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第3章 植人族ってハイスペック
第47話 傲慢な種族
しおりを挟む「さて、どうします?」
「どうするも……陸人が気絶させちゃったからね」
お嬢様がわざとらしく困ったような表情で見てくるので、顔を逸らして馬車の下へと向かう。ちょうど馬車の様子が知りたかったしな。
馬車へと着くと、馬はまだ寝ていて、馬車の中も荒らされた様子は無かった。あの女は俺ら全員が目が覚めるまで何もしなかったらしい。
馬車をどう動かすかと考えたが、こんな木の大きな根っこやらでデコボコしたところを馬車で移動出来るはずも無く、仕方なく馬を近くの木に停める。あの女の仲間も馬を殺そうとは思わないだろう。
「お嬢様、馬は使えませんのでこれからは歩いて向かいましょう」
「そう…だね、ここは流石にね」
お嬢様は女をロープでぐるぐる巻きにして、メサに抱え込ませるように言う。メサは少し嫌そうな顔をしたが、すぐに観念して背中に背負ってメイカがさらに上からロープで固定した。
「では、行きましょう。幸いな事に、道は分かりますので」
一部の木々に付けられた傷。ナイフ等で付けられた人工的な傷なので、女の仲間が目印として付けたんだろう。これを遡って行けば集落か村かは知らないが、女の仲間が集まっているところに着けるだろう。
気候的には問題無いのだが、デコボコした道のりなので思った以上にお嬢様たちの体力が持たなかったので、今日中に着けず、野宿になった。
「このロープを解け!くっ、私が人族などに捕まるなんて…!殺せぇ!!」
1時間ほど前からうるさい女とともに。
「そんな事言いながら左腕でロープを少しずつ削りやがって…!さっさとお前らのアジトを教えろよ!さもないと痛い目を見るぞ」
「ふっ、私の心が貴様などの拷問で屈する訳が無いだろう!私を屈服させたかったら、この森でも燃やしてみるがいい!!」
「お嬢様、よろしくお願いします」
「え~、知らないよ?」
「……はっ?ちょっと、待て女。……ちょっと待って君っ!…ちょっと待ってくださいぃ!!やめてぇぇ!!」
強情な女も森を燃やされそうになるのは予想外だったようで、お嬢様の手から発された巨大な炎を見て、すぐに心が折れた。
大粒の涙を流しながら、メソメソと泣いている。ロープで身動きが出来ないので、横に倒れて涙をひたすら流しているのを見ると、凄くいけない事をしている気分になる。
「あんたには選択肢が3つある。
まず一つは素直に情報提供をして、仲間たちが居るところで解放されるか。
二つ目は情報提供をせずに、森が焼かれているのをよく見える場所で眺めるか。
最後に3つ目は情報提供をせずに、森が焼かれる悪夢を永遠と終わりなく見せつけられるか。
どれが良い?」
未だ涙を流す女に笑顔で突きつけると、より一層泣き出した。背後では鬼畜とか聞こえるが、敵にはそれぐらいが妥当だと俺は思う。
「もう陸人!女性を泣かせたらダメでしょ!!」
「すみません…」
お嬢様が女を抱きかかえながら注意して来たので、素直に謝る。
それにしても……見た目は20代なのに、まるで5歳みたいな涙腺の緩さだな。
それほどまでに森が大事な種族なんだろう。だからと言って、入って来た奴を片っ端から大地の養分にしようとするのは良くないと思うが。
「私が彼女から色々聞くから、陸人は夕飯の用意してて!」
「承知しました」
少し機嫌が悪い様子で、女を連れてテントに入って行った。全く、あの女の所為で、お嬢様に少し嫌われたかもしれないじゃないか。
あの女に対して苛立ちが収まらず、少し雑に料理する。
「私たちは空気、良いね?」「分かってる」
メサたちのそんなやり取りすら、俺には聞こえなかった………。
「ほらっ、見えてきた」
「お嬢様、別にその女から聞かなくても、元から目印通りに進む予定でしたよ?」
「良いの、確証が持てたんだからっ」
朝食を終えてからそこそこ歩いていると、木々の中に木の枝で出来た祭り事の時に吊るす本来なら赤白の紐が吊るされている。森鎮祭の会場はそろそろらしい。
実は、入ってすぐの女と戦闘したところが《グノハ》で、《グノハ》は《カタハの森》の隅の地名らしい。
言ってしまえば、あの時にはもう既に《カタハの森》に着いていた事になる。あの地図は植人族が騙したのか、人族が意図して間違ったように書いたのかは知らないが、何にせよ、現地に着いたのだ。これから任務を遂行して、さっさと帰れば良い。
「また襲われませんか?」「それはもう嫌!」
メサもメイカも逃げ腰だが、こっちには依頼状は無いが、身分証明書があればすぐに任務で来たと分かるだろう。
「誰だ!?人族?何故ここに!?」
「カミラ様を呼べ!」
俺たちに気付いた植人族は慌ただしく動き始めた。まるで、敵が攻めて来たように。
「おい、お前が説明して来い」
「はい?そんなの出来るわけがないですか」
お嬢様が背負っているロープ姿の女に仲介役をさせようと思ったが、清々しいほどの否定で出来ない事を知った。確かに、こいつも最初は何も訳を聞かずに問答無用で攻撃して来たしな。そういう気の短い種族だと思っておこう。
「……!リーナが囚われているぞ!!」
「この人族めっ!同族を盾にでもする気かっ!!」
「人族に負けたリーナなど放っておけっ!我らの尊き森を守る事の方を優先せよ!!」
リーナとか言う女を連れているせいで余計に反感を買い、俺たちを正面に見据えて横に広がり、もう矢をつがえて構えている。
どの植人族も腕や脚の一部や片方が植物の根のようになっていて、そこを伸ばしたりして根の一部を矢にしている。このスタイルが植人族の基本的な戦闘スタイルらしい。
「待てっ!俺たちは王国にこちらから来た依頼を達成する為に来たっ!俺たちの身分証明書はこちらにあるっ!それを見て判断していただきたい!!」
俺は腹の底から呼びかけた。全て真実で、誰かしらが確かめる為に来ると思ったが、来たのは嘲笑うかのような嘲笑のみ。
「……何笑ってるのっ?」
「よせ、メイカ」
自分が任務を受けた訳ではないが、俺たちを思って怒ってくれているメイカには悪いが、ここで怒ったらそれでこそ相手のつぼだ。ここはこらえろ。
「我ら植人族が人族に依頼ぃ?」
「ありえない、あり得るはずがない!」
「もっとマシな嘘をつきなさいよっ!」
「知能と数ぐらいしか誇れるところの無い人族ではそれが限界ってわけぇ?」
偶然か知らないが、俺たちの目の前にいる植人族は皆、女なので、余計に腹が立って来る。それに、有象無象のゴミどもとお嬢様を一緒にした事も腹が立つ。
お嬢様に視線を向けると、お嬢様は確かな表情で、悪口なんて聞こえてないかのように微笑んだ。何もするなと。
俺は頷いて返した。お嬢様が耐えているのに、執事である俺が耐えないでどうするっ。
そんな腹の立つ嘲笑は一瞬で止んだ。そして、女どもは次々と自分たちの列の中心を向いて跪き始め、最後の中心にいた女が一歩前に出て横にずれて跪いた事によって見えた。
エメラルドグリーンの髪を地面まで伸ばし、茶色のトパーズのような目で俺たちを静かに見る女というより、女の子は俺たちに向かって幼なさが残っている機械的な声で言った。
「よく来たな、猿ども」
たった一言でお嬢様を馬鹿にしたあいつに俺は殺意を抱いた………。
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