空のない世界(裏)

石田氏

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4章 外の世界

02

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(01の続きから)


 とある街。そこは街とは少し言いがたい程、無残に破壊されていた。
 ガシャン、ガシャン
機械音と共にあらわれる主は、街を破壊した張本人。四つの足と、それにつながった四角い本体。本体前には左右に三つの小型カメラが縦に並び、赤く光っていた。
「あれがmaximum!?」
ケイティはそれを見て言った。
 ケイティ含むチーム全員が、無人機AIロボ・maximumの前まで到着していた。マドセインは、全員が標的を確認してから次の指示を出した。
「まず最初に、私からあの兵器に攻撃を仕掛ける。あいつに見つかった場合は常にロックされる。一度でもロックされれば、それは永続的に続き、距離をおいて再度攻撃をしても、奴から不意打ちは狙えない。つまり、あいつから不意打ちを狙うとしたら、最初の一度のみだ。だが、不意打ちはできたらの話で、それにこだわる必要はない。問題は、一度ロックされた状態で退避する場合だ。ロック状態は隠れても無意味だ。走って逃げて距離をとるしかないが、あいつには遠距離攻撃によるミサイルがある。あれを回避するのは無理だから、発射されたらミサイルを破壊するしかない。あいつ自体は、そこまで早く追い付くことはできないらしいが、退避する場合は協力してミサイルを撃ち落とせばいいだろう」
「じゃあ、最初に攻撃するマドセインはロックされるってこと?」
「まぁ、そうなるな。ケイティの能力は脳内ジャックだが、その能力の対象は人間と決まっている。相手が機械の場合はできない。だから、ケイティは、通信役を受けて欲しい。それぞれ、皆の脳内に直接話しかけるんだ」
「つまり、敵の様子を遠くで見ながら指示を出せばいいんだね」
「そんなことできるの!?」
真紀は驚いた。
「うん。でも、皆の能力と比べると私なんか・・・・」
「そんなことないよ!凄いよ」
「確かにケイティの能力はサポート系の能力ではかなり優秀だし、人間相手なら攻撃タイプにもなり得る。万能だと思うよ」
「珍しい、マドセインが人をそんなふうに評価するなんて」
「エリザ、からかうなよ」
「マドセインさん、エリザベートさんのこと、エリザって言ってるんですか?」
「マドセインだけじゃなくて、ケイティも言ってくるけどね」
「まぁ、同じチームメイト同士、言いやすい名前で呼んでるんだ」
「そうなんですか?」
「マドセイン、勝手なことを言わないの」
「私も、エリザベートさんのこと、エリザって呼んでもいいですか?」
「ほら~!」
エリザはマドセインに訴えるが、マドセインはそっぽを向いた。
「まぁ、いいわよ。じゃあ、私達もマドセインのニックネーム考えましょうか」
「いいですね!」
ケイティものってきた。
「おい、お前ら!」
マドセインは訴えたが、無視されエリザが仕返しをと、悪のりがすすむ。
「マドなんてどう?」
「ただ略しただけだろう!人の名前を略すな」
「あら、私のエリザも略したもんでしょ」
「くっ・・・・」
「宜しく、マドさん」
悪魔と化したエリザに、ケイティと真紀は笑う。
「なんか、真紀ちゃんがチームに入ってから、なんだかチームが明るくなった気がする」
それにはマドセインも頷く。
「確かにそれはあるのかもしれない。ある意味、真紀の真の能力は人を明るくする能力かもしれない」
「なにマドはかっこよくまとめてるのかな~?」
「うっ・・・・そんなつもりは!」
「真紀はチームのムードメーカってことで、真紀ちゃんにはこれから頑張ってもらおう!」
「え?えぇー!」
「おい、あの兵器のこと忘れていないだろうな」
「そうだったね。じゃあ、真紀ちゃんだけじゃなくて、うちら全員頑張ってあのポンコツにポコポコのボッコボッコにして、スクラップにしてやりましょう!」
エリザさんのその発言には皆、流石に少し恐いと思った。





 《maximum攻略戦、開始》

 「まぁ、不意打ちはこだわるつもりはないと言ったが、別に狙わないとは言ってない」
マドセインは、右手にロケットランチャーと左手にバズーカ砲を持って、maximum後方に立った。
 「maximumは、少女の能力は効かないと言っていたが、そしたら兵器同士ぶつけるしかないが、果たして効いてくれるかな」
そう言いながら、肉体強化で二つの武器を支える。両方とも、それなりに重さはある。それに、バズーカ砲は男性の大人でも反動で後ろに吹き飛ぶと言われている。故に、能力で自身を強化しなければ、ましてや女の子が持つことはできないだろう。
 肉体強化は彼女の能力だった。
「よし、じゃあいくぞポンコツ!!」
宣言と共にロケットランチャー、バズーカ砲の両方が発射された。しかし、直撃する前のmaximumの反応は、はやかった。
「敵ノ射撃ヲ確認。追撃シマス」
ガシャン!
maximumの身体からミサイルの発射口が飛び出し、コンマ0秒以内にロックオンは完了され、発射された。
 無数のミサイルは敵の射撃を撃ち落とし、それ以上に発射されたミサイルは標的を失い、他の場所に落とされた。
 廃墟と化した街に再び爆振を与えた。
「やはりそううまくいかないか。だけど、あの様子ならまだ通常兵器が効かないかどうかは分からないってことか。それよりあの兵器、攻撃に無駄が多くないか?どんだけ街壊すんだよ」
「敵ヲ発見!排除ヲ実行」
「どうやらロックされたようだな。なら、遠慮なくいかせてもらう」
マドセインは、潰れた車や瓦礫を軽々持ち上げては、maximumに向かって投げた。
「障害物、接近ヲ確認。排除実行」
maximumはミサイルを無数に発射。それにマドセインは応戦。次々と投げまくる。
「どっちが早いか勝負だな」
その光景を離れたところで見ていた真紀は
「まるでドッジボールか、枕投げみたい」
とぼやいたことに、他の皆は頷いて納得する。
 因みに、ドッジボールの世界大会は皆が知るドッジボールではない。最早凄過ぎて笑えてしまう。あれを見てしまうと、ドッジボールは小学生の遊びとは言えなくなってしまう。
 そんなこと言ってるうちにmaximumは遂にミサイルで破壊した瓦礫の一部がぼこぼこと激突するようになった。
「結構、頑丈ね」
エリザがそう感想を述べたように、maximumはそれでもぴんぴんしていた。どうやら、戦車かそれ以上の装甲なのかもしれない。まぁ、だからと言って、核を街中に使うわけにもいかない。最早廃墟であるが、放射能の残りが復興の足かせになってしまう。だから、軍はmaximumの電源が自動で落ちるのを待つことにしたのだろう。これ以上の軍の負傷者を出したくないから、街の人に避難指示を出して後は待つだけ。だから、こんな無責任な軍に私達は怒るのだ。当然、方がついたら責任は間逃れないだろう。maximumの研究中止と、軍の予算見直しに、maximumの廃棄が言い渡されるであろう。厳しい制裁だが、これでも街の人の中には死者も出ている。それだけでは到底報われないだろう。恐らく、政治的にも大統領の責任追及までいっても、おさまることはないだろう。それでも、やはり納得いくものはない。死者が報われる制裁なんて、そもそもありはしないのだから。
「ピー、警告。レーザー砲発射準備ヲ実行」
「はっ?レーザー砲!?」
maximumの発言に、マドセインも驚く。当然、レーザー砲なんてものが装備されているとは聞かれていなかったからだ。
ガシャン!
maximumの上がハッチのように開き、そこからごっついレーザー砲を出してきた。
「マジかよ」
「レーザー砲発射」
「おい、カウントとかないのかよ!」
レーザー砲出して直ぐに発射されたレーザー砲は、すざましい威力でマドセインに向かって一直線にきた。
 肉体強化を足の先端に集中させ、地面を蹴り回避する。その際、地面には大きなくぼみができたが、それも一瞬にして大地ごと消し去った。
「マドセインさん!」
ケイティは、マドセインの脳内に信号を送るが反応はない。慌てたケイティはもう一度呼び掛けた。すると、
「私は大丈夫だ」
「はぁ、良かった」
ケイティの安心に、皆の緊張もとけた。
 しかし、あのレーザー砲は流石に予測出来なかった。
「どうしますか、マドさん。一旦退いた方が・・・・」
「さっきはマドセインって言ってたのに、マドに戻るんだな」
「マドさん、今はからかってる場合では」
「分かっている。ケイティ、maximumの稼働時間は残りいくつだ?」
「あと10分です」
「結局、タイムオーバーが早かったか」
「はい。今の時間なら退避して電源がおちるのを待ったほうがいいと思いますが」
「いや、どうせなら派手にやるさ。エリザ、それに真紀。そちらの方はどうだ?」
「準備は既に完了済みですよ」
「はい、こちらも大丈夫です」
「よし、いっちょやるか!」
「待って!」
急にケイティが止めに入る。
「どうした、ケイティ」
「あの・・・・アメリカ軍が来てるんだけど」
「はい!?」
アメリカ兵は撤退したんじゃないのか?と疑問に思っていると、アメリカ兵がぞろぞろと出てきて、マドセインを囲むように包囲した。
「何だお前達は」
「君たちはこれから我々の指示に従ってもらう」
「何だと」
「君らはmaximumを破壊しようとしているが、それは無駄なことだ。maximumはもうすぐで起動停止になる。大人しく我々と共に来るんだ」
ジャキンッと、一斉に兵は持っていた銃をマドセインに向けた。銃口が自分を中心に丸く、綺麗に並ぶ光景に、マドセインはため息をついた。
「民間人を守る兵隊が、民間人に銃口をむけるのか」
「ただの民間人でなければ話は別だ。世の中には例外がつきものだ」
「まさしく、大人が言う言い訳だな。だけど、理解できないのはmaximumを壊されたくないような発言の仕方だが」
「maximumは改良の余地がある。あれを壊さず原因究明するため、我々はあれを時間まで放置しているのだ」
「な……正気なのか!?」
「これは国防長官の命令だ。それに、少女達にこれ以上動きまわって欲しくないのだよ。しょせん、トリニティの色ありの少女と変わらないだろ。正直、君らを同じ人間としては見れない。君らはあいつら同様、魔女の使いだよ。魔女は大人しく、火あぶりにあえばいい」
「なんだと!!」
マドセインは、頭に血管をうかばせながら怒鳴った。いや、怒鳴り叫んだ。
「おっと、変なまねはするなよ。君らはmaximumと関わった。これから君らは我々の保護下にある。それに、君らのお友達も確保済みだ」
そう言うと、無線を取りだし他の隊に通信をつなげた。
「マドセイン、すまない」
「エリザベート!」
更に兵は通信を切り替え、もう次の隊にもつなげる。
「ごめんなさいマドセインさん。捕まっちゃいました」
「真紀!」
するといきなり、もう十分だろと言わんばかりに、通信を切った。
「これで分かっただろ」
「おい、真紀は日本人だ。あの子は関係ないだろ!」
「勿論、関係ない国まで巻き込めば外交どころか国際問題になりかねない。彼女は帰そう」
それに、マドセインは少しほっとするが、兵士は不気味な笑みをこぼした。
「ただし、無事かどうかは別だ」
「どういうことだ」
「maximumに関しては忘れてもらう。まぁ、その他の記憶も失うかもしれないがな」
「お前ら!」
「おっと、そろそろ時間だ。奴のお寝の時間だ」
どうやら、maximum稼働時間がせまってきたらしい。それに合わせ、maximumの動きがゆっくりとなった。そしてついに、
「ピーー、電力ノ不足確認。コレ以上ノ稼働ハ難シイト判断。スリープモードニ切リ替エヲ施行」

ガッチャン、プシューーー!

maximumの赤い光は消え、完全に動きをとめた。
「よし、maximumはとまった!今すぐ回収に急げ」
部下に指示を送る先程の男。どうも、こいつが指揮官らしい。
 一斉に、兵はmaximumを包囲し回収をおこなう。それぞれ各足に紐を繋げ、近くにとめたトラックまで引っ張る。しかし、かなりの重量があるのか、中々作業が進まない。
「ほら、もっと力をいれろ!」
怒鳴る一人の兵に、更に力強く引っ張る。そのたびに地面とでかぶつのポンコツとの擦れる、いやな音がでた。

ギギギギ……ギギギ……

「それ、引けー」

ギギギ……ギギギ……ギッ、ガシャン!

「うわぁぁーーーー」

突然動き出したmaximumに、先程引っ張っていた兵が今度は逆に引っ張られ、そのまま勢いよく空中まで高く飛ばされた。
「な、何で動く!maximumは既に稼働できないはずじゃ!?」
そんな指揮官の疑問を否定するかのように赤い光を再び放つ。
「再起動確認。予備電源ニ以降。ソーラー機能ヲ稼働。現時刻ヨリ、ソーラーニヨル電力供給ヲ開始。
 ピー、エコ機能ヲ稼働。稼働ヲ確認。電力消費ヲ20%削減。インターネットニ接続。ハッキングヲ開始。アメリカ軍ノデータヲ収集。
 ピー、破損部分ヲ確認。自動修復ニ以降。ハッキング終了マデ後10秒」
「こいつ、軍のデータにハッキングをしているのか!?」
「データ収集ヲ終了。終了ヲ確認。アメリカ軍ノデータヲ世界ニ送信。エラー754。送信ノメモリーオーバーヲ確認。情報ヲ短縮。終了マデ後1分」
「おい、やめろ!そんなことをすればどうなるか。戦争が始まってしまう。おい、お前ら!なんとしても阻止せよ」
アメリカ兵は一斉射撃をmaximumに放つ。まさに雨の弾丸を浴びるmaximumだが、傷どころかへこみすら与えられなかった。
「自動修復ヲ完了。ピー、攻撃反応アリ。コレヨリ、敵ト見ナシ排除ヲ実行スル」

ガシャン!

maximum左右からごっついガトリングガンを出した。そして、

ババババババババババババババババ

先程までいた人間は消えた。いや、別の形へと姿を変えた。生物から物質へと変換される際に、赤い液体を撒き散らす。
「あ・・・あぁ・・・・」
唯一生き残った指揮官は、肉片と化した仲間の姿を見て、膝をついた。

これが、人間が作る兵器だった。まさしく、兵器らしく人をあっさり殺す心ない機械はロボットらしい行動であった。兵器は守るものにあるのではない。人を殺すものが兵器なのだ。そこをとり間違えた人間は、再び命の赤い滴を世界に垂らす。

「頼む。あれを破壊してくれ」
先程までの態度とは一変した指揮官は、マドセインに、少女達に、魔女に、魂を売った。
「この代償は高くつくぞ」
「覚悟している」
それだけ聞くとマドセインは頭の中でケイティを呼んだ。
「はい、状況は把握したよ。マドさんと兵隊さんの会話はリアルタイムで他の皆にも聞かせてたよ」
「流石ケイティ。アメリカ兵が銃口向けても能力は常に発動していたか。相変わらず抜け目がないな」
「なら、どうして私を呼んだの?最初っから知ってたんでしょ。私はただ待機してただけだよ」
「待機か」
「マドさんが兵隊さんの頭をジャックしろって言うのをね」
「こわい奴だ」
「それよりmaximumまた動き出したんだよね」
「あぁ。聞いていたなら知ってると思うが、アメリカ兵にもアレをどうにかして欲しいと言われた」
「今更だよね。それでどうするの?」
「私はマーキングされている。だが、お前たちはまだあいつにロックされていない。このまま、maximumとの戦闘は私に任せて欲しい。真紀とエリザは先程の罠の準備をしといてくれ。私はそこに奴を連れ込む」
「了解。マドさん、気を付けてくださいね」
「あぁ。それと、後で真紀には謝らないとな。やはり、こんなアメリカの問題に彼女を巻き込んだのは間違いだった」
「あの、偉そうにしてた兵隊のこと?」
「まぁ、それもあるが、あの子のような純粋な真紀にとってアメリカは、毒でしかない」
「まさか、これが終わったら帰らせるつもり?」
「真紀の能力は橙色の少女を倒すのにかなりの戦力が期待される。だが、それはこちらの都合というものだ。今回も、その都合というもので、危険にさらしてしまった。それが一瞬でも友達をこれ以上危険にさらしたくない」
「友達ね……」
「な、何だよ」
「マドセインが友達なんて言うんだ」
「な、からかっているのか」
「ううん。そうだよね、もう私たち友達なんだよね。だからね、真紀ちゃんは帰らないと思うよ」
「・・・・」
「真紀ちゃんも友達が危険な目にあっていると知ったら、帰らないでしょ。だからね、友達同士助け合えばいいの。そんなのに、遠慮なんていらないんだと思う。だって、うちら親友だもん」
「親友・・・・そうだな。後で真紀には沢山お礼しないとな」
「だね!」
「よし、じゃあその前にあのポンコツをスクラップにするぞ!」
「了解!!」


《maximum攻略戦・「ポンコツを一瞬でスクラップ作戦」》


 肉体強化したマドセインは、廃車となったベンツを投げつけた。
「こっちだ、ポンコツ」
「敵ヲ発見。排除ニ移ル」
maximum蜘蛛のように、器用に四本足を動かす。

ガシャガシャガシャガシャ!!

ちょっと気持ち悪い感じだが、高速に足を動かし、マドセインを追う。
 それに対して、マドセインは強化を足に集中させ、全力で走る。

ガシャガシャガシャガシャ!

「相変わらずキモいんだよ。だから機械は嫌いなんだよ」
追って来るmaximumを見ながら叫ぶマドセイン。それを聞いていたケイティはツッコミを入れる。
「マドさんは機械音痴な上に、蜘蛛が大嫌いだから、maximumはまさに強敵だね」
「うるさい!」
マドセインは走ることに集中する。
「次の交差点を右で」
ケイティはナビをおこない、罠のところまで誘導する。



その頃、真紀とエリザはというと、ビルが集中するなか、広い交差点辺りで待ち伏せをしていた。
「エリザさんはいったいどんな能力何ですか?」
「私はトラップだよ。その名の通り罠をはる。場所を指定してそこで色々な罠をはるの。この能力は欠点だらけで、まず罠をはるのに時間がかかるのと、罠まで敵を誘導しなきゃいけないこと。罠に引っ掛からなければ私の能力は無意味。つまり、戦闘においてはやりにくい能力なの。でも、その代わりに罠に制限はない。そして、複数の罠を設置可能。しかも、同じ場所に罠を多重にかけることも。
 今回はマドセインが時間稼ぎしてくれたお陰で複数の罠を多重にかけることができた。
 まず第一トラップは、maximumの少女能力無効だけど、それを空間的に無効にする。正確には『タイムアウト』というトラップなんだけど、相手の時間をとめるトラップよ。maximumの能力無効は恐らく物理的に限定されているから、あいつの時間をとめるイコール機能を停止させる。機能が停止されたmaximumの装甲はただの頑丈な装甲に戻る。
 次に第一トラップが発動した条件で、第二トラップを発動。『解体』でバラバラにした後、第三トラップが発動し『プッシュ』で無制限の超重力を下と上から与え磨り潰す。最後の第四トラップ『掃除機』で、空中に小さなブラックホールをつくり、認識できない程まで分解され、最後はホワイトホールで別の次元軸に転送。完全にこの世から消し去る。
 まぁ、こんな感じかしら」
「うん、凄いね」
棒読みで返事をする真紀。多分トリニティの黒の王よりこわい気がする。しかし、それだけに能力発動の条件が厳しいのは、確かに戦いでは扱いずらいものはある。特に、一対一や不意討ちをつかれた際の戦闘では、最強の能力も無力でしかない。
 そんなことを考えていると、ケイティから連絡がきた。
「そろそろ御登場だよ」
「さて、こちらもガラクタを丁重にお迎えしますか」

ガシャガシャガシャガシャ!

四本足で勢いよく現れたmaximum。
「御行儀が悪い子はこらしめないとですね」
エリザはニヤニヤしながら、この時を待ちわびる。
「ピー、危険ヲ察知。緊急停止」
トラップ直前になって急ブレーキをかけるmaximumだが
「maximumに危機回避機能があるのはあらかじめ知っておりますわよ。真紀さん、お願いします」
「はい」
真紀は右手をかざした。

「青!」

パシャ

青いペンキが突然真紀の右手からあらわれ、空中で飛び散る。飛び散った青いペンキは地面に付着し、そこからブクブクと青いペンキから水が現れた。
 maximumは、ブレーキをかけるも水が足を滑らせ、そのままトラップのど真ん中に入った。


カチン!

バラララ……

ドンッ!

ガシャン!

ウィーーーン!

すざましい光景だった。先程までいたmaximumは、綺麗にこの世から姿を消したのだった。


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