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第3章 植人族ってハイスペック
第50話 植人族vs執事&お嬢様
しおりを挟む大樹を登っている間にも攻撃が来る可能性は高い。大樹の幹から何かしらの攻撃が来るかどうか警戒しながら登っていたが、結局何にも無く、カミラが立っている枝の近くの枝に立つ。
「………人族が…我々の神聖な儀式を邪魔するとは……覚悟は出来ているのだろうな」
前に戦った時よりも凄まじい気迫が俺の体に襲いかかり、本能的に震えが出始めたので、頰を叩いて体に喝を入れる。
俺の体なら、お嬢様のために本能なんて跳ね除けろっ!
「お前こそ分かってるのか?俺のお嬢様を馬鹿にした事を。死んで詫びろと言いたいが、お嬢様は無駄な殺傷はしない主義だ。お嬢様の前で泣いて許しを請えざる得ないようにしてやるっ」
こういうのは気迫で負けていたら勝負でも負ける。拳をバキバキと鳴らしながら、カミラを睨む。
相手の武器は自然。地面からでも槍が来ると思っていた方が良い。自然のものは全て警戒する。
スキル気配探知と空間把握を使い、五感だけでなく、スキルでも辺りを警戒するようにする。
「私が『宝剣』持ちだと知っての態度……、確かな策があるようだが、全て力でねじ伏せてやる。カレナのように……」
カミラが枝の付け根に手を突き出すと、あの宝剣が顔を出した。カミラは剣を見ずに手に取ると、構える。その構えはやはり半人前さが滲み出ている。俺の勝算はそこにある。
「さあ、殺し合いを始めようじゃないか。もっとも、俺は殺してはいけないというハンデがあるのだが」
「……ふっ、そんな減らず口を叩く奴は良い養分になりそうだな」
少しの静寂。心地良いそよ風が木々に通り、耳あたりの良い自然の音色を奏でるが、それをぶち壊すようにカミラが俺の立っている枝から2本の枝を生やし、俺を拘束するべく、足に絡まろうとする。
それに絡まれないように枝から飛び降り、右手に矢、左手に弓を作り出し、カミラに放つ。
それを剣で打ちはらい、カミラも枝から飛び降り、自身の根のようになっている左腕を突き出し、俺に伸ばして来る。
「安直な攻撃だ!」
道具作成で火打ち石と火打金を作り出し、投げつける。すると空中で打ち合い、火を起こす。
「そら、酸素だ!」
そこに弱い"ブレスト"を撃ち、程よく酸素と火、燃えるための燃料が揃った環境になり、徐々に腕が燃え上がっていく。
「あぁぁぉあ!!」
腕が燃えた事の無いカミラは腹の底から苦しそうな声を出し、空中でもがき始めた。
そろそろ地上が近づいて来たので、"ブレスト"で減速し、バク転して着地して右手に刀、左手にリボルバー型の片手銃を作り出す。
「がぁぁっ!………はぁ、はぁ、よくも……私の腕を!」
カミラは落下中に剣を地面に投げつけて突き刺し、たちまちクッションになった藻に助けられ、なんと燃えている左腕をもいだ。血も流れないのは根のようなところが残っていているからか。
というか、腕は自分でもいだんだろ。
「許さない!絶対に殺すっ!!」
クッションになった藻が地面に沈み、代わりに立派な幹がもげた左腕の近くに生えた。
何をするのかと思っていたら、なんと幹に腕の断面をくっつけたら同化していき、終いには幹から引き抜くと前となんら変わりない腕になっていた。
いや、ズルくね?根の部分は再生可能ってか。
そんな事を考える余裕をやらないとでも言っているかのように、俺の近くから次々と薔薇のトゲがあるツルや鋭く尖った木の幹が生えて来て、一斉に襲いかかって来る。
「面倒だが、仕方ない」
止まっていたら拘束されるので、動きながら、躱しながら石を蒔く。その石は火打ち石。
「さあ、何をするのでしょうか。答えを見てみましょう」
地面に落ちようとしている、木の幹の近くにある石を砕かないように、擦るのを意識して撃つ。すると、火が付き、一気に幹に燃え広がった。
「……おかしい。火打ち石程度の石でこんな燃え広がる筈が……。まさか!」
カミラはあり得ないと思っていながらも、地面を触り、気付いた。地面に油が充分に染みている事に。
「お前は今日、一度も地面に立ってないから気づかなかったんだ。立ってみたら分かるぞ。なんかおかしい事が」
カミラに話しかけながら次々と燃やしていき、炭だけが残った。緑一色の地面から真っ黒な地面に代わった地面を歩いてカミラへと近づく。
「……小細工をしてこの神聖な森を汚すとは!恥を知れ!」
「大丈夫だって、植物油らしいぞ」
そんなつまらない事を言いながら、刀を持っている手に軽く力を入れる。
カミラは植物を使った攻撃はもう無駄だと悟り、剣を構える。だが、もう決着だ。お前の剣はあの時受けた時点でもう判っている。
「死ねっ!」
「そんな剣で死ぬか」
勢い良く飛び上がり、上段から振り下ろして来た剣を刀で受け流し、左手に持った銃で鳩尾を強く殴る。
一瞬苦しそうな顔をしたが、すぐに気を失い、子供にしか見えない顔を見せる。……本当に、子供の寝顔のようだ………。
「くそっ!火属性魔法なんてものを使って!!」
一人が言ったように、私たちの周りには私が発動した火属性魔法"フレアカーテン"という炎のカーテンがあり、飛んでくる矢は全て焼けて私たちに届かないようになっている。
「気をつけてください!矢一本でも入ればそこからトゲが飛んで来ます!」
リーナちゃんの有難いアドバイスを受け、かなり上に射られた矢を"フレアショット"で撃ち落とす。届かない距離だったけど、一応ね。
ーブシュゥゥ
上ばかり注意を向けていたら、いつの間にか炎の一部が消火されている。水属性魔法を使える人が居たみたい。
「いくら魔法使いといえど、至近距離では魔法は使えないだろう!」
かなり軽装備の女性が消火されたところから私に一気に駆け寄り、拳を腹に打ち込もうとしている。
あ~あ、そんなんじゃダメだよ。
「なっ!?私の拳を受け止めたっ!?」
「そんな拳じゃ、全国に行けないね」
私は相手の拳を逃がさないように握り締め、空いた左手の拳で正拳突きを相手の腹に打ち込み、崩れ落ちるのを見て私の腕がまだ落ちてないのを実感する。
「魔法使いが格闘技を身につけているだと!?」
「あり得ない!職業的にあり得るはずがない!!」
「もう、うるさい。"フリーズロック"」
国王様も凍らせた氷は炎のカーテンの無いところから入って来たみんなを一人残らず凍らせた。その光景を見て、後から続こうとしていた人たちがたじろいている。さらに追い打ちをかけたら戦意も無くなるよね。
「ねぇ、生き物が決して克服出来ないものって知ってる?炎と氷、つまり生存不可能な温度だよ。君たちはあったかいのと冷たいの、どっちが良い?」
この言葉をきっかけに、情けない声をあげながら元気な彼女らは一斉に逃げ出した。
「さっすが朱音さん!一生ついて行きます!!」
後ろでリーナちゃんが過度な反応をしているけど、無視して炎のカーテンを消す。
そして、陸人が向かった先を見ると、猫を捕まえたように幼女の首元を掴んでこっちに向かってくる陸人が見えた。
リーナちゃんは私の事を凄い人だと思っているみたいだけど、私は陸人の方がよっぽど凄い人だと思う。火属性魔法も使わずに勝つなんて、陸人にしか出来ないよ。
流石、陸人。最高の私の執事………!
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