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戦士と兵士
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若手の兵士に連れられ、少し離れた区画にあるテントの集りに到着すると直ぐに剣呑な空気が感じられた。区画中央付近にある広場で統一された武装集団とマチマチな武装集団が睨み合っている。
「畜生。俺たちが非正規軍だからってナメてんじゃねぇぞ!」
「我々はただ、停戦の報せを受けたからそれを伝えているだけだ。」
「停戦だと?魔獣を従えた魔族たちがそんな事するかよ。」
「我々とて信じ難いことだが事実だ。故に君達に……。うわっ!?ひ、飛竜?」
「な、なんだコイツは!?ひっ」
「キュガー」
話の間に入り、騒いでいた男にジャービスが絡みに行った。恐らく甘えていた時間を奪った対象として少しイタズラしてやろうと思ったのだろう。
「やめなさいジャービス。八つ当たりしないの」
「キュー」
「ったくもう。ゼロ、広い所でジャービスと少し遊んであげて。」
「畏まりました。」
遊んでくれるの?といった表情で喜んだジャービスは広場から離れた方へ連れていかれた。
「キュル?キュガ!」
お互い目が真剣そのものだが、ゼロの配下が懸命に外部への被害を抑えている。
「……話の腰をおって済まないな。」
「で、殿下!?」
「何兵士達が争っていると聞いてな。総大将たる俺が話を聞こうかと。」
「ご配慮感謝致します。」
「してこの者が傭兵代表か?」
「えぇ。そうなのですが……。」
白目を向いて倒れている男はピクリとも動かない。脈拍と呼吸はあるので心因性のショックで気絶してしまったとみている。
「安心してください。気絶しているだけです。念の為『解析』……はぁ……。」
診察の結果、出るわ出るわ。胃潰瘍、寄生虫の類等など身体が資本の冒険者が聞いて呆れる。
「要求は何なのだ?」
「報奨金についてになります。契約上彼らは冒険者ギルドに雇われ、この戦場に来ております。ギルド側は魔族や魔獣の討伐時に認証部位の提示により個別で支給となっております。」
「停戦により金が入らなくなるからどうにかしろって事か?」
「端的に言えばそういう事になります。」
「ギルドに文句を言うならまだしも軍に物申しても仕方あるまい?」
「それを説明したのですが……聞く耳を持って貰えず現在に至ります。」
「やれやれだな。アイリス、他に話が聞けそうな奴を連れてきてくれないか?」
「分かりました。」
「殿下、この者を治療しても宜しいですか?」
「……あぁ。別に構わんぞ。一応今は軍属だからな。」
「では。」
冷水を思い切り掛け、男の意識を覚醒させる所から始めることにした。
「な、なんだ!?あ、あの竜は!?」
「落ち着いてください。」
「お前は誰だ!お前か!水をかけやがったのは!」
「私は治癒士です。取り敢えず落ち着いて貰えますか?」
「俺は落ち着いている!何をする気だ!」
男の手が懐に伸びた瞬間フィードが短剣を男の喉元に突きつけた。
「なぁ、取り敢えず落ち着けよ。そのままじっとしてろ……。な?」
次に動いたり、声をあげようものならそのまま殺すと言わんばかりの殺意を向けられ、男は顔面蒼白で固まった。
「取り敢えず、虫下しと低級ですが回復薬です。これを飲んでトイレで腹の中にいる虫を出して下さい。以後は川の水なんかをそのまま飲まないで下さいね。」
鞄から虫下しと低級回復薬を出し、処方すると男はガクガクと頷き、静かになった。
「ユリア、大丈夫だったか?」
「えぇ。殿下のおかげです。ありがとうございます。」
「……それは良かった。気をつけることだ。錯乱した人間は何をしでかすか分からんからな。」
「以後気をつけます。」
必死に笑いを堪えているフィードに蹴りでも入れてやろうかと考えるも、周りに人がいるため実行は出来なかった。
「殿下、お連れしました。」
「おう。ご苦労。」
アイリスが連れてきたのは熊のような大男だった。大きな身体を包む所々の防具は鈍い光を放っている。
「サイラス……おめぇか……。ったく馬鹿野郎が。」
「フィードだ。一応帝国軍の総大将をやらせてもらっている。」
「エドだ。皇子ってのは皇宮にいるもんだと思っていたがこんな血なまぐさい戦場まで出張ってくるのか?」
「人手不足でな。まぁ、皇宮にいてもどの道血なまぐさいから安心しろよ。」
「へっ違ぇねぇや。」
エドと名乗った男はその後片膝をつき、貴族式の敬礼をしだした。
「ご無礼をお許しください。殿下。」
「あぁ。許そう。お前俺を試したよな?」
「はい。恐れながら我々烏合の衆が指揮下に入れるか否か試させていただきました。」
「お前の目から見て俺は合格か?」
「はい。殿下の懐の大きさには感服致しました。」
「そうか。そりゃ良かった。」
「先程の件ですが、我々の総意ではございません。確かに停戦の話は容易に信じられる話ではございませんがだからといって国に補償を求める事はいたしません。あの男のご無礼も重ねてお詫びいたします。」
「あぁ。分かって貰えるなら許そう。停戦の話は本当だ。しかし、我々も頭ごなしに信頼はしていない。依然国境付近には軍を配置し、魔族たちを監視するとしよう。冒険者は冒険をするものだからな。今のように傭兵として動く方がおかしいのだ。また力を借りるかもしれんがその時は宜しくな。」
「はっ。承知いたしました。」
尊大な態度をとっている姿は久々に見たが、様になっていた。流石は未来の皇帝様である。
冒険者達の話が一段落し、次の予定をこなすべくジャービス達を探すが目に見える範囲には居なかった。
「時にユリア、ジャービス達は何処だ?」
「確か……あっちの方に……。あ、ユ、ユリア!大変だよ!」
「う……うん。大変そうだね」
所々爆撃された様な荒地に両者は対峙していた。地面が輝いて見えるのは砂が高温で熱されガラス化したから……だろう。
人的被害は無さそうだが、これ以上不毛な大地を増やすべきでは無い。
「他人事ではないわ!さっさと治めてこい」
「……はい。」
ジャービスが空を舞い、火球を吐く。それをゼロが何かを投擲して打ち消し、お返しとばかりにナイフを投げる。いくつかはジャービスに刺さるがダメージは無いようだ。
「はぁ……。二人とも……『止まれ』」
「畜生。俺たちが非正規軍だからってナメてんじゃねぇぞ!」
「我々はただ、停戦の報せを受けたからそれを伝えているだけだ。」
「停戦だと?魔獣を従えた魔族たちがそんな事するかよ。」
「我々とて信じ難いことだが事実だ。故に君達に……。うわっ!?ひ、飛竜?」
「な、なんだコイツは!?ひっ」
「キュガー」
話の間に入り、騒いでいた男にジャービスが絡みに行った。恐らく甘えていた時間を奪った対象として少しイタズラしてやろうと思ったのだろう。
「やめなさいジャービス。八つ当たりしないの」
「キュー」
「ったくもう。ゼロ、広い所でジャービスと少し遊んであげて。」
「畏まりました。」
遊んでくれるの?といった表情で喜んだジャービスは広場から離れた方へ連れていかれた。
「キュル?キュガ!」
お互い目が真剣そのものだが、ゼロの配下が懸命に外部への被害を抑えている。
「……話の腰をおって済まないな。」
「で、殿下!?」
「何兵士達が争っていると聞いてな。総大将たる俺が話を聞こうかと。」
「ご配慮感謝致します。」
「してこの者が傭兵代表か?」
「えぇ。そうなのですが……。」
白目を向いて倒れている男はピクリとも動かない。脈拍と呼吸はあるので心因性のショックで気絶してしまったとみている。
「安心してください。気絶しているだけです。念の為『解析』……はぁ……。」
診察の結果、出るわ出るわ。胃潰瘍、寄生虫の類等など身体が資本の冒険者が聞いて呆れる。
「要求は何なのだ?」
「報奨金についてになります。契約上彼らは冒険者ギルドに雇われ、この戦場に来ております。ギルド側は魔族や魔獣の討伐時に認証部位の提示により個別で支給となっております。」
「停戦により金が入らなくなるからどうにかしろって事か?」
「端的に言えばそういう事になります。」
「ギルドに文句を言うならまだしも軍に物申しても仕方あるまい?」
「それを説明したのですが……聞く耳を持って貰えず現在に至ります。」
「やれやれだな。アイリス、他に話が聞けそうな奴を連れてきてくれないか?」
「分かりました。」
「殿下、この者を治療しても宜しいですか?」
「……あぁ。別に構わんぞ。一応今は軍属だからな。」
「では。」
冷水を思い切り掛け、男の意識を覚醒させる所から始めることにした。
「な、なんだ!?あ、あの竜は!?」
「落ち着いてください。」
「お前は誰だ!お前か!水をかけやがったのは!」
「私は治癒士です。取り敢えず落ち着いて貰えますか?」
「俺は落ち着いている!何をする気だ!」
男の手が懐に伸びた瞬間フィードが短剣を男の喉元に突きつけた。
「なぁ、取り敢えず落ち着けよ。そのままじっとしてろ……。な?」
次に動いたり、声をあげようものならそのまま殺すと言わんばかりの殺意を向けられ、男は顔面蒼白で固まった。
「取り敢えず、虫下しと低級ですが回復薬です。これを飲んでトイレで腹の中にいる虫を出して下さい。以後は川の水なんかをそのまま飲まないで下さいね。」
鞄から虫下しと低級回復薬を出し、処方すると男はガクガクと頷き、静かになった。
「ユリア、大丈夫だったか?」
「えぇ。殿下のおかげです。ありがとうございます。」
「……それは良かった。気をつけることだ。錯乱した人間は何をしでかすか分からんからな。」
「以後気をつけます。」
必死に笑いを堪えているフィードに蹴りでも入れてやろうかと考えるも、周りに人がいるため実行は出来なかった。
「殿下、お連れしました。」
「おう。ご苦労。」
アイリスが連れてきたのは熊のような大男だった。大きな身体を包む所々の防具は鈍い光を放っている。
「サイラス……おめぇか……。ったく馬鹿野郎が。」
「フィードだ。一応帝国軍の総大将をやらせてもらっている。」
「エドだ。皇子ってのは皇宮にいるもんだと思っていたがこんな血なまぐさい戦場まで出張ってくるのか?」
「人手不足でな。まぁ、皇宮にいてもどの道血なまぐさいから安心しろよ。」
「へっ違ぇねぇや。」
エドと名乗った男はその後片膝をつき、貴族式の敬礼をしだした。
「ご無礼をお許しください。殿下。」
「あぁ。許そう。お前俺を試したよな?」
「はい。恐れながら我々烏合の衆が指揮下に入れるか否か試させていただきました。」
「お前の目から見て俺は合格か?」
「はい。殿下の懐の大きさには感服致しました。」
「そうか。そりゃ良かった。」
「先程の件ですが、我々の総意ではございません。確かに停戦の話は容易に信じられる話ではございませんがだからといって国に補償を求める事はいたしません。あの男のご無礼も重ねてお詫びいたします。」
「あぁ。分かって貰えるなら許そう。停戦の話は本当だ。しかし、我々も頭ごなしに信頼はしていない。依然国境付近には軍を配置し、魔族たちを監視するとしよう。冒険者は冒険をするものだからな。今のように傭兵として動く方がおかしいのだ。また力を借りるかもしれんがその時は宜しくな。」
「はっ。承知いたしました。」
尊大な態度をとっている姿は久々に見たが、様になっていた。流石は未来の皇帝様である。
冒険者達の話が一段落し、次の予定をこなすべくジャービス達を探すが目に見える範囲には居なかった。
「時にユリア、ジャービス達は何処だ?」
「確か……あっちの方に……。あ、ユ、ユリア!大変だよ!」
「う……うん。大変そうだね」
所々爆撃された様な荒地に両者は対峙していた。地面が輝いて見えるのは砂が高温で熱されガラス化したから……だろう。
人的被害は無さそうだが、これ以上不毛な大地を増やすべきでは無い。
「他人事ではないわ!さっさと治めてこい」
「……はい。」
ジャービスが空を舞い、火球を吐く。それをゼロが何かを投擲して打ち消し、お返しとばかりにナイフを投げる。いくつかはジャービスに刺さるがダメージは無いようだ。
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