空のない世界(裏)

石田氏

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4章 外の世界

03

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 maximum破壊後、大統領はこの事態に対し記者会見をおこなっていた。しかし、その内容はmaximumの暴走ではなく、橙色の少女によるものだとした。いわゆる、隠蔽である。不都合なことは伏せる。アメリカ軍のコンピューターがmaximumにハッキングされ、世界に送信されるところだったとか話せば、アメリカ全体で混乱が起きるのは必然だった。
 混乱回避や、アメリカ経済においても、外交においても、このことを内密にしないわけにはいかない。国民の意思や、知る権利以前にアメリカという国が公開により騒動が起き治安悪化と悪循環になるのを避ける上でも、今回の大統領の記者会見の内容は理解できる。
 それに、橙色の仕業にしたのはそれ以外の言い訳が存在しなかったからだ。あれだけの被害を出せるのは人間以外あり得ない。ならばこの場合、少女かmaximumに限られてしまう。maximumの原因を避けるには色ありの少女のせいにする他なかった。そして、現在アメリカに色ありの少女は一人、橙色の少女がいたわけだ。
 当然、アメリカでは少女に対する怒りやうらみが増える。特に男性では、女性に対する迫害が増すだろう。これは、今の世界が抱える社会問題で、色ありの少女と色なしの少女の見分け方が難しい点にあった。色ありの少女が見つかりにくく、現在何人存在するのか分かっていない。色ありの少女は、人間の少女にまぎれ今でも社会にとけこみ、世界を滅ぼそうとしている。
 だが、アメリカ大統領は更に述べた。「maximumがその場にありながら橙色の少女を倒せずに破壊され、我が勇敢なアメリカ兵を多く失った。我が技術を持っても、異能を持つ色ありの少女を倒すことはできなかった。相手はたった一人である。その一人の少女に我々は大敗した。これは、アメリカ国内のみならず世界にも知らせよう。あの憎い色ありの少女、トリニティを倒せるのは同じく異能を持つ色なしの少女のみだと!女の子として産まれてくれた者に、アメリカ代表として言おう。君らは我々の希望だ!」
これがマドセインが言っていた報酬である。アメリカ兵の指揮官もしかり、国民のみならず政府までもが少女差別に加担するような現状を打開すべく、政府のトップが自ら少女の重要性を語り、世間の見方を変える必要があった。
 当然、一部は大統領の発言に不満をいだく者もいるだろう。支持率的に見ても、これで男性からの票は大半は失うだろう。出産と人口の男女比率は6対4で男性がやや多い。次の選挙を考えると過激とまではいかないが、多少の男女差として、能力を持たない男性に優遇される制度を考案する野党が勢力をのばす可能性があった。
 女性側もそれに妥協しなければ、かつての大規模なテロ行為や、他国の内戦とまではいかないが、何かしらの治安悪化は間逃れないと考えている。
 実際に、どこまで大統領の発言に効果があるのかは分からないが、結局のところ女性が男性の言い分に妥協しようが、逆に男女差の問題を広げるだけでなにも解決には至らないからだ。
 それでも、記者会見後の記者からの質問や、野党からは厳しい発言が述べられた。だが、maximumがない今、新たに新兵器の研究をする時間はなく、今もなお橙色の少女は都市部を狙っているかもしれないのだ。大統領にとっては手札は既になく、色なしの少女に頼る他なかった。
 故に、マドセインの要求にあっさり応じるどころか、逆に頼られたという訳になる。





 アメリカ大統領の記者会見から数日後ーーー


 意外にも都市部では混乱がおきなかった。野党は大統領の発言に猛反発をおこしたが、アメリカ国民は野党の発言よりも大統領の発言に響いたかたちとなった。
 実際に、色ありの少女を倒せる手段が色なしの少女らに限られていると言われてしまえば、早く橙色の少女からの脅威を打開して欲しいという国民の意志が一番強い結果であった。
 そして、その結果に応えるべくマドセイン達は橙色の少女攻略作戦をホテルの部屋で話し合っていた。
「それじゃあ、今回も私が指揮をとるでいいな?」
皆は頷き、マドセインに一任した。
「よし。では、まず橙色についての情報だ。橙色はトリニティのNo.2青の少女とほぼ互角の能力を持つと言われている。だから実際はNo.3になるんだろうけど、青の少女は水を操る能力と言われているが、それとは全く逆の属性で、橙色の能力は炎を操る能力だ。そして、あいつに関しては正直に少女とは言い難い姿をしている。それに関しては動画を撮った人達がインターネットに載せてあるので、それを見た方が話は早い」
そう言って、カチカチとマドセインはパソコンを操作する。そして、皆に見えるようパソコン画面を皆に向けた。
 その動画を見た真紀は唖然としていた。
「こんなのと戦うんですか?」
「真紀は本当に何も知らないで来たんだな。本当、変わったやつだ。
 真紀、私達はこいつと戦う。そして、勝つ。今日はその為の会議だ」
「はい」
「今度の敵は少女……まぁ生き物だ。だから今回は、maximumとは違いケイティの能力が使える。ケイティの能力は脳内ジャック。まずはあいつの頭の中に入り、動きを数秒間とめる」
「私の能力だと、多分あれじゃあ3秒から5秒が限界だから、脳内ジャックして自害させるのは無理ね」
「だから、ケイティが動きをとめている数秒間でとどめをさす。その為にケイティの能力は最後にとっておく。
 最初は、真紀の能力であいつの炎をどうにかしてくれ。そしたら、私は肉体強化で奴を攻撃する。その間にエリザは奴の周囲に多重トラップの準備をする」
「ちょっと待って、マドセイン。私のトラップ設置には時間がかかるの知ってるでしょ。奴の周りって、多重トラップを複数設置することよね」
「そうだ。奴に身動きがとれないよう周りにトラップをかける。maximumと同じトラップじゃなくてもいい。奴がこの世から抹消されるようなやつならな」
「なら、maximumは4重だったけど、抵抗できないよう『タイムアウト』と『掃除機』の2重のトラップなら多少は時間が短縮できる。でも、複数ならどちらにせよmaximumの時の倍の時間は必要よ」
「分かっている。だが重要なのは奴を確実に仕留める方法だ。
 奴を私と真紀で動きを止め、その間にエリザはトラップをかける。そうすれば、奴は身動きができず、動けばドボーンだ。いわば即死級の地雷だ。地雷設置は奴の進行方向に設置すれば確かに一つですむ。時間も短時間ですむが地雷の欠点はいかに強力でも、踏まなきゃ発動しない。もし、気づかれたり、進行方向が変わったりしたら無意味に終わる。地雷は一つじゃなく複数設置するだろ。だが、エリザの能力じゃ、そこまでの時間は私らにはつくれない。だから、それを敵の周りにトラップをかける。本来、地雷は気づかれないように設置するのが基本だが、逆に気づかれてもいい。奴の進行をとめるのがエリザの役目だからだ。
 エリザのトラップは、一つ一つが大きい範囲だ。四つのトラップで奴を止められる。問題はその時間稼ぎだが、私の肉体強化の能力は、フルパワーなら5分が限界だ。だから、80%の力に留め、出来るだけ長く能力を発動させる。真紀はその援護だ。
 そして、もし私の能力がつきた場合だが、その時は真紀に全てを任せることになる。申し訳ない」
マドセインは深々と頭を下げた。
「そんな、マドセインさん頭を上げて下さい。私がお役にたてるならそれだけでもいいです」
「相変わらず真紀は優しいな。
 さて、橙色の少女の留めだが、奴が動けなくなった時、当然攻撃をし奴を弱らせる。だが、そこまでうまくいくかも分からない。だから、それ以降は出たとこ勝負でいこうと思う」
「マドセインにしては最後はいい加減なのね」
「エリザ、皮肉は言わないでくれ。私も正直それ以上のことを想定して、ものは話せないよ」
 真紀は思った。マドセインの言う通り、確かにどの少女も想定した動きをしたことはなかった。だからこそ、戦況に応じて戦わなければならない。
「作戦は明日の昼、実行に移す。因みに、移動手段は軍が出動してくれる。ただし、軍はあくまで見送りのみだ」
「その方が戦いやすいですし、あの方達が出て無駄死には出したくありませんしね」
エリザは皮肉を言う。まだ、軍のしたことに根をもっているようだ。
「よし、作戦は以上だ。各自、明日まで体を休ませておくように」



 その後、各自自分達の部屋に戻り、ようやく本命の少女攻略戦を明日に、色々な思いをかかえる。


コンコン
「はい」
真紀の部屋に突然の訪問者は、ドアを開けるとそこにはケイティがいた。
「ごめんね、明日にひかえているのに」
「ううん、いいよ。さぁ、入って」
「うん、お邪魔します」
真紀は紅茶を用意した。
「ありがとう」
「ホテルのだけど」
「別にいいって、突然の訪問だし」
「それで、ケイティは突然どうしたの?」
「うん、実はね色ありの少女と戦うの今回が初めてなんだよね。だから、経験者の真紀ちゃんに色々と聞こうと思って」
確かに、色ありの少女と戦う経験はケイティだけじゃなく、エリザベート、マドセインも含まれる。色ありの少女は主に日本に集中的に現れている。原因は日本都市、東京上空に『空のない世界』を出現させる為。何故、トリニティは日本都市部上空にこだわるのかは分からないが、最初の一回だけ『空のない世界』を出現したのが日本都市部の上空だと聞いている。それに関係しているのかもしれない。
「それでね、真紀ちゃんはどうやって色ありの少女達を倒したのか聞きたいの。あと、コツとかそんなのあれば教えて欲しい」
「コツなんてないよ。でも、不安がるケイティの気持ちは分かる。私も、今でもちょっとドキドキしてる。今夜眠れるかも怪しい。だからね、私が言えるのは仲間がいれば助け合う、だよ」
「助け合う・・・・」
「うん」
「そうだよね。ありがとう真紀ちゃん。皆ドキドキしてるんだよね。
 ねぇ、真紀ちゃん。真紀ちゃんが倒してきた色ありの少女について教えてよ。あと、友達のふきちゃん?のこともいっぱい教えて」
「うん、いいよ。じゃあ私が学校に登校する際に最初に出会った色ありの少女について話すね。
 私が寝坊して、ふきちゃんが起こしてくれたんだけど、あっ!ふきちゃんはねーーー」

ドンドン!

急に、勢いよくドアを叩く音がした。
「え?誰」
「何か今日は訪問者が多いね。それにしても随分乱暴なノックだね」
「いや真紀ちゃん、ノックじゃないよ。何か急いでる感じかな」

ドンドン!

「おい、真紀。いるのか?」
「マドセインさん!?」
真紀は急いでドアを開けた。
「どうしたんですか?」
「奴が動き出した。今、ニューヨークに奴は向かっている」
「えっ!?」
真紀の驚く声に、ケイティも現れた。
「なんだ、ケイティもいたのか。なら二人とも来てくれ。予定は変更だ、今日少女攻略戦に向かう」




 突然の予定変更。今もなおニューヨークに向かって全身中の奴は着々と近づいていた。
 真紀とケイティ、マドセインにエリザベートは軍用ヘリ、オスプレーに乗り込み現場へと向かった。
 揺れるヘリの中で皆は無言でその時を待った。

ビー、ビー

何かの警報音と共に、一人の兵が窓の先を指さす。
「見えてきたぞ」
全員の視線が窓の外に向けられた。
「あれが・・・・橙色の少女」
「動画で見たより凄い・・・・」
真紀とケイティはそれぞれ感想を述べた。
 それは、そこだけ異様に明るく、その中心には二本立ちする巨体な化け物の姿があった。

「グオオォォーーーーー!!」

雄叫びをあげる化け物。まさにその姿は、炎の魔神であった。
「大丈夫だよね、勝てるよね?」
ケイティが心配になるのは分かる。しかし、あれを見てしまうと、大丈夫だと返事を返すことも皆できないでいた。
 恐らく苦戦と長期戦になるであろう戦いに、色なしの少女達は挑む。




《アメリカ戦・橙色の炎の魔神》


  炎の魔神、または魔獣か、もはや化け物で統一すべきか、その奴は全身が炎に囲まれており、一瞬火だるまにあっているように見えるそれは、奴が歩く度にその場所から炎がうつり、奴の通り道は全てが焼け野原と化す。その近くにヘリから降りた4人。
「では、御武運をお祈りしてます」
兵に見送られ、ヘリは再び上空に飛んだ。
「さて、これからの行動だが、作戦会議で話し合った通りだ。先頭を真紀と私が行く。エリザはそのあとについて来てくれ。ケイティは背後で待機だ。なぁに、最後に活躍してもらうから安心しろ」
「できれば、私の出番が無いことを祈ってます」
「おいおい、ここまで来て何もしない気か?私らはこれが終われば、アメリカの英雄だ。国民全体が私達を歓迎するんだ。ケイティ、気を楽にもて。緊張してもいい。だが、逃げるな。立ち向かえ」
「・・・・うん」
「よし、その行きだ。じゃあ皆、行くぞ」
「「おぉ!」」


《14時24分・作戦開始》


 まず最初に先頭に走る真紀とマドセインは、炎の魔神に向かった。

「グオオォォーーーー!!」

魔神は近く二人に気付き雄叫びをあげる。そして、魔神は地面に向かって腕を勢いよくぶちこむ。そして、そこから炎を送り込み、地中に放たれた炎は爆発し、地面を割り勢いよく二人へと向かってきた。
 真紀は素早く反応し、能力で水を生み出し、地中の炎を消し去る。

「グオオォォーーー!!」

炎を消したことに怒った魔神は、地面に大きな振動をあたえながら、走り出した。
「なんか来るよーー!」
吠えながらこちらに突進してきそうな勢いで向かってくる魔神。真紀は再び水を操り、今度は奴にぶつけた。

「 破壊の蛇マサライ 」

水の巨大な蛇は、炎の魔神を水で囲み、魔神の放つ炎を消し去る。

「 凍りつけ、大いなる暗黒 」
(マハーカーラー・シヴァ)

更に、水に覆われた魔神は凍りつき、巨大な氷の塊ができた。
「やったのか!?」
思わず安堵するマドセインに真紀は否定した。
「いえ、奴はまだ生きてます。これは時間稼ぎです。早くエリザさんにトラップの準備をお願いします」
「そうか、分かった」
そう言うと、マドセインは手招きで合図をエリザに送る。それを見たエリザは行動にうつした。

ピキッ

氷の巨体から嫌な音がした。
「もう破ろうとしている。ちょっと早すぎじゃ・・・・」

パキンッ!

氷は徐々に形が崩れ、遂に魔神の上半身が氷から飛び出し、姿をあらわす。真紀は急いで、氷が欠けた場所に水で再び覆い、凍らせた。しかし、

ピキッ

「さっきより早くなってる!」
すざましい勢いで内側から氷を割ろうとする魔神。
「もう、駄目かも」

パキーンッ!

今度は中途半端なく、全身に覆われた氷を全て力業で打ち破った。
 現在エリザが作ったトラップは一つ。
「どうする、真紀!」
「なら、色々試すまで!」
真紀は緑のガスを放ち、魔神に毒を吸わせた。
 猛毒性のあるガスにより魔神からは雄叫びや吠えることがなくなり、その代わりに荒い息声が聞こえてきた。
「どうやら今のでだいぶ弱ったみたいだな」
「でも、一様致死量の毒ガスをだいぶ吸ってるはずなんだけど」
「奴は不死身並みに頑丈というわけか。だが、弱っているなら今のうちに叩くべきだろう」
「うん!」
マドセインは肉体強化で、自身の身体機能を向上させ、魔神の左足に猛烈なタックルをくらわした。
 巨体な相手に少女が突進したところで効くはずはないが、弱っている中で更に肉体強化した少女のタックルは、想像以上にくらった左足はバランスを崩し、魔神に膝をつかせた。
 しかし、すぐさま再び立ち上がり、雄叫びをあげる魔神は、さほど効果はなかったようだった。

「グオオォォーー!!」


再び魔神の体から炎があらわれ、辺りを燃やした。
「悔しいな、今のが効かないなんて。だけどな、私には守りたい国があるんだ。こんな汚れた大人が政治やってる国だけどな、それでも私の育った場所なんだ。ケイティも、エリザも。
 私らには守らなきゃいけないもんがあるんだよ。
 魔神よ、炎を出そうが、巨大だろうが、頑丈であろうが、吠えようが、人間、守るものがある以上負ける気はしねぇんだよ!ちっぽけな人間だろうと、神にだって勝ってやらぁ!」
マドセインは全力で出しきり、地面高くに飛び、100%の力で拳いっぱいに奴の顔面頬にくらわした。
「マドさん!」
マドセインは、全てを出しきり能力の限界値を超え、力を失った彼女はそのまま落下した。真紀は走り駆け寄りながら唱える。
「ピンク!」
突如、マドセインの真下にピンクのペンキのような液体から、巨体なクッションがあらわれ、間一髪で落下するマドセインを支えた。
「マドさん、大丈夫ですか」
「あぁ・・・だが、すまない。全力でやったが奴には敵わなかったよ。それに、ついさっきので、能力は当分使えなくなっちまった」
「気にしないで下さい。それに、マドさんの気持ち、十分伝わりました。あとのことは、私に任せて下さい」
「本当にすまない・・・あとは頼んだ」
マドセインは体力の急激な消耗により、疲労で眠ってしまった。
 これが色なしの少女と色ありの差だ。色なしでは、能力に限度(制限)があり、それを超えると一定時間能力が発動できなくなり、また急激な疲労感や眠気がおそってくる。
 しかし、真紀は色なしではなく、色ありの少女である。故に、制限はなく破壊の能力を存分に魔神にぶつけた。



《15時・現在トラップの設置は2つ》


 あと最低2つでトラップは完了する。しかし、

「グオオォォーーー!!」

燃え盛る炎は徐々に強まるばかりだった。
「こいつ、どんどん強くなってる」
そう感じてしまうほどだが、実際どういう原理かは分からない。だが、
「迷っている暇はない!」
突如、真紀のいた所に炎の渦があらわれた。そして、爆発と共にあらわれたのは、先程までそこにいた真紀ではなく、強固な鱗をもつ巨大なドラゴンだった。
 まさに、魔神vsドラゴンだった。ぶつかる巨大同士に、辺りに爆風の衝撃派をあたえる。しかし、それでも魔神の方が力は上だった。
 ドラゴンの鱗を剥がしていく魔神。それに対し鳴き叫ぶドラゴン。反撃に、ドラゴンの鋭い牙が魔神の首筋を狙って噛みつくも、ドラゴンの牙をもってしても、もはや奴に傷をつけることが出来なかった。
 炎の魔神は、首筋にかぶりつくドラゴンを振り払い、蹴りをドラゴンのはらわたにくらわす。うごめくドラゴンに魔神は、炎の拳の連打をあたえる。
 そして、限界がきたのかドラゴンは赤い光と共にきえ、真紀だけが残った。
 ぐったりと横たわる真紀の姿に、その一部始終を見ていたケイティは、口に手を当てた。

「グオオォォーーーー!!」

とどめとばかりに、無防備に横たわる真紀に、魔神は襲いかかった。
「駄目!」
ケイティはとっさに自分の能力を使ってしまう。
 魔神は動きを止め、拳を振りかざした手をそのまま自身の頭に向かって殴った。魔神はよろめき、倒れた。
「はぁ、はぁ。これでいいんだよね、マドさん・・・」
ケイティは能力の使用でかなり脳に負担がかかり、更に貧血状態になって倒れた。


《15時15分・トラップは残り一つで完了》


気を取り戻した魔神は立ち上がり、周りを見る。もはや立っているのはエリザベートだけだった。

「グオオォォーーーー!!」

魔神は最後にのこる彼女を次のターゲットにした。
「くそ、ここまでか」
魔神は、エリザに近きながらよだれを垂らす。ずっと見る魔神に、エリザは何も出来ないでいた。すると、先程まで倒れていた真紀が立ち上がった。
「エリザさん、私はまだいける。たがら、どんな強敵であろうと諦めないで立ち向かって!」
「真紀・・・・」
真紀の周りには白い光が無数に飛び、傷を癒していた。
「さすがに不死とまではいかないと思うけど、大抵の傷なら再生は可能。
 私はアイツを倒すまで諦めない!」


真紀と炎の魔神が睨み合う。


そして、遂に橙色との最終決戦へ。
《次回につづく》
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