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第一章 占領
都市奪還戦其ノ肆
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左腕を失ってなお元気の良いシュレーネ。本当に彼は人間なのだろうか…?
「彼は人間よ。この暗さじゃ見えてないと思うけど。」
『ちょっと…思考に割り込まないで。』
「あら、失礼。」
私とエレンは今、落下した瓦礫の側に隠れている。そして、その向こう側ではシュレーネが私達を血眼になって探している。
「隠れていないで出てきてよ。その方が僕らにとってとても楽だからね。我々が何故この都市に居座っているか分かる?出てきてくれたら話してあげるから出てきてよ~。」
確かに、帝国軍がいつまでもここで駐留している理由は気になる。ここは一時占領下にある敵国の領土、いつか敵国が攻めてきた時、道ずれにしながら撤退するなり放棄なりすればいい話。残りのものは近くの城塞都市を陥落させに派兵すればいい。だが、彼等の大部分はここに留まって何かをしていた。いったい何を?
「ちょっといいかな?」
「何かしら?」
「……。やりにくいな~まぁ、しゃーないか。あそこにいるのが例の敵将?」
「そうね。今しがた貴女が腕を吹っ飛ばしたのが彼よ。」
「あちゃー腕だけだったかー」
『参考までに、エレンが何かしたの?』
「……見えてなかったの?」
『うん、全く。』
「ん?何が?さっきの爆発のこと?」
「え?えぇ。」
「あたしの能力については知ってる?」
「異能ってやつかしら?」
「うん。あたしの異能は『爆破』爆発物をある程度操作出来るんだ。」
「ある程度?」
「あぁ。爆発するかしないかとか、爆風の指向性とかを操れる。」
「なるほど。だからさっき私にはダメージがなかったのね。」
「そゆこと。あいつの能力はどんななの?」
「液体を自由自在に操れるらしいわ。」
「ふうん。そういえば…レティシア何か変だけどどうしたの?」
「もしかして…誰にも説明してないの……?」
『勿論。まず、どう説明すればいいのか教えて。』
「この間の戦闘で龍化した時、人間の私と龍種の私に人格が割れた。一種の多重人格って奴よ」
「な…なるほど…。」
「どこ行ったんだ~そろそろ出てきてもらわないと困るんだよね~この腕の礼もしたいしさ~。そうだ。あの手があった。」
シュレーネは残酷に嗤うと近くにあった配管を撃ち抜き、たちまち蒸気が溢れ出る。
「……やばッ」
ゴトリ、と何かが動いた。目で追う暇もなく眼の前にあった瓦礫の山が吹き飛び、忌々しい金髪が立ちはだかる。
「見つけた…。」
「あらやだ、見つかっちゃった。」
「見つかっちゃった…じゃないでしょ!」
「おや?可愛いお嬢さん。僕と一緒に朝ごはんでも如何かな?」
「……結構です。」
「あっ、そう残念。」
周りは霧に包まれていく。次第に前が見えないほどに…。
「くっそ、何も見えない!レティ!何処にいるの!」
「くくく。彼女は君への誤爆を恐れて爆破出来ない。そうだろ?」
「……だとしたら?」
「ゆっくり君を殺したあとに彼女を殺せばいい。僕はこうやって何人かを殺してきたからね。」
霧の中でヒタヒタと何かが迫る。そして、後ろから首筋をスっと……。
『怖いって、流石に刃物で切れるものじゃないって分かってても怖いって』
「大丈夫よ。ちょっと首の皮が切れただけじゃない。」
『普通死んでるから、その首どこまで切れてるか教えてあげようか?普通に頚動脈切れてるよ?』
「あら、ほんと。」
「……ねぇ、君、何でその傷で生きているの?」
「?何を言っているの?龍種がその程度で死ぬわけないじゃない。」
「くっそ!じゃああの女を!」
「あらあら?どこへ行くのかしら?凍結龍に後ろを見せて。ちょっとお待ちなさいな。」
「なっ脚を…クソッ」
「さよなら。また来世があったら会いましょ。」
朝日が昇る。霧が凍りつき、キラキラと輝きながら消えていく。そして、グシャッという音と共に何かが崩れ去り、辺りはしんと静まり返った。
「危なかったね、レティ…その傷!大丈夫なの!?」
「慌てない。慌てない。そんなに慌てると死ぬわよ?」
「ごめんその冗談は冗談じゃ済まないよ!?」
「ザック?どうせそのへんで影に紛れてるんでしょ?」
「……。おい、レティシア。」
「な……。」
ゴスッ。
ザックの拳がレティシアの頭に落ち、レティシアはそのまま倒れた。
「ちょっとザック!」
「傷が酷い。治龍に診せる」
「……。そうね。」
『こちらザック。レティシア重傷。今から連れてくから準備しとけ。』
『こちらカトリ。了解。本日、現時刻を持って作戦を終了として、全員、撤収!』
「了解」
灰の月、6日
この日王国は城塞都市を帝国から取り返した。
「彼は人間よ。この暗さじゃ見えてないと思うけど。」
『ちょっと…思考に割り込まないで。』
「あら、失礼。」
私とエレンは今、落下した瓦礫の側に隠れている。そして、その向こう側ではシュレーネが私達を血眼になって探している。
「隠れていないで出てきてよ。その方が僕らにとってとても楽だからね。我々が何故この都市に居座っているか分かる?出てきてくれたら話してあげるから出てきてよ~。」
確かに、帝国軍がいつまでもここで駐留している理由は気になる。ここは一時占領下にある敵国の領土、いつか敵国が攻めてきた時、道ずれにしながら撤退するなり放棄なりすればいい話。残りのものは近くの城塞都市を陥落させに派兵すればいい。だが、彼等の大部分はここに留まって何かをしていた。いったい何を?
「ちょっといいかな?」
「何かしら?」
「……。やりにくいな~まぁ、しゃーないか。あそこにいるのが例の敵将?」
「そうね。今しがた貴女が腕を吹っ飛ばしたのが彼よ。」
「あちゃー腕だけだったかー」
『参考までに、エレンが何かしたの?』
「……見えてなかったの?」
『うん、全く。』
「ん?何が?さっきの爆発のこと?」
「え?えぇ。」
「あたしの能力については知ってる?」
「異能ってやつかしら?」
「うん。あたしの異能は『爆破』爆発物をある程度操作出来るんだ。」
「ある程度?」
「あぁ。爆発するかしないかとか、爆風の指向性とかを操れる。」
「なるほど。だからさっき私にはダメージがなかったのね。」
「そゆこと。あいつの能力はどんななの?」
「液体を自由自在に操れるらしいわ。」
「ふうん。そういえば…レティシア何か変だけどどうしたの?」
「もしかして…誰にも説明してないの……?」
『勿論。まず、どう説明すればいいのか教えて。』
「この間の戦闘で龍化した時、人間の私と龍種の私に人格が割れた。一種の多重人格って奴よ」
「な…なるほど…。」
「どこ行ったんだ~そろそろ出てきてもらわないと困るんだよね~この腕の礼もしたいしさ~。そうだ。あの手があった。」
シュレーネは残酷に嗤うと近くにあった配管を撃ち抜き、たちまち蒸気が溢れ出る。
「……やばッ」
ゴトリ、と何かが動いた。目で追う暇もなく眼の前にあった瓦礫の山が吹き飛び、忌々しい金髪が立ちはだかる。
「見つけた…。」
「あらやだ、見つかっちゃった。」
「見つかっちゃった…じゃないでしょ!」
「おや?可愛いお嬢さん。僕と一緒に朝ごはんでも如何かな?」
「……結構です。」
「あっ、そう残念。」
周りは霧に包まれていく。次第に前が見えないほどに…。
「くっそ、何も見えない!レティ!何処にいるの!」
「くくく。彼女は君への誤爆を恐れて爆破出来ない。そうだろ?」
「……だとしたら?」
「ゆっくり君を殺したあとに彼女を殺せばいい。僕はこうやって何人かを殺してきたからね。」
霧の中でヒタヒタと何かが迫る。そして、後ろから首筋をスっと……。
『怖いって、流石に刃物で切れるものじゃないって分かってても怖いって』
「大丈夫よ。ちょっと首の皮が切れただけじゃない。」
『普通死んでるから、その首どこまで切れてるか教えてあげようか?普通に頚動脈切れてるよ?』
「あら、ほんと。」
「……ねぇ、君、何でその傷で生きているの?」
「?何を言っているの?龍種がその程度で死ぬわけないじゃない。」
「くっそ!じゃああの女を!」
「あらあら?どこへ行くのかしら?凍結龍に後ろを見せて。ちょっとお待ちなさいな。」
「なっ脚を…クソッ」
「さよなら。また来世があったら会いましょ。」
朝日が昇る。霧が凍りつき、キラキラと輝きながら消えていく。そして、グシャッという音と共に何かが崩れ去り、辺りはしんと静まり返った。
「危なかったね、レティ…その傷!大丈夫なの!?」
「慌てない。慌てない。そんなに慌てると死ぬわよ?」
「ごめんその冗談は冗談じゃ済まないよ!?」
「ザック?どうせそのへんで影に紛れてるんでしょ?」
「……。おい、レティシア。」
「な……。」
ゴスッ。
ザックの拳がレティシアの頭に落ち、レティシアはそのまま倒れた。
「ちょっとザック!」
「傷が酷い。治龍に診せる」
「……。そうね。」
『こちらザック。レティシア重傷。今から連れてくから準備しとけ。』
『こちらカトリ。了解。本日、現時刻を持って作戦を終了として、全員、撤収!』
「了解」
灰の月、6日
この日王国は城塞都市を帝国から取り返した。
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