空のない世界(裏)

石田氏

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6章 空のない世界

01

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 空に現れた『空のない世界』。皆が叫び逃げ惑う中、真紀と山吹はその空を凝視していた。

パラパラパラパラ……

当然、ヘリが上空に飛んでこちらに向かっているのに気づく。

「真紀さん、山吹さん!」
ヘリのドアを開け、大声で叫ぶさくらがそこにいた。
「さくらさん!」
「どうしてここに?」
「皆、早く避難して。『空のない世界』が出現した。今、この事態に世界構築の少女が現れて、お兄ちゃん……キャプラ首相と話をしているの。あなたたちにも来て欲しいの」
「さくらさん!私、行けないです」
「えっ?」
「私、あの『空のない世界』の中に行きたいんです!」
「正気なの!?」
「はい。あの奥に世界を滅ぼそうとする黒幕がいるんです。私はそいつに会って、こんなことをやめさせるよう説得しなきゃいけないんです!」
「説得って……どうしてあの世界のことを知ってるの?」
「色ありの少女から聞いたんです」
「色ありの少女がそんなことを!?」
「お願いします。私を『空のない世界』まで連れてってくれませんか?」
「バカなこと言わないで。それが本当かどうか分からないんだよ」
「それでも行きます」
「真紀ちゃん……」
その横にいた山吹も前に出て
「私も連れてって下さい」
「ふきちゃん・・・・」
「山吹さんまで……」
さくらは少し考える様子を見せた。そして、
「分かった。でも、残念ながら『空のない世界』の中にヘリまで中に入ることは出来ないの。行けるのは近くまでだけど何か策でもある?」
「はい。私の能力であそこまで行こうと思います」
「じゃあ、ロープを今からたらすから、それに捕まって」
「はい。じゃあ、ふきちゃん行こうか」
「うん、真紀ちゃんだけじゃ心配だからついて行ってあげる」
「え~、本当は私一人でも大丈夫だからふきちゃん残っていてもいいんだよ」
「あら、いいの?真紀は乗り物が弱いんじゃなくて?」
「え?」
「ヘリは乗り物だけど」
「あ……」

タラリッ

ロープがヘリからたらされた。
「さぁ行こうか真紀ちゃん」
「……はい」



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 パラパラパラパラ……

ヘリは空高くとんだ。捕まっている山吹の隣で真紀は吐物を雨のように地上に撒き散らす。
「ん、何だ?」
それは逃げまどう男性の頭上に付着した。真紀は全く気づくことがなく、必死に耐えていた。山吹は知らぬふりをした。
「さぁ、そろそろ『空のない世界』の手前まで来るよ……って、何変な雨ふらしてるの・・・・」
「★◎◆Ⅱ@※◆」
「何言ってるか分からないんだけど……」
「ほら、しっかりして!行くんでしょ」
「あ……う、うん」
真紀は山吹を抱きしめ
「え?」
ロープから手を離した。
「え・・・えぇーーーーーー!!」
落下するなか、真紀は真下に橙色の光を放った。

「爆炎・炎上!」

真紀の真下に放たれた光は、炎となりて大爆破を引き起こした。
「うっ!」
山吹は爆風の風圧で顔が変になった。
「あははははーーー!」
真紀はさっきまでの酔いを完全に忘れ、爆笑した。
「つ、次からは・・技名、爆炎・爆笑にするよ。あははははーー」
「笑い過ぎーーー!」
真紀達は爆風でそのまま勢いよく『空のない世界』まで飛んでいった。

ビー ビー ビー

爆風の勢いでヘリの警報音が鳴るなか、さくらは二人の無茶に呆れ顔をつくっていた。



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カンカンカンカン……

「はっ!」
真紀は意識を取り戻した。
「ここは……踏切?」

カンカンカンカン……

「えっと・・・・」
真紀は頭を整理した。確か、空に亀裂がはしって、『空のない世界』がでてきて皆騒いでる時に、さくらさんが乗るヘリが来たんだよね。そして、無理お願いしてそのヘリで行けるところまで『空のない世界』に近いて、その後私が能力で爆風をおこし、『空のない世界』に向かったんだよね?なら、ここは『空のない世界』の中!?でも、
「じゃあ、何でここに線路があって踏切もあるんだろう・・・・」

カンカンカンカン……

「はっ!」
真紀は一緒に来た山吹を探す。しかし、探すもなにも、普通に隣で気絶していた。
「ふきちゃん、ふきちゃん」
真紀に揺すられ、目を覚ます。
「んー、ここは……はっ!」
山吹は辺りを激しく見渡した。
「え?何でこんな所で私寝てるの?」
「ふきちゃん、やっと目覚ました~。どうなることやらと思ったよ。ほら、もうすぐ電車が来るよ」
「あ……って、何がもうすぐ電車が来るよ、だ!うちら線路の上じゃん。早くここから離れなきゃ」
「でも、周り森だよ。道ないよ」
「何で踏切あるのに道がないのよ!」
「私に怒られても・・・・」
すると、何かを見つけたのか山吹が突然指をさした。
「ん?」
振り向くとそこには手を振ってこっちに来いと、手招きする金髪の少女がいた。
「ふきちゃん、行こう!」
「待って、罠かもしれない。それにここ、『空のない世界』の中なのよね。なら、あの子は色ありの少女!」

ブブーー、ブブーー

近く電車から鈍い変わった警報音が出た。
「ふきちゃん、私あの人知ってるから大丈夫。このままじゃ、どっちにしろ死んじゃうよ」
「んん~、分かった。でも、後で説明してもらうからね!」
二人は踏切を越え、手の振るその先に向かった。


その後、電車は音をたてて、行ってしまった。




「やぁ、よくここまで来れたね」
「っ!」
「随分警戒されちゃってるね。私はレム。よろしく」
「それより、真紀ちゃん。この人とはどう知り合いなの?」
「あらあら、無視されちゃった」
レムは金髪をなびかせながら、まあり気にしていないかのように、涼しい顔をして二人を見ていた。
「えっと・・・・夢で見たことがあるっていうか」
「夢!?」
真紀は頷く。それを聞いて山吹は呆れ、呆れに呆れて顔を、雰囲気を真っ暗に、肩を重く落とした。
「あはははは、夢で会った奴とそっくりだから信用したって言うの?本当に面白いね」
「それで、何で私達を助けたんですか?」
「ん?おかしなこと言うね。助けたわけじゃない。君らを呼んだだけ。そんなとこにいつまでもいないでこっちにおいで、と」
「ねぇ、レム。ここは『空のない世界』なんだよね?何で線路があるの?」
「君は私が色ありの少女だと分かっていても、普通に話せるのかい?それは…クスッ、やっぱり夢で見たからなのかい?」
「いや、そういう訳では・・・・ただ、なんとなく他の色ありの少女とは違うような……」
「違くない。私は君らの住む地球の多くの人を殺した。それに間違いはなく、そして他の色ありの少女と同じでもある。だけど、君みたいな人間と出会い、心変わりした色ありの少女もいる。君も会ったんでしょ?」
「・・・・ミア」
「灰色の少女だね」
「何で消えちゃったのさ」
「役目を終えたからだよ。元々色ありの少女は死霊。役目を終えたら消えてしまう存在。まぁ、成仏できたと思えばいい」
「役目……それって世界を滅ぼすことですか」
「そう。少女のこの世界の憎しみは世界に穴を開けたのさ。そして、この世界に復讐すべく役目を果たし、あの方にあとは全てを任せ光とともに消える」
「あの方?」
「少女の願いによってうまれた『嘆き姫』。神殺しの神。その言われよう神さえ殺してしまう、殺しに特化し、殺すことしかできず、殺すことしか救えない、どうしようもない神さ」
真紀は思いだした。あのとき、ミアも言っていた。『空のない世界』の奥深くにいるとされる神。
「私の役目は君らの案内だ」
「案内?」
「奴のところまで案内してあげる。だけど、その前に問題がある。知っての通りここは『空のない世界』であるが、別の名を『神のいない世界』でもある。ここには神殺しの神の他にも、神を殺せる厄介な4人、まぁ四天王みたいなのがいる。それにここは普通じゃない。さっき君らがいた場所も、森のなかに線路がある」
「あっ、そうだ。あれは何?何でこっちにも線路があるの?」
「あれはお化け列車だ」
「お化け・・・・」
真紀はその単語を聞いただけで顔を真っ青にさせる。
「なに?お化けが苦手なのか。本当に退屈しないな。だけど、あの列車に乗らなければ『嘆き姫』の所には行けない」
「え!?あれに乗るんですか!!」
さすがの山吹も驚いた。
「確かに、お化け屋敷と違い本物のお化けが乗る列車に入るんだから驚くのに無理ないか。でも、あれに乗らなければ絶対にたどり着かないんだ。途中崖で向こうの崖までの橋は線路の通る橋意外ない。つまり、ここで暇潰している間に狼の群に囲まれ、噛み殺されるのがオチさ」
「やっぱり狼いるんだ・・・・」
先程聞こえた遠吠えは狼のに間違いはなかったということだ。
「で、どうやってあの列車に乗るって?」
山吹はレムに聞いた。
「この先に駅がある」
「道ないけど」
「この森に道はない。あるのは森のなかに線路と踏切と駅だけ。別に意味なんてない。ただ、あるの」
「ん・・・・なんか不思議だね、ここ」
「全てがそうよ。あぁ、名前なんて無意味だけど、一様言っとくと、ここは『白霧無影の神山』。そして、その列車の到着駅にある先は『戮制裁所』。まぁ、裁判所みたいな所だよ」
「裁判所?」
「この『空のない世界』は四天王の想像によって創造された世界なんだよ。だから、ここにいる。四天王の一人が」
それを聞いた真紀はゴクリと唾を飲み込む。しかし、山吹だけはうかない顔をしていた。




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「ほら、ここが駅だよ」
レムのあとをついていったら、本当に駅にたどり着いた。しかも、迷わずに。別に木々に目印があったわけでもないのに、森の中をすいすいと行った。それがもし、私達だけだったら間違いなく道に迷い遭難しているところだったと山吹は認めざるおえないが、だからと言って、彼女を信用することはできない。せれでも、彼女が案内役として誘導する理由に、意図は分からないが、この見知らぬ世界を歩き回るより、ついてく他なかった。
 さて、話を戻して真紀らは駅にたどり着くことができたのだが、その駅はいたって普通だった。ただ、田舎の駅って感じ以外は普通である。
 となると問題は、普通の駅にくるのは普通の列車ではないということだ。
「さて、列車が来るまでに時間がある。その間に君らにはこれを渡しておこう」
そう言って、レムは服の中から白い本と赤い札を渡した。
「これって、ランドセルランドのお化け屋敷にあった奴と似てるような・・・・」
「あぁ、同じもだよ。これは本物の幽霊には本当に本だけに真実しか語らない白い本だ。本に載っている通りにやれば霊眠ができる」
真紀は試しにパラパラと本をめくる。
「でも、中も白だよ」
「君はだじゃれが好きなのかい?それは近くに霊がいなければ記載されない。逆に近くに霊がいれば、その霊だけ記載される。もし、今記載されていたとしたら、この場のどこかに霊がいることになる」
「な、成る程」
「一様言うけど、お化け列車は霊眠できない。できるのは列車に乗っている霊だけ。お化け列車や、物に関するものの霊は徐霊が通じない。何故なら物に感情はないからだ。魂もない。本来、物が霊化することは無いんだが異例がある。例外というものだ。例外に理由はつかない。故に、普通の生き物の霊と違い霊眠方法が異なるんだ。それでも霊眠できないものがある。封印も、成仏もしない、世界に縛られた霊がいる。その一つがお化け列車だ。つまり、かなり強い霊ということだけど、列車であることには変わらない。ただ、運転席は無人だけどな」
「えっ!?」
「ほら、そうこう言ってるうちに列車が来たぞ」
するとライトの光が駅のホームを照らし、ブレーキ音と共に、お化け列車がきた。それと同時に白い本は光出し、ものすごい勢いで本の中身が埋まっていった。


「お化け列車」

 電車として数多くの人間を乗せてきたが、かなりの年月と共に新しい列車が導入され、遂に運行を終了される。しかし、もう走れない、お客を乗せられない寂しさと、まだ走りたいという強い念が、霊化につながりお化け列車として走り始めた。
 走行ルートは決まっておらず、世界各地のレールから突如として現れる。その際に濃い霧と共に怨霊を列車の中に乗せながら登場する。

 霊眠方法・・・・不可




「あぁ、そうだ。赤い札は列車に乗る霊になら、霊眠方法をとらなくても札をどっかに貼り付ければ、強制成仏が可能だ。だけど、絶対じゃない。失敗すれば逆に悪化するし、札の枚数には限りがあるから、普通に霊眠させることをオススメする。では私は終着駅で待っているよ」
そう言い残し消えていった。
「え!?一緒に来てくれないの?」
「やっぱり。あいつなんてもとから信用出来ないんだよ」
「でも、ふきちゃん。列車来ちゃったよ」

プシュー

ドアがガタンと音をたてて、開いた。
「どうする?」
「乗るしかないでしょ!」
「えー!」
しかし、山吹は中に入ってしまった。
「あぁ、待ってよ~。一人にしないで~」
真紀もあわてて入る。

プルルルルー♪

プシュー

ガッシャン

列車は大きく揺れながら動き出した。
「ねぇ、ふきちゃん。電車の中、誰もいないよ」
「うん」
電車の中はものけのからだった。勿論、いてもらっては困る。しかし、白い本のページには沢山の霊についてびっしり書いてある。つまり、見えないだけでいる・・ということに。
「真紀」
「ん?何、ふきちゃん」
「え?」
「だって、さっき私呼んだじゃん」
「いや、呼んでないよ」
「え?」
「え!?」
真紀は周りを見渡す。しかし、やっぱり何ない。
「怖いこと言わないでよ」
「いや、本当なんだって」

ガタン

「え?何の音?」
「さぁ?それより真紀ちゃん、お札一様準備しといた方がいいんじゃない?」
「そうだね」
真紀は赤い札を手に持って準備する。

ガタン

あ・

「今度は音だけじゃなくて声までしたよ」
二人は音と声のする隣の列車の方向に目を向けた。

ガタン

あ・ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

「ぎゃあああああああ」
「ぎゃあああああああ」

くねくねと妙な動きをする髪の長い女性が突然姿をあらわした。
 すると、勢いよく白い本が、勝手に開きページを乱暴にめくる。そして、とまったそのページには、その女性のことが記載してあった。
「真紀ちゃん、白い本にその人の」
「えぇい、成仏しやがれ!」
既に真紀は白い本の存在なんて忘れ、赤い札をその女性のでこ辺りに貼る。

「いやあぁぁぁぁぁ!!」

女性は赤い札に吸い込まれるように消えていった。
「何やってるの、真紀ちゃん。赤い札は枚数に限りがあるって言われたばかりでしょ。あと1枚しかないよ」
「はぁ・・はぁ・・、大丈夫。それまでにつけばいいんだから」
「そうだけどさ・・・・あれ、どうするのさ」
霊の大行列の大行進がやって来た。まるでゾンビである。
「ひぃあぁぁ~~!!」
「流石にこれはいちいち霊眠させてたら間に合わない」
「赤い札ってコピーできないの」
「その手があったかって、印刷機なんてどう考えたってないでしょ!」
「クソォ!成仏して消えやがれ!」
「ああ!赤い札が」
真紀は赤い札を使ってしまった。
「何で使っちゃうかな・・・・」
「ねぇ、ふきちゃん。赤い札、終わっちゃった・・・・」
しかし、一人成仏させてもまだ、ぞろぞろとやって来た。
「ぎゃああ、来るな来るな!」
「真紀ちゃん、ちょっとどいてて」
「えっ?」
「はぁー!」
山吹は通じる相手かどうか分からないが、念力波を放った。
 しかし、案の定念力波は霊の体をすり抜けてしまった。
 霊は何もなかったかのように行進する。
「やっぱりダメか・・・・」
しかし、あれを見た真紀は能力が通じないと分かっていても少しの抵抗になればと、バンバン能力を放った。しかし、霊どころか電車の車内にすら傷をつけられなかった。
「何でよ!」
そう諦めた時、投げやりで放った炎が効いたのだ。
「えっ?」
霊は炎に近けず、まるで炎を避ける感じだった。
「真紀ちゃん、炎だよ。こいつら炎に弱いんだよ」
「分かった」
真紀は右手をかざし、炎を放った。

「  北の業火・スルト  」

炎はたちまち霊体を覆い、霊は苦しみ出しこちらによって来る気配がなかった。



                                +  +  +


プシュー

ガッタン!

扉は開き、涙と鼻水を垂らした真紀と、疲れきって顔がやつれている山吹が降りてきた。
「やぁ、お疲れ」
出迎えたレムは二人を見て少しニヤけていた。
「何で来なかったのさ!」
真紀は必死に訴えた。
「いやぁ、私はテレポ出来るが君らは出来ないんだろ?」
「うっ・・・・何、そんなチート能力」
「さぁ、とにかく行こう」
レムは二人の疲れを無視して、どんどん進む。そのあとに、見失わないよう二人はついてくしかなかった。
 少し進むと、先程の森は抜け広場に出る。そこは彼岸花の花畑だった。そして、
「ここが、さっき言った裁判所みたいな所さ。外見は大きな寺みたいだが中は法廷のような感じだ。
 実は、法廷の奥に次のエリアに進む通路がある。つまり、この建物の中に入らなければならないわけ」
「でも、ここには四天王がいるんだよね?」
「あぁ、ちょうど法廷の所だな。四天王・ネムリケティカがいる」
「ネムリケティカ・・・」
「じゃあ、私は次のエリアで待ってるよ」
「えっ、やっぱり?」
「やっぱり」
そう言い残して、また消えてしまった。
「なによ、自分ばっか楽して。少しはネムリケティカとか四天王のことについて情報とか提供するとかしなさいよ!」
「なんかふきちゃん、こわい」
「何か言った?」
「いえ、何でも・・・」
二人は渋々中へと入っていった。
 



 中は広く、そして不気味な雰囲気を漂わしていた。確かにいえることは、外見ばかりで寺ではないということだ。
 さて、少し広い部屋に出るとそこはまるで法廷のようなつくりに、その巨大な裁判官の席、中央に一人座っている少女の姿が見えた。
「あれがネムリケティカ」
キツネの面を被るその人物は高い所からこちらを覗いた。
「プププ、人間がある。大罪人がいる。彼女らに判決を、制裁を、死刑を、処刑せよ!」

ライトは真紀らを照らした。

「さぁ、判決だ。判決を!」

すると、空席だった所にくまさんや、ウサギさんや、カエルの人形があらわれた。

「さぁ、採決を!」

すると、看板をパカッと出し全員ドクロマークを出した。

「判決は決まった。彼らに死刑を、処刑を!」

死刑、死刑、死刑、死刑!!

ぬいぐるみの人形達は一斉にコールを歌い出した。
「何、こいつら」
「ふきちゃん、動かないよ!?」
「えっ?」
真紀に言われた時、気づいた。
「これって、金縛り?」
人形達は更に声をあげる。
「さぁ、死刑を執行せよ!」
人形達はその場を立ち上がり、各々チェーンソー、斧、ドリルを持って真紀達に徐々に近く。
「やだよー、人形かわいいのに怖いよ~」
「真紀ちゃん・・・・」
すると、山吹の手から落ちた白い本が光出した。
「なに!?」
パラパラとめくり、ページがとまる。




「ネムリケティカ」

 隣近所のお友達と一緒に人形遊びをしていた。しかし、ある時の喧嘩で人形の取り合いをしてしまい、誕生日に貰ったペンギンの人形を友達に取られてしまい、持ったままその子はいってしまった。
 後日、学校で会った時に返してもらうよう話したら、いつもの待ち合わせの橋の近くに隠したと言った。帰りに探しに行った時、昨日の大雨で橋が決壊し、そのまま溺れ死んだ。
 今でも、友達に怨みを持っており、それを知ったかつての友達は、寺のお坊さんと共に見つけたペンギンの人形を使い、霊眠を試みたが失敗に終わった。既に友達に復讐し、殺すことしか考えておらず、更に霊眠の失敗により、見境なしに同じ年頃なら違くても殺す悪霊と化した。
 霊眠方法は、友達の中村さんがいないことを証明し、復讐相手がいなくなったことを知らせ、安堵させる必要がある。



「そんなの、どうやって証明すればいいの」
「真紀ちゃん、大丈夫。私に考えがある。私の言う通りに続けて」
「う、うん。分かった」
迫ってくる人形
「さぁ、終わりだ!」
ネムリケティカがそう言った時だった。

「隣の中村さんは引っ越しました」

人形達の動きがとまった。

「隣の中村さんは引っ越しました、隣の中村さんは引っ越しました」
「隣の中村さんは引っ越しました、隣の中村さんは引っ越しました」


「いや、いやぁーーーー!」

キツネ面が突然ピキッと割れ、完全にネムリケティカの素顔があらわになる。

 そして、光に包まれながら消えていった。

「ーーありがとう」

バタッ

人形達は霊力を失い、その場に倒れた。
「やったの!?」
真紀の疑問に山吹は肩に手を当てて答えた。
「うん、成仏したと思う」
白い本は、青い炎と共に消えた。



                           +  +  +


 パチパチッ
拍手とともに出迎えたのはレムだった。
 真紀達はあの後、通路を通って次のエリアに来ていた。
「さぁ、よく来た。次はあそこに行く」

ここのエリアは白黒の世界。そして、ある建物以外に周りは何もなかった。あったのは古びた病棟だった。

「さぁ、次はこども遊びの時間だ」



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