5 / 17
第一章 占領
黎明の翼
しおりを挟む
ニブンゲル王国。王立円卓13騎士団の面々は神妙な面持ちでそれぞれの席についた。
「知っての通り、帝国が攻めてきた。既に外郭都市一つは陥落。奴らの支配下となっているらしい。」
「スーラン卿、場所はどこですか?」
「メレスト卿…貴君は外郭都市の出だったな。エレンだ。奴らめ宣戦布告と同時に攻め込んで一瞬の内に落としおったわ…。クソっ」
「過ぎた事を悔いても仕方ありますまい。今は奇襲のせいで混乱しております。今一度立て直すまでエレン奪還は難しいでしょうな。」
「ヘンリク卿…。確かにその通りですな…。よし、皆の者。戦争だ。敵は帝国。最初の一撃が成功した連中だ。今ならその伸びた鼻っ柱を根本からへし折ってやれるぞ?」
「はっそれはなんとも痛快愉快。して、その役割わが第三部隊におまかせ頂きたい。」
「カウレス卿の所の者なら見事な戦果を挙げられるでしょう。しかし、エレンをそのままにしては世論に味方されない。故にここは一つエレンに一部隊送り、陽動と致しましょう。」
「陽動とあらばこのメレストにお任せを。我が故郷に土足で踏み入った蛮族に一泡吹かせてやりますよ」
「その気概やよし。それでは他のものは首都防衛と何かあった時のバックアップとして動くとしよう。皆の者、それでいいな?」
「王国に栄光あれ!」
一方その頃外郭都市では怪物の娘が頭角を現し始めていた。
「レティシア。あんた呪いの使い方を知らないみたいだからおしえてあげよう。」
「呪いの…使い方?」
外郭都市に来て十日。レジスタンス「黎明の翼」の構成員にされて九日程度。毎朝ルチルにしごかれて汗を流している最中、唐突にルチルが私の「呪い」に触れてきた。
「そうさ。祝福については知っているかい?」
「知ってる」
屋敷の書物の中にそんな記述があった。
『祝福』生まれた時に取得している特殊な能力。殆どは病気に成りにくい「頑健」や足が少し早くなる「瞬足」といった大した事のない能力だが、希に筋力や魔力が異常に強い者が生まれる。そういった人達を『祝福持ち』と呼ぶ。ルチルの魔眼も祝福の1種である。
「レティシア、実は呪いも祝福の一つなんだよ」
「……?」
「まぁ、ピンと来ないわな。あんたの呪いは?」
「……破滅の呪い。」
「ははは……物騒だね。」
「うん…。」
「いまのあんたは蛇口から垂れ流された水みたいなもんでさ、垂れ流しになってる水をたまたま踏んだやつに呪いの効果が訪れる。」
「……。」
「垂れ流しの水に触れない為には?どうする?」
「蛇口を閉める?」
「残念。不正解。ホースを蛇口につけちまうのさ。そうすれば方向転換するだけで敵にだけ呪いが発動させられる。」
「なるほど。じゃあ、そのホースは?」
「イメージだ。目を瞑って。呪いを操るイメージだ。試しにそこにあるドラム缶に呪いをぶつけてみな。」
私の中の呪い…。破滅…。
今まで逃げ続けていてこの呪いと向き合う事はしなかった。怖かったからだ。だけど今は帝国がこの街を脅かしている。この街で知り合った人間は数少ないが、赤の他人で呪い持ちの私を快く?受け入れてくれた。
元より行く宛などないし……。だったらせめてこの呪いの力をどこかで使えるようになった方が……。
「レ……ティシア、レティシア!?」
「……え?」
気がつくとそこには凍りついたドラム缶があった。塗装がはげ落ちて、そこら中穴だらけになっていたドラム缶は大きな氷塊の中で凍っていた。
「レティシア…あんた…。」
「……。」
やってしまった。これでは皆から怪異の目を向けられてしまう。こんな力がもし、皆に向いたら…。
ピシリッとヒビの入る音が聞こえ、ガラガラと氷塊が崩れていく。そして崩れ終わった跡には茶色い鉄片が散っていた。
「凄いじゃん!」
「……は?」
この光景を見たルチルは子どものように目を輝かせていた。
「凄いよレティシア!こんな力見た事ない!」
「えっと…怖がらないの?」
「怖がる?何で?」
「私はまだあの力を制御できてない。だから、今は上手くいっても何れ皆にこの力をぶつけてしまうかもしれない。」
しばしの沈黙の末、ルチルが口を開く。
「そうだね。確かにあんたの力は強力だ。だから、死ぬ気で御せるようになりな。それがあんたの課題だよ。」
「…。う、うん。」
それからひと月。練習に練習を重ね、何とか御せるまで形にはなった。
「知っての通り、帝国が攻めてきた。既に外郭都市一つは陥落。奴らの支配下となっているらしい。」
「スーラン卿、場所はどこですか?」
「メレスト卿…貴君は外郭都市の出だったな。エレンだ。奴らめ宣戦布告と同時に攻め込んで一瞬の内に落としおったわ…。クソっ」
「過ぎた事を悔いても仕方ありますまい。今は奇襲のせいで混乱しております。今一度立て直すまでエレン奪還は難しいでしょうな。」
「ヘンリク卿…。確かにその通りですな…。よし、皆の者。戦争だ。敵は帝国。最初の一撃が成功した連中だ。今ならその伸びた鼻っ柱を根本からへし折ってやれるぞ?」
「はっそれはなんとも痛快愉快。して、その役割わが第三部隊におまかせ頂きたい。」
「カウレス卿の所の者なら見事な戦果を挙げられるでしょう。しかし、エレンをそのままにしては世論に味方されない。故にここは一つエレンに一部隊送り、陽動と致しましょう。」
「陽動とあらばこのメレストにお任せを。我が故郷に土足で踏み入った蛮族に一泡吹かせてやりますよ」
「その気概やよし。それでは他のものは首都防衛と何かあった時のバックアップとして動くとしよう。皆の者、それでいいな?」
「王国に栄光あれ!」
一方その頃外郭都市では怪物の娘が頭角を現し始めていた。
「レティシア。あんた呪いの使い方を知らないみたいだからおしえてあげよう。」
「呪いの…使い方?」
外郭都市に来て十日。レジスタンス「黎明の翼」の構成員にされて九日程度。毎朝ルチルにしごかれて汗を流している最中、唐突にルチルが私の「呪い」に触れてきた。
「そうさ。祝福については知っているかい?」
「知ってる」
屋敷の書物の中にそんな記述があった。
『祝福』生まれた時に取得している特殊な能力。殆どは病気に成りにくい「頑健」や足が少し早くなる「瞬足」といった大した事のない能力だが、希に筋力や魔力が異常に強い者が生まれる。そういった人達を『祝福持ち』と呼ぶ。ルチルの魔眼も祝福の1種である。
「レティシア、実は呪いも祝福の一つなんだよ」
「……?」
「まぁ、ピンと来ないわな。あんたの呪いは?」
「……破滅の呪い。」
「ははは……物騒だね。」
「うん…。」
「いまのあんたは蛇口から垂れ流された水みたいなもんでさ、垂れ流しになってる水をたまたま踏んだやつに呪いの効果が訪れる。」
「……。」
「垂れ流しの水に触れない為には?どうする?」
「蛇口を閉める?」
「残念。不正解。ホースを蛇口につけちまうのさ。そうすれば方向転換するだけで敵にだけ呪いが発動させられる。」
「なるほど。じゃあ、そのホースは?」
「イメージだ。目を瞑って。呪いを操るイメージだ。試しにそこにあるドラム缶に呪いをぶつけてみな。」
私の中の呪い…。破滅…。
今まで逃げ続けていてこの呪いと向き合う事はしなかった。怖かったからだ。だけど今は帝国がこの街を脅かしている。この街で知り合った人間は数少ないが、赤の他人で呪い持ちの私を快く?受け入れてくれた。
元より行く宛などないし……。だったらせめてこの呪いの力をどこかで使えるようになった方が……。
「レ……ティシア、レティシア!?」
「……え?」
気がつくとそこには凍りついたドラム缶があった。塗装がはげ落ちて、そこら中穴だらけになっていたドラム缶は大きな氷塊の中で凍っていた。
「レティシア…あんた…。」
「……。」
やってしまった。これでは皆から怪異の目を向けられてしまう。こんな力がもし、皆に向いたら…。
ピシリッとヒビの入る音が聞こえ、ガラガラと氷塊が崩れていく。そして崩れ終わった跡には茶色い鉄片が散っていた。
「凄いじゃん!」
「……は?」
この光景を見たルチルは子どものように目を輝かせていた。
「凄いよレティシア!こんな力見た事ない!」
「えっと…怖がらないの?」
「怖がる?何で?」
「私はまだあの力を制御できてない。だから、今は上手くいっても何れ皆にこの力をぶつけてしまうかもしれない。」
しばしの沈黙の末、ルチルが口を開く。
「そうだね。確かにあんたの力は強力だ。だから、死ぬ気で御せるようになりな。それがあんたの課題だよ。」
「…。う、うん。」
それからひと月。練習に練習を重ね、何とか御せるまで形にはなった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる