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第3章 植人族ってハイスペック
第51話 平和的に解決
しおりを挟む「……何故私を生かした」
お嬢様も戦闘が終了し、合流してこれからどうしようかと話し合っていた時、目を覚ましたカミラが俺を睨らんでいた。
「戦う前にも言っただろ、俺はお前を殺す気は無いって」
「…なら、ここで私が攻撃を開始しても良いのだな?」
カミラは自身の右足を地面に食い込ませる。まるで地面と融合しようとしているように見えるが、あの足の根が地面から飛び出て俺たちを攻撃する準備をしているのだろう。
「あの場にはお嬢様に脅威が無かったから殺さなかったが、今やる気なら、殺すぞ。お嬢様の身が最優先だからな」
スキル威圧視を使いながら右手に刀を持ち、近づく為に足を踏み出す。
だが、一歩目で足が止まってしまった。何故なら、お嬢様が俺の肩を掴んで止めたからだ。
「陸人、私を思ってくれているのは嬉しいけど、気が短すぎるよ」
「……すみません」
お嬢様に叱られたからには攻撃の意思を無くさないといけないので、刀を無限収納になおし、代わりにスキル空間把握を使う。
根はまだこっちに来てないが、どれぐらいのスピードで来るかは不明なので、意識を向けておく。
「ねぇ、カミラちゃん」
「ちゃ、ちゃん!?」
カミラはちゃん付けされた事が無いようで、明らかに動揺し、顔を真っ赤に染めて地味に進んでいた根も動きを止める。
そんな様子も知らん顔でお嬢様はカミラに近付いていく。それに気付いた時には根がある範囲まで進んでしまっていた。
「お嬢様っ!真下に根が!」
「大丈夫だって、ね?」
お嬢様の自信はどこから来ているのかは知らないが、カミラの目の前まで行き、抱き締めた。硬い拘束用のロープがあるのに、その上から抱き締めた。
抱き締められたカミラはもうテンパって、顔から煙が出そうな勢いで顔を赤くし、根も戻して足の形になっている。
「私たちは仲良くするために任務に来たの。だから、仲良くしよ?」
「……は、はい…」
この時のカミラは威厳たっぷりの族長ではなく、年相応の幼い女の子になっていた。もっとも、目は熱を孕んでいたが。
「キィィィっ!私だってして欲しいぃぃ!」
背後で悔しそうにその場で足踏みをするリーナはまるで、嫉妬している女のようだった。……まさかな。
後で聞いた話だと、植人族は女性しかおらず、生殖器官のある筈の部分は根になっていて、どっちかが出産もしくはどっちも出産するように行為をするらしく、女性に好意を抱くような本能があるらしい。
つまり、見た目は女性だが、実質男でも女でもあるので、長い年月の間、見た目が女性の人としか行為をした事が無いので、それが遺伝子的に受け継がれ、ある意味完璧なレズの人が多いという事らしい。
お嬢様に植人族の魔の手が来ないように監視しておかないとな………。
「分かりました、今年から森鎮祭は動物を捧げる事にします」
お嬢様の説教により、今までの人族を捧げるのを動物に改めたらしい。
簡単に認めたカミラはお嬢様の言う事なら何でも聞きそうな勢いだ。実質、族長はお嬢様なのかもしれない。
「それに、リーナには友好の証として《グレアノス》へ行ってもらいましょう」
「ありがとうございます。……これで一緒ですね!」
リーナのあんまりにも嬉しそうな様子に、お嬢様は少し引いてる。お嬢様、顔に出してはいけませんよ。
「本当は私もご一緒させてもらいたかったのですが………族長という身分がありますので」
「それは……仕方ないね」
本当に残念そうにするカミラとは裏腹に、もしかして付いて来るかもしれないと思ったお嬢様は苦笑いになっている。
バレますよ、もう少しポーカーフェイスを心がけてください。
「これで任務完了かな?」
「ええ、後は帰るだけですが…」
そう、帰るだけなのだが、途中で全く知らない宿屋の主人の娘を預からないといけないし、『闇夜の暗殺者』の事も何にもけりがついてない。
お嬢様は娘の事を思い出し、俺に片手を立てて軽く頭を下げ、申し訳ないというジャスチャーをした。
「今日は泊まって下さい。夜の森は意外と危険ですので」
「……じゃあ、お世話になろうかな。いいよね、陸人?」
「もちろんです」
族長の威厳なんて消し飛んだらしく、お嬢様に同室を願い出てリーナと喧嘩になっている。
同室なんて、俺が許さない。メサとメイカならまだ大丈夫だが、あんな欲望を隠そうともしない目をしている奴と一緒なんて、お嬢様が新たな扉を開いたらどうするんだ。
視線を大樹と向かい合って建っていた建物に向ける。全焼しないように加減はしたが、4分の1くらいは燃えて無くなったので、森の住人総出で修理している。
そういえば、あの連中は俺たちの事をどう思っているんだろう。もしかしたら、夜に闇討ちでもしてくるかもしれないから気をつけておこう。
「宿屋なんてものは無いんですけど、私の家が大きいんで皆さん泊まれますから私の家へ案内します」
「はーい。陸人~!行くよ~?」
建物に視線が向きすぎていたようで、声のした方へ視線を向けるとお嬢様が、メサが、メイカが、俺を待っていた。カミラとリーナは先に歩いて喧嘩をしている。
戦闘があった後とは思えないほど平和な様子に、思わず頬がほころんだ。
「今行きます」
お嬢様の隣へと駆け足で向かう。任務、無事に達成。後は帰り道の問題だけだな。
「ここが私の家です」
カミラが少し自慢げに紹介した家は……、あの大樹に引けを取らない大きな木にあるツリーハウスたちだった。
見た感じ、ツリーハウスが4つあり、その中でも一際大きなものが一つで、他は同じくらいの大きさだ。
一際大きなものは通常の家と同じくらいあり、他の3つより少し高い位置にある。
残りの3つは小屋程度の大きさで同じ高さにあり、等間隔に配置されている。
「…あ!少し片付けてきます!」
何かを思い出したカミラは当然のように大樹に右足を当て、滑るように登っている。あいつはあんな風に登ってたのか。ハシゴぐらいかけとけよ。
「お嬢様、俺が抱えます」
「森での生活に慣れている私がお連れします!」
俺がお嬢様に声をかけたのを見て、負けずと思ったのかリーナも後から割り込んで来た。
こいつ……!勝手にお嬢様に好意を抱いているうちは放っておこうと思ったが、俺の役目を奪おうとするなら始末してやろうか!
「……陸人、声に出てる」
「…はっ、すみません」
お嬢様がジト目で俺を見ていたので、素早く頭を下げる。危ない危ない、疲れが知らないうちに溜まっているのか?
リーナはどこからどこまで俺が漏らした心の声を聞いたのかは知らないが、すっかり怯えてお嬢様の背中に張り付いている。
こいつ、精神年齢がどんどん幼くなっているような気がする。お嬢様に甘えたいのは分かるが、もう少し見た目を考えてほしい。
「片付けが終わりましたので、早速中に入りましょう。ささ、朱音さんは私がーー」
「お嬢様は俺がお連れするから、お前らはメサとメイカを運べ!」
カミラもリーナと同じような事をしたので、いい加減腹が立ってしまい、多少強引にお姫様抱っこの形でお嬢様を抱え、先に大樹を登る。
大樹に足のつま先をつけ、真上に飛べる角度で大樹を蹴って登る事により、縦の状態で登る事が出来る。
「陸人……ちょっと大胆…」
頬を赤らめて俯き気味のお嬢様が呟いた言葉の意味が分からなかったが、大きい方のツリーハウスに着いた時に気付いた。落とさないように内側に来るように抱き上げていたので、お嬢様の背中に回していた腕の手がお嬢様の胸に触れていた事に………。
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