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夏の魔物
18話 文化祭3 ☆
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「ここんところつまんなかったから仕方ないよね、睦月」
立花清風が笑う。
一瞬、夏伊の気が遠くなって、無意識に立花清風の手を握っていた。
途端、剥がそうとしてもきつく握りしめて離さない。
夏伊の意識に、映像が流れ込んでくる。
清風視線なのがまた、強烈な不快感を齎す。まるで自分が睦月に暴力を振るっているようで。
「う…」
顔を背けて、手洗い場に嘔吐する。
自分だと思っていた人に、声をかける。
自分だと思っていた人に、体を晒す。
下半身に精液をかけられ、無理矢理に指を入れられる。
暴力に屈して名前を呼ぶ。
残虐な言葉に、顔を歪ませる。
無防備な肢体を引き寄せ、組み敷かれる。
必死で逃げようとする体を押さえつけた時の、悲痛な叫び声。
覆い被さって肩甲骨を押さえる時の、ゴリッとした感触。
それでも強く言い返す。いつもの官能的な煌めきとは違う、怒りに燃える瞳だった。
あの日ヒロは、夏伊を見間違えたのではなかった。コイツは見た目はまさしく夏伊だったのだから。
あの日夏伊は、睦月のマンションの前を通りがかっている。これが、その時、ブラインドの向こうで起きていたこと。
夏の終わりの情事の際、睦月からほとんど香りが立たなかったことを思い出す。
それを気にせず抱いた。
自分もまた、独りよがりに睦月を嬲ったのではないか。
清風がにまっと笑って言い放つ。
「睦月は、あんたが心配で守りたくて仕方ないみたいだな。可愛い騎士に護衛してもらって気分はどうだった、なあ王様」
言葉が継げない。
「バラしちゃった事は、しばらく睦月には内緒にしとくわ。お前はどういう態度を取るのかな。ま、俺の暇つぶしに付き合えよ」
そしてフッと笑われる。
「金持ちのヤリチン坊ちゃんがトイレの床にへばってるとか、クソ受けるな」
歯を食いしばって立ち上がり、トイレから去ろうとする立花清風の首元を引っ張る。そのまま右に一撃を入れた。
清風の頬骨の窪みが鈍く鳴る。
ぐらりと揺れた清風を引き寄せて、腰に捻りを入れもう一発打ち込む。手洗い場に清風が倒れ込んだ。
「……て、め…」
口腔を強かに切ったらしく、清風がダラダラと血を流す。
「クソが。お前こそトイレの床がお似合いだ」
「……何……だあ……?」
目が輝くと共に、するすると傷が皮膚に覆われていく。
「この俺様を殴るとは、舐めた事してくれんな…」
清風がギロリと睨んで、血をプッと吐き出す。
「ただの人間がよ、対等ぶって口聞いてんじゃねーよ」
そこにタイミング悪く、生徒が入ってきた。
立花清風が笑う。
一瞬、夏伊の気が遠くなって、無意識に立花清風の手を握っていた。
途端、剥がそうとしてもきつく握りしめて離さない。
夏伊の意識に、映像が流れ込んでくる。
清風視線なのがまた、強烈な不快感を齎す。まるで自分が睦月に暴力を振るっているようで。
「う…」
顔を背けて、手洗い場に嘔吐する。
自分だと思っていた人に、声をかける。
自分だと思っていた人に、体を晒す。
下半身に精液をかけられ、無理矢理に指を入れられる。
暴力に屈して名前を呼ぶ。
残虐な言葉に、顔を歪ませる。
無防備な肢体を引き寄せ、組み敷かれる。
必死で逃げようとする体を押さえつけた時の、悲痛な叫び声。
覆い被さって肩甲骨を押さえる時の、ゴリッとした感触。
それでも強く言い返す。いつもの官能的な煌めきとは違う、怒りに燃える瞳だった。
あの日ヒロは、夏伊を見間違えたのではなかった。コイツは見た目はまさしく夏伊だったのだから。
あの日夏伊は、睦月のマンションの前を通りがかっている。これが、その時、ブラインドの向こうで起きていたこと。
夏の終わりの情事の際、睦月からほとんど香りが立たなかったことを思い出す。
それを気にせず抱いた。
自分もまた、独りよがりに睦月を嬲ったのではないか。
清風がにまっと笑って言い放つ。
「睦月は、あんたが心配で守りたくて仕方ないみたいだな。可愛い騎士に護衛してもらって気分はどうだった、なあ王様」
言葉が継げない。
「バラしちゃった事は、しばらく睦月には内緒にしとくわ。お前はどういう態度を取るのかな。ま、俺の暇つぶしに付き合えよ」
そしてフッと笑われる。
「金持ちのヤリチン坊ちゃんがトイレの床にへばってるとか、クソ受けるな」
歯を食いしばって立ち上がり、トイレから去ろうとする立花清風の首元を引っ張る。そのまま右に一撃を入れた。
清風の頬骨の窪みが鈍く鳴る。
ぐらりと揺れた清風を引き寄せて、腰に捻りを入れもう一発打ち込む。手洗い場に清風が倒れ込んだ。
「……て、め…」
口腔を強かに切ったらしく、清風がダラダラと血を流す。
「クソが。お前こそトイレの床がお似合いだ」
「……何……だあ……?」
目が輝くと共に、するすると傷が皮膚に覆われていく。
「この俺様を殴るとは、舐めた事してくれんな…」
清風がギロリと睨んで、血をプッと吐き出す。
「ただの人間がよ、対等ぶって口聞いてんじゃねーよ」
そこにタイミング悪く、生徒が入ってきた。
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