怪物と呼ばれたモノ

神崎 詩乃

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第一章 占領

黎明の翼

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 ニブンゲル王国。王立円卓13騎士団の面々は神妙な面持ちでそれぞれの席についた。

「知っての通り、帝国が攻めてきた。既に外郭都市一つは陥落。奴らの支配下となっているらしい。」
「スーラン卿、場所はどこですか?」
「メレスト卿…貴君は外郭都市の出だったな。エレンだ。奴らめ宣戦布告と同時に攻め込んで一瞬の内に落としおったわ…。クソっ」
「過ぎた事を悔いても仕方ありますまい。今は奇襲のせいで混乱しております。今一度立て直すまでエレン奪還は難しいでしょうな。」
「ヘンリク卿…。確かにその通りですな…。よし、皆の者。戦争だ。敵は帝国。最初の一撃が成功した連中だ。今ならその伸びた鼻っ柱を根本からへし折ってやれるぞ?」
「はっそれはなんとも痛快愉快。して、その役割わが第三部隊におまかせ頂きたい。」
「カウレス卿の所の者なら見事な戦果を挙げられるでしょう。しかし、エレンをそのままにしては世論に味方されない。故にここは一つエレンに一部隊送り、陽動と致しましょう。」
「陽動とあらばこのメレストにお任せを。我が故郷に土足で踏み入った蛮族に一泡吹かせてやりますよ」
「その気概やよし。それでは他のものは首都防衛と何かあった時のバックアップとして動くとしよう。皆の者、それでいいな?」
「王国に栄光あれ!」

 一方その頃外郭都市では怪物の娘が頭角を現し始めていた。

 「レティシア。あんた呪いの使い方を知らないみたいだからおしえてあげよう。」
「呪いの…使い方?」

 外郭都市に来て十日。レジスタンス「黎明の翼」の構成員にされて九日程度。毎朝ルチルにしごかれて汗を流している最中、唐突にルチルが私の「呪い」に触れてきた。

「そうさ。祝福については知っているかい?」
「知ってる」

 屋敷の書物の中にそんな記述があった。
 『祝福』生まれた時に取得している特殊な能力。殆どは病気に成りにくい「頑健」や足が少し早くなる「瞬足」といった大した事のない能力だが、希に筋力や魔力が異常に強い者が生まれる。そういった人達を『祝福持ち』と呼ぶ。ルチルの魔眼も祝福の1種である。

「レティシア、実は呪いも祝福の一つなんだよ」
「……?」
「まぁ、ピンと来ないわな。あんたの呪いは?」
「……破滅の呪い。」
「ははは……物騒だね。」
「うん…。」
「いまのあんたは蛇口から垂れ流された水みたいなもんでさ、垂れ流しになってる水をたまたま踏んだやつに呪いの効果が訪れる。」
「……。」
「垂れ流しの水に触れない為には?どうする?」
「蛇口を閉める?」
「残念。不正解。ホースを蛇口につけちまうのさ。そうすれば方向転換するだけで敵にだけ呪いが発動させられる。」
「なるほど。じゃあ、そのホースは?」
「イメージだ。目を瞑って。呪いを操るイメージだ。試しにそこにあるドラム缶に呪いをぶつけてみな。」

 私の中の呪い…。破滅…。
 今まで逃げ続けていてこの呪いと向き合う事はしなかった。怖かったからだ。だけど今は帝国がこの街を脅かしている。この街で知り合った人間は数少ないが、赤の他人で呪い持ちの私を快く?受け入れてくれた。 
 元より行く宛などないし……。だったらせめてこの呪いの力をどこかで使えるようになった方が……。

「レ……ティシア、レティシア!?」
「……え?」

 気がつくとそこには凍りついたドラム缶があった。塗装がはげ落ちて、そこら中穴だらけになっていたドラム缶は大きな氷塊の中で凍っていた。

「レティシア…あんた…。」
「……。」
 やってしまった。これでは皆から怪異の目を向けられてしまう。こんな力がもし、皆に向いたら…。
 ピシリッとヒビの入る音が聞こえ、ガラガラと氷塊が崩れていく。そして崩れ終わった跡には茶色い鉄片が散っていた。
「凄いじゃん!」
「……は?」
 この光景を見たルチルは子どものように目を輝かせていた。
「凄いよレティシア!こんな力見た事ない!」
「えっと…怖がらないの?」
「怖がる?何で?」
「私はまだあの力を制御できてない。だから、今は上手くいっても何れ皆にこの力をぶつけてしまうかもしれない。」

 しばしの沈黙の末、ルチルが口を開く。
「そうだね。確かにあんたの力は強力だ。だから、死ぬ気で御せるようになりな。それがあんたの課題だよ。」
「…。う、うん。」

 それからひと月。練習に練習を重ね、何とか御せるまで形にはなった。
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