神造のヨシツネ

ワナリ

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第9話:修羅の道

Act-05 トモエ乱舞

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「――――!」

 爆風に大将車付近の兵が、身をよじらせる。

 だが、バキの爆発はその五十メートル以上手前だったため、ヨリトモを害するには至らず、彼女は無傷であった。

 棟梁の無事を確認し、将兵たちが安堵する中、爆発による砂塵が少しずつ晴れ、前方の視界が開けてくる。

 すると、

「シャナオウが……」

 と、大将車に同乗しているヒロモトが、唖然とした声を上げた。
 それにヨリトモもすぐに反応し、バキを止めるために爆散した、妹の機体に目を向ける。

 ヨリトモを装甲車ごと吹き飛ばせるレベルの爆発を、直近で受けたシャナオウは、両腕両足がすべてちぎれ飛び、地に転がる胴部も装甲のほとんどがなくなり、動力部がむき出しになっていた。
 それはもはや、完全撃破されたといっても過言ではない惨状であった。

「う、ウシワカ……」

 思わず、そう呻いたヨリトモだけでなく――すべての者が、今や鉄塊と化したそのコクピットにいる、ウシワカの死を思った。

 だが――

 機体の胴部中央が、ほの暗い光を放ち始め、やがてそれが球状となって、浮き上がり弾け飛ぶと――なんとそこから、ツクモ神ベンケイの胸に抱かれた、ウシワカが無傷の状態で出てきたではないか。

「――――⁉︎」

 一同が呆然とする中、

「ベンケイ、苦しいよ……」

 ツクモ神の抱擁の強さに、息苦しさを覚えた少女が、思わず苦情の声を上げた。

「ベンケイ殿……」

 まだ複雑な顔をしたままのヨリトモより先に、ヒロモトはベンケイの神通力がウシワカを救った事を悟り、安堵の声を漏らした。

 トモエがバキを捨てた瞬間――彼女が機体を爆破すると読んだベンケイは、即座に魔導シールドを全力で展開した。しかもそのシールドは平面の魔法陣ではなく、コクピット全体を覆う球状の魔法陣であった。

 それはツクモ神とはいえ、あまりの変則技であったが――ベンケイはシャナオウの依り代である『ヤサカニの勾玉』に宿ったツクモ神であり、その母体ともいえる機体の中だからこそ、そんな荒技も可能だったのである。

 ともあれ、ベンケイの瞬間的な機転で、ウシワカは難を免れた。

 だが、これで変事が終わった訳ではなく――

「ぐわっ!」
「ぎゃっ!」

 と、ヨリトモ周辺から、次々に断末魔の叫びが聞こえてきた。

 ――何事⁉︎

 と、ヨリトモはじめ一同が、その方向に目を向けると、そこには双刀を華麗に振りかざす、一人の女の姿があった。

 双刀はいずれも光刃――それは魔導力を持つ者だけが使えるセイバーであった。余談だが、機甲武者のセイバーも同様に、そのパイロットである魔導武者の魔導力で成り立っている。
 すなわちセイバーを両手に持つ女は『魔導武者』――その正体は木曽ヨシナカの妻、トモエであった。

 その目が憎しみの炎に燃えている。バキを捨て、機甲武者を失いながらも、トモエは報復を完遂するべく、その身ひとつでここまで乗り込んできたのである。

みなもとのヨリトモ! そのお命――頂戴する!」

 トモエはそう叫ぶなり、両手のセイバーを再び乱舞させる。
 すると、その刃の餌食となった源氏本軍の歩兵たちが、叫びを上げながら倒れ――光を放ち大地の霊脈と化して――この世から消えていく。

 斬り、また斬り、斬り続ける。それは、魔導力を込めた物理攻撃武具を駆使する――機甲武者発明以前の魔導武者の戦い方であった。

 その鬼神のごとき武者ぶりに、源氏本軍の兵が恐れおののく。
 中には刀槍で応戦する者もいたが、魔導力を込めたセイバーの威力はケタ違いであり、武具ごとその体を叩き斬られ、それがまた兵たちの恐怖を煽った。

 さらにヨリトモたちに不利だったのは、密集隊形での同士討ちを避けるため、たった一人の相手に発砲できなかった点である。

 それはトモエも織り込み済みであり、その証拠に彼女の立ち位置は、常に敵兵同士の対角線上にあり、かつ素早い動きで狙いを絞らせなかった。当然、源氏本軍の機甲武者も、棟梁ヨリトモの周辺に二十ミリ機関砲を撃ち込む事など、できるはずもなかった。

 爆薬を積んだ機甲武者による玉砕戦法は失敗したが、トモエの――いや木曽軍全員の思いを込めた奇襲は、次第に源氏本軍を追い詰めていく。

 そして、舞い踊る様に双刀を振るうトモエは、次第にヨリトモとの距離を詰めていき――乱舞の中、二人の視線が重なり火花を散らした。



Act-05 トモエ乱舞 END

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