
次に、アクスウェルはマナに向かって手の平を出した。
「契約の宝石を渡せ」
マナは手を後ろに回してネックレスを外し、母の形見のキャッツアイを握った手を見つめた。
「こちらに投げろ」
マナが言う通りにすると、空中で緑のキャッツアイが儚げに輝く。宝石を受け取ったアクスウェルは、チェーンを手に巻き付けて、宙ぶらりんなキャッツアイを見て心の底から安心する。マナの神がかった能力の前に、今までは気が気ではなかった。
「これで、お前はそのフェアリーに力を与える事は出来ない」
アクスウェルが指を鳴らすと、神殿騎士団の戦士達がマナに近づき、メラメラを引きはがした。
「嫌だぁ! 離せ! マナぁ!!」
「止めて! メラメラに乱暴しないで!」
「安心しろ、フェアリーは大切な資源だ。お前のフェアリーは無碍には扱わんよ」
大き目の鳥かごが準備されて、メラメラはその中に入れられて近くの木の枝に吊るされる。メラメラは格子を掴んで不安気にマナの事を見下ろしていた。
マナは後ろで両手を縛られて跪いた。この状況で村に入ってきた荷馬車が突っ込んでくる。数人の兵士がひかれそうになって、慌てて荷馬車を避けた。
「マナ!」
「ニイナさん!?」
ニイナが荷馬車を降りて駆け寄ると、たちまち神殿騎士団の兵達に捕まり、レクサスと同じように地面に押さえつけられてしまう。
「くそ、あの子に何をするつもりだ!」
アクスウェルは石ころでも見るようにニイナを一瞥してから、近付いてきた騎士と話し始めた。
「火刑にしますか?」
「いや、斬首にしよう。一瞬で、何をする間もなく命を奪う。この娘はそうしないと危険だ」
「何だと!? ふざけるな!! あの子が何をしたって言うんだ!!!」
ニイナが身を捩って暴れても、数人がかりで押さえられてはどうにも出来なかった。アクスウェルは睨んでくるニイナに事も無げに言った。
「何もしていないさ、存在自体が罪なのだ」
「こんな事が許されるものか! お前は聖職者の皮をかぶった悪魔だ!」
「口を慎みたまえ。神に仕える者に対して失礼ではないか」
アクスウェルが手を上げると、巨大な戦斧を担いだ巨漢の戦士が前に出てくる。マナは正座させられて、頭が前に出るように背中を押さえつけられた。アクスウェルが酷く冷たい目でマナを見下ろして言った。
「形式に乗っ取って、最後のチャンスをやろう。エリアノ教会に服従して忠誠を誓え。フェアりーを人に付き従う者と認め、教会の教義を受け入れるのだ。そうすれば命は助けてやろう」
マナは地面を見つめたまま無言を通していた。すると、ニイナが頭だけを上げて叫んだ。
「マナ、認めろ! 今は生きる事を考えるんだ!」
「そうだお嬢さん! こんな所で死んでも何にもならん!」
レクサスも頭を上げて言った。二人ともマナの事を心の底から思っていた。こんな所で死なせたくはないと、必死に願うように言った。
それまで黙っていたマナが、静かに語り始める。
「お母さんは、亡くなる前に言いました、決して嘘を言わずに清純に生きなさいと。わたしは今まで嘘をついた事がありません。それだけが、自慢です」
「まさか、精神が崩壊したフェアリーの意思を引き戻しているのか……」
アクスウェルは、マナを睨むと、歯をむき出して猛獣が低く唸るような調子で言った。
「この、魔女め!」
神殿騎士団の者達は、目の前で繰り広げられた、この世のものとは思えぬ戦いに足が竦んでしまっていた。彼らは妖精使いというものをある程度知っている。マナほどの力があれば、軍隊を絶滅する事だって可能だろう。彼らは、過去にそういう事例がある事も知っている。だが、アクスウェルは笑っていた。
「転生者の妖精使いとしての能力は折り紙付きだが、対処は難しくない」
転生者を何人も殺してきたアクスウェルには、圧倒的な経験があった。彼の合図で数人の村人が捕らえられ首元に刃が当てられる。マナは戦慄して叫んだ。
「何をするの!?」
「見ての通りだ。お前が素直に言う事を聞かねば、村人を一人ずつ殺していく」
異様な沈黙があった。村の家々は更に燃え上がり、熱と悲鳴が風に乗ってマナに届く。
「転生者は他人の為にその命を尽くす。今までに例外はない」
「……どうすれば、村の人を助けてくれますか?」
アクスウェルは歯をむき出し、嫌らしい笑みを浮かべた。
「それだけの力があれば、どんな事でも思いのままだろう。それをこんな薄汚れた村人の為に捨てるとは、愚かな娘だ。まあ、分かってはいたがなぁ」
神殿騎士団側の人間ですら、アクスウェルのやり方には嫌悪感を抱いていた。ましてや、何も知らない村人達には、その男が悪魔にしか見えなかった。
「まず、フレイニィを離せ!」
マナが離れ難い気持ちでフレイニィを下ろすと、アクスウェルの杖の宝石に反応が戻る。
「戻れ、フレイニィ」
フレイニィは命令された通りに飛んでアクスウェルの近くに戻る。
「貴様にフェアリーの力を使うのは危険だ。こうして離していても、フレイニィに影響を及ぼす可能性がある」
次に、アクスウェルはマナに向かって手の平を出した。
「契約の宝石を渡せ」
マナは手を後ろに回してネックレスを外し、母の形見のキャッツアイを握った手を見つめた。
「こちらに投げろ」
マナが言う通りにすると、空中で緑のキャッツアイが儚げに輝く。宝石を受け取ったアクスウェルは、チェーンを手に巻き付けて、宙ぶらりんなキャッツアイを見て心の底から安心する。マナの神がかった能力の前に、今までは気が気ではなかった。
「これで、お前はそのフェアリーに力を与える事は出来ない」
アクスウェルが指を鳴らすと、神殿騎士団の戦士達がマナに近づき、メラメラを引きはがした。
「嫌だぁ! 離せ! マナぁ!!」
「止めて! メラメラに乱暴しないで!」
「安心しろ、フェアリーは大切な資源だ。お前のフェアリーは無碍には扱わんよ」
大き目の鳥かごが準備されて、メラメラはその中に入れられて近くの木の枝に吊るされる。メラメラは格子を掴んで不安気にマナの事を見下ろしていた。
マナは後ろで両手を縛られて跪いた。この状況で村に入ってきた荷馬車が突っ込んでくる。数人の兵士がひかれそうになって、慌てて荷馬車を避けた。
「マナ!」
「ニイナさん!?」
ニイナが荷馬車を降りて駆け寄ると、たちまち神殿騎士団の兵達に捕まり、レクサスと同じように地面に押さえつけられてしまう。
「くそ、あの子に何をするつもりだ!」
アクスウェルは石ころでも見るようにニイナを一瞥してから、近付いてきた騎士と話し始めた。
「火刑にしますか?」
「いや、斬首にしよう。一瞬で、何をする間もなく命を奪う。この娘はそうしないと危険だ」
「何だと!? ふざけるな!! あの子が何をしたって言うんだ!!!」
ニイナが身を捩って暴れても、数人がかりで押さえられてはどうにも出来なかった。アクスウェルは睨んでくるニイナに事も無げに言った。
「何もしていないさ、存在自体が罪なのだ」
「こんな事が許されるものか! お前は聖職者の皮をかぶった悪魔だ!」
「口を慎みたまえ。神に仕える者に対して失礼ではないか」
アクスウェルが手を上げると、巨大な戦斧を担いだ巨漢の戦士が前に出てくる。マナは正座させられて、頭が前に出るように背中を押さえつけられた。アクスウェルが酷く冷たい目でマナを見下ろして言った。
「形式に乗っ取って、最後のチャンスをやろう。エリアノ教会に服従して忠誠を誓え。フェアりーを人に付き従う者と認め、教会の教義を受け入れるのだ。そうすれば命は助けてやろう」
マナは地面を見つめたまま無言を通していた。すると、ニイナが頭だけを上げて叫んだ。
「マナ、認めろ! 今は生きる事を考えるんだ!」
「そうだお嬢さん! こんな所で死んでも何にもならん!」
レクサスも頭を上げて言った。二人ともマナの事を心の底から思っていた。こんな所で死なせたくはないと、必死に願うように言った。
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