怪物と呼ばれたモノ

神崎 詩乃

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第一章 占領

都市奪還戦其ノ壱

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 朝、自室で目を覚ますと顔を洗って身支度を整えて外に出る。外は灰の月らしく灰色の雲で覆われ、吹きすさぶ北風が身に染みる。
 先日、目覚めてから色々な話を聞いた。私の母親の事やザックと共にいた医者のティム・カーターの話等だ。

 ザックは龍、ティムは契約者なるものらしい。主な違いは龍種本来の力を発揮しそれを行使することが出来るか出来ないかというもので、ザックは夜闇を司る闇龍。ティムは再生や治癒を司る治龍の契約者との事。

『会議室』と乱暴に書かれたプレートがかかる部屋に入ると既に主要なメンバーが各々席についていた。
「全員いるかな?」
「ザックは影の中にいるよ。」

 今回の会議には中心メンバーしかいない為、カトリが中央に立ち、司会を執り行うようだ。
「了解。じゃあ始めようか。取り敢えず、初めての人もいるかもしれないからまず、紹介を。」
 茶髪に黒目、土色のコートを羽織った医者。少なくとも第一印象からその職業を当てることは出来ないだろうけど、腕の良い医者だと思う。
「ティム・カーターっす。こんななりでも一応医者なんで何かありゃ頼ってほしいっす。」
「さて、皆に集まって貰ったのは前々から言っていた都市奪還作戦を本格的に開始する。」
 ルチルが煤けた壁に地図を貼る。そこには赤い丸と黄色い三角が書き込まれ、カトリは赤い丸を指さした。

「偵察隊の報告によれば現在この地点を中心にが展開している。我々はこの三角の地点にて待ち伏せを行い、短期決戦にて狩人共を撃破、殲滅する。」
「目的は分かった。作戦は?」
「班で分かれて挟撃する。班分けは第1班、班長、エレン、補佐ルチル
第2班、班長、レティシア、補佐、ザック
第3班はけが人救護班として、第1班が南から、第2班が北から挟み撃ちにしてやろう。」
「了解っす」
「オッケー。」
「……私が班長?」
「あぁ。大変な役だと思うが補佐にザックがつく。だから、大丈夫さ。」
「……。了解」

 作戦参加二回目にして班長にされてしまったことにそれとなく苦言を呈してみたが……これはダメな奴である。非常に困った…。
「レティシアもボクも班長だね!やったじゃん!」
「あ…あはは。」
「作戦決行は明日フタフタマルマルに開始する。皆、くれぐれも命を大事に都市を取り戻すぞ!」
「オウ!!!」

 一方、その頃帝国軍もまたこの都市を完全に支配下に置くため情報収集に尽力していた。

「伝令!翼のヤツらが動きだしました!真っ直ぐこの拠点を目指している様です!」
「なっ糞っ巨人兵団を出せ!ここで仕留めなくては!先の戦での仇をとるぞ!」
「オウ!」

 夜闇に紛れてナニカが進む建物と建物の合間に張り巡らされた高温の蒸気が流れる場所も易々とそして、廃れた建物の屋上に到達すると何か機械のようなものを設置した。
 
「…ジー…ザザッ中央より第1班、報告を」
「此方1班敵陣地発見。出撃命令を待ってるよ」
「中央了解。1班はその場で待機。第2班、報告を」
「……第2班、開始ポイント到着。敵の主力と思しき建造物確認。」
「中央了解。第2班はそのまま待機。第1班、お仕事の時間だ。タイマーは300秒。さぁ、反撃の狼煙、宜しく。」
「了解。」

 そういえば……エレンはどうやって戦っているのだろう…。前の戦の時も偵察をやっていたけど…。今回は何をするのか全く聞かされていない。取り敢えずの指示は『反撃の狼煙が上がったら行動開始。主に指揮官を先に処理して。』とだけ。前回の様に全員凍らせてしまった方が楽だとは思うが、その後どうなるか分からない。

『私、さっさと交代しなさいな。』
 (こいつ…脳に直接…。)
 等という冗談はさて置き、何しに来た私…。
『どうせ魔力を使うんでしょ?なら私に明け渡した方が楽でしょ?』
 成程確かに一理ある。後で戻れるのであれば問題ないよ。
『全く…用心深いというかしっかりしてると言うか…。安心しなさい。私はあんたの代わりにはなれないのよ。』
 そいつは…どういう意味で?
『とにかくその身体渡しなさいっての』
 あっはい

「ふぅ、やっと出れたわ。それで?敵はどこ?」
『もうすぐ狼煙が上がるからそれにあわせて動く予定。』
「あら、そうなの」

 ここから北へ少し進めば敵陣である。エレン達は一体何をするやら…。
「カウントダウン開始3、2、1、今!」

「ドォォォォォン」

 空気が震え、地面が揺れ、木がザワザワと音を立てる。先程までうっすらと見えていた敵陣は跡形もなく吹き飛び、ポツリポツリた瓦礫の雨が降ってくる。

「す、凄い…。」

 爆発は断続的に続き、夜襲は完全に成功した。

「さぁ、始めるわよ?」

 都市を追いやった帝国軍に今、報いが下されようとしていた。
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