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断腸の思い(御園視点)
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遊紗から会いたいとLINEで言われて、2人でオレの家に集まった。
相談したいことがあるらしい。
最近もちらちらと遊んでいたが、こうやって遊紗から言われるのは初めてだった。
今日は遊紗がいつも着ない服を着ていて、目新しいがとても似合っていた。
遊紗がオレに相談したいことがあると言ってくれたのが嬉しくて、天にも昇るようだったオレの気持ちは、その相談内容によって地獄へと叩き落とされた。
「その、相談したいことがあって」
「んー? 何だ? 言ってみ」
「有栖にね、告白されたの」
…………………………は?
「御園は男の人を好きになる人だから、その、どういう付き合い方をしたらいいか分かるかなと思って」
心が抉られるように痛み、一瞬思考が真っ白になった。
告白された? あの男に?
「…………え、遊紗は、OKしたの?」
「最初は断ったんだけど、本当に好きだって言ってくれたから」
「……………………」
…………オレの方がもっとずっと前から好きだったのに。まさかあんなぽっと出に先を越されるなんて。
あの野郎、オレのことをあんな目で見ておきながら結局自分がそうするんじゃねえか。
こんなことならさっさと告っとくんだった。
腸が煮えくり返りそうになる気持ちを抑えて、遊紗の話を聞く。
「それで、何を聞きたいんだ?」
「…………これは御園にも言ってなかったんだけど、僕、人を好きになったことがなくて、だからどう接すればいいかも分からなくて。御園なら分かるかなって」
「…………お、いい目の付け所だな! 何でも相談してくれよ~?」
「うん、ありがとう。こういうの聞けるの、御園だけだから」
遊紗の悪気のない言葉がグサグサと胸に突き刺さる。
「……ああ。分かってる。……遊紗は、あいつ……いや、有栖のことどう思ってるんだ?」
「人間としては好きかな。僕のために色々してくれて、こんな僕を大事に思ってくれて。僕の趣味も否定しないで話を聞いてくれる。……恋愛的な意味での好きはちょっと僕には分からないから何とも言えないんだけど」
「…………そうか。もし付き合ったらどうするつもりとか決めたり考えたりしてるのか?」
「うーん……僕に出来ることならしてあげたいなって思ってる。何でも、とはいかないけど、出来るだけのことは」
「それに対して嫌な感情はないのか? 無理してるとか」
「ない、かな。出来れば僕も有栖を大切にしたいなって考えてる」
「…………なら、もう答え出てんじゃねえか」
「…………え?」
「男ってのは、好きな相手に1番に思われることが嬉しいんだ。一緒にいられることが嬉しいんだ。だから、遊紗がそう思って一緒にいるのなら、取り立てて何かをする必要はない。ただ、受け入れてやるだけでいい」
「……そうなんだ。うん、そうかもしれないね。ありがとう、御園」
「ふっ、いいってことよ。ま、あいつに嫌気が差したらオレに何時でも言いな。愚痴でも何でも聞いてやるからさ」
「うん」
「そしたらオレがお前に告るかもな」
「え?」
「冗談だよ、冗談」
遊紗はちょっと笑った。遊紗が笑うのは珍しいことで、こんな状況じゃなければ本当に嬉しかったのにな。
あいつを恨みたい気持ちでいっぱいだが、こればかりはずっと告れなかったオレが悪い。
何で言えなかったのだろう。
何で勇気が出なかったのだろう。
それもこれも、友情も愛情もと欲張った結果だ。
二兎を追う者は一兎をも得ず。
良く出来たことわざだ。
ここはオレの部屋だから、遊紗に何をしてもバレないのだけど。
あいつの服選びのセンスに免じて見逃してやろう。
こんなヒラヒラした洒落た服、遊紗は絶対選ばないから、あいつが選んだに違いない。
悔しいし恨めしいし羨ましいし、さっさとくたばって欲しいが、遊紗が選ばないような、でも遊紗に似合う服を選べるのは、本当にあいつが遊紗のことを好きである証拠だ。
遊紗も満更でもなく着てくる辺り、あいつのことを嫌っていないのだろう。
相手が男だから本当は引きたくないけど。遊紗が彼を大切にするのなら、オレは諦めるしかない。
きっとオレのことは友人だと思っているのだから。
押し倒して奪ってしまうのは、ただ遊紗を傷付けるだけ。そして、オレの遊紗との友人関係も終わりを迎える。
それだけは出来なかった。
「なあ、遊紗」
「何?」
「あい……有栖の連絡先教えてくれない?」
「…………うん、いいよ。あんまり長文とか送ると迷惑になっちゃうかもしれないけど、ちょっとずつなら有栖も答えてくれると思うから」
「ん。ありがと。…………話したいこといっぱいあるんだよなー」
「そういえばファンなんだっけ」
「そうそう。ファンだからさ、オレ」
――――――――――――†
「何でももってるくせに」
帰っていく遊紗の背中を眺めながら、オレは悪態をついた。
容姿端麗で文武両道、金もあって名声もある。オマケに恋愛まで順調ときた。
オレは何もない。
容姿は平凡でなんなら怖がられる方で、運動は出来るけど勉強はそれほどで、バイトで貰える金もたかが知れていて。
それだけはあればいいと思っていた大切な人も、あいつの元に行ってしまった。
あの子がオレのことを未だに友人だと思ってくれていることが嬉しくもあり、同時に悲しくもあった。
「なあに、あんた泣いてるの?」
飯に呼ばれて食卓に行くと、母親にそう言われた。
「……ちげーよ。ちょっと眠いだけ」
――――――――――――†
(端書き)
今回と前回で遊紗の天然無神経が炸裂して被害者が出てますが、彼は有栖に幸せになって欲しいと心から思っていただけでしたし、御園が自分のことを好いていることを知りませんでしたし、御園のことを友人としか見ていませんので許してあげてください。
有栖が宇宙まで飛んでいくくらい嬉しい最中、御園はマントルまで突き刺さるくらいどん底ですが、恋愛とはそういうものですよね(恋愛未経験者)。
強く生きて御園。
相談したいことがあるらしい。
最近もちらちらと遊んでいたが、こうやって遊紗から言われるのは初めてだった。
今日は遊紗がいつも着ない服を着ていて、目新しいがとても似合っていた。
遊紗がオレに相談したいことがあると言ってくれたのが嬉しくて、天にも昇るようだったオレの気持ちは、その相談内容によって地獄へと叩き落とされた。
「その、相談したいことがあって」
「んー? 何だ? 言ってみ」
「有栖にね、告白されたの」
…………………………は?
「御園は男の人を好きになる人だから、その、どういう付き合い方をしたらいいか分かるかなと思って」
心が抉られるように痛み、一瞬思考が真っ白になった。
告白された? あの男に?
「…………え、遊紗は、OKしたの?」
「最初は断ったんだけど、本当に好きだって言ってくれたから」
「……………………」
…………オレの方がもっとずっと前から好きだったのに。まさかあんなぽっと出に先を越されるなんて。
あの野郎、オレのことをあんな目で見ておきながら結局自分がそうするんじゃねえか。
こんなことならさっさと告っとくんだった。
腸が煮えくり返りそうになる気持ちを抑えて、遊紗の話を聞く。
「それで、何を聞きたいんだ?」
「…………これは御園にも言ってなかったんだけど、僕、人を好きになったことがなくて、だからどう接すればいいかも分からなくて。御園なら分かるかなって」
「…………お、いい目の付け所だな! 何でも相談してくれよ~?」
「うん、ありがとう。こういうの聞けるの、御園だけだから」
遊紗の悪気のない言葉がグサグサと胸に突き刺さる。
「……ああ。分かってる。……遊紗は、あいつ……いや、有栖のことどう思ってるんだ?」
「人間としては好きかな。僕のために色々してくれて、こんな僕を大事に思ってくれて。僕の趣味も否定しないで話を聞いてくれる。……恋愛的な意味での好きはちょっと僕には分からないから何とも言えないんだけど」
「…………そうか。もし付き合ったらどうするつもりとか決めたり考えたりしてるのか?」
「うーん……僕に出来ることならしてあげたいなって思ってる。何でも、とはいかないけど、出来るだけのことは」
「それに対して嫌な感情はないのか? 無理してるとか」
「ない、かな。出来れば僕も有栖を大切にしたいなって考えてる」
「…………なら、もう答え出てんじゃねえか」
「…………え?」
「男ってのは、好きな相手に1番に思われることが嬉しいんだ。一緒にいられることが嬉しいんだ。だから、遊紗がそう思って一緒にいるのなら、取り立てて何かをする必要はない。ただ、受け入れてやるだけでいい」
「……そうなんだ。うん、そうかもしれないね。ありがとう、御園」
「ふっ、いいってことよ。ま、あいつに嫌気が差したらオレに何時でも言いな。愚痴でも何でも聞いてやるからさ」
「うん」
「そしたらオレがお前に告るかもな」
「え?」
「冗談だよ、冗談」
遊紗はちょっと笑った。遊紗が笑うのは珍しいことで、こんな状況じゃなければ本当に嬉しかったのにな。
あいつを恨みたい気持ちでいっぱいだが、こればかりはずっと告れなかったオレが悪い。
何で言えなかったのだろう。
何で勇気が出なかったのだろう。
それもこれも、友情も愛情もと欲張った結果だ。
二兎を追う者は一兎をも得ず。
良く出来たことわざだ。
ここはオレの部屋だから、遊紗に何をしてもバレないのだけど。
あいつの服選びのセンスに免じて見逃してやろう。
こんなヒラヒラした洒落た服、遊紗は絶対選ばないから、あいつが選んだに違いない。
悔しいし恨めしいし羨ましいし、さっさとくたばって欲しいが、遊紗が選ばないような、でも遊紗に似合う服を選べるのは、本当にあいつが遊紗のことを好きである証拠だ。
遊紗も満更でもなく着てくる辺り、あいつのことを嫌っていないのだろう。
相手が男だから本当は引きたくないけど。遊紗が彼を大切にするのなら、オレは諦めるしかない。
きっとオレのことは友人だと思っているのだから。
押し倒して奪ってしまうのは、ただ遊紗を傷付けるだけ。そして、オレの遊紗との友人関係も終わりを迎える。
それだけは出来なかった。
「なあ、遊紗」
「何?」
「あい……有栖の連絡先教えてくれない?」
「…………うん、いいよ。あんまり長文とか送ると迷惑になっちゃうかもしれないけど、ちょっとずつなら有栖も答えてくれると思うから」
「ん。ありがと。…………話したいこといっぱいあるんだよなー」
「そういえばファンなんだっけ」
「そうそう。ファンだからさ、オレ」
――――――――――――†
「何でももってるくせに」
帰っていく遊紗の背中を眺めながら、オレは悪態をついた。
容姿端麗で文武両道、金もあって名声もある。オマケに恋愛まで順調ときた。
オレは何もない。
容姿は平凡でなんなら怖がられる方で、運動は出来るけど勉強はそれほどで、バイトで貰える金もたかが知れていて。
それだけはあればいいと思っていた大切な人も、あいつの元に行ってしまった。
あの子がオレのことを未だに友人だと思ってくれていることが嬉しくもあり、同時に悲しくもあった。
「なあに、あんた泣いてるの?」
飯に呼ばれて食卓に行くと、母親にそう言われた。
「……ちげーよ。ちょっと眠いだけ」
――――――――――――†
(端書き)
今回と前回で遊紗の天然無神経が炸裂して被害者が出てますが、彼は有栖に幸せになって欲しいと心から思っていただけでしたし、御園が自分のことを好いていることを知りませんでしたし、御園のことを友人としか見ていませんので許してあげてください。
有栖が宇宙まで飛んでいくくらい嬉しい最中、御園はマントルまで突き刺さるくらいどん底ですが、恋愛とはそういうものですよね(恋愛未経験者)。
強く生きて御園。
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