56 / 97
第9話:修羅の道
Act-04 シャナオウ撃破
しおりを挟むベンケイもこれまでの戦闘で、ウシワカの戦術眼の凄まじさを知っているので、打てば響く様に、彼女の狙いが上空から戦域を俯瞰する事にあると理解し、地上全体に向けて目をこらす。
だが、戦場にウシワカの言う『きな臭さ』は、見受けられなかった。
約十機の木曽軍ガシアルは鶴翼形に展開し、それに続く歩兵も同様の動きをしている――源氏本軍の戦力を考えれば、それはまさに無謀な戦だった。
迎え撃つ源氏本軍のガシアルと歩兵隊に、木曽軍のそれは逆に各個包囲され、やはりこれは只の無謀な特攻だったかと、傍目には見えただろう。
それでもウシワカとベンケイは、地上を睨み続ける――昨日のヨシナカ戦後、そのまま御所に駐屯する先発隊の中で、ウシワカだけは大事に備えると言って、単騎で本陣に帰還した。よもや何の変事もあるまいと、多くの者がそう思っていた中、ウシワカの読みは今回も見事に当たったのである。
だから、
(何か……何かあるはず……)
と、ベンケイが引き続き目をこらす中、ウシワカがそれを先に見つけた。
「中央が……空いている」
そう言われれば、木曽軍は鶴翼陣形ながら、次第に左右に分かれていた。
それは戦力差により、ただ単に分断されただけかもしれないが――もしそれが、意図的な誘導だったとしたら。
天才戦術家ウシワカの思いを、パートナーのツクモ神ベンケイも共有した瞬間――ドーンという轟音と共に、突然、木曽軍のガシアルが順を追って爆発していった。
機甲武者は科学技術が組み込まれたロボットとはいえ、そのベースは千年前の天使の鎧であり、動力も天使の亡骸が基となった『霊脈』を用いるため、機体が破損しても爆発はしないはずであった。
それが全長八メートルの機体を、爆風と共に四散させている。まずその事に源氏本軍は動揺した。
「どういう事だ⁉︎」
大将車のヨリトモも、思わず叫びを上げる。
「常識で考えればありえません! おそらく機体に大量の爆薬を仕掛けていたのでしょう」
「玉砕戦だと!」
ヒロモトの答えに、再びヨリトモが叫ぶ。
だがヨリトモの言う様に玉砕戦なら、それは敵軍の大将に向かうものであり、今の様に各個包囲された中で兵卒を道連れにするだけでは、それは犬死ににも等しかった。
ともかくもヘイアン宮へと向かう隊列は、大混乱の渦に飲み込まれた。
その間隙を突いて――矢の様に源氏本軍に突撃していく一機の機甲武者が現れた。
四本の騎馬のごとき足を持ち、神話でいう人馬を思わせるそれは――木曽軍が未完成のまま、対平氏戦に投入した、新型機甲武者『バキ』であった。
「トモエ!」
上空のシャナオウの中で、ウシワカが叫ぶ。
眼下を駆け抜けるバキは、頭部だけが山吹色にペイントされた、木曽ヨシナカの妻トモエの機体だった。
そしてそれは、混戦の中央に空いた隙間に、一直線に滑り込んでいく――その先には、ヨリトモが乗る大将車があった。
やはり木曽軍が分断されたのは意図的なものであり――その狙いはトモエの本陣突撃の、突破口を開くためだったのである。
そのために木曽軍のガシアルは機体に爆薬を搭載し、トモエ突撃のタイミングで源氏本軍の目を逸らすべく、パイロットの命ごと激しく爆散していった。
――ならばトモエの狙いも!
そう確信したウシワカは、上空待機させていたシャナオウを急降下させ、疾走するバキの背後から、なんとかその背中に組み付く。
突然の衝撃と機体速度が落ちた事に、
「なに――⁉︎」
と、トモエが全周囲モニターを振り返ると、後方に薄緑色の機甲武者がへばりついている。
源氏の白でも、平氏の赤でもないそれは――無垢なる少女、源ウシワカが駆る――ヤサカニの勾玉を依り代とした『三種の神造兵器』の機甲武者、シャナオウ。
それを知るトモエは、
「ウシワカ⁉︎ どうして⁉︎」
と、突然出現した――自身が激しい庇護欲にかられた少女の機体に、驚きの声を上げた。
それは、飛行能力のない機甲武者の概念を超越したシャナオウゆえの事態であったが――ともかく、トモエはそれが目的遂行への障害であると、すぐに認識した。
木曽軍のガシアル同様に、トモエのバキにも大量の爆薬が搭載されてある。
それをヨリトモの大将車に飛び込ませ、自身の命もろとも爆殺する――そのための突撃であり、そのための木曽兵たちの犠牲であった。
だがシャナオウのパワーのせいで、どんどんバキの速度が落ちている。このままでは、ヨリトモを爆発に巻き込めるエリア外で、機体を停止させられる恐れが出てきた。
ウシワカもトモエの狙いは読めており、なんとしてもバキを止めるべく、大地の霊脈とのコンタクトを強め、全開の魔導力をシャナオウに注ぎ込んでいた。
――このままでは、ヨシナカの仇が討てない!
そう判断したトモエは、コクピットのハッチを開き――減速したとはいえ、まだ相当な速度で疾走する機体から、なんと飛び降りると、華麗な受け身で地面を転がり、そのまま地に伏せる姿勢を取った。
それに、
「まずい――!」
と叫んだのは、ツクモ神ベンケイであり、次の瞬間――
激しい爆音と共に、バキとシャナオウが、木っ端微塵に砕け飛んだ。
Act-04 シャナオウ撃破 END
NEXT Act-05 トモエ乱舞
0
あなたにおすすめの小説
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる