憂いの空と欠けた太陽

弟切 湊

文字の大きさ
55 / 142

断腸の思い(御園視点)

しおりを挟む
遊紗から会いたいとLINEで言われて、2人でオレの家に集まった。
相談したいことがあるらしい。

最近もちらちらと遊んでいたが、こうやって遊紗から言われるのは初めてだった。
今日は遊紗がいつも着ない服を着ていて、目新しいがとても似合っていた。

遊紗がオレに相談したいことがあると言ってくれたのが嬉しくて、天にも昇るようだったオレの気持ちは、その相談内容によって地獄へと叩き落とされた。

「その、相談したいことがあって」

「んー? 何だ? 言ってみ」

「有栖にね、告白されたの」


…………………………は?


「御園は男の人を好きになる人だから、その、どういう付き合い方をしたらいいか分かるかなと思って」

心が抉られるように痛み、一瞬思考が真っ白になった。

告白された? あの男に?

「…………え、遊紗は、OKしたの?」

「最初は断ったんだけど、本当に好きだって言ってくれたから」

「……………………」


…………オレの方がもっとずっと前から好きだったのに。まさかあんなぽっと出に先を越されるなんて。
あの野郎、オレのことをあんな目で見ておきながら結局自分がそうするんじゃねえか。

こんなことならさっさと告っとくんだった。

腸が煮えくり返りそうになる気持ちを抑えて、遊紗の話を聞く。

「それで、何を聞きたいんだ?」

「…………これは御園にも言ってなかったんだけど、僕、人を好きになったことがなくて、だからどう接すればいいかも分からなくて。御園なら分かるかなって」

「…………お、いい目の付け所だな! 何でも相談してくれよ~?」

「うん、ありがとう。こういうの聞けるの、御園だけだから」

遊紗の悪気のない言葉がグサグサと胸に突き刺さる。

「……ああ。分かってる。……遊紗は、あいつ……いや、有栖のことどう思ってるんだ?」

「人間としては好きかな。僕のために色々してくれて、こんな僕を大事に思ってくれて。僕の趣味も否定しないで話を聞いてくれる。……恋愛的な意味での好きはちょっと僕には分からないから何とも言えないんだけど」

「…………そうか。もし付き合ったらどうするつもりとか決めたり考えたりしてるのか?」

「うーん……僕に出来ることならしてあげたいなって思ってる。何でも、とはいかないけど、出来るだけのことは」

「それに対して嫌な感情はないのか? 無理してるとか」

「ない、かな。出来れば僕も有栖を大切にしたいなって考えてる」

「…………なら、もう答え出てんじゃねえか」

「…………え?」

「男ってのは、好きな相手に1番に思われることが嬉しいんだ。一緒にいられることが嬉しいんだ。だから、遊紗がそう思って一緒にいるのなら、取り立てて何かをする必要はない。ただ、受け入れてやるだけでいい」

「……そうなんだ。うん、そうかもしれないね。ありがとう、御園」

「ふっ、いいってことよ。ま、あいつに嫌気が差したらオレに何時でも言いな。愚痴でも何でも聞いてやるからさ」

「うん」

「そしたらオレがお前に告るかもな」

「え?」

「冗談だよ、冗談」


遊紗はちょっと笑った。遊紗が笑うのは珍しいことで、こんな状況じゃなければ本当に嬉しかったのにな。

あいつを恨みたい気持ちでいっぱいだが、こればかりはずっと告れなかったオレが悪い。

何で言えなかったのだろう。
何で勇気が出なかったのだろう。

それもこれも、友情も愛情もと欲張った結果だ。
二兎を追う者は一兎をも得ず。
良く出来たことわざだ。


ここはオレの部屋だから、遊紗に何をしてもバレないのだけど。
あいつの服選びのセンスに免じて見逃してやろう。

こんなヒラヒラした洒落た服、遊紗は絶対選ばないから、あいつが選んだに違いない。
悔しいし恨めしいし羨ましいし、さっさとくたばって欲しいが、遊紗が選ばないような、でも遊紗に似合う服を選べるのは、本当にあいつが遊紗のことを好きである証拠だ。

遊紗も満更でもなく着てくる辺り、あいつのことを嫌っていないのだろう。


相手が男だから本当は引きたくないけど。遊紗が彼を大切にするのなら、オレは諦めるしかない。

きっとオレのことは友人だと思っているのだから。

押し倒して奪ってしまうのは、ただ遊紗を傷付けるだけ。そして、オレの遊紗との友人関係も終わりを迎える。

それだけは出来なかった。

「なあ、遊紗」

「何?」

「あい……有栖の連絡先教えてくれない?」

「…………うん、いいよ。あんまり長文とか送ると迷惑になっちゃうかもしれないけど、ちょっとずつなら有栖も答えてくれると思うから」

「ん。ありがと。…………話したいこといっぱいあるんだよなー」

「そういえばファンなんだっけ」

「そうそう。ファンだからさ、オレ」


――――――――――――†


「何でももってるくせに」

帰っていく遊紗の背中を眺めながら、オレは悪態をついた。

容姿端麗で文武両道、金もあって名声もある。オマケに恋愛まで順調ときた。
オレは何もない。

容姿は平凡でなんなら怖がられる方で、運動は出来るけど勉強はそれほどで、バイトで貰える金もたかが知れていて。
それだけはあればいいと思っていた大切な人も、あいつの元に行ってしまった。

あの子がオレのことを未だに友人だと思ってくれていることが嬉しくもあり、同時に悲しくもあった。


「なあに、あんた泣いてるの?」

飯に呼ばれて食卓に行くと、母親にそう言われた。

「……ちげーよ。ちょっと眠いだけ」


――――――――――――†

(端書き)

今回と前回で遊紗の天然無神経が炸裂して被害者が出てますが、彼は有栖に幸せになって欲しいと心から思っていただけでしたし、御園が自分のことを好いていることを知りませんでしたし、御園のことを友人としか見ていませんので許してあげてください。

有栖が宇宙まで飛んでいくくらい嬉しい最中、御園はマントルまで突き刺さるくらいどん底ですが、恋愛とはそういうものですよね(恋愛未経験者)。

強く生きて御園。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

今日も、社会科準備室で

下井理佐
BL
内気で弱気な高校生・鈴山夏芽(すずやまなつめ)は、昼休みになると誰もいない社会科準備室でこっそりと絵を描いていた。 夏芽はいつものように社会科準備室を開ける。そこには今年赴任してきた社会科教室・高山秋次(あきつぐ)がいた。 新任式で黄色い声を受けていた高山がいることに戸惑い退室しようとするが、高山に引き止められる。 萎縮しながらも絵を描く夏芽に高山は興味を持ち出し、次第に昼休みが密かな楽しみになる。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

天の求婚

紅林
BL
太平天帝国では5年ほど前から第一天子と第二天子によって帝位継承争いが勃発していた。 主人公、新田大貴子爵は第二天子派として広く活動していた亡き父の跡を継いで一年前に子爵家を継いだ。しかし、フィラデルフィア合衆国との講和条約を取り付けた第一天子の功績が認められ次期帝位継承者は第一天子となり、派閥争いに負けた第二天子派は継承順位を下げられ、それに付き従った者の中には爵位剥奪のうえ、帝都江流波から追放された華族もいた そして大貴もその例に漏れず、邸宅にて謹慎を申し付けられ現在は華族用の豪華な護送車で大天族の居城へと向かっていた 即位したての政権が安定していない君主と没落寸前の血筋だけは立派な純血華族の複雑な結婚事情を描いた物語

どうしてこんな拍手喝采

ソラ
BL
ヤクザ×高校生

夜が明けなければいいのに(洋風)

万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。 しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。 そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。 長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。 「名誉ある生贄」。 それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。 部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。 黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。 本当は、別れが怖くてたまらない。 けれど、その弱さを見せることができない。 「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」 心にもない言葉を吐き捨てる。 カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。 だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。 「……おめでとうございます、殿下」 恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。 その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。 ――おめでとうなんて、言わないでほしかった。 ――本当は、行きたくなんてないのに。 和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。 お楽しみいただければ幸いです。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

処理中です...