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皇子と魔族の会談
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魔族達が会談を求めてから三日経ち、遂に交渉相手となる使者がやってきた。
「お初にお目にかかるウドガルド帝国第一皇子フィード・アルシュ・ウドガルドだ。ここでの総司令を任されている。」
「これはご丁寧に。魔族会族長シュレインと申します。まずは今回の会談の席を設けていただき誠にありがとうございます。」
山羊の様な頭の魔族は恭しく礼をした。
「何、そちらからの申し出だ。無碍にはすまいよ。」
「寛大なお心に感謝致します。」
「所で……貴方たちは対話をする際に言葉に魔力を乗せるのか?」
「ッいいえ。そのような事はございません。失礼致しました。私も緊張していたようです。」
「ふっそうか。貴方からしてみればここは敵地。緊張していないようならそれは蛮勇というもの。実りある対話にしたいと思っている。」
「こちらこそでございます。」
シュレインは席につき、襟を正すと深々と礼をした。
「それでは。早速ですが、本題に入らせていただきます。此度の戦争についてです。」
「ほう。」
「此度の戦争は既に長い時間がかかっております。このままでは魔国側に甚大な損害が出ることでしょう。そこで停戦の協定を結びたく参った次第でございます。」
「停戦……か。成程。それにしても随分と簡単に弱点を晒すのだな。」
「こちらから始めた戦とはいえこれ以上の戦争は不毛と愚考しております。」
「貴方の独断かな?」
「魔族会の総意と考えてもらって結構です。」
「すまない。貴方たちの政治形態は我々に伝わっていないものでな。宜しければ教えて頂けないだろうか?」
「それはそれは。分かりました。ご説明しましょう。まず、我々は魔王様を頂点に魔族会という組織が政治を司っております。帝国に置き換えますと元老院のようなものですね。魔王様とて魔族会の決定を否定することはありません。」
「ほう。帝国の元老院をご存知とは勉強熱心なものだ。」
「恐れ入ります。」
「しかし、勉強済みというのであれば我が国も元老院を通さねば国が納得しないのも分かってもらえるだろう。」
「はい。その通りでございます。」
「ならばこの話は一度本国の議会を通してからにして貰えないか?停戦とはいえお互いの賠償の話もあるだろうからな。」
「いいお返事を期待しております。」
「その間は両陣営全ての戦闘行為を禁止しようではないか。我々も撤退している背中を攻撃されては困るからな。」
ヤギ面でも分かる苦虫を噛み潰したような顔。どの口でほざきやがるとでもいいたそうである。
「……承知いたしました。我が国の軍にも伝えましょう。」
「私は口約束を信用しないものでな。そうだ、紙に一筆認めようでは無いか?ユリ、紙をくれ。」
「……はい。どうぞ。」
「では私めの名で」
「さて、これで仮ではあるが停戦協定が交わされた訳だ。アリス、各方面に交戦の中止と国境線までの撤退を連絡してくれ。」
「……はっはい。殿下」
「では、私も部隊のものに至急交戦の中止を通告してまいりますのでこれにて。」
「あぁ。よろしく頼んだ。」
シュレインと名乗った魔族の顔には幾本もの青筋が浮かんでいる。正直フィードの挑発にここまで耐えたのだ。停戦をしたいのは確実なのだろう。
シュレイン一行が陣を出た後、フィードは机に突っ伏して訊ねた。
「ユリ、奴らの痕跡や仕込みは?」
「……無いからその名前の変更やめてくれる?」
「アドリブにしては上手いだろ?」
「一文字抜いただけじゃない。」
「十分なんだろ呪術的には。」
「……まぁ、そうだけど。」
「殿下……魔族の人滅茶苦茶怒ってましたよ?多分。」
「まぁな。奴らの国を国として認めないような言い方に俺の尊大な態度。プライドの高い奴らの事だ何かしら打ってくるだろうよ。」
「ヤダヤダ。喧嘩腰外交。」
「アイリス、直ぐにこの話を元老院のジジィ共に投げてくれ。あと親父にも連絡しなきゃな。ユリア、帝都まで動いても平気か?」
「はい。」
「人を便利な乗り物が何かと勘違いしてない?」
「できないのか?」
「できるけど。」
「ならやってくれ。」
「……はい。」
「お前なぁ~アイリスを見習ったらどうだ?」
「多分そろそろ……。」
司令部のテントの外に何かが降り立つ音がした。
「やっぱり来ちゃったか。」
「キュル」
「うぉっジャービス……どうしたんだ?」
擦り寄るジャービス。その行動は幼い子が母に甘える姿を彷彿させた。
「どうしたの?ジャービス。」
「キュル……キュガー」
「そっか、怖い夢見ちゃったのね。安心しなさい。大丈夫だから。」
中型に分類される飛竜が素直に人間の少女に甘える姿はフィードとアイリスを驚かせるには十分だった。
「ユリア……竜の言葉分かるの?」
「何となくね。それにこの子昔から甘えん坊だから。」
肩を竦めつつ相棒の頭を撫でる。落ち着いたのかジャービスは目を細めながら気持ちよさそうにしている。
「やれやれ、移動は明日だな。」
「書簡だけ鷹を出しておきますね。」
「あぁ。そうしてくれ。」
「魔族の次は国内の魔族って大変ね皇子様は」
「そう思うなら手を貸してくれ。」
「私は治癒士だよ?国の癌は対象外だね。」
「そんな癌が己の領域を侵そうするなら烈火のごとく駆逐するくせに」
「フィードも同じでしょ?」
「……まぁ、そうだな。……それで……どうして中に引き入れたんだよ!」
司令所の中に堂々と入り込み、寝息を立てている飛竜を指さしフィードは抗議した。かなりスペースをとっている。
「秋とはいえ、外で寝るには寒いもの。こうなったこの子は暫く私から離れないの。」
「甘やかすなよ……。」
そこに慌てた様子で一人の兵士が駆けてきた。
「失礼します……うわっ」
「……どうした?」
「停戦の話を聞いた傭兵たちが契約と違うと兵士たちと揉めておりまして……。」
「だろうな。よし、仲介しに行くか。アイリス、ユリア、行くぞ?」
「……はい。」
「ただ今準備致します!」
パタパタと忙しそうに走り回るアイリスの姿がどこか長閑に見えた。
「お初にお目にかかるウドガルド帝国第一皇子フィード・アルシュ・ウドガルドだ。ここでの総司令を任されている。」
「これはご丁寧に。魔族会族長シュレインと申します。まずは今回の会談の席を設けていただき誠にありがとうございます。」
山羊の様な頭の魔族は恭しく礼をした。
「何、そちらからの申し出だ。無碍にはすまいよ。」
「寛大なお心に感謝致します。」
「所で……貴方たちは対話をする際に言葉に魔力を乗せるのか?」
「ッいいえ。そのような事はございません。失礼致しました。私も緊張していたようです。」
「ふっそうか。貴方からしてみればここは敵地。緊張していないようならそれは蛮勇というもの。実りある対話にしたいと思っている。」
「こちらこそでございます。」
シュレインは席につき、襟を正すと深々と礼をした。
「それでは。早速ですが、本題に入らせていただきます。此度の戦争についてです。」
「ほう。」
「此度の戦争は既に長い時間がかかっております。このままでは魔国側に甚大な損害が出ることでしょう。そこで停戦の協定を結びたく参った次第でございます。」
「停戦……か。成程。それにしても随分と簡単に弱点を晒すのだな。」
「こちらから始めた戦とはいえこれ以上の戦争は不毛と愚考しております。」
「貴方の独断かな?」
「魔族会の総意と考えてもらって結構です。」
「すまない。貴方たちの政治形態は我々に伝わっていないものでな。宜しければ教えて頂けないだろうか?」
「それはそれは。分かりました。ご説明しましょう。まず、我々は魔王様を頂点に魔族会という組織が政治を司っております。帝国に置き換えますと元老院のようなものですね。魔王様とて魔族会の決定を否定することはありません。」
「ほう。帝国の元老院をご存知とは勉強熱心なものだ。」
「恐れ入ります。」
「しかし、勉強済みというのであれば我が国も元老院を通さねば国が納得しないのも分かってもらえるだろう。」
「はい。その通りでございます。」
「ならばこの話は一度本国の議会を通してからにして貰えないか?停戦とはいえお互いの賠償の話もあるだろうからな。」
「いいお返事を期待しております。」
「その間は両陣営全ての戦闘行為を禁止しようではないか。我々も撤退している背中を攻撃されては困るからな。」
ヤギ面でも分かる苦虫を噛み潰したような顔。どの口でほざきやがるとでもいいたそうである。
「……承知いたしました。我が国の軍にも伝えましょう。」
「私は口約束を信用しないものでな。そうだ、紙に一筆認めようでは無いか?ユリ、紙をくれ。」
「……はい。どうぞ。」
「では私めの名で」
「さて、これで仮ではあるが停戦協定が交わされた訳だ。アリス、各方面に交戦の中止と国境線までの撤退を連絡してくれ。」
「……はっはい。殿下」
「では、私も部隊のものに至急交戦の中止を通告してまいりますのでこれにて。」
「あぁ。よろしく頼んだ。」
シュレインと名乗った魔族の顔には幾本もの青筋が浮かんでいる。正直フィードの挑発にここまで耐えたのだ。停戦をしたいのは確実なのだろう。
シュレイン一行が陣を出た後、フィードは机に突っ伏して訊ねた。
「ユリ、奴らの痕跡や仕込みは?」
「……無いからその名前の変更やめてくれる?」
「アドリブにしては上手いだろ?」
「一文字抜いただけじゃない。」
「十分なんだろ呪術的には。」
「……まぁ、そうだけど。」
「殿下……魔族の人滅茶苦茶怒ってましたよ?多分。」
「まぁな。奴らの国を国として認めないような言い方に俺の尊大な態度。プライドの高い奴らの事だ何かしら打ってくるだろうよ。」
「ヤダヤダ。喧嘩腰外交。」
「アイリス、直ぐにこの話を元老院のジジィ共に投げてくれ。あと親父にも連絡しなきゃな。ユリア、帝都まで動いても平気か?」
「はい。」
「人を便利な乗り物が何かと勘違いしてない?」
「できないのか?」
「できるけど。」
「ならやってくれ。」
「……はい。」
「お前なぁ~アイリスを見習ったらどうだ?」
「多分そろそろ……。」
司令部のテントの外に何かが降り立つ音がした。
「やっぱり来ちゃったか。」
「キュル」
「うぉっジャービス……どうしたんだ?」
擦り寄るジャービス。その行動は幼い子が母に甘える姿を彷彿させた。
「どうしたの?ジャービス。」
「キュル……キュガー」
「そっか、怖い夢見ちゃったのね。安心しなさい。大丈夫だから。」
中型に分類される飛竜が素直に人間の少女に甘える姿はフィードとアイリスを驚かせるには十分だった。
「ユリア……竜の言葉分かるの?」
「何となくね。それにこの子昔から甘えん坊だから。」
肩を竦めつつ相棒の頭を撫でる。落ち着いたのかジャービスは目を細めながら気持ちよさそうにしている。
「やれやれ、移動は明日だな。」
「書簡だけ鷹を出しておきますね。」
「あぁ。そうしてくれ。」
「魔族の次は国内の魔族って大変ね皇子様は」
「そう思うなら手を貸してくれ。」
「私は治癒士だよ?国の癌は対象外だね。」
「そんな癌が己の領域を侵そうするなら烈火のごとく駆逐するくせに」
「フィードも同じでしょ?」
「……まぁ、そうだな。……それで……どうして中に引き入れたんだよ!」
司令所の中に堂々と入り込み、寝息を立てている飛竜を指さしフィードは抗議した。かなりスペースをとっている。
「秋とはいえ、外で寝るには寒いもの。こうなったこの子は暫く私から離れないの。」
「甘やかすなよ……。」
そこに慌てた様子で一人の兵士が駆けてきた。
「失礼します……うわっ」
「……どうした?」
「停戦の話を聞いた傭兵たちが契約と違うと兵士たちと揉めておりまして……。」
「だろうな。よし、仲介しに行くか。アイリス、ユリア、行くぞ?」
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