罪と勇者

神崎 詩乃

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第1章 初めから終焉

ダイノー地下墓編その1

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「おーい、おっちゃん出来たか?」

 一連の事件が幕を下ろし、悠叶達は昨日訪れた鍛冶屋へ足を運んでいた。
「おお、お前さんか。ちょうど今さっき出来たところじゃ。お前さんたちあの盗賊団を潰してくれたんだってな」
「おお、おっちゃん耳早いな。何処から仕入れた情報だ?」

 安易な情報漏洩に少し怒りを感じながらドワーフの男を問いただすと男はすぐに口を割った。
「ッ衛兵さん達じゃよ!あークラウドって言ったかなその衛兵さんが騒いでいたのを聞いたんじゃ。じゃからそんな怖い顔するな。」
「…ふーんあの馬鹿か…」
「あぁ。これが商品じゃ。少し振ってみてくれ」

 ドワーフの男は一度奥に引っ込むと120センチほどの黒いシャベルをもってきた。
「黒いんだな」
「あぁ。黒曜鉄が余っておったのでな使ったんじゃよ。柄の方は黒曜鉄と鋼の合金じゃ。儂にしか作れん。」
「いいのか?そんなモン素性のわからない冒険者に渡して」
「大丈夫じゃお前さんは情報を売りさばくような奴ではなかろう?」
「まぁ…そうだけど…」
「あとは防具じゃな。黒曜鉄の装備が1式売れ残っておる。装備してみるか?」
「ん、あぁ。」
「ユウトー何それ武器?」
「おう。こいつは武器にも道具にもなるアイテムだ」
「へぇ。」
「こいつはな、先の方に刃が付いていて切れるし、重さもあるから鎚としても使える。その際、音もしない。更には穴も掘れる。スグレモノなんだ。」
「へ、へぇ。」
「第一次世界大戦では…いや、何でもない。」
「と、とにかくすごい武器なんだね」
「そっちのお嬢さんたちの防具はどうする?」
「私は大丈夫です。聖霊の加護がついた装備を身につけてますから。」
「ほっほっほそうか。ならそっちのお嬢ちゃんはどうだ?」
「…わ…」
『私は暗殺者だから軽い防具がいい。』
「?わ?」
「あぁ…えっとおっちゃん。軽い防具がいいそうだ。」
「お、おう分かった。ならこいつをやろう。浮遊トカゲの革装備じゃ。軽くて防御性能も申し分ないぞ。」
「浮遊トカゲ!?そんな高価な素材…いいんですか?」
「おう。持ってけ。どうせこんなボロい鍛冶屋にあっても埃をかぶるだけじゃ」
「…あ…」
「ありがとう。だってさ。おっちゃんこいつらの代金は?」
「要らんよ。金なら昨日貰ったしな。」
「要らんて…絶対昨日の金額以上するだろこれ。」
「いいってことよ。」
「おっちゃん。名前は?」
「ガゼル。ガゼル・アルフォードじゃ。」
「俺はカガヤ・ユウト。宜しくな。」
「お、おう…宜しくなユウト。」

 早速防具を着込み、シャベルを背負うと金髪の大男ゴリラが走ってきた。銀色の鎧を身にまといながら走っているからには相当な筋肉があるのだろう。
「おーい」
「あっユウト、クラウドさんだ」
「よう、お嬢ちゃん昨日ぶり。元気そうで何よりだ。」
「用件を言えゴリラ」
「ゴリラじゃねぇって言ってんだろガキ!」
「ガキじゃねぇ。ユウトだ。覚えとけゴリラ」
「お前こそ覚えろや。クラウドだク、ラ、ウ、ド」
「昨日の一件をギルドに報告するだけであとは他言無用だと言ったはずなのに方方で語ってるみたいのクラウドさんが昨日登録したばかりの他所もんに何の用だよ」
「あ…バレたか…。そんなことより!ギルドからお前らを見つけたら連れてくるように言われたんだ。取り敢えず来てくれ。」
「…お前衛兵じゃねぇのかよ…」
「衛兵だぞ?より正確に言えば『クーロン帝国第七師団団長兼冒険者組合副組合長』クラウド・ナーベラルだ。」
「あぁ、あの受付嬢の手下兼衛兵のお偉いさんと」
「なっ何故彼女がギルド長だと知っている?」
「まぁ事情があんだよ。」
「そ、そうなのか…」

 悠叶達はクラウドに案内されると受付の奥の部屋へ連れていかれた。そこにはギルド長のカムイが腕を組んでおり、強面の冒険者顔負けの威圧を放っていた。
「何の用だ」
「あなた達、あの『紅き盗賊団』を壊滅させたらしいじゃない。クラウドから報告を受けているわ。大した腕ね。昨日登録された冒険者の腕とは思えない。」
「あぁそうかい。話はそれだけか?なら帰るぞ?」
「待って。その腕を見込んでお願いがあるの。あなた達教会の関係者何でしょ?」
「あぁ、まぁな。」
「お願い。この都市を助けて。」
 高圧的な態度から一転深々と下げられた頭に一同は困惑した。
「…な…に」
『何があったの?』
「ギルド長、シャルが何があったか教えてくれってよ」
「え?受けてくれるの?」
「話次第だ。」
「実は…この街の墓場で…アンデットとかレイスが大量に発生してて…。」
「ん?それにしちゃ落ち着きすぎじゃないのか?」
「都市内部には魔物封じの結界があるから中までは入ってこれないの。でも…」
「でも何だよ」
「この街の墓は地下にあるの。都市と墓場を繋ぐ扉が破壊されれば…アンデット達が溢れ出すことになるわ。そうなってしまえば大パニックよ。何人もいえ、何百人も死ぬことになってしまう。」
「それで?」
「え?」
「アンデットもレイスも冒険者がいれば事足りるんじゃないのか?」
「そうなんだけど…。先遣隊の報告によれば新種がいるらしいの。新種の討伐は教会関係者しか出来ないわ。」
「なるほど。この街には墓守、聖職者はいないのか?」
「いるわよ」
「なら…」
「先遣隊として派遣されてる。ただ…生存は絶望的。」
「なるほど。それで俺たちに白羽の矢がたったわけか。」
「白羽…?とっとにかくお願いよ。これはギルドからの正式な要請よ。」
 しばしの沈黙の後レイナが口を開いた。
「ユウト、君はここにいてもいいんだよ。教会に正式に加入しているのは私だけだから。」
「レイナ…大丈夫引き受ける。だが、如何せん情報が少なすぎる。あと、終わりが見えない。アンデットの数は?」
「恐らく…数千…」
「そんなに!?」
「あとは現地合わせでやるしかないか…」
「え?何?」
「地下の墓場まで案内してくれ。」
「え、えぇ。」

 一行は準備を整え、都市ダイノーの中央部へと向かった。そこに建つ鎮魂の鐘という建物から地下へと降りる。
 エレベーターのような乗り物に乗ると大きな木製の扉が目に入った。

「ここから先はあなた達に一任するわ。私達は此処で待ってるから。」
「わかりました。」
『アンデット…臭い…』
「シャル、ここから分かるのか?」
『凄くたくさんの死体の臭いがする。』
『それだけ分かれば十分だ。』

 木製の扉をくぐるとそこは異界と言っても差し支えないほどだった。
 至るところで腐りかけた死体が、浮遊する半透明の何かが蠢いている。死臭と腐臭が入り交じった中、悠叶達は先へと進む。

「このまままっすぐ行けば中央管理施設みたいだ。」
「ユウト、ここの設計図でも見たの?」
「むしろ設計図を見て理解できると思うか?」 
『ユウトは空間魔法使えるの?』
『内緒だ。冒険者は自分のスキルを喋っちゃダメなんだよ』
『なるほど。』

 実際悠叶はシャルロットの言う通り空間操作を使っていた。自分の魔力を極限まで薄くし、空間操作で空間、敵の位置等を把握していたのだ。

【魔力操作がLv.2になりました、固有スキル・魔力自動回復を獲得しました】

「次の角にスケルトン3匹。」
「スケルトンは頭を潰せば大丈夫だよ」
「了解!」
『ストップ。何かいる。』
「ストップデカイな」
「でかい?」
「あぁ、3m以上はあるぞ」
「もしかしたらブッチャーかもしれない。気をつけて。」
「危険なのか?」
「危険ね。3人で相手するような奴じゃない。ブッチャー単体で最悪都市が滅ぶわ。」
『ブッチャーは体力が多くて聖属性に耐性がある珍しいアンデット。』
『珍しい?』
『うん。詳しくは知らない。』 
「レイナ。ブッチャーは珍しいのか?」
「え?まぁ、珍しいね。普通そこまで育つ前に討伐されるから。」
「ふうん。そろそろ会敵するぞ。」
「え!?ブッチャーと戦うの!?」
「その方が早い」
『…大胆というか…無謀というか…』
「大丈夫。」

 中央管理施設。大きな墓場で墓守が勤務しアンデットやレイス、墓荒らしなどを監視する施設は壊滅していた。
「ぐちゃり」「ぐちゃり」

 崩壊した壁には百舌鳥の早贄のように内蔵を掻き出された死体がへばりつき、濃厚な血の臭いが充満する。
そんな血の海に浮かぶように死体を喰らうアンデットがいた。

「うぉ…吐きそう」
「ユウト、今更何言ってんの?何か作はあるのよね?」
『こっちに気づいた。』
「嘘でしょ!?」
「とりあえず…中ボス戦だ。」

「ウボォァァ」

「うわぁ…キモ…」

 迫る腐りかけた顔。よく見れば口元からは人の足らしき残骸が垂れ下がっている。血の臭いと肥大化した体から発せられる腐臭がさらに気分を悪くさせる。
 悠叶はシャベルを構えると口元から笑みを零した。
その笑みは見たものがゾッとするような暗く残酷な笑みだった。

「お前らに…引導を渡してやるよ…安らかに死ね」

 
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