罪と勇者

神崎 詩乃

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第2章 世の理

犯行声明

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 アメニア王国とクーロン帝国の戦争が激化し始めたある日。世界各都市に設置された魔法通信並びに映像回線まで軒並みがジャックされた。

「あーえーゴホン。あー聞こえているなら問題は無い。そのまま聞け。」
「我輩は大罪人。強欲のグリードである。」

 放送者の魔力を波のように放つことで遠方へ送るこの技術はまだ発展途上で画質や音質は最低。しかも高価な為一般家庭にはまだまだ普及していなかった。

 今戦場浄化の拠点にそんな魔導機器があるのはひとえに娯楽の為カムイがギルドの備品を拝借してきたからである。

「えーと我輩並びに同胞からの要求は一つである。現在、我々は同胞たちと国家を立て、アメニア王国と国交を開き、同盟国の契を交わしている。今、アメニア王国とクーロン帝国の戦火は拡大する一方で、同盟国として我々は胸を痛めている。我々は協議の結果この戦争に介入する事にした。」

「マジかよ…。」
「どうかしたのか?」
『帝国は今ようやく王国を押し返してきてる。そこに新勢力が介入すると立て直すのに時間がかかる』

「我々は強い。邪悪な帝国兵を根絶やしにするため我々は拙いが花火を用意させてもらった。おや?花火をご存知ない?ならば結構。刮目せよ!」

 映像にはこの世界には相応しくない程近代的なミサイルが映し出された。それも1発や2発ではない。大量のミサイルが空いっぱいに広がっていた。

「!?」

 悠叶は映像データを頼りに転移を実行する。魔力の流れを悟ってかシャルロットも悠叶の影に溶け込み同行する。

「あっちょっユウト!?」

今回もお留守番をくらったレイナの機嫌は急降下し、クラウドとカムイが宥める羽目になった。

「っと…結構あるな…取り敢えず失せろ」

 悠叶はミサイルを格納するとそのまま先ほどグリード達がいたであろう場所に記憶を頼りに転移させる。

 転移させた瞬間腹に響く爆発音が聞こえ、爆炎が上がる。

『ユウト、あれ何?』
「ミサイルだ。」
『ミサイル…?』
「んー爆弾。分かる?」
『爆弾?』
「まぁ人殺しの兵器だよ。」
『危険なの?』
「あれ見てみ。あれをくらって平気な人間ならそいつは…。」

「はっはっはぁ。さすがに今のは効いたなぁ。」
「おい…あいつ人間じゃねぇだろ…」
『……。グリード…?』
「そうとも。亜人の娘よ。」
「亜人の娘…?」
「おぉ、お前がユウト・カガヤかさっきのお返しはちとキツかったぞ?」

 そこにあったのは生首だった。それも爆発のせいで顔の半分が吹き飛んだまま笑っていた。
 スプラッター映画よりもひどい顔である。

「おい、それで?なんで生きてる?」
「ひどい言い草だな。ミサイル打ち込んどいて…。」
「知るか。」
「クックッ我輩たちのような所謂大罪人共は死ねんのだよ。我々の存在は罪、そのものなのだ。そう簡単には死なん」
『あのミサイル?が私たちの国に撃ち込まれてたらどうなったの?』
「さぁな。沢山人が死んだんじゃないか?」
『……。こいつ…。』
「いいじゃないか。人が何人死のうが我々には関係ない。関係ない奴が何人、何万人死のうが人間は腐るほどいるんだ。少しくらい死んだところで何にも感じんだろ?」
『下衆が…。』
「おいおいそんなに起こるなよ。美人が台無しだ。」
『……お前らが殺る気ならボクだって負けない。皆殺しにしてやる。』
「はっ獣風情が何を言うか…。」
『……うっ』
「シャル!」

 グリードの言葉にシャルロットは激怒した。シャルロットが普段隠している尻尾が現れ、角もグングン伸び、口元が邪悪に歪む。

「そうだ。貴様の欲を我輩に見せてみろ。我輩達をもっと楽しませろ」
「…うがァァァ」
「落ち着け、シャル!シャル!」

 そこに居たのはシャルロット・マーキュリーでは無かった。大きな角を眉間から生やし、赤い瞳で獲物を探る獣のような姿だった。

「シャル!」

 シャルロットの目は虚ろだった。まるでなにかに操られるようにそこらで転がっている人間の首を撥ねていく。首だけのものには容赦なくかかと落としを決め、文字通り粉砕しながら進んでいく。

 シャルロットが進むその先には子どもがいた。
 子どもは今回の一件で誰かを亡くした様で人間だった何かを抱えて泣いていた。

 シャルロットは進む。
 死に神として、死を告げるものとして、滅亡の権化として。そして子どもの前で立ち止まるとその小さな首を撥ねる為に腕を振った

「いっつ」

 シャルロットが腕を振った瞬間、裕翔の腕が飛んだ。
 血が一気に吹き出し出血のせいで意識が飛かけるも何とか耐えてみせる。
「シャル、落ち着け。もうお前はその姿になる必要は無い。お前1人で闘うことはしなくていい。な、落ち着け。お前がこいつらを皆殺しにした所で物事が好転することは無いんだ。こんなヤツらに踊らされて悔しくないか?」
「……。」
「シャル、強い力には必ず反動がある。な、その力はお前の生命を吸って力に変えてる呪われた力なんだよ。俺はお前に死んで欲しくない。もう失いたくはないんだよ。な、落ち着け。」
『…………。ごめん……なさい……痛かったよね…あ…と…どうしよう。』
「大丈夫。このくらいならスグくっつければ何とかなる。」
「ほっほっ何と素晴らしい光景か…いやぁ本当に。これだから人間は興味深い。素晴らしい。良き余興だった。」

「そうか…じゃあそのまま冥土で語ってろよ。」
「そうもいかないんだよなぁ。」
「おい、バニティー。そこにいるのは分かってんだ。この薄汚ぇ喋る生ゴミをさっさと処分しろよ。」

「……あのさぁ、ほんとどういう仕組みなんだよ何で俺のいる場所わかんの」
「早く持ってかねぇと地中深く埋めんぞ?」
「…何故だ?」
「何故?何がだよ。」
「お前は大罪人を恨み、殺してしまいたいんだろ?それなのに何故今、グリードを始末できるこのタイミングでグリードの逃亡を手助けをする?」
「どれだけ罪を償おうがお前らのしたことを許すつもりは無いし殺してしまいたくもある。だがな、やるなら全員だ。全員まとめて地獄に落してやる」
「ほう、そりゃ怖いな。」
「分かったらそこの生ゴミ持って失せろ。」
「あぁ、分かった。」
 そう言うとバニティーはグリードの頭を掴むとどこかへ消え去った。
『ごめん…。迷惑ばかりかけて…。』
「はっ、シャル、生きる以上は誰かに迷惑をかけていくもんだ。だから、気にしなくていい。だけど、お前はもう少し自分を大切にしろ。」

 その手は優しく、シャルロットの頭を撫でた。

「他に方法はなかったとはいえ今回は危険すぎたなグリード。」
「はっはっは。そうだな。我輩も身体を一つ失った。だが、わかった事があったぞ。」
「ほう、聞かせてくれよ」
「あの小僧。奴の能力はズバリ転移系と見た。」
「は?それだとあいつが俺のいる場所を正確に当てることが出来る理由にならないんだが?」
「む、それもそうだな…。誠面白い小僧だ。」

 グリードは豪快に笑うとバニティーは1人ため息をつくのだった。
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