衛生兵を呼べ! 〜異世界医療ファンタジー〜

神崎 詩乃

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白き魔女と会談?

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 時は少し巻き戻る。
 ユリアは荒原を飛んでいた。
「あーもう最悪。何、あれ」
『飛行型魔獣だな。あれの進行方向、俺らと同じだ。』
『背に嫌なものを乗せておりますね。』
「そういうの分かるんだ」
『呪具は呪いが識別できますから』
「なら、ブラッドも出来たはずだよね?呪具だし」
『伝えなかっただけっておい!引っ張るんじゃねぇ』
「あんた分かってたのに主に何も伝えてなかったってことでしょ?大罪だよ略式起訴して有罪だよ」
『反論の自由はねぇのかよ』
「人権取得してから言ってよ」
『最悪の主だ』
『息ぴったりで少し妬ましいのですが』
「取り敢えずあの魔獣を堕とさなきゃこのままじゃこの先の砦が攻撃される。」
『兵士が幾人か出てきてるし大丈夫だろ。』
「ジャービス、ちょっとごめんね。」
「キュル!」
 飛竜ジャービスの背中に括り付けられた雑嚢から一冊の本を取り出すと指先に傷をつけ血を羽根ペンに吸わせていく。
「弓術式はちょっと苦手だしそもそも攻撃魔法って私持ってないんだよね」
『槍やら短剣やら振らせれば様になってると思うが?』
「物が有れば良いけど今回のは単純に攻撃魔術だから私は苦手」
『成程、だから陣にて強化を行い、精度向上を行っているのですね』
「そういう事。」
 術式を完成させると魔力を注ぎ、本から真紅の弓と矢が現れた。
『私ならば奴を簡単に仕留められますのに』
「サクラを使って万が一敵に逃げられると対策されそうだから……取り敢えずあの魔獣叩き落す」
 飛竜に騎乗した状態での空中攻撃は困難を極めるが卓越した魔法操作技術と飛竜の信頼が後押しする形で難なく術式は起動し飛行型魔獣を殺害、地に叩き落とすことに成功した。
「やれやれ。」
 落とした獲物の上をしばらく旋回飛行していると獲物の中から何体かの魔獣が確認できた。
「まだいるの……。」
 それ等はみるみるうちに隊列をなし、二百近い軍団になっていく。
「ジャービス、近くに降ろして。流石にあの物量じゃあんな砦一溜りもないわ」
「キュル。」
ジャービスを伴い、近くに降りるとその様子を見られたのか魔獣たちが動き出した。
「ギャッギャッ」
「ニンゲン。コロス。」
「コロス!」
「あーあ。私何もしてないのに」
『こいつらを叩き落としたのはお前だろうが』
「自力で飛べない連中は地に足つけて生きた方がいいよ」
『お前……は飛行魔法があったな』
 飛んできた火球を即席の土壁で防ぎ、矢は槍で打ち払う。接近してきたゴブリンの顔を石突で粉砕し、真っ赤な花が戦場を彩った。
『囲まれるな。囲まれたら死ぬぞ』
「一対二百だもんね!『咲け』!」
 ちょこちょこと動き回りながら種を撒き、蔦花を咲かせる。蔦で敵の動きを制限し囲まれないようにひたすら動く。
「キュルガ!」
 蔦で絡め取られた敵がジャービスの吐いた炎で焼かれている。
「ごめん訂正二対二百!ジャービスありがとう。」
「キュル!」
 圧倒的な戦力差も魔法と技術で埋めていき、蓋を開けてみれば鏖殺と言ってもいい形となった。
「なんという事だ……。あれは誰だ?」

 いっぽうそのころ、戦場からは程近い砦では戦いの行方を見ていた。

「あの……白い髪。あれはユリア・グラフニール中尉ですね。」
「あの標……医療班か……。何故単身で……。」
「一先ず援軍の要請をせねば!」
「本部!本部!こちらエグレス班!至急援軍をお願いします!」
『こちら本部!何があった!』
「敵魔獣の強襲です!数凡そ二百!」
『分かったアンドレア班を回す!持ちこたえられそうか?』
「その事なんですが……既にユリア中尉が交戦中でして。周囲一帯に蔦花が展開され、近寄ることができません!」
『……ユリアとは……ユリア・グラフニール中尉か?』
「はい。そうです。」
『後ほど司令本部に顔を出すように伝えておけ。』
「承知致しました!」

「む、嫌な予感がする。」
『あとえぇっと八十匹位だな』
「まだそんなに!?もう疲れたよ」
「キュルガ!」
『あと七十匹になった』
「じゃあこれで終わりだね。ジャービス!」
「キュル!」
 槍に着いた血液を振り払い、術式を完成させる。足元をよく見ると大地には赤い魔法陣が書き込まれ、発動待ちとなっていた。
「落ちな!『堕天フォールンダウン』!」
 かつて超重力魔法と呼ばれる魔法が存在した。その魔法は星の重力を増加させる術式で、多重展開する事によりさらに効果を増したという。

「グッグオォォォォ!!」
立つこともできない超重力を受け、魔獣たちは全員地面に顔を押し付け、潰れていった。
『うわ~エッグ』
「ブラッドが言うな。ったく……」
 飛行型の魔獣の上に降ろしてもらうと、少し離れた所に砦に詰めていた兵士が見えた。その表情は憧憬に満ちており、何やら無線機に伝えている兵士も見える。

 その後フィードにバレていたようで司令本部に来るように厳命されてしまった。
「あー行きたくない。」
『どうせ遅かれ早かれここに来いと言われただろうよ。』
『そうかもしれません。一応主様の仕事は終わっておりましたし……。』
「既に近くにいるのは分かっている。さっさと入れ。ったく……。」

 中に入ると金髪の青年が不機嫌そうな顔をしていた。隣にはいつものようにアイリスが控えている。

「相変わらず凄い察知力だよね。そんな不機嫌な顔してると不機嫌な顔が素になっちゃうよ?」
「……うるさい。誰のせいで……。重傷者の手当てご苦労。それで?戦況は?」 
「既に情報は得ているでしょうに」
「お前から見てどう感じた?」
「私は将では無いのよ?ただ……そうね。厄介な連中が出ているようよ。ほらコレ。」
「ちょっと!ユリア!?」
 隣で控えていたアイリスが即座に飛び出し、黒い盾を突き出した。
「何を考えているの?」
「アイリスのテスト?」
「……。殿下、ユリアを一日好きにしていい許可をいただけませんか?」
「当事者同士で話し合え。俺は知らん。それで?アイリスがそこまで反応するってことはだいぶ危険なようだな。」
「焔の呪いが刻まれた焼夷弾だからね。これを空からパラパラと振りまく予定だったみたい。」

 瞬間フィードの顔色が青くなりアイリスの背後に隠れた。
「なんてものを世間話するような気軽さで持ってくるんだ!」
「対策しないとこれが街に降り注ぐことになるよ?」
「あーそのことだが、魔族の使者が来てな会談を執り行うことになった。」
 寝耳に水なその情報に一瞬反応が遅れてしまった。
「……。どうしてそんな急に……?」
「知らん。どうも魔族側も一枚岩というわけではないらしい」
「誰が対応するの?」
「俺、アイリス、ユリアだろうな」
「どうして私まで?」

 フィードは最高司令官であり帝国の次期皇帝。アイリスはフィード付きの護衛。私は一介の衛生兵。一緒に会談に臨める立場ではない。
「相手は魔族だ。だが、会談という建前上あからさまな戦力は置いておけない。そこで単体で軍に匹敵するが見た目から戦力に見られにくいお前が……。」
「納得はしたけど他の人の反発は?」
「黙らせた。」
「あっそう……。分かった。」

 魔族側に何か思惑が見え隠れする会談……。
 大陸内に存在する派閥の歯車は既に回り始めていた。
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