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第一章 占領
都市奪還戦其ノ弍
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爆音、爆風とともに瓦礫と何かの肉片が降ってくる。時折、軍服姿の兵隊が何が起きたか分からないと言った表情で爆発で吹き飛んだ腕の傷口を見つめている。
絶妙に調合された爆薬は兵隊を即死にはさせず、瀕死のまま生かしていた。
「あら、あらまぁまぁ。とても最悪な光景ですわ。」
そんな血なまぐさい戦場を上空から眺めている。それが今の私の状況。
「第2班に伝達。既に敵陣の爆破は成功。伏兵に注意して指揮官を狙い撃ちにしなさい。」
「了解ってこの声レティシア?どうしたの?なんか雰囲気違うけど」
『 雰囲気というか…人格が違います。』
そう、戦場に立っているのは龍化している私、先程急に翼を生やして急速飛行をしやがった。お陰で血と火薬と気圧の変化に吐き気を催している。
「情けないわね。」
『心と体のバランスは重要なんだよ?私。』
「……ねぇ。私が私とお互いを呼称するのはやめない?なんか変よ?」
『 私は貴女で貴女は私って言い出したのはどっちだよ。どう呼べと?』
「そうね、後で話し合いましょう。」
「おい、レティシア?さっきから誰と話しているんだ?それにお前、その姿…。」
夜闇を切り裂くように現れたザックが偵察を終え、戻ってきた。
「あれ?説明していなかったの?全く…。」
「何者だお前!?」
「ストップ。そんな殺気を出さないで。奴らに気付かれると厄介よ?」
「……。確かにな」
『奴ら?』
「えぇ。連中巨人の郷まで手に入れたのかしら?」
「よくきく鼻だな。どうやらそうらしい。」
『巨人種……ってあの?』
「そう。大きくて強いあの巨人種よ。」
『郷に人質を置いて無理やり言うことをきかせているの?』
「いや?多分人間の街をいくつか渡すかわりに同盟を組んでるって所じゃないかしら?」
『なるほど。』
「……。本当にお前、誰と話しているんだ?」
「私の中のもう一人の私よ」
「……。飛翔中に頭をどこかにぶつけたのか?お前」
「……。簡潔にまとめると、『レティシア』の中の龍種人格と人間人格が乖離して今の私がいるの。」
「な…なるほど…何となく…。」
「それで?偵察の結果はどうなったのかしら?」
「あ?あぁ。ここから北西に少し進んだ所に大型の発電所があった。どうやらそこがこの拠点の本丸らしい。」
「ご苦労様。それで?敵将はどこに?」
「此処に居るよお嬢さん」
振り返ると蒸気の流れる配管に青い渦があった。咄嗟にバックステップで回避を試みるがそんな事させてくれるほど甘くはなく、青い渦の中から何かが射出された。
「あら?ストーキング?随分暇なのね貴方。」
「いやぁ綺麗なお嬢さんを見れただけでそこの仏頂面を追いかけてきた甲斐がありましたよ」
「追跡?どうやって?」
「臭いだよ。僕はとても鼻がいいんだ。」
「嘘おっしゃい。大方その水に特殊インクを混ぜて飛ばしてそれを追ってきたんでしょ?」
「おぉ、お嬢さん、賢いね。ご名答だよ。僕の異能は液体を自由に操れるって奴でね。お嬢さん『異能』については?」
「昔読んだ古い本に『異能や異才を持って生まれる人間もいる』程度のことは書いてあったわね」
『何それ初耳』
「液体を自由に操れる。だからね?こんな事も出来るんだよ。」
男は通行人を見えない何かで引っ張り、その首を掴んだ。
「ウ、ウグァ…」
声と共に男ははじけ飛んだ。
「…参考までに…あの通行人に何をしたの?」
「え?知りたい?じゃあ教えてあげよう。血液って液体だよね?それを逆流させた。高速でね?」
「因みにあの男を殺した理由は?」
「たまたま目に付いたから。」
「な、なるほど…。」
『あの人まだなにか隠してるよきっと』
「……。お名前…伺ってませんでしたよね?」
「あぁ。僕の名前はシュレーネ・バルトムンク帝国軍第一師団で団長の椅子を汚すものさ。」
違和感を感じた。青い渦が高速で回り出す。すると初めに腕が、足が、顔が、体が出てくる。
金髪緑眼。美形と呼ばれそうな見た目で装飾の凝らされた衣装と言った出で立ちの男が現れた。
「気をつけろ。こいつ、既になにか仕掛けている。」
ザックの言う通り。こいつは既に何かを仕掛けている。龍に液体操作が効くのかは不明だが、警戒は怠らない方がいい。
『何か…来る!』
即座に飛翔し上空で右に大きく移動した。すると、先程立っていた位置から蒸気が噴出した。
「なっ」
「おやおや?設備が劣化でもしてたかな?」
「レティシア、下がれ。こいつはやばい。」
「あら、珍しい。貴方がそんなことを言うだなんて。でも、私なら大丈夫。それより、貴方のステルス性が失われる前に本丸の制圧を。その方が効率的でしょ?」
「しかし!」
『レティシア、敵将シュレーネと会敵。戦闘に入ります。』
『中央了解。死ぬなよ?』
『了解。』
「ザック、命令です。ここは私に任せて先に行きなさい。今は時間が惜しい。」
「グッ…了解。」
その言葉と同時にザックの気配が遠ざかる。まるで、初めからいなかったように。
「さて、君が僕の相手をしてくれるの?美人が相手だとなんだかドキドキするね。」
「龍種に喧嘩を売った事、せいぜい後悔する事ね。」
龍種と異能者の力比べが狂乱と動乱の都市中心部で始まった。
絶妙に調合された爆薬は兵隊を即死にはさせず、瀕死のまま生かしていた。
「あら、あらまぁまぁ。とても最悪な光景ですわ。」
そんな血なまぐさい戦場を上空から眺めている。それが今の私の状況。
「第2班に伝達。既に敵陣の爆破は成功。伏兵に注意して指揮官を狙い撃ちにしなさい。」
「了解ってこの声レティシア?どうしたの?なんか雰囲気違うけど」
『 雰囲気というか…人格が違います。』
そう、戦場に立っているのは龍化している私、先程急に翼を生やして急速飛行をしやがった。お陰で血と火薬と気圧の変化に吐き気を催している。
「情けないわね。」
『心と体のバランスは重要なんだよ?私。』
「……ねぇ。私が私とお互いを呼称するのはやめない?なんか変よ?」
『 私は貴女で貴女は私って言い出したのはどっちだよ。どう呼べと?』
「そうね、後で話し合いましょう。」
「おい、レティシア?さっきから誰と話しているんだ?それにお前、その姿…。」
夜闇を切り裂くように現れたザックが偵察を終え、戻ってきた。
「あれ?説明していなかったの?全く…。」
「何者だお前!?」
「ストップ。そんな殺気を出さないで。奴らに気付かれると厄介よ?」
「……。確かにな」
『奴ら?』
「えぇ。連中巨人の郷まで手に入れたのかしら?」
「よくきく鼻だな。どうやらそうらしい。」
『巨人種……ってあの?』
「そう。大きくて強いあの巨人種よ。」
『郷に人質を置いて無理やり言うことをきかせているの?』
「いや?多分人間の街をいくつか渡すかわりに同盟を組んでるって所じゃないかしら?」
『なるほど。』
「……。本当にお前、誰と話しているんだ?」
「私の中のもう一人の私よ」
「……。飛翔中に頭をどこかにぶつけたのか?お前」
「……。簡潔にまとめると、『レティシア』の中の龍種人格と人間人格が乖離して今の私がいるの。」
「な…なるほど…何となく…。」
「それで?偵察の結果はどうなったのかしら?」
「あ?あぁ。ここから北西に少し進んだ所に大型の発電所があった。どうやらそこがこの拠点の本丸らしい。」
「ご苦労様。それで?敵将はどこに?」
「此処に居るよお嬢さん」
振り返ると蒸気の流れる配管に青い渦があった。咄嗟にバックステップで回避を試みるがそんな事させてくれるほど甘くはなく、青い渦の中から何かが射出された。
「あら?ストーキング?随分暇なのね貴方。」
「いやぁ綺麗なお嬢さんを見れただけでそこの仏頂面を追いかけてきた甲斐がありましたよ」
「追跡?どうやって?」
「臭いだよ。僕はとても鼻がいいんだ。」
「嘘おっしゃい。大方その水に特殊インクを混ぜて飛ばしてそれを追ってきたんでしょ?」
「おぉ、お嬢さん、賢いね。ご名答だよ。僕の異能は液体を自由に操れるって奴でね。お嬢さん『異能』については?」
「昔読んだ古い本に『異能や異才を持って生まれる人間もいる』程度のことは書いてあったわね」
『何それ初耳』
「液体を自由に操れる。だからね?こんな事も出来るんだよ。」
男は通行人を見えない何かで引っ張り、その首を掴んだ。
「ウ、ウグァ…」
声と共に男ははじけ飛んだ。
「…参考までに…あの通行人に何をしたの?」
「え?知りたい?じゃあ教えてあげよう。血液って液体だよね?それを逆流させた。高速でね?」
「因みにあの男を殺した理由は?」
「たまたま目に付いたから。」
「な、なるほど…。」
『あの人まだなにか隠してるよきっと』
「……。お名前…伺ってませんでしたよね?」
「あぁ。僕の名前はシュレーネ・バルトムンク帝国軍第一師団で団長の椅子を汚すものさ。」
違和感を感じた。青い渦が高速で回り出す。すると初めに腕が、足が、顔が、体が出てくる。
金髪緑眼。美形と呼ばれそうな見た目で装飾の凝らされた衣装と言った出で立ちの男が現れた。
「気をつけろ。こいつ、既になにか仕掛けている。」
ザックの言う通り。こいつは既に何かを仕掛けている。龍に液体操作が効くのかは不明だが、警戒は怠らない方がいい。
『何か…来る!』
即座に飛翔し上空で右に大きく移動した。すると、先程立っていた位置から蒸気が噴出した。
「なっ」
「おやおや?設備が劣化でもしてたかな?」
「レティシア、下がれ。こいつはやばい。」
「あら、珍しい。貴方がそんなことを言うだなんて。でも、私なら大丈夫。それより、貴方のステルス性が失われる前に本丸の制圧を。その方が効率的でしょ?」
「しかし!」
『レティシア、敵将シュレーネと会敵。戦闘に入ります。』
『中央了解。死ぬなよ?』
『了解。』
「ザック、命令です。ここは私に任せて先に行きなさい。今は時間が惜しい。」
「グッ…了解。」
その言葉と同時にザックの気配が遠ざかる。まるで、初めからいなかったように。
「さて、君が僕の相手をしてくれるの?美人が相手だとなんだかドキドキするね。」
「龍種に喧嘩を売った事、せいぜい後悔する事ね。」
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