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3章 青い世界
02
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あの後、凍った海を解体して、船の真下深くを調査した。すると、その下に船員の遺体があった。死因は溺死。オアシス・オブ・ザ・シーズにいた生徒達以外は皆、全員死亡していた。
しかし、東と水口教官だけは見つからなかった。その報告に首相のキャプラは、机に拳を叩きつけた。
「東、大丈夫なんだろうな・・・」
あの一件の後、全校生徒は病院に一度入院することが決まった。特に外傷のなかった子が多いが、事件に巻き込まれたこともあり、精神面でのケアが必修であると国が判断したからだ。どちらにせよ、外傷がなくても身体検査は受けてもらうことになっている為、入院は絶対だった。
入院期間は一週間で、それ以外は人それぞれ変わってくるらしいが、真紀と山吹は一週間で退院できそうだ。
入院の際は、さすがに全校生徒を一つの病院でみることは出来ない為、各病院に別れて入院することになった。因みに、山吹と真紀は同じ病院の同じ病室だった。
【入院生活1日目】
検査は大体1日目で終わった。後は検査結果が出て、精神面に問題がなければ無事に一週間で退院となる。
検査を終え、自分のベッドに戻った真紀は、ベッドに倒れこむ。
「あぁ~疲れた」
その隣のベッドでは苦笑いする山吹がいた。
「確かに、色々な検査を受けるとちょっと疲れるね」
「もう、検査が終わったと思ったら夕方だよ。もう、夕飯の時間だよ」
「まぁ、病院の夕食の時間は結構早いからね」
真紀は、ベッドに入って夕食を待った。
「今日の御飯、何だろう」
「もう、真紀ちゃんは食いしん坊なんだから」
「てへ☆」
「そんな真紀ちゃんには、怪談話しを一つしてあげよう」
「遠慮しとく」
「実はここの病院、出るらしいよ」
「いや、遠慮しとくって言ったじゃん!」
「夜中の0時に、どこからか霧が出てくるの。その霧は普通ではなく、黒い霧だったの。そして、そこには人影らしきものが」
「ねぇ、ふきちゃん。私の話し聞いてる?」
「その人影をよおく見ると、そこには人はいなくて、影だけ動いてたの。それは、死んだ人間の影じゃないかって噂なの。
そして、その影に見つかるとーー」
「ゴクリ・・・」
「・・・・」
「え~っと、見つかると何ですか」
「見つかると」
「見つかると?」
「ぎゃあぁーーーーーー」
「ぎゃあぁぁぁーーーーーー」
山吹の突然の悲鳴に驚いた真紀は、同じく悲鳴をあげた。
「病院はお静かにお願いします!」
「あっ、すいません」
「すいません」
当然、ナースに怒られた。二人は謝り、ナースは怒ったまま行ってしまった。
「はぁ・・・ねぇ、ふきちゃん。それで見つかったらどうなるの?」
「えっ?あぁ、影は自分の体を探しているの。だから、人間を見つけると自分の体だと思い込んで、その人の体の中に影が入っていくの」
「入る?」
「口から失礼しまーす、みたいな」
「げっ・・・で、どうなるの?」
「影が体内に入ったら、影はそこで自分の体じゃないことに気づくの。そうしたら、影を騙した人間にお仕置きをするの」
「騙したって、影が間違えただけじゃん」
「まっ、噂話しだから本気にする必要はないんだけど。
それで、人間の方はと言うと、罰としてその人の魂をもらっていくらしいよ。で、朝になったら、魂の抜けた遺体が廊下にいたってわけ」
「それ、本当に噂なんだよね」
「まぁね。実際に廊下で亡くなった人がいて、死因が不明だったから、そんな噂が広まったって言う説があるね」
「それって、本当かもしれないってことじゃん」
「てへ☆」
「責任もって夜中、トイレ行きたくなったら、ついてってよ」
「嫌だよ、子どもじゃないんだから」
「そ、そんな事言わないで」
「オムツでもしたら?」
「あっ!そのてがあったか。この際、手段は選ばん!」
「えっ?」
真紀は、ナースを呼んでオムツを要求した。
「ふきちゃん、断られたよ」
「でしょうね」
涙ながらに訴える真紀に、きっぱりとそう言った。
そして、その日の夜。
まさかの怪談話しをした張本人が、尿意に目を覚まし、起きてしまった。
「やばっ・・・」
隣のベッドを見ると、真紀は
「ZZZZZ」
ぐっすり寝ていた。
「ねぇ、真紀ちゃん」
体をさすってみるが、起きる気配はない。そういえば、寝る前にナースさんから、薬のようなものを頼んで飲んでたような・・・。まさか、睡眠薬を飲んだのか!
「この裏切り者め」
まぁ、私が悪いんだけどね。山吹は時計を見た。11時時55分。ほぼ、あの霧が出ると言われる時間だった。
「大丈夫だよね・・・」
山吹は駆け足でトイレへと向かった。
「よりにもよって、トイレから一番遠い部屋だなんて」
そう言いながらトイレに駆け込んだ。
カチ・・カチ・・カチ。
時計から秒数を刻む音が聞こえる。
ガチャ
現在、0時。用を足した山吹は、手を洗い部屋に向かおうとした。
トイレを出ると、そこは廊下になっており、各部屋につながっている。その廊下から薄い、黒い霧があらわれていた。
「嘘・・・・、あの話しは本当だったの!?」
山吹は、走った。自分の部屋に向かって。しかし、その足も止まってしまう。何故なら、部屋まですぐ目の前なのに、そこには影があったからだ。人影。しかし、人はそこにはおらず、影だけがそこにいた。
「影・・・・」
山吹は思わず念力を使ってしまった。相手は影だから、当たるはずはなかった。しかし、
「えっ?」
影は念力によって吹き飛ばされた。影は能力の干渉を受けた。それはすなわち、
「トリニティ!」
トリニティ、それは黒を代表する組織名。黒の王、色ありの少女、そして影である。影は、黒い霧を発生させ、災悪をもたらす。そんな奴が病院にあらわれたら、ここにいる患者の命が危ない。つまり、このまま放置は出来ない。
感情が高まる。
私がここで奴を倒さなきゃ、皆の命が危ない。子どもだっている。倒さなきゃ。そう、私があいつを倒す!!
山吹の目つきが変わった。白いオーラを自身の周りに発生させる。
「おおおぉぉぉーーーー」
念力で、影の周りに見えない壁を作り圧縮する。
「どりゃあぁぁぁーーーー」
根性で更に圧縮させ、木っ端微塵にする。影は原形を失い消失した。まさに力業。
黒い霧は、影が消失したことにより消えていった。
「私だって、真紀ちゃんがいなくても強いんだから」
山吹はその後、病室に戻った。
病室に戻ると疲れた感じでベッドに入ろうとした。念力はかなりの疲労を要する。
「やっぱり、戦いにはまだ不向きか。もっと効率よく、小さな念力でも敵を倒せるようにならないと」
そう言いながらベッドに入ろうとした時、真紀ちゃんのベッドの下が水浸しになっているのに気づく。
「・・・真紀ちゃん?」
真紀は寝ていたが、涙を流していた。これが災悪・・・なの?
しかし、東と水口教官だけは見つからなかった。その報告に首相のキャプラは、机に拳を叩きつけた。
「東、大丈夫なんだろうな・・・」
あの一件の後、全校生徒は病院に一度入院することが決まった。特に外傷のなかった子が多いが、事件に巻き込まれたこともあり、精神面でのケアが必修であると国が判断したからだ。どちらにせよ、外傷がなくても身体検査は受けてもらうことになっている為、入院は絶対だった。
入院期間は一週間で、それ以外は人それぞれ変わってくるらしいが、真紀と山吹は一週間で退院できそうだ。
入院の際は、さすがに全校生徒を一つの病院でみることは出来ない為、各病院に別れて入院することになった。因みに、山吹と真紀は同じ病院の同じ病室だった。
【入院生活1日目】
検査は大体1日目で終わった。後は検査結果が出て、精神面に問題がなければ無事に一週間で退院となる。
検査を終え、自分のベッドに戻った真紀は、ベッドに倒れこむ。
「あぁ~疲れた」
その隣のベッドでは苦笑いする山吹がいた。
「確かに、色々な検査を受けるとちょっと疲れるね」
「もう、検査が終わったと思ったら夕方だよ。もう、夕飯の時間だよ」
「まぁ、病院の夕食の時間は結構早いからね」
真紀は、ベッドに入って夕食を待った。
「今日の御飯、何だろう」
「もう、真紀ちゃんは食いしん坊なんだから」
「てへ☆」
「そんな真紀ちゃんには、怪談話しを一つしてあげよう」
「遠慮しとく」
「実はここの病院、出るらしいよ」
「いや、遠慮しとくって言ったじゃん!」
「夜中の0時に、どこからか霧が出てくるの。その霧は普通ではなく、黒い霧だったの。そして、そこには人影らしきものが」
「ねぇ、ふきちゃん。私の話し聞いてる?」
「その人影をよおく見ると、そこには人はいなくて、影だけ動いてたの。それは、死んだ人間の影じゃないかって噂なの。
そして、その影に見つかるとーー」
「ゴクリ・・・」
「・・・・」
「え~っと、見つかると何ですか」
「見つかると」
「見つかると?」
「ぎゃあぁーーーーーー」
「ぎゃあぁぁぁーーーーーー」
山吹の突然の悲鳴に驚いた真紀は、同じく悲鳴をあげた。
「病院はお静かにお願いします!」
「あっ、すいません」
「すいません」
当然、ナースに怒られた。二人は謝り、ナースは怒ったまま行ってしまった。
「はぁ・・・ねぇ、ふきちゃん。それで見つかったらどうなるの?」
「えっ?あぁ、影は自分の体を探しているの。だから、人間を見つけると自分の体だと思い込んで、その人の体の中に影が入っていくの」
「入る?」
「口から失礼しまーす、みたいな」
「げっ・・・で、どうなるの?」
「影が体内に入ったら、影はそこで自分の体じゃないことに気づくの。そうしたら、影を騙した人間にお仕置きをするの」
「騙したって、影が間違えただけじゃん」
「まっ、噂話しだから本気にする必要はないんだけど。
それで、人間の方はと言うと、罰としてその人の魂をもらっていくらしいよ。で、朝になったら、魂の抜けた遺体が廊下にいたってわけ」
「それ、本当に噂なんだよね」
「まぁね。実際に廊下で亡くなった人がいて、死因が不明だったから、そんな噂が広まったって言う説があるね」
「それって、本当かもしれないってことじゃん」
「てへ☆」
「責任もって夜中、トイレ行きたくなったら、ついてってよ」
「嫌だよ、子どもじゃないんだから」
「そ、そんな事言わないで」
「オムツでもしたら?」
「あっ!そのてがあったか。この際、手段は選ばん!」
「えっ?」
真紀は、ナースを呼んでオムツを要求した。
「ふきちゃん、断られたよ」
「でしょうね」
涙ながらに訴える真紀に、きっぱりとそう言った。
そして、その日の夜。
まさかの怪談話しをした張本人が、尿意に目を覚まし、起きてしまった。
「やばっ・・・」
隣のベッドを見ると、真紀は
「ZZZZZ」
ぐっすり寝ていた。
「ねぇ、真紀ちゃん」
体をさすってみるが、起きる気配はない。そういえば、寝る前にナースさんから、薬のようなものを頼んで飲んでたような・・・。まさか、睡眠薬を飲んだのか!
「この裏切り者め」
まぁ、私が悪いんだけどね。山吹は時計を見た。11時時55分。ほぼ、あの霧が出ると言われる時間だった。
「大丈夫だよね・・・」
山吹は駆け足でトイレへと向かった。
「よりにもよって、トイレから一番遠い部屋だなんて」
そう言いながらトイレに駆け込んだ。
カチ・・カチ・・カチ。
時計から秒数を刻む音が聞こえる。
ガチャ
現在、0時。用を足した山吹は、手を洗い部屋に向かおうとした。
トイレを出ると、そこは廊下になっており、各部屋につながっている。その廊下から薄い、黒い霧があらわれていた。
「嘘・・・・、あの話しは本当だったの!?」
山吹は、走った。自分の部屋に向かって。しかし、その足も止まってしまう。何故なら、部屋まですぐ目の前なのに、そこには影があったからだ。人影。しかし、人はそこにはおらず、影だけがそこにいた。
「影・・・・」
山吹は思わず念力を使ってしまった。相手は影だから、当たるはずはなかった。しかし、
「えっ?」
影は念力によって吹き飛ばされた。影は能力の干渉を受けた。それはすなわち、
「トリニティ!」
トリニティ、それは黒を代表する組織名。黒の王、色ありの少女、そして影である。影は、黒い霧を発生させ、災悪をもたらす。そんな奴が病院にあらわれたら、ここにいる患者の命が危ない。つまり、このまま放置は出来ない。
感情が高まる。
私がここで奴を倒さなきゃ、皆の命が危ない。子どもだっている。倒さなきゃ。そう、私があいつを倒す!!
山吹の目つきが変わった。白いオーラを自身の周りに発生させる。
「おおおぉぉぉーーーー」
念力で、影の周りに見えない壁を作り圧縮する。
「どりゃあぁぁぁーーーー」
根性で更に圧縮させ、木っ端微塵にする。影は原形を失い消失した。まさに力業。
黒い霧は、影が消失したことにより消えていった。
「私だって、真紀ちゃんがいなくても強いんだから」
山吹はその後、病室に戻った。
病室に戻ると疲れた感じでベッドに入ろうとした。念力はかなりの疲労を要する。
「やっぱり、戦いにはまだ不向きか。もっと効率よく、小さな念力でも敵を倒せるようにならないと」
そう言いながらベッドに入ろうとした時、真紀ちゃんのベッドの下が水浸しになっているのに気づく。
「・・・真紀ちゃん?」
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