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第1章 初めから終焉
勇者のテスト
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カンカンカンカン
こぎみよくリズムを奏でるその店は冒険者組合から門まで伸びるメインストリートの少し奥まった所にあった。
「ここは…武具屋か?」
店先には剣や鎧が乱雑に置かれていた。
「なんじゃ坊主?」
店の中からファンタジーでお馴染みのドワーフらしき男が出てくると、悠叶はここへ来た目的を明かす。
「なぁ、おっちゃん。シャベルって作れるか?」
「あぁ?シャベルだ?なんだそれ」
「こんな感じの道具なんだけどな」
悠叶が地面に絵を書きながら説明するとドワーフのおっちゃんは話に耳を傾けてくれた。
「して、お前さんはそいつをなんに使うんじゃ?そんなものを振るうより剣の方が切れるし武器にするならそっちの方が向いておるだろう?」
「まぁ、いいから一つ作ってくれよ。」
「…別に構わんが…お前さん金はあるのか?」
「いくらになる?」
「鋼鉄で作るなら2500シリカじゃな。」
「銀貨25枚か」
「なら大丈夫だ。いつ出来る?」
「…早くて今日の夕方、明日の朝には出来ておるぞ。儂も暇なんでな。」
「んじゃおっちゃん。それで頼むわ。はい、代金。」
「うおっいいのか?儂がとんずらするかもしれんのだぞ?」
「良いよ。そしたら…ころ…」
ドワーフの男は恐怖した。それは目の前にいる少年から発せられる常人成らざるさっきを感じたせいか、少年の虚ろで何も眼中にないという雰囲気の眼を見たからか…。体内から水分という水分が冷や汗となって滴り、先ほどの己の軽率な言葉を悔いる。
「何という目をしとるんじゃ…」
かろうじて出た言葉を相手が聞き取れたかは分からないがドワーフの男は彼が目の前からいなくなったことを自覚するまでその場に立ったままだった…。
一方その頃。メインストリートから外れ、人通りもほとんど無い路上で女と男が歩いていた。
「上から司令だ。13番。盗賊を使って勇者をテストしろ。以上だ」
「それではテストにならないと思うわ。」
「上からの指示だ。従え。」
「仰せのままに…。」
男はメインストリートに出た時点で雑踏に紛れてしまう。残された女に路地裏で息を潜めていたガラの悪い男が群がり始めるが女は気にするそぶりを見せない。
(さて、どうやって彼を差し向けようか…あの亜人を使うか?いや…)
見目麗しい女の顔は百年の恋が冷めるほど醜悪に歪み、ターゲットの少年達へ向けられる。
「ねぇ、17番?」
武器の注文を終えた頃にレイナも合流して一行は宿屋へ向かった。
「1泊頼む」
「へい。部屋は…」
「ふた…」
「一部屋で!」
「おい…」
「分かったぜ。んじゃ三人部屋一部屋で350シリカだ。」
「はい。」
銀貨3枚と大銅貨1枚を置く。
この世界では白金貨が10000シリカ、金貨が1000シリカ、銀貨が100シリカ、大銅貨が50シリカ、銅貨が10シリカとなっているらしく計算がしやすかった。
「あー疲れたぁ」
レイナは倒れ込むように別途に横になり、シャルロットはその場に立ち尽くす。
「ん?シャルもベット使ってて良いぞ」
『う…ん。』
「俺はちょっと出かけてくる。」
『ならボクも行く!』
「あーじゃあ行くか」
『うん』
「んー?出かけるの?」
「おう。ちゃんと鍵かけとけよ~」
「…分かった。」
『どこに行くの?』
『あぁちょっと外で試したいことがあったからな。』
『ふぅん…。』
露店でリンゴのようなものをいくつか購入し、二人で食べながら歩いていく。
『着いたぞ?』
『え?』
そこにあったのは本屋だった。薄汚れた店内にある本の大半は埃をかぶり、店主もぼんやりと虚空を見つめている。果たしてこれを営業している本屋と言えるのか疑問ではあった。
「おい、おっちゃん。」
「……」
「……おっちゃん?」
「……」
「おーい」
「……」
「ヘンジガナイタダノシカバネノヨウダ」
『まだ生きてるよ』
『いや、これはそういうネタなの』
『なるほど』
「おっちゃん?この本もらっていくぞ?」
金をカウンターに置き、本を1冊手に取ると2人は店をあとにした。
「そこのお二人さん、道をお尋ねしてもいいかしら?」
店を出た時、フードを目深にかぶった女に悠叶は話しかけられた。
「…誰だお前…。」
「別に怪しいものじゃないわ。ただ道を訪ねたいだけなの。」
「生憎だな。俺達も今日この街に来たばかりで道なんざろくに知りやしねぇよ。他をあたりな。」
「あらそうなの。それは残念」
「こんな所にいないで宿屋の彼女を探した方がいいんじゃない?」
「なっ」
すれ違う瞬間。意味深な言葉をかけ、女は消えた。
「今のは…?」
『分からない。でも、レイナ…大丈夫かな…』
「急ぐぞ?」
『うん。』
路地を駆け抜け、人を掻き分け、宿屋についた頃にはもう日が暮れかけていた。
「レイナ!?」
部屋の扉には鍵がかかっておらず、中はもぬけの殻だった。壁には1枚の羊皮紙が縫い止められておりそこには『外壁の外で待つ。紅の盗賊団』と書かれていた。
『レイナ…』
「さて、どうすっか」
『助けないと』
「外壁の外…か」
次々と起こる事件に悠叶は何かあるんだろうな~位に思っていた。その真意を確かめるためにも外壁の外で待っている盗賊団に話を聞かねばなるまい。
『シャル、影の中に入って貰ってていいか?』
『…今日は曇ってる。外壁の外だと影がなくなるから出られなくなる』
『そっか。』
外壁の外に出ると男が1人立っていた。
「よう、いい夜だな。」
「あぁ、そうだな。」
「女はこの先にいる。」
「そうか。じゃあ死ね。」
男の首を刎ね、先に進む。
「おいおい…だいぶ物騒じゃねぇか。」
「!?」
「この肉体がもったいねぇな」
「そうかい。」
悠叶は男の頭を消滅させると教えられた道を通っていく。
「おい!少年!」
「…誰だよ…。」
「俺だよ俺。」
「いや、俺の知り合いにゴリラはいないんだが…というかいつからついてきてんだよ。」
「ゴリラじゃねぇ。クラウドだよ!お前さんたちが血相変えて門から出てった時から付いてきてたんだがなんだ?どうしたってんだ?」
「お前に話す理由はない。」
「俺は衛兵だぞ?」
「ここは街の外だ。衛兵ならもう関係ねぇだろうが」
「うっ…確かに…でも壁の内側だけを守るのが衛兵さんの仕事じゃねぇんでな。何があった」
「お前に話す必要は無い。」
「連れないねぇまぁ俺は勝手についていくんでな」
「…勝手にしろ。」
道を進んでいくと汚いボロ屋が建っていた
『あそこ…?』
『あぁ、そうだろうな。』
「よぉ。ようやく来たかナイト様よぉ。」
「お姫様ならボスのとこだぜ。」
「そうか。」
「ぎゃぁ!」
「くっそっテメェら!ガキが来たぞ!」
『下がってて。』
『う…うん。』
シャルロットの周りに結界を発動させると盗賊共を駆逐していく。起き上がるものには四肢を切り飛ばしトドメをさしていく。
「…ぐっ…な…何故…」
「何故?お前らは俺の仲間に手を出した。ただそれだけだろ?」
「おー怖いねぇ。」
「お前、どこまで来る気だよ」
「盗賊団は壊滅させないとなッ」
クラウドも負けじと盗賊団を手にかけていく。
「なぁ盗賊団の討伐依頼は受けているのか?」
「受けてない。」
「まぁ、受けてなくても平気なんだ。この俺もいるしな」
「あぁ、そうかい。」
ボロ屋の中には男が2人とレイナがいた。
「おっとナイト様か。女を助けに来たってとこか」
「まぁ、そんなところだ。取り敢えず…死ね。」
「おいおい…物騒だな。こっちだって対策は立ててんだぜ?お前は不可視の攻撃が出せる。だがな?お前は俺達を視認しなければ攻撃できない。違うか?だから俺達は幻惑魔法をそこら一体に展開している。お前の攻撃が俺達に当たることは無いんだよ」
「ほー幻惑魔法使いか。厄介な連中だな」
「はっ、何を言い出すかと思えば…そんな事か誰に頼まれた?」
「依頼主のことは言えるはずないだろう?」
「そうか、なら死ね」
「ぐっ…なっ何故…だ何故、攻撃が当たるんだ…。」
「何故?なぜってお前見えているからに決まっているだろう?」
『右前方5m四方』
「今なら目を瞑ったままでもお前らを殺し尽くせるぞ?」
「ひっ…やっやめてくれ…全部頼まれたんだ!」
「誰に?」
ぐちゃりと湿った音がして2人組の片割れが肉塊へと変貌を遂げる。
「おっ女だ!名前は知らない。本当だ!俺達はただ金を貰って…。ガキをさらえとしか言われていないんだ!」
「そうか…。それで?お前は何を望む?」
「たっ助けてくれ!仕方なかったんだ!ガキを攫わなければ俺達が死ぬ。」
「そうか…女の風貌は?」
「暗かったし…顔は見ていない…。まっ待てぎゃぁぁ」
「ひゅぅ。」
「どうした?レイナ。行くぞ?」
「えっあぁ、うん。」
死体をあらかた処理すると悠叶達は宿屋へと帰還した。
「なぁ、そろそろ教えろよ。どうやって幻惑魔法を看破したんだ?看破のスキルでもあるのか?」
「簡単だよ。俺達は何人だ?」
「3人だ…あっ」
「そう、幻惑魔法の対象者は2人。あの部屋に入った時に居たのは俺とゴリラだけだったろ」
「ゴリラじゃねぇって。」
「ゴリラと俺は術中にかかった。正直狙ってやったにも関わらずピンピンしてる様は不気味だったよ」
「だからごりらじゃねぇ!つまりあの部屋の外に嬢ちゃんを配置して位置を聞き出していたと言うことか!?」
「まぁそんなところだ。」
「ユウト…。私…。」
『無事でよかった』
「シャルも無事でよかったってよ。」
「シャルロット…。」
その夜。街の領主のもとに伝令が届いた。
「なかなか面白そうな子でしょ?」
「…面白くなってきたな…。」
領主の部屋にすでに領主の姿はなく、今は物言わぬ躯だけが転がり、領主の席には男が座っていた。
「テストは合格ってことでいいわよね?」
「あぁ、申し分ないな。」
「引き続き監視はさせているわ。」
「そうか。しかし、奴はかなり鼻が利くみたいだ。十分注意しろ」
「ええ、わかっているわ。」
煌悠叶が転生してはや4日。世界は勇者に関心を寄せていた。その関心は世界の力関係をたやすく崩壊させてしまうことができると知っていながら…。
動き出した時間は元には戻らない。帰るに帰れないそんな実情を天界から笑うものが一柱いた。
こぎみよくリズムを奏でるその店は冒険者組合から門まで伸びるメインストリートの少し奥まった所にあった。
「ここは…武具屋か?」
店先には剣や鎧が乱雑に置かれていた。
「なんじゃ坊主?」
店の中からファンタジーでお馴染みのドワーフらしき男が出てくると、悠叶はここへ来た目的を明かす。
「なぁ、おっちゃん。シャベルって作れるか?」
「あぁ?シャベルだ?なんだそれ」
「こんな感じの道具なんだけどな」
悠叶が地面に絵を書きながら説明するとドワーフのおっちゃんは話に耳を傾けてくれた。
「して、お前さんはそいつをなんに使うんじゃ?そんなものを振るうより剣の方が切れるし武器にするならそっちの方が向いておるだろう?」
「まぁ、いいから一つ作ってくれよ。」
「…別に構わんが…お前さん金はあるのか?」
「いくらになる?」
「鋼鉄で作るなら2500シリカじゃな。」
「銀貨25枚か」
「なら大丈夫だ。いつ出来る?」
「…早くて今日の夕方、明日の朝には出来ておるぞ。儂も暇なんでな。」
「んじゃおっちゃん。それで頼むわ。はい、代金。」
「うおっいいのか?儂がとんずらするかもしれんのだぞ?」
「良いよ。そしたら…ころ…」
ドワーフの男は恐怖した。それは目の前にいる少年から発せられる常人成らざるさっきを感じたせいか、少年の虚ろで何も眼中にないという雰囲気の眼を見たからか…。体内から水分という水分が冷や汗となって滴り、先ほどの己の軽率な言葉を悔いる。
「何という目をしとるんじゃ…」
かろうじて出た言葉を相手が聞き取れたかは分からないがドワーフの男は彼が目の前からいなくなったことを自覚するまでその場に立ったままだった…。
一方その頃。メインストリートから外れ、人通りもほとんど無い路上で女と男が歩いていた。
「上から司令だ。13番。盗賊を使って勇者をテストしろ。以上だ」
「それではテストにならないと思うわ。」
「上からの指示だ。従え。」
「仰せのままに…。」
男はメインストリートに出た時点で雑踏に紛れてしまう。残された女に路地裏で息を潜めていたガラの悪い男が群がり始めるが女は気にするそぶりを見せない。
(さて、どうやって彼を差し向けようか…あの亜人を使うか?いや…)
見目麗しい女の顔は百年の恋が冷めるほど醜悪に歪み、ターゲットの少年達へ向けられる。
「ねぇ、17番?」
武器の注文を終えた頃にレイナも合流して一行は宿屋へ向かった。
「1泊頼む」
「へい。部屋は…」
「ふた…」
「一部屋で!」
「おい…」
「分かったぜ。んじゃ三人部屋一部屋で350シリカだ。」
「はい。」
銀貨3枚と大銅貨1枚を置く。
この世界では白金貨が10000シリカ、金貨が1000シリカ、銀貨が100シリカ、大銅貨が50シリカ、銅貨が10シリカとなっているらしく計算がしやすかった。
「あー疲れたぁ」
レイナは倒れ込むように別途に横になり、シャルロットはその場に立ち尽くす。
「ん?シャルもベット使ってて良いぞ」
『う…ん。』
「俺はちょっと出かけてくる。」
『ならボクも行く!』
「あーじゃあ行くか」
『うん』
「んー?出かけるの?」
「おう。ちゃんと鍵かけとけよ~」
「…分かった。」
『どこに行くの?』
『あぁちょっと外で試したいことがあったからな。』
『ふぅん…。』
露店でリンゴのようなものをいくつか購入し、二人で食べながら歩いていく。
『着いたぞ?』
『え?』
そこにあったのは本屋だった。薄汚れた店内にある本の大半は埃をかぶり、店主もぼんやりと虚空を見つめている。果たしてこれを営業している本屋と言えるのか疑問ではあった。
「おい、おっちゃん。」
「……」
「……おっちゃん?」
「……」
「おーい」
「……」
「ヘンジガナイタダノシカバネノヨウダ」
『まだ生きてるよ』
『いや、これはそういうネタなの』
『なるほど』
「おっちゃん?この本もらっていくぞ?」
金をカウンターに置き、本を1冊手に取ると2人は店をあとにした。
「そこのお二人さん、道をお尋ねしてもいいかしら?」
店を出た時、フードを目深にかぶった女に悠叶は話しかけられた。
「…誰だお前…。」
「別に怪しいものじゃないわ。ただ道を訪ねたいだけなの。」
「生憎だな。俺達も今日この街に来たばかりで道なんざろくに知りやしねぇよ。他をあたりな。」
「あらそうなの。それは残念」
「こんな所にいないで宿屋の彼女を探した方がいいんじゃない?」
「なっ」
すれ違う瞬間。意味深な言葉をかけ、女は消えた。
「今のは…?」
『分からない。でも、レイナ…大丈夫かな…』
「急ぐぞ?」
『うん。』
路地を駆け抜け、人を掻き分け、宿屋についた頃にはもう日が暮れかけていた。
「レイナ!?」
部屋の扉には鍵がかかっておらず、中はもぬけの殻だった。壁には1枚の羊皮紙が縫い止められておりそこには『外壁の外で待つ。紅の盗賊団』と書かれていた。
『レイナ…』
「さて、どうすっか」
『助けないと』
「外壁の外…か」
次々と起こる事件に悠叶は何かあるんだろうな~位に思っていた。その真意を確かめるためにも外壁の外で待っている盗賊団に話を聞かねばなるまい。
『シャル、影の中に入って貰ってていいか?』
『…今日は曇ってる。外壁の外だと影がなくなるから出られなくなる』
『そっか。』
外壁の外に出ると男が1人立っていた。
「よう、いい夜だな。」
「あぁ、そうだな。」
「女はこの先にいる。」
「そうか。じゃあ死ね。」
男の首を刎ね、先に進む。
「おいおい…だいぶ物騒じゃねぇか。」
「!?」
「この肉体がもったいねぇな」
「そうかい。」
悠叶は男の頭を消滅させると教えられた道を通っていく。
「おい!少年!」
「…誰だよ…。」
「俺だよ俺。」
「いや、俺の知り合いにゴリラはいないんだが…というかいつからついてきてんだよ。」
「ゴリラじゃねぇ。クラウドだよ!お前さんたちが血相変えて門から出てった時から付いてきてたんだがなんだ?どうしたってんだ?」
「お前に話す理由はない。」
「俺は衛兵だぞ?」
「ここは街の外だ。衛兵ならもう関係ねぇだろうが」
「うっ…確かに…でも壁の内側だけを守るのが衛兵さんの仕事じゃねぇんでな。何があった」
「お前に話す必要は無い。」
「連れないねぇまぁ俺は勝手についていくんでな」
「…勝手にしろ。」
道を進んでいくと汚いボロ屋が建っていた
『あそこ…?』
『あぁ、そうだろうな。』
「よぉ。ようやく来たかナイト様よぉ。」
「お姫様ならボスのとこだぜ。」
「そうか。」
「ぎゃぁ!」
「くっそっテメェら!ガキが来たぞ!」
『下がってて。』
『う…うん。』
シャルロットの周りに結界を発動させると盗賊共を駆逐していく。起き上がるものには四肢を切り飛ばしトドメをさしていく。
「…ぐっ…な…何故…」
「何故?お前らは俺の仲間に手を出した。ただそれだけだろ?」
「おー怖いねぇ。」
「お前、どこまで来る気だよ」
「盗賊団は壊滅させないとなッ」
クラウドも負けじと盗賊団を手にかけていく。
「なぁ盗賊団の討伐依頼は受けているのか?」
「受けてない。」
「まぁ、受けてなくても平気なんだ。この俺もいるしな」
「あぁ、そうかい。」
ボロ屋の中には男が2人とレイナがいた。
「おっとナイト様か。女を助けに来たってとこか」
「まぁ、そんなところだ。取り敢えず…死ね。」
「おいおい…物騒だな。こっちだって対策は立ててんだぜ?お前は不可視の攻撃が出せる。だがな?お前は俺達を視認しなければ攻撃できない。違うか?だから俺達は幻惑魔法をそこら一体に展開している。お前の攻撃が俺達に当たることは無いんだよ」
「ほー幻惑魔法使いか。厄介な連中だな」
「はっ、何を言い出すかと思えば…そんな事か誰に頼まれた?」
「依頼主のことは言えるはずないだろう?」
「そうか、なら死ね」
「ぐっ…なっ何故…だ何故、攻撃が当たるんだ…。」
「何故?なぜってお前見えているからに決まっているだろう?」
『右前方5m四方』
「今なら目を瞑ったままでもお前らを殺し尽くせるぞ?」
「ひっ…やっやめてくれ…全部頼まれたんだ!」
「誰に?」
ぐちゃりと湿った音がして2人組の片割れが肉塊へと変貌を遂げる。
「おっ女だ!名前は知らない。本当だ!俺達はただ金を貰って…。ガキをさらえとしか言われていないんだ!」
「そうか…。それで?お前は何を望む?」
「たっ助けてくれ!仕方なかったんだ!ガキを攫わなければ俺達が死ぬ。」
「そうか…女の風貌は?」
「暗かったし…顔は見ていない…。まっ待てぎゃぁぁ」
「ひゅぅ。」
「どうした?レイナ。行くぞ?」
「えっあぁ、うん。」
死体をあらかた処理すると悠叶達は宿屋へと帰還した。
「なぁ、そろそろ教えろよ。どうやって幻惑魔法を看破したんだ?看破のスキルでもあるのか?」
「簡単だよ。俺達は何人だ?」
「3人だ…あっ」
「そう、幻惑魔法の対象者は2人。あの部屋に入った時に居たのは俺とゴリラだけだったろ」
「ゴリラじゃねぇって。」
「ゴリラと俺は術中にかかった。正直狙ってやったにも関わらずピンピンしてる様は不気味だったよ」
「だからごりらじゃねぇ!つまりあの部屋の外に嬢ちゃんを配置して位置を聞き出していたと言うことか!?」
「まぁそんなところだ。」
「ユウト…。私…。」
『無事でよかった』
「シャルも無事でよかったってよ。」
「シャルロット…。」
その夜。街の領主のもとに伝令が届いた。
「なかなか面白そうな子でしょ?」
「…面白くなってきたな…。」
領主の部屋にすでに領主の姿はなく、今は物言わぬ躯だけが転がり、領主の席には男が座っていた。
「テストは合格ってことでいいわよね?」
「あぁ、申し分ないな。」
「引き続き監視はさせているわ。」
「そうか。しかし、奴はかなり鼻が利くみたいだ。十分注意しろ」
「ええ、わかっているわ。」
煌悠叶が転生してはや4日。世界は勇者に関心を寄せていた。その関心は世界の力関係をたやすく崩壊させてしまうことができると知っていながら…。
動き出した時間は元には戻らない。帰るに帰れないそんな実情を天界から笑うものが一柱いた。
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