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ティアゴ視点
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『ティアゴ・ユング公爵令息』この名前を聞いて彼を知る9割の人間が一番最初に口にする印象は『女好き』である、ちなみに残りの1割は『ああ、あの頭の悪そうな人?』なのだが…
彼の参加する催し物に出席した事のある者は、令嬢にナンパする光景を目撃するもしくはナンパされる側になった経験が1度はあるだろう…
そんなティアゴ公爵令息だがある時を境に令嬢に絡む行為が鳴りを潜めた…いや女性に対して息をするように『綺麗だね』等と声をかけるのは相変わらずだが、女性を褒めるのは紳士の義務であると豪語する彼からすれば挨拶に過ぎないのであろう。
これはそんなティアゴ公爵令息の語るとある日曜日の出来事。
「やあ、マドレーナ嬢、3日と2時間14分ぶりだね!」
なかなか会えなくて寂しかったよと愛しい婚約者を抱きしめる。
「ひっ!ちょっと出会い頭に私の腰をなで回すのはやめて下さらない?」
ふふっ!やっぱり素直でない彼女はツンツンした対応をする。
ああ、可愛いなぁマドレーナ嬢は照れ屋なところがあるから、こうやってスキンシップをとるのが苦手なんだよね。
10年もこんなに愛らしい少女が俺の事を想い続けてくれていたのに、全く気が付かず他の令嬢と婚約までしてしまって本当に申し訳ない事をしたな。
ほらそんなに震えないで、心配しなくても俺はもう愛する君以外の女性になびいたりしないから。
「今日はモーリア伯爵がユング公爵邸まで送ってくれたんだね?」
「私だって本当は来たくはなかったのですよ?でもお父様がただでさえ前々回突然キャンセルしたのだから、絶対に行けと引っ張るのですもの…」
彼女からのツンデレ発言にご満悦になりながら前々回のデートがキャンセルになった理由を思い出す。
「そう言えば試験の成績が良くなくて補習になったんだよね?」
「ええそうですよ、勉強など手につかず…とてもそのような気分になれないのですもの」
マドレーナ嬢の表情が暗くなって俺は無神経な発言をした事に気付いた、ああ最近彼女が元気でないのは成績が下がったからだったのか。
「マドレーナ嬢、元気を出して?学園の成績が何なのさ、そんな事で君の魅力は霞んだりはしないよ」
これは俺の本心だ、成績が悪くたってマドレーナ嬢が素敵な女性である事は変わらない。
むしろちょっぴりお勉強が苦手な彼女は可愛いではないか、それに俺も単位が足りなくて学園卒業後も補習に通っていたので親近感が湧く。
「それはどうかしら?担任の先生からはこのままでは留年するとまで言われておりますのよ?」
そうか、マドレーナ嬢は進級出来なくなる事を心配していたのか!
「それはただの先生の脅しだよ、ちゃんと卒業出来るから安心して?」
「…私は…したい」
「ん?ごめんちょっと聞き取れなかった、もう1回言って?」
彼女は『何でもありませんわ』と答えたけれど、明らかに何でもないと言う顔ではない。
これは俺の実体験を話して安心させるしかないな。
「マドレーナ嬢、本当に成績が悪くても卒業は出来るんだよ」
俺は自分の卒業までの経緯と、卒業後の補習や追試の詳細を話した。
「そっそんな、このままでは私は2年と少ししたら…」
2年後と言えば彼女が学園を卒業する頃だな、その後はそう日を空けずに俺達の結婚式がある。
ただ俺にはひとつ思うところがあった。
「マドレーナ嬢、この前は結婚の翌年にハネムーンベイビーが…と言う話をしていたよね?」
「えっええ、そうですわね」
マドレーナ嬢が突然何を?と言いたげな顔をする。
「やっぱり子どもは結婚から何年か後にしないかい?」
「え、どうなさったのですか?」
「いや君との子どもは欲しいけれど、でもハネムーンベイビーでは夫婦2人きりの時間が1年もないじゃないか」
子育てに時間を取られてこうやってイチャイチャする時間も少なくなる。そう俺の考えを言うと、マドレーナ嬢が何かを呟き始めた。
「…子育て、…忙しい…2人きりでなくなる、そうですわその手がありました!」
「マドレーナ嬢?」
うつむいて表情が分からない彼女が心配になって声をかけると、ガシッと両手を掴まれる
「ティアゴ様、私子どもは沢山欲しいですわ!出来れば結婚後年数を空けずに、子育てで2人きりの時間を忘れる程に!」
何かよく分からないけれどマドレーナ嬢は大家族に憧れていたようだ、そうとなったら夫として彼女の夢を叶えないわけにはいかない。
「ああ、賑やかな家庭にしよう!子どもは1ダース位欲しいね」
可愛い妻と沢山の子ども達、きっととびきり幸せな家族になれるのだろう。
この場に他にも誰かがいたのなら、この頓珍漢な会話にツッコミのひとつも入れたのであろうが生憎ティアゴとマドレーナの2人しかいない。
その後我に返ったマドレーナが卒業までに7回も出家騒動を起こすのだが、それはまた別の話。
彼の参加する催し物に出席した事のある者は、令嬢にナンパする光景を目撃するもしくはナンパされる側になった経験が1度はあるだろう…
そんなティアゴ公爵令息だがある時を境に令嬢に絡む行為が鳴りを潜めた…いや女性に対して息をするように『綺麗だね』等と声をかけるのは相変わらずだが、女性を褒めるのは紳士の義務であると豪語する彼からすれば挨拶に過ぎないのであろう。
これはそんなティアゴ公爵令息の語るとある日曜日の出来事。
「やあ、マドレーナ嬢、3日と2時間14分ぶりだね!」
なかなか会えなくて寂しかったよと愛しい婚約者を抱きしめる。
「ひっ!ちょっと出会い頭に私の腰をなで回すのはやめて下さらない?」
ふふっ!やっぱり素直でない彼女はツンツンした対応をする。
ああ、可愛いなぁマドレーナ嬢は照れ屋なところがあるから、こうやってスキンシップをとるのが苦手なんだよね。
10年もこんなに愛らしい少女が俺の事を想い続けてくれていたのに、全く気が付かず他の令嬢と婚約までしてしまって本当に申し訳ない事をしたな。
ほらそんなに震えないで、心配しなくても俺はもう愛する君以外の女性になびいたりしないから。
「今日はモーリア伯爵がユング公爵邸まで送ってくれたんだね?」
「私だって本当は来たくはなかったのですよ?でもお父様がただでさえ前々回突然キャンセルしたのだから、絶対に行けと引っ張るのですもの…」
彼女からのツンデレ発言にご満悦になりながら前々回のデートがキャンセルになった理由を思い出す。
「そう言えば試験の成績が良くなくて補習になったんだよね?」
「ええそうですよ、勉強など手につかず…とてもそのような気分になれないのですもの」
マドレーナ嬢の表情が暗くなって俺は無神経な発言をした事に気付いた、ああ最近彼女が元気でないのは成績が下がったからだったのか。
「マドレーナ嬢、元気を出して?学園の成績が何なのさ、そんな事で君の魅力は霞んだりはしないよ」
これは俺の本心だ、成績が悪くたってマドレーナ嬢が素敵な女性である事は変わらない。
むしろちょっぴりお勉強が苦手な彼女は可愛いではないか、それに俺も単位が足りなくて学園卒業後も補習に通っていたので親近感が湧く。
「それはどうかしら?担任の先生からはこのままでは留年するとまで言われておりますのよ?」
そうか、マドレーナ嬢は進級出来なくなる事を心配していたのか!
「それはただの先生の脅しだよ、ちゃんと卒業出来るから安心して?」
「…私は…したい」
「ん?ごめんちょっと聞き取れなかった、もう1回言って?」
彼女は『何でもありませんわ』と答えたけれど、明らかに何でもないと言う顔ではない。
これは俺の実体験を話して安心させるしかないな。
「マドレーナ嬢、本当に成績が悪くても卒業は出来るんだよ」
俺は自分の卒業までの経緯と、卒業後の補習や追試の詳細を話した。
「そっそんな、このままでは私は2年と少ししたら…」
2年後と言えば彼女が学園を卒業する頃だな、その後はそう日を空けずに俺達の結婚式がある。
ただ俺にはひとつ思うところがあった。
「マドレーナ嬢、この前は結婚の翌年にハネムーンベイビーが…と言う話をしていたよね?」
「えっええ、そうですわね」
マドレーナ嬢が突然何を?と言いたげな顔をする。
「やっぱり子どもは結婚から何年か後にしないかい?」
「え、どうなさったのですか?」
「いや君との子どもは欲しいけれど、でもハネムーンベイビーでは夫婦2人きりの時間が1年もないじゃないか」
子育てに時間を取られてこうやってイチャイチャする時間も少なくなる。そう俺の考えを言うと、マドレーナ嬢が何かを呟き始めた。
「…子育て、…忙しい…2人きりでなくなる、そうですわその手がありました!」
「マドレーナ嬢?」
うつむいて表情が分からない彼女が心配になって声をかけると、ガシッと両手を掴まれる
「ティアゴ様、私子どもは沢山欲しいですわ!出来れば結婚後年数を空けずに、子育てで2人きりの時間を忘れる程に!」
何かよく分からないけれどマドレーナ嬢は大家族に憧れていたようだ、そうとなったら夫として彼女の夢を叶えないわけにはいかない。
「ああ、賑やかな家庭にしよう!子どもは1ダース位欲しいね」
可愛い妻と沢山の子ども達、きっととびきり幸せな家族になれるのだろう。
この場に他にも誰かがいたのなら、この頓珍漢な会話にツッコミのひとつも入れたのであろうが生憎ティアゴとマドレーナの2人しかいない。
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