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第3章 植人族ってハイスペック
第48話 植人族の族長
しおりを挟む「私はそれなりに骨のある奴を頼んだのだが………、狂犬を頼んだ覚えは無いぞ」
「何も狂犬が初めから牙をむいているとは思うなよ?それに、お前が相対しているのはお前たちと同じ知性ある人だ」
お前たちと同じという部分に、偉そうな奴だけで無く、周りの奴も表情を変え、罵詈雑言を浴びせて来た。
「黙れ」
その一言は俺か周りの連中か。どっちにせよ、たった一言で騒がしかったのは嘘のように、知らん顔の風と大きな木々の葉擦れの音のみとなる。
「口には気をつけよ。私と貴様とでは天と地の差がある事を知れ」
「なら、それを埋めてやるよ」
いい加減腹の立っていた俺は右手に手頃の石を持って、奴に投げつける。それは当然、当たるはずも無く、奴の顔の横を通ったので、スキル置換転移で石と俺を入れ替える。
そして、右手に無限収納から刀を取り出して奴の中段に振り抜いたが、地面から現れた木製の刀身が細い両刃直剣によって防がれる。
「ほらなっ、簡単に埋まっただろ?」
「……なるほど、なかなかこの森を愛してくれているようだ。進んで養分になりたいとは」
奴は煩わしいように睨んでくる。
それにしても、さっきの剣の現れ方は根が柄を掴んで引っ張り出して来たようだった。……奴の根の部分は右足と左腕。2箇所あるのは面倒だな。
「…人族はいつも異界の戦士に頼る。本来ならば、己たちの力で成し遂げるべき事に決まっているのだがな」
「知るかよ、お前たちの事情やら理屈は。ただ、俺が仕えている人を汚した。それだけで、執事がお前の首を離す理由には事足りる」
俺にはこいつらに有効的な火属性魔法は大して使えない。弱い火を起こす程度だ。だが、自分たちが上だと勘違いをしている子供を教育しやすいハンデでしかない。
「執事が族長である私に楯突くだと?笑わせるなよっ、人族風情が」
本性を現したように、地面に刺さった剣を取り、俺に向かって来た。その速度は大して速くない。簡単にタイミングを計れる。
「っ!そういう事か!」
ーガギィン!
悠々と躱してがら空きになった腹を両断してやろうと、足を踏み出そうとした時、足に根が絡まり、動きが止まってしまい、奴…恐らくカミラが上段から振り下ろして来た剣を受け止めるという、あまり得策では無い対処を強制させられた。
さらに、受け止めた剣が蠢いたと思った時には、ツルが伸び、刀を持つ手を刀と固定するように縛り付けられる。
これだと刀を投げつけたり持ち手を変えたりする事が出来ない。
「その剣は何だ?」
「知らないのか?貴様ら人族が我らに拮抗出来ている最大の要因である『宝剣』だ」
宝剣?何だそれ?そんなもの、聞いた事も見た事も無い。……いや、もしかしたらカレナさんの剣が……
「貴様らの最強の騎士であるカレナが持っている剣だ。…カレナがいるせいで貴様ら人族を滅せないのだ」
「……あの剣が…」
一瞬だけ輝いたところを見た事があるあの剣がカミラが言う宝剣というものなのか。かなりの武器だという事が理解出来た。
「宝剣というものがどんなに強い武器だろうと、動きで分かるぞ。あまり剣を握った事がないのが」
図星だったのか、眉をひそめる。
さっきの上段、悪くは無かったが、あの後にするのが手と刀の固定だなんて、慎重派にも程がある。だが、こいつの性格からして、慎重派だなんて、あり得ない。
つまり、剣においては素人まではいかないが、半人前でしかない。
「来いよ、剣の指導をつけてやる」
「……人族が、この私に指導など、身の程を知れっ」
だいぶお怒りのようで、剣を地面に突き刺し、手を地面につけた。恐らくお嬢様が前にやっていた魔法とかでも使うのか?
「…"フォレスター"」
急に俺を囲うように8本の幹の細い木が生える。
「"ブロウ"」
一斉に俺めがけて幹がムチのように攻撃してきた。その速度はそれなりに速く、2本くらいなら受け止められるが、4本からかなり強くなってくる。
それに足が縛られて避けられないので、斬り落とすしか無いのだが…
「そんなもので私の罰を防ごうなど……。素直に享受せよ」
刀と手を固定していたツルが地面に伸び、根を張ったようにピクリとも動かなくなった。
ならば、左手にと思ったが、左手には地面から生えた根が絡まり動かないように固定された。
「さあ、享受せよ」
俺が完全に防ぐ手段が消えたのを待っていたように、幹たちは反って準備をしていたのだが、カミラの一言で抑えが無くなったように勢い良く俺めがけて振り下ろしてきた………。
ーズダダダダッ!
とても幹とは思えないほどのムチの応酬が陸人に襲いかかっている。砂埃で何も見えないし、出て来た時点で陸人の様子は見えなかったけど、陸人なら何とかしてる。
「…原型を留めているのは流石は異界の戦士と言うべきか」
この森でも偉いであろう、誰かが呼んでいたカミラという名前らしき女の子がギャップのある口調で気になる事を言った。
原型を留めているって、どういう事?まさか……
「そらっ、貴様の使用人なのだろう?」
いくつもの幹の中から一本が何かを私のところに投げつけて来た。それは全身に打撲の痕が痛々しく残っている陸人だった。
服は所々が破れていて、服が破れるほどの攻撃が打撃だなんて、信じられない。
「……陸人、ねぇ陸人」
陸人を揺する。とても、呼吸や心拍を確かめる気にはなれない。確かめたら、現実が明らかになる。そんなの、知りたくない。
「陸人、ねぇ……陸人ったら!」
痛々しい痣の残る顔に涙が落ちる。
私はいつから陸人を一人にしたんだろう。陸人だって、一人の人間なのに。人間が一人で出来る事なんて限られている。
私は陸人を信じすぎていた。……いや、陸人に頼り過ぎていた。こんなの、私が見殺しにしたのと同じ……。
私が魔法を使えば、陸人がこんな事になる事は無かった。私が陸人を真に想っていたら……!
「連れて行け。明日の明朝に大地への捧げものとする。それまで牢へぶち込め」
私の意識はもう陸人にしか無く、隣でメサちゃんたちやリーナちゃんが何やら話しかけて来ているけど、全く聞こえない。
「これはどうしますか?」
「…一緒にぶち込んでおけ。大人しくなるだろう」
私の脇に腕を入れられ、無理やり立たされ、陸人も2人がかり同じように持ち上げられて連れていかれる。
陸人、私の陸人。陸人と一緒ならこの地で死ぬ事になっても………。
森鎮祭。それは植人族が崇めている森を年に1度、自身らの繁栄と森の安全を祈り、1年を通して行った木の実採取や伐採などを良く思っていない森を鎮めるために、生贄、もしくは捧げものとして人を殺して埋めて養分としてもらう。
その為にわざわざ森を出て人族狩りをする年もあったが、大体は迷い込んだ人族を殺して保存し、この祭りへと備えて来た。
だが、人族が思いのほか集まらなかった今年。友好関係を築くためのきっかけ作りという名目で人族を呼んでみては?という案があがり、実行。
結果、4人の人族と1人の植人族を用意する事が出来た。植人族に関しては、人族に捕らえられた時点で裏切り者判定を受けたので捧げものとされた。
植人族の血も涙も無い非道な祭り、森鎮祭は明朝、行われる………。
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どうでしょうか?初めて説明のみ部分で切ってみました。
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