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第3章 植人族ってハイスペック
第49話 儀式なんてクソ食らえ
しおりを挟む「貴様らっ……!この尊き森鎮祭を愚弄するかっ!!」
「…別に愚弄した訳じゃない。ただぶち壊してやろうかと思っただけだ」
戸惑う民衆、ざわめきだす森、一際目立つ大樹の大きな枝に立つ、一人の幼い容姿で族長の地位へとついた女の子を睨む男。
男は既に多くの矢が射られている事に気付いていながら、たった一人で大樹へと向かう。
「お嬢様!周りの奴は任せました!!」
「分かったっ!気を付けて!」
仕える者に絶対の信頼を寄せ、また主人も執事に絶対の勝利を託して………。
「……どうしますか、閉じ込められましたけど」
「………………」
話しかけても、陸人の頭を膝に乗せ、頭を撫でる事しかしない朱音。メサとメイカはお手上げ状態だった。
一緒に旅をして仲はそれなりに良くなったのに、陸人と朱音の間にある絶対的な絆を超えるどころか、足元にも及んでいない事実に、必死に前向きでいようとしていたメサとメイカも落ち込んでしまう。
「明日の朝には殺されちゃうんですよね……、私たち」
「ちょっと、メサっ」
考えたくもない事実ばかりが際立って、前に進む事を考えられずにいる。それもそのはず、今まで一度も倒れた事の無い陸人がやられたのだ。それに、陸人と同等の力を持つであろう朱音も意気消沈していては、打開策も思い付く筈もない。そう思っていた………
「……カハッ、……はぁ、はぁ、漸く内部の修復が完了したか」
皆が頭を下げて、明日に待つ死を受け入れ始めていた時、一人が荒い声をあげた。その声はこの雰囲気を覆すのに充分すぎる声。
「陸人っ!」
「……はぁ、はぁ。ただいま戻りました」
チィッ!このままだと俺の体はボコボコになってしまう。一応身体強化魔法は全力でかけた。後は………!
執事たる者、仮死状態で無駄なエネルギーを節約すべき!
スキル
・仮死化 (執事たる者、死を偽装して意表をつけるように)
を獲得しました。
このスキルは仮死状態にするものでは無く、死後硬直を人為的にするスキルだ。
これにより暫くは全く動けないが、死後硬直により、身体の強度を上げる事が出来る。それに、相手に死んだように錯覚させる事も。
難点は一定時間…3時間経たないと復活出来ないし、その時間は俺は死んでいるのも同じだ。よって、何をされても気付く事が出来ない。
だが、今は丁度いいスキルになると信じるっ!
スキルの発動と共に薄れていく意識、これが死。寒気と底に沈んでいく感覚。これは……あんまり感じたくないな………。
「ーーって訳だ。まさか内臓の多くが駄目になっているとは思ってなかったからすぐさまスキルの自己修復をーー」
「陸人っ!陸人~!!」
説明を求められたのに、お嬢様が抱きついて来たので中断されてしまう。なのに、みんなそれを良く思っている。
あんまり興味無かったのか、それなら良いんだが……お嬢様がさっきから抱きついている力が強い…!!
「お嬢様っ…!ギブギブ!落ちるっ!また落ちちゃう!」
「あぁぁっ!ごめん!!」
マジで薄れて来た意識は、お嬢様が勢い良く突き放した事による地面に後頭部強打で一気に現実に戻った。痛みと一緒に。
「イタタっ。起きてからなかなかしんどい事が起きたけど、そんな事言ってられないな」
「メサ、メイカ。俺たちが置かれている境遇を教えろ」
少し涙を浮かべて、涙声での説明だったが、あらかた理解出来た。
要は、植人族の変な儀式の生贄にされるって事だ。
「お嬢様、今この牢から出ても意味はありません」
「そうだね……、じゃあどうするの?」
「自分に考えがあります」
俺はみんなに考え付いたばかりの作戦を伝える。みんな、乗り気で異論を唱える事は無かった。……一人を除いては。
「無理ですっ!森鎮祭では全ての植人族が参加して、厳戒態勢で臨みます!魔物も動物も、乱そうとするものは全て串刺しですっ」
すっかり牙を抜かれたリーナがお嬢様に抱き付きながら俺を睨む。お嬢様に懐いたのは良い事……だろうが、何も精神が退行するほどじゃなくてもな。出会った頃のあの上から目線の口調は見る影も無い。
「リーナちゃん。なら、どうしたら上手くいくかな?」
「朱音さんはやる気なんですか!?」
どうやらやる気があるとは知らなかったリーナがお嬢様を見つめると、お嬢様は微笑みながら頷いた。
それを見て、少し考えた後、覚悟を決めたように少しキリッとした目で俺の作戦の穴場、改善点を言っていく。
どれも、言われてみればその通りで、リーナのおかげで作戦がより強固なものになった。
「ーーってところですかね」
「……よし、ありがとな。おかげで上手くいきそうだ」
「…ふんっ、私は朱音さんを守りたかっただけですからっ」
そう言ってそっぽを向いたリーナと何やら話しているお嬢様。
お嬢様に懐いてくれたのは案外良かったな。これでメサとメイカより強い護衛役が出来た。
「では、明日の朝に備えて準備をしましょう」
俺が道具作成でマネキン人形を作り出し、お嬢様は自分のカバンから魔道書を取り出した………。
「出ろ、無駄な抵抗はするなよ?」
牢番というより、兵士の格好をした女が牢へと入り、みんなを連行していく。さあ、もうここから始まっている。俺はさっさと準備をしなくては。
全く知らない構造の建物でも、スキル空間把握のおかげで複数の部屋の中や配置を認識出来る。
『陸人、多分そこからでも見えると思うけど、私たちは集められて囲まれてる』
スキル意思疎通で聞こえて来たお嬢様の声の通りに、近くの窓から外を見ると、お嬢様たちが一箇所に集められて女どもに囲まれているのが見える。
こちらからでも確認しました。もう少しですから、堪えてください。
『陸人……お願いねっ』
お嬢様の命、しかとお受けいたしました。
スキル意思疎通を切り、ある程度仕事が終えたので、近くの窓から飛び降りる。
空中で位置を調整し、両手で"ブレスト"を使って減速し、マネキンの前に着地した。
「なあ、何の儀式をしようとしてるんだ?」
「……!なっ!?さっきまで死んでいた貴様が何故立っているっ!!」
俺の声と共にお嬢様が使っていたマネキンへの幻覚魔法が解けた事により、辺りがざわめきだす。
俺の出現と同時にお嬢様たちは立ち上がり、手を縛り付けるツルを火属性魔法で燃やし、お嬢様が他のみんなのツルを燃やして拘束を解いていく。
「良いのか?俺たちだけに気を取られていて」
ードゴォーン!!
タイミング良く、時限式の爆弾が建物の中で一斉に炸裂し、建物が煙を上げて燃え上がっていく。木造の建物なんで、燃えやすいな。
「貴様らっ……!この尊き森鎮祭を愚弄するかっ!!」
「…別に愚弄した訳じゃない。ただぶち壊してやろうかと思っただけだ」
周りでギャアギャア言う奴らを無視して、燃え上がる建物と対を成すようにそびえ立つ大樹の大きな枝に立っているカミラを睨む。
「やれっ!血が噴き出るのが止むまで!!」
誰かの合図で一斉に矢が飛んで来る。
振り返ると、頼りになる表情で俺を見つめるお嬢様が居た。
「行って!私に勝利を捧げてっ!!」
「もちろんです。お嬢様に勝利を!」
俺は前を向き、飛び交う矢を刀で叩き落としながら大樹へと向かう。
「お嬢様!周りの奴は任せました!!」
「分かったっ!気を付けて!」
お嬢様の元気な返事で完全に心配は消え、俺は勢い良く大樹を駆け上った………。
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このファイルでは初めて後半の部分からの始まりと初めての主点が人物ではない書き方を一部しました。やっぱり、難しいので、主点が人物にある方が良いですね。
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